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・ 以上を前提に考えると、再建した水産加工事業所(たとえば、海べりでも避難施 設がしっかりしているところ、作業環境が改善されているところなど)を、迷って いる求職者(元従業員や新規の求職者)に実際に見てもらうための職場見学会・説 明会なども効果があると考えられる。

・ 大船渡所では、 2012 年 4 月下旬から 7 月にかけて 7 社で職場見学会を開催した。

参加者 87 人、就職者 27 人(うち水産加工関係 14 人) 。 7 社とも、津波前と同じ場 所で再開している事業所。今後のフォローアップとして、所内ミニ面接会を月 2 回 程度、1 回につき水産加工会社及び正社員等良質求人の 2 社を選定して実施すると していた。 (資料 1 - 14 )

・ 石巻所では、 「再開した水産加工業への従業員の就職は、大まかに、①同一会社

に戻る、②同業他社に戻る、③未経験者等新規の労働力が就職、に区分できる。①

のみでは(従業員を) 確保できずにハローワークに求人が恒常的に出てくる。②(の

同業他社)でもかまわない人は行っているだろうが、もとの職場の人間関係を志向

している人は行かないだろう。そこで③の未経験者等も対象に考えた対策が必要と

考えている。 」 (資料 1 - 15 )と述べていた。

(6) 復旧・復興関係求人(建設・土木関係求人)と求職者の動向

・ (3)のイで見たように、復旧・復興工事に伴い、被災地の建設業の雇用保険被保険者は

震災前よりも大幅に増加しており(石巻所では、 2011 年 2 月: 4958 人⇒ 2012 年 7 月:

6218 人、 1,260 人・ 25.4 %の増。図 3 - 2 - 1 。 ) 、増加している雇用の多くを臨時的な雇 用( 「つなぎ仕事」 )が占めていたと考えられる。

建設・土木関係の労働力需給はひっ迫しており、地元の求職者の中にも、建設・土木 の「つなぎ仕事」に行っている人は多かった(緊急雇用創出基金事業を活用したものを 含むがれき処理関係の仕事も多かった。 ) 。この中には、仮設住宅等に居住し生活の本拠 が定まらないために定職を探すに至らない人や、定職を探しているがなかなか見つから ない人もいると考えられる。比較的軽作業ならば家計補助的な人もいるかもしれない。

・ また、もともと経験者を求める傾向が強かったと言われる建設業界だが、需給ひっ迫 の中で、未経験者を含めて全国から労働力が調達されるようになっているとも言われて おり、全国のハローワークでは、復旧・復興関係求人として社宅・寮付の求人が出され ていた。また、(4)でみたように、賃金水準も上昇している。

・ 復興関係の公共事業が永続的なものではない中で、被災地での建設業の雇用は復旧・

復興工事に係る臨時的なものが多いと見られ(※) 、その点が安定した就職を求める求 職者側とのミスマッチの一つにもなっている。また、資格・技術・経験を求める求人が 依然として一定割合を占める中で、地元にはこれらを持つ求職者が限られているという ミスマッチを指摘する声もある。

※ 仮に求人条件で「期間の定めのない雇用」となっていても、仕事自体がそれほど長く続くものでは ないと推測されれば、求職者からは、臨時的な求人とみなされるであろうということにも注意が必要 である。

・ 中長期的に見ても、この分野の労働力需給がどのようになっていくのかは、地元の求 職者にとって重要なポイントである。ここでは、これらの状況を、これまでの新聞報道 や数値指標、職員ヒアリング記録から見ていきたい。

≪新聞報道等より≫

2011 年 3 月 30 日 河北新報:被災者優先に雇って 宮城県が建設業界に要請 復旧・復興で増える公共事 業に

4 月 15 日 読売新聞:産業廃棄物 580 万トン 岩手 県が見通し 釜石ではがれき撤去始まる 4 月 19 日 日本経済新聞:がれき置き場たりない 「阪神」の 1.7 倍、放射線も障害

4 月 29 日 日本経済新聞:粉じん被害広がる 乾燥した泥で目の痛み・せき 「土砂たけでも撤去を」

5 月 15 日 読売新聞:がれきの山 撤去進まず 地元任せ 人手・重機不足

5 月 30 日 河北新報:宮古 住宅の応急修理増 国補助金に市が上乗せ 生活再建を後押し 6 月 19 日 朝日新聞:被災地再建ラッシュ 受注年内分埋まる 大工・職人 人手が足りない

仮設建設は大手と競争 地場業者「地元に利益還元を」

6 月 20 日 産経新聞:民宿 復興の拠点 大槌町 全国から作業員受け入れ

6 月 23 日 岩手日日:がれき焼却を開始 大船渡のセメント工場 1 日 300 トン、処分ペース加速 6 月 24 日 産経新聞:仮設住宅「地元に発注して」 大半は大手業者「復興に逆行」

7 月 26 日 河北新報:がれき処理業者の公募始める 石巻ブロックで県 釜石市・がれき処理一括発注 産業振興 JV が落札

8 月 23 日 日本経済新聞:住宅メーカー被災地沿岸部の営業網拡充 修繕や再建幅広く対応 8 月 24 日 朝日新聞:被災者求職支援職業訓練始まる 遠野

・ 運営困難な沿岸部の職業訓練校に代わり、(独)雇用・能力開発機構岩手セン ターが遠野実習場を開設

・ 訓練コースは「住宅建設施工科」「住宅設備施工科」で定員は各10 名、受講 生は沿岸部のハローワークで求職していた被災者。半年かけて技術を習得した 後、センターとハローワークで就職先をあっせんする。

9 月 1 日 盛岡タイムス:県が産業廃棄物処理計画(がれき処理計画)決定 太平洋セメントを拠点に ・ 処理期間は2014年3月まで、仮置き場に集められたがれきを選別して2次仮 置き場に運搬後、破砕・細かい選別し利用できるものはできるだけ再利用。そ れ以外を焼却施設・最終処分場で処理。中間処理施設、セメント工場、既設焼 却炉、2基設置する仮設焼却炉、最終処分場の他、広域処理も依頼。

10 月 14 日 読売新聞:釜石 進まぬがれき処理 建物解体に難渋/県外は受け入れ慎重 10 月 18 日 朝日新聞:住宅再建地元力で 宮古の企業「地域密着アピール」

仮設受注逃し大手攻勢に危機感

11 月 23 日 読売新聞:復旧工事で労災増加傾向 宮城労働局、月末から一斉指導

12 月 4 日 岩手日報:建設業が活況 沿岸部で復旧工事増加 新規求人、千人超続く 技術者不足で入 札辞退も

・ 被災家屋の解体やがれき撤去から、最近は道路、港湾などの復旧工事が増加。

住宅メーカーが沿岸部に営業店を新設する動きもある。

12 月 6 日 読売新聞:11 月の倒産件数最小 東北6県 建設業は復興特需 12 月 17 日 河北新報:宮城県の 2011 年度一般競争入札 不調、2割に激増 復興需要で人手不足・資材高騰 復興停滞の懸念

・ 不調は、地元中小業者を対象にした入札に集中する傾向がある。

・ (石巻など)現地では人材不足が深刻だ。この建設会社は震災後、何度か技 術系職員を募集したが、応募はゼロ。大手建設会社も全国から技術者をかき集 め、被災地に送り込んでいるのが実情だ。

・ 震災による需要拡大がいつまで続くのかは分からない。建設業界関係者は「仮 に人や機械を増やせたとしても、(震災需要が)終わればまた削減することにな

る。そんなリスクは誰も負いたくない」と指摘する。

2012 年 1 月 26 日 読売新聞:被災 3 県入札不調400件 低単価作業員集まらず 国交省賃金基準見直し検討 ・ 震災後、東北地方では作業員不足の影響で賃金相場が上昇。福島県建設業協

会が昨年3月に加盟30社を対象に行った調査では、震災前より3割増しになっ ていたという。同協会の・・・専務理事は「県外から作業員を招くためにも、

差額の解消を」と話す。

2 月 2 日 河北新報:福島第一原発事故 報われぬ原発労働者 「事故収束宣言」の陰で・・・

・ 「いまは全国から作業員をかき集めているが、夏には足りなくなると業者の 親方たちは皆、言っている。」「長年、福島原発に携わってきた地元業者は現在、

第一原発には行かない。素人中心で作業をしているが、早晩、人材供給も途切

れてくるだろう。」

2 月 3 日 読売新聞:復興工事本格化にらみ入札不調で県が対策 技術者養成企業に補助金

2 月 6 日 岩手日報:11 年度の県発注工事 入札不調急増9% 技術者の人手不足 採算性低い小規模 敬遠 改善なければ復興遅れも

3 月 14 日 河北新報:公共工事の入札 労働力確保へサポート急げ

・ 国土交通省は2月、公共工事の人件費の実勢価格が上昇していることを受け、

被災3県について、予定価格を積算する際の1日当たりの労務単価を引き上げ た。宮城県の場合、標準的な普通作業員の労務単価は 700 円引き上げられ、1 万1800円となった。年度途中の引き上げは異例の措置だが、業界には「それで も実勢と大きく懸け離れている」と不満が渦巻いている。建設業の関係者によ ると実勢は元請が支払う賃金で1万4千~1万5千円前後という。

ア 建設・土木等関係の求職者・求人の動向と労働力確保の状況

・ 津波被災地の石巻所と大船渡所における「建築・土木・測量技術者」 、 「定置・建設 機械運転」 、 「建設・土木の職業」の求職者・求人数が、震災前から震災を経てどのよ うに変化しているかを見てみよう。

・ まず、図 3-13-1、図 3-13-2 の「建築・土木・測量技術者」は、建築・土木の

設計技術者・工事監督、測量士(補)であり、建設業法等で監理技術者・主任技術者

としての現場常駐を義務付けられている有資格者等も含まれている。復旧・復興関係

工事に伴い需要が一貫して増加しているのに対して、地元での供給がほとんど伸びて

いないことが見て取れる。資格や経験等の蓄積が必要な職種であるから、被災地で新

規に養成することは現実的でなく、大手業者内での社内異動も含めて、全国的な需給

調整が主になっていると考えられる。