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ドリル穴から発生する微小き裂の力学状態を考慮した転がり疲労強度の定量評

第 3 章 応力拡大係数に基づくドリル穴を有する転がり軸受のはく

3.3 ドリル穴から発生する微小き裂の力学状態を考慮した転がり疲労強度の定量評

86 . 0 56 .

drill1 d

f (3.2)

なお,式(3.1)の適用範囲は前章で実施した解析の範囲,すなわち,0 < d ≤ 0.2 mm,0

< h’ ≤ 0.345 mm,2.0 GPa ≤ q

max

≤ 3.0 GPa

である.この範囲において,式(3.1)で求めた

KII,drillは,FEM解析で求めた値に対し,ほぼ±5%程度の誤差に収まる.

前節でも述べたように,ドリル穴縁が起点となる転がり疲労破壊過程において,き裂 は疲労寿命の

5%以下の繰返し数で発生し,疲労寿命の大部分はそのき裂の進展に費や

される.そこで,そのようなき裂の力学状態を代表するKII,drillを用いて,疲労寿命デー タを整理してみる.

Fig. 3.9

に,KII,drillNfの関係を示す.なお,ドリル穴寸法が式(3.1)の適用範囲外に

あるデータは,Fig. 3.9 から除外している.また,ドリル穴から発生したき裂が微小な 段階では,き裂寸法a’はドリル穴直径dに比べて十分小さいことから,式(3.1)において a’→0 とした.縦軸に

aを用いた

Fig. 3.7

では,試験結果はドリル穴の直径によってば らついていたが,縦軸にKII,drillを用いた

Fig. 3.9

では,破損試験片の実験結果はドリル 穴直径によらずほぼ一本の直線上に整理された.

Fig. 3.10

に,N = 1×108で疲労試験を停止した転がり軸受のドリル穴部の断面観察結

果を示す.ドリル穴のエッジ部には微小なき裂が観察された.この微小き裂は,停留し ているか,もしくは停留とみなせるほど低速で進展していたと推定される.すなわち,

N = 1×108で未破損の軸受について得られるKII,drillは,ドリル穴から発生したき裂の進 展下限界にほぼ等しいと考えられる.

Fig. 3.11

に,未破損試験片について得られたKII,drill

を下限界応力拡大係数範囲KIIthとし,ドリル穴直径に対してプロットした結果を示す.

KIIthはドリル穴直径が大きくなるとともに増加している.

Matsunaga

(13),(14)は,本研究で用いた供試材と同等の軸受鋼

SUJ2

で製作した丸棒試

験片の表面部に,き裂発生起点として人工微小欠陥を付与し,軸方向の静的圧縮応力負 荷の下でねじり疲労試験を実施している.そして,欠陥から発生する半楕円状のせん断 型疲労き裂の進展挙動を調査し,全長

1mm

以下のき裂寸法域において,せん断型疲労 き裂の下限界応力拡大係数範囲Kthには,モード

I

と類似のき裂寸法依存性があること を明らかにしている.さらに,

Matsunaga

らは,Kthがき裂の代表寸法 の

1/3

乗に比例 することを示し,式(3.3)を得ている.

3 / 1 th 1.26(f 1.33)( area)

K  

(3.3)

ここで, areaは,人工欠陥を含むき裂面積の平方根(m)である.fは,き裂部分の面積

areacrack,人工欠陥部分の面積を areadefectとしたときの,き裂全体の面積(areadefect

+

areacrack

)に対する

areacrackの割合であり,次式で表される.

crack defect

crack

area area

f area

  (3.4)

式(3.3)と式(3.4)を用いて,本研究で用いた各ドリル穴の寸法に対するKthを計算してみ る.なお,Fig. 3.10に示すように,未破損の軸受のドリル穴エッジ部で観察されたき裂 の長さはドリル穴の直径に対して十分に小さいことから,き裂の代表寸法 はドリル穴 を内輪軌道面に投影した面積の平方根とする.これは式(3.5)で表される.

4 πd2/

area (3.5)

ここで,き裂面積areacrack

<<

ドリル穴面積areadefectであるので,f << 1である.従っ て,式(3.3)でf → 0とすると,Kthは次のようになる.

3 / 1

τth 161 d

K  

 (3.6)

Fig. 3.11

に,式(3.6)を用いてKthdの関数として計算した結果を実線で示す.N =

1×10

8で未破損となった試験の条件から式(3.1)により求められたKth

(

●印)と,式(3.6)に より求まるKth

(実線)はほぼ一致した.すなわち,転がり接触応力下においてドリル穴

から発生した微小疲労き裂のKIIthも,モード

I

疲労き裂や,静的圧縮応力下でのねじ り疲労試験で進展させたせん断型疲労き裂と同様に,初期欠陥寸法の

1/3

乗に比例する ことが明らかとなった.また,ドリル穴から発生した微小疲労き裂のKIIth は,静的圧 縮応力下でのねじり疲労試験の結果から得られた評価式を用いて予測可能であること が示された.

ドリル穴から発生した微小疲労き裂のKIIthが欠陥寸法依存性を有し,初期欠陥寸法 の

1/3

乗に比例することから,Fig. 3.9の縦軸をKII,drill

/

area1/3に無次元化して疲労寿 命データを再整理した結果を

Fig. 3.12

に示す.

Fig. 3.12

の結果は,KII,drillのみで疲労寿 命を整理した

Fig. 3.9

と比較すると,ばらつきがやや大きくなった.疲労寿命データの うち,JIS-6206にd = 0.05 mm の微小ドリル穴を付与したもの(◇印)が,その他のデー タと乖離する傾向があるものの,全体の傾向として,KII,drill

/

area1/3の低下とともにNf

は増加した.また,疲労限度近傍の寿命データは,これまでの整理手法よりまとまって おり,本手法による転がり疲労強度評価の有用性を示唆している.

これまでに得たKIIth の結果から,材料内部の微小な非金属介在物が起点となる場合 においても,せん断型疲労き裂の進展下限界値は介在物寸法の

1/3

乗に比例すると予想 される.ただし,Fig. 3.13に例を示すように,転がり軸受ではく離損傷の起点となる非 金属介在物の形状は様々である.従って,実機のはく離寿命やはく離強度の高精度な予 測を実現するためには,様々な形状・材質の微小欠陥から発生・進展するき裂の応力拡 大係数について検討を行うことが必要である.次章では,非金属介在物が起点となる場 合のはく離についても応力拡大係数を用いた整理手法を検討し,材料内部に存在する微 小欠陥を起点とするはく離強度を定量的に評価する方法を確立する.

a Elliptical crack.

b Ring-shaped crack emanated from hole edge.

Fig. 3.8 Crack geometries under shear. The crack is deformed by pure mode II at the points X1 and X2, and is by pure mode III at the points Y1 and Y2.

y x

z 2a 2b

xz

xz

xz

xz

Point Y1, Y2 (Mode III)

Point X1 (Mode II)

Point X2 (Mode II)

d d

b' a'

x y

z o Small crack h'

Mode II Mode III

Mode II

Load movement direction

Fig. 3.9 Relationship between stress intensity factor range KII, drill and fatigue life Nf. By using KII drill, fatigue life data were uniformly gathered inside

a small band irrespective of the diameter and depth of the hole.

0 2 4 6 8 10 12 14

KII, drill[MPa・m1/2]

Number of cycles to failure, Nf

106 107 108 109

0.05 0.08 0.1

Komata et al.

6206 ×

51305

d [mm]

* Depth of hole edge is ranged from 0.05 mm to 0.175 mm.

a Inner ring of JIS-6206.

d = 0.100 mm, h’ = 0.064 mm, qmax = 2.5 GPa, N = 2.6×108 cycles.

b Inner ring of JIS-6206.

d = 0.080 mm, h’ = 0.060 mm, qmax = 2.5 GPa, N = 2.4×108 cycles

Fig. 3.10 Optical micrographs of drilled holes with small cracks in unbroken bearings.

Small cracks were observed at the edge.

0.050 mm Crack from edge 0.050 mm Crack from edge

Load movement direction Load movement direction

0.050 mm Crack from edge 0.050 mm Crack from edge

Load movement direction Load movement direction

Fig. 3.11 Relationship between mode II threshold stress intensity factor range, KIIth, and the diameter of the drilled hole, d.The crack size dependency of threshold SIF range, which is well-known for mode I fatigue crack, also exists in mode II fatigue crack emanating under the rolling contact.

1 10

0.01 0.1

KIIth[MPa・m1/2]

Diameter of drilled hole, d[mm]

Unbroken bearing

tested up to N= 1×108cycles Solid line: Eq.(3.6)(13)

1 3

0.2 20

Fig. 3.12 Relationship between modified stress intensity factor range KII,drill / area1/3and fatigue life Nf.

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

KII, drill/

Number of cycles to failure, Nf

106 107 108 109

0.05 0.08 0.1

Komata et al.

6206 ×

51305

d [mm]

* Depth of hole edge is ranged from 0.05 mm to 0.175 mm.

3/1 area

(a) Aspect ratio: 1

(b) Aspect ratio: 2.5

(c) Aspect ratio: 7

Fig. 3.13 Non-metallic inclusions observed in a bearing steel.

( ai: major axis of inclusions, bi: minor axis of inclusions, aspect ratio: ai / bi ) The non-metallic inclusions have various shapes with different aspect ratios.

Direction of hot-rolling Direction of load movement

bi ai

bi ai

bi ai