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第 3 章 環境イノベーションに関する決定要因の実証研究

3.4 データ

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本分析においても国際市場との取引を行っている企業ほど、環境問題への取り組みの一環 として環境関連の特許開発を行う傾向にあるかもしれない。

市場競争ダミーは過去 3 年間において、事業所の製造品のうち主力製品について、市場 に存在している競合他社が 5 社以上いると回答した場合に1をとるダミー変数である。

Brunnermeier amd Cohen(2003)や Inoue ら(2013)によれば研究開発は⾧期的な視点に立っ た、企業の意思決定に従うものであり、市場が独占あるいは寡占的な場合に研究開発に割け る資本があり、競争的市場では環境関連の研究開発に着手する余裕がないと指摘している。

他方で、本分析では特許による自社の利益保護・模倣防止を用いているため、競争的な市場 ほど競合他社への技術流出を防ぐ目的で積極的に特許を取得しようとするかもしれない。

環境規制ダミーは、環境規制がイノベーションに与える影響を考慮するためのコントロ ール変数である。製造技術(脱硫装置の設置義務など)に関する規制、環境パフォーマンス

(排出基準、省エネ目標など)に関する規制、生産に使用するエネルギーや原材料および排 出する汚染物質に対する課税に関する規制、補助金・税制上の優遇措置に関して、それぞれ の環境政策手段が生産活動に与える影響として「重要ではない」、「重要」、「非常に重要」、

「該当しない」の選択肢から、回答者が選んでいる。この選択肢のうち、「重要」、「非常に 重要」と答えたときに1を取るようなダミー変数を作成している。

産業ダミーは各事業所の主要生産活動が産業分類上所属する産業を示すダミー変数であ る。この変数によって、企業ごとの特許取得に対する傾向の違いを把握できる。

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の分析に用いるサンプルが、事業所規模が大きめに偏る傾向があり、特許に関して大規模事 業所ほど取得に積極的である場合にはプラスのバイアスが生じている可能性がある。また、

図 3.3 に示すように主要な生産活動の産業分類に着目すると、サンプルのなかで電気機械器 具製造業が 264 事業所(29.2%)、金属製品加工業が 174 事業所(19.2%)、石油・石炭製 品・ゴム・プラスチック製品が 133 事業所(14.7%)、輸送用機械が 73 事業所(8.1%)と なっている。工業統計では、電気機械器具製造業が 21%、金属製品加工業が 14%、石油・

石炭・ゴム・プラスチック製品が 9.1%、輸送用機械が 4.2%とそれぞれ、今回のサンプルに 占める産業構成の割合が工業統計調査に比べて高くなっていることがわかる。他方で、工業 統計と比べると食品産業や繊維産業、木材・コルク産業、パルプ・紙産業、窯業、リサイク ルおよびその他の業種の回答が少なくなっている。今回のサンプルの産業構成に占める割 合が高い産業(電気機械器具、金属製品加工、石油・石炭・ゴム・プラスチック製造業)が 他の産業よりも特許申請を行いやすい産業の場合には、分析結果にプラスのバイアスが生 じている可能性がある点に留意が必要である。

図 3.2 事業所規模(従業員規模)分布

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

-49 50-99 100-199 200-299 300-499 500-999

1000-工業統計(2002)

OECDアンケート (%)

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図 3.3 産業別分布

知的財産研究所が公開している「IIP Patent Database」は特許取得数や特許出願数、特許 出願者、引用数などの 1964 年以降の特許情報に関してまとめられている。本分析では、調 査段階(2003 年)以降に申請された特許をイノベーションの指標として用いるため、特許 単位のデータを、各企業単位の 2004 年から 2017 年の特許数に集計した。特許が環境分野 に関連しているか否かについては、WIPO が公開している「IPC Green Inventory」と呼ば れる、環境分野に関係する技術に関する特許区分にそって各企業の特許のうち Green Inventory に該当する特許のみの累計を計算した。したがって、環境関連 R&D 支出と環境 関連特許の間に関して、逆の因果が発生している可能性は少ないと考えられる。表 3.2 は本 分析に使用した被説明変数および説明変数の基本統計量である。サンプルサイズは 910、

910 事業所のうち 340 事業所が ISO を取得している。また、環境関連特許を取得している 事業所が 118 あり、うち、ISO を取得している事業所が 53 事業所、取得していない事業所 が 65 事業所となっている。環境関連 R&D 支出比は平均で 2%、企業は少ないが、R&D 支 出がすべて環境関連 R&D の企業が 3 社ある。また、特許は平均で 11 件、最大で 4707 件 と非常に企業ごとに違いが大きい。ISO 取得期間は取得してない企業が 0、早期に取得して いる企業は 2003 年時点で 8 年が経過している。企業規模(雇用人数)も特許数同様に、6 人という小企業から 25000 人の大企業まで含まれている。操業年数も 2 年という起業すぐ の企業から 200 年以上続いている企業まで多様である。

0 5 10 15 20 25 30 35

食品 繊維 木材・コルク パルプ・紙 石油・石炭・ゴム・プラスチック 窯業 金属製品加工 電器機械器具 輸送用機械 リサイクル及びその他

工業統計(2002)

OECDアンケート (%)

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表 3.2 基本統計量

変数 観測数 平均 標準偏差 最小 最大 環境関連R&D支出比

910 0.023 0.101 0 1

 (環境関連R&D支出/総R&D支出)

特許数(件数)

910 11.62 165.765 0 4707

ISO取得期間(年)

910 1.441 2.151 0 8

企業規模(人)

910 266.8 920.887 6 25000

操業年数(年)

910 41.67 23.487 2 286

品質管理マネジメントシステムダミー

910 0.779 0.415 0 1

海外市場ダミー

910 0.193 0.395 0 1

競合他社ダミー

910 0.271 0.445 0 1

規制(製造技術)ダミー

910 0.243 0.429 0 1

規制(環境パフォーマンス)ダミー

910 0.654 0.476 0 1

規制(課税)ダミー

910 0.59 0.492 0 1

補助金・税制優遇ダミー

910 0.407 0.491 0 1

食品・たばこ産業ダミー

910 0.09 0.286 0 1

繊維産業ダミー

910 0.046 0.21 0 1

パルプ・紙産業ダミー

910 0.086 0.28 0 1

石油・石炭産業ダミー

910 0.146 0.353 0 1

窯業ダミー

910 0.025 0.157 0 1

金属製品加工業ダミー

910 0.191 0.393 0 1

電器機械器具産業ダミー

910 0.29 0.454 0 1

輸送用機械産業ダミー

910 0.08 0.272 0 1

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表 3.3 基本統計量(特許取得・未取得企業の比較)

特許取得企業 特許未取得 平均の差 t値

環境関連R&D支出比

0.039 0.021 0.018 -1.263

ISO取得期間

1.873 1.376 0.497** 2.141

企業規模

407.424 245.835 161.589* -1.780

操業年数

43.000 41.471 1.529 -0.660

品質管理マネジメントシステムダミー

0.907 0.760 0.147*** 4.751

海外市場ダミー

0.271 0.182 0.089** 2.063

競合他社ダミー

0.297 0.268 0.029 0.642

規制(製造技術)ダミー

0.305 0.234 0.071 1.584

規制(環境パフォーマンス)ダミー

0.703 0.646 0.057 1.251

規制(課税)ダミー

0.636 0.583 0.052 1.093

補助金・税制優遇ダミー

0.415 0.405 0.010 0.204

食品・たばこ産業ダミー

0.017 0.101 -0.084*** -5.241

繊維産業ダミー

0.017 0.051 -0.034** -2.355

パルプ・紙産業ダミー

0.017 0.096 -0.079*** -4.976

石油・石炭産業ダミー

0.203 0.138 0.066* 1.679

窯業ダミー

0.034 0.024 0.010 0.563

金属製品加工業ダミー

0.229 0.186 0.043 1.048

電器機械器具産業ダミー

0.373 0.278 0.095** 2.004

輸送用機械産業ダミー

0.102 0.077 0.025 0.836

p<0.01:***, p<0.05:**, p<0.1:*

表 3.3 は本分析に用いたデータについて、特許の取得した企業と取得してない企業に分け て、各変数について平均値を比較したものである。この 2 群間比較の結果をみると、ISO 取 得期間、企業規模、品質管理マネジメントシステムダミー、海外市場ダミーに有意な差があ ることがわかる。ISO 取得は環境関連特許を取得している企業の方が約半年早い傾向にあ る。また、特許取得企業の方が、企業規模が大きく、品質管理マネジメントシステムの導入 や海外市場との取引についても積極的な傾向がみられる。産業構成についても、食品・たば こ産業や繊維産業、パルプ・紙産業では、環境関連特許を取得していない企業が多く、電気 機械器具産業では環境関連特許を取得している企業が多いという違いがある。

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ドキュメント内 日本における環境政策評価の実証研究 (ページ 46-51)

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