第 9 章 データベースと知識工学を利用した
する必要がある。しかし,装置の状態や伝送路網構成のような障害解析の条件 の変化に追従してシステムの状態を変更しなければならないという問題がある。
(2 )データベースと知識工学を利用したアラーム解析方式の目的
本方式の目的は伝送路網構成の変更に対して柔軟に対応し,高速にアラー ムを解析し故障装置を見付け出すことである。
(3)本方式の理論的背景
この章で述べる自動障害解析システムは知識工学の概念を用いている。具 体的には,アラーム解析においては多重化装置接続情報とアラーム情報を高速 にマッチングするために知識工学の技法であるフレーム理論を用いている。ま た,多重化装置接続情報は木構造になっているが,この情報をデータベースか ら取り出す時にデータベースアクセスを少なくするため,木構造内の隣接する データをデータベースの近接番地に格納する方式を用いている。さらに,多重 化処理のような並列処理や予測処理により処理時間の短縮を行っている。
9 . 2 エキスパートシステムの特徴と監視システムでの構
成(1)エキスパートシステムの特徴
代表的なエキスパートシステムとしてルールベースシステムとフレームベ ースシステムがある「文献 (7)J。これらの特徴を以下に示す。
i )ルールベースシステムの特徴
jレールベースシステムはルールデータと事実データを蓄積した知識データ
‑85‑
ベースを持っている。ルールデータは. 1 F条件 THENアクションの形式で 記述される。また,このシステムは知識データベースを参照して結論を導くル ール実行機構を持っている。この機構は,条件のマッチング,マッチングした 条件の競合の解決,解決した条件に対応したアクションの実行からなる3つの 処理に分割できる。条件のマッチングは条件を満足するルールを見付ける。も しルールが正確に定義されていれば,ルールの中の条件の対象が小さくなり,
データ構造を解析するために多くのルールが必要になる。それゆえ,この方法 を用いて複雑な構造を解析することは大変むずかしい。これらの問題を解決す るため.Minskyによりフレーム理論が提案された「文献 (8)
J
。i )フレームベースシステムの特徴
フレームベースシステムにおいては,データベースに蓄積されているフレ ームワークが選択され収集されたデータと対応付られ,これらのデータの構造 が予測される。
(2 )監視システムでの構成
ここで,伝送網監視システムを考えやすいルールベースシステムの用語を 用いて記述する。
i )知識データベース
監視システムの知識データベースは2種類のデータからなる。
.事実データ
伝送路網は加入者線と多重化装置と伝送路からなる。多くの細い通信回線 は容量の大きい太い伝送路を用いるために,回線ルート上の多重化装置により
‑86‑
多 重 化 装 置 多 重 化 装 置 多 重 化 装 置 端 末
図9. 1 デ ジ タ ル 伝 送 路
細い回線は束ねられ(多重化と呼ぶ)太い伝送路に接続される。そのため回線 の接続と多重化の状態はたいへん複雑になっている(図9. 1参照)0
・ルールデータ
伝送路網において障害や性能低下が起こった時,アラームが監視システム に送られる。伝送路網の装置の障害はふつう障害が起こった装置と直接接続さ れた装置ならびに障害装置が伝送している同一回線を伝送している装置に影響 を与える。それゆえ,伝送装置の1つの障害でさえ異なる装置で多くのアラー ム信号を発生させる。障害とそれによるアラームとの関連付けはルールデータ と見なすことができる。
i )推論機構
可t
o o
伝送路網監視システムにより収集されたアラーム信号は伝送路網内の障害 や性能低下症状を見付けるための徴候である。監視システムの推論機構はこの
目的のために存在している。
9 . 3
本方式の基本的考え方ルールと推論機構との組合せを用いて原因を迅速に見つけることは難しい。
しかし,同一故障原因により発生したアラーム内に関連する構造を持っている ため故障原因を認識できる。本システムはこの関連構造を用いて解析処理を高 速化する新しいマッチング処理を提案している。
レベル
5
4
3
2
1
装置接続構造(木構造〉
図9. 2 原 因 と 波 及 と の 関 係
‑88‑
ア ラ ー ム
原 因 ア ラ ー ム
⑬ 波 及 ア ラ ー ム
愈 ⑧
この多重化装置の接続においては,装置は互いに木構造に接続されている。
障害はルート(根〉からリーフ(葉)に他の装置に影響を与える。そのため,
アラーム信号を収集したシステムは知識データベース内の木構造をした事実デ ータと対応付る事により部分グラフを形成する。この考え方はMinskyの フレームの概念に似ている。この部分グラフのルートがアラーム信号の原因で 他のすべてが披及アラーム信号と見なすことができる。
図9. 2で示すように.もしアラームA. B. Cを発生した多重化装置間 でAの装置をルートとする木構造の関係がある場合.Aが原因アラームであり
B. Cが波及アラームとなる。(図9. 2参照)
9 . 4
本方式の設計概念この節では,フレームの考え方を適用した理由とフレーム概念のためのア ラームのクラス分けの方法を示す。ルールベースシステムとフレームベースシ ステムとの違いを示すために,まず,伝送路網監視システムをルールベースシ ステムでさらに具体的に記述し,問題点を示す。
(1)ルールベースシステムの問題点
監視システムにルールベースの考え方を適用すると,前に詳しく述べたよ うに,事実データはアラームとデータベース内の装置接続情報からなる。また,
このルールは表9. 1のようになる。アラームが収集される毎にルールR2の 処理を実行すると,その度ごとに装置接続情報を得るためにデータベースにア クセスする。しかし,システムがデータベースにアクセスすると多くの時聞が かかる。
‑89
表9. 1 ル ー ル ベ ー ス シ ス テ ム に よ る 記 述
( 1 )事実データ
ア ラ ー ム 信 号 : ア ラ ー ム を 送 出 し た 装 置 の 番 地 . ア ラ ー ム 種 別
装 置 接 続 情 報 : 装 置 番 地 , 接 続 装 置 へ の ポ イ ン タ ( 2 ) ル ー ル デ ー タ
Rl 割 り 込 み が あ れ ば ア ラ ー ム 信 号 を 作 業 域 に 取 り 込 む
R 2 作 業 域 内 の ア ラ ー ム 信 号 に 関 連 が あ れ ば , ア ラ ー ム 信 号 を つ な ぐ R 3 ア ラ ー ム 信 号 が ル ー ト で あ れ ば ア ラ ー ム 信 号 の 装 置 が 障 害 で あξ R 4 ア ラ ー ム の 種 類 がkであれば. p (k)の 部 分 が 故 障 で あ る
(2 )アラーム解析アルゴリズムでのフレーム概念の適用
本アルゴリズムでは,原因アラームと波及アラームとを迅速に関連付ける ため知識工学のフレーム理論を用いている。多くのアラームを簡単に関連付け るため,原因アラームの装置をルートとする木構造フレームを求める必要があ る。そのため,装置からアラームを送出するとき多重化装置のレベルに対応し たレベル番号が付けられ,収集されたアラームの最上位のアラームを原因アラ ームAと想定してこれを送出した装置aをルートとする(波及想定装置からな る)最大の木構造フレームを求める。最後に,この木構造フレームに収集した
‑90一
アラームを対応付け波及アラームを整理してし、く。このアルゴリズムの概要を 図9. 3に示す。
図9. 3 高 速 ア ラ ー ム 解 析 ア ル ゴ リ ズ ム
‑E
A
n司
マッチング処理の高速化技法
9 .
5(1)木構造データの格納データ構造と格納アルゴリズム
木構造データの多重化装置接続情報はデータベースに格納されているが,
アラーム解析においてはアラームが出た一番上位の多重化装置の下に接続され たすべての多重化装置情報(木構造フレーム)を迅速に検索する必要があった。
この木構造データをデータベースに格納するときに.接続された多 このため,
重化装置情報はデータベースにおいても近くの番地に格納するアルゴリズムに なっている。
多重化装置の接続を表している木構造データをディスクの中にばらばらに 蓄積すれば,ルートレコードからつぎのレコードポインタをたどりながらレコ ードを取り出すときその度ごとにディスクヘッドを移動させることになり時間
# 21al# 31# 413
#3
止土 1 ‑
1#4
圧王 ‑ 1
1一 ﹁
1 1 1
# 9
日
木 構 造 の 検 索 手 順
近 接 番 地 に 配 置 木 構 造 フ レ ー ム の 格 納 方 式
内L
nE
4 図 9.
がかかる。このため,この取り出し処理を迅速に行うために,木構造フレーム 内のどの部分木についても部分木内の各レコードがディスクの近接番地に蓄積 する必要がある。この方法は木構造フレームの深いレコードから検索していき,
検索のためにたどった順番に蓄積していく「文献(9) J。この方法を図9. 4に示す。
図において,ノード1. 2. 3. 2. 4. 2. 1とたどっていき,ノード に付けられた番号 iの順番にレコード #iを作ってし、く。
アラーム解析システムでは.
CODASYL
型データベースを用いており,指定した順番どおりに蓄積が可能であり,木構造データのどの部分木について も.できるだけ同一フeロックに蓄積される。
(2 )アラーム解析の並列処理方式
原因アラームと波及アラームとを正しく関連付けるため,アラーム収集処 理ではこれらのアラームを長い間待たなければならない。システムでは,この 収集処理とデータベースにアクセスしアラームと対応付ける処理とはマルチタ スク処理方式を用いて並列に実行させている。このため,アラームを待ってい る無駄な CPU時聞を少なくしている。
一方. 2つの処理は繰り返し走行させる必要がある。最初の対応付け処理 で最上位のアラームを予測し対応付け処理を行った後,つづく対応付け処理で
この予想を繰り返し見直してし、く。
(3)処理時間の評価
もし収集時間が最大波及時間と最大転送時間との合計Mより大きければ,
解析を見直すことなく原因アラームと波及アラームとを関連付けることができ るが,先ほど述べたようにこれでは長い時間 CPUが遊んでしまう。
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n司