フィールド評価
5.4. 評価 ( インタビューとフィールド調査の質的データ分析 )
5.4.1 データのコーディングと分析
インタビューとフィールド調査で獲得したデータを定性的コーディングし分析した。定 性的コーディングは『質的データ分析法』[35]を参考に行った。定性的コーディングと は、「文字テキストデータに対して一種の小見出しをつけていく作業」[35](33)のことで あり、インタビューとフィールド調査を文字に起こしたテキストデータを分析した結果、
下記のようなコードで表される行動が認められた。
• 今までに行った事のない場所に行く行動
• 友達に地図を見せる
• 地図を見て自分の行動を振り返る
• 自分の地図と友人の地図の比較
図 5.5 鎌田の移動した場所と生成された地図
リサーチクエスチョンで設定した今までに行った事のない場所に行く行動もインフォーマ ント3人が認められた。またエラーがあるものの、MyGlobeMapがユーザーの認知して いる世界と街での行動を概ね反映している事が確認できた。各モードの動作確認はユー ザビリティに問題を残すも正常に機能していた。
5.4.2 MyGlobeMapがユーザーの認知している世界と街での行動を反映して
いるか。
ここでは、MyGlobeMap上の道と建物と島がユーザーの行動を反映しているかの評価 を行う。
道とユーザーの経験
インフォーマント3人のよく使う道が太くなるということが確認された。特に梅沢の 地図の道は、自宅から大学への通学路に使っている道が太くなることが、図5.6の左に示 してあるように顕著に確認された。また、鎌田は「ここが太くなったね。家の帰り方が 2つあって、駅からだったらこっちで、学校行く時はこっちなの。でも駅よりも学校の方 が多く行っているね。学校への道の方が太いね。学校から駅への道がかなり太い。東急 とかにも行っているからだと思う。」と地図を見ながら説明してくれ、MyGlobeMapの
道と鎌田の移動経験と認知の仕方が対応している事が判った。問題点としては、レンダ リングされた道が密集した時に、道が重なりあってしまい、道ではなく白い点に見えて しまう点である。(図5.6の右)
図 5.6 学校と自宅を結ぶ道が太くなっている例と道の問題点である白い点の例
建物とユーザーの経験
建物の推定は、建物の生成されている場所と大きさはあっているが、種類が間違って いる場合が多い事が確認された。斉藤は「セブンイレブンが出来ているけど、よく行く し、ちゃんとあたっている。びっくりした。そこにある建物は「かすが」(飲食店)ってい うんだけど、「かすが」(飲食店)もあたっている。」という感想を述べている一方で、鎌 田は「さっき矢上まで行ったけど、反映されているね。でも矢上キャンパスが音楽になっ ちゃっている。修正するね。」
と説明してくれ、建物推定が誤っている事がわかった。ただし、建物推定が間違ってい る場合でも修正に対してはポジティブな反応を返してくれた。問題点としては、以下が あげられる。
1. 建物の種類推定が誤っている。
2. 滞在した場所に建物が生成されない。
3. 逆に滞在していないのに建物が生成される。
1の理由として、同じ建物内に複数店舗があるか、近くに店舗が密集していることがあ げられる。ユーザーがカスタマイズモードで建物を自分自身で修正する機能を有するこ
とで、解決策を提供している。しかし、今後推定自体を正確にすることも求められるだ ろう。2は渋谷でのフィールド調査の際に、梅沢と鎌田ともに建物が生成されなかった。
これは、ユーザーが室内から屋外に出た時に、すぐに位置情報を取得できないことがある からである。無線LANアクセスポイントIDと電波強度の強弱から現在位置を割り出す
PlaceEngine[36]をGPSとともに併用する事で、屋内での位置情報を取得できるように
して改善したい。3の理由として、屋外に停止した状態が長い場合に建物が生成されて しまう。これはカスタマイズ機能でその建物を削除することで、修正することができる。
島とユーザーの経験
インフォーマント3人ともにGPSでロギングをした行動領域のMyGlobeMap上に島 が描画されていた。
「吉祥寺島と三鷹島が出来ている。横に並べるとかわいい。」と斉藤はポジティブな感想 を残した。
斉藤は、交際相手が三鷹に住んでおり、三鷹に頻繁に行き来しており、吉祥寺にはよく 食事や遊びにでかけるという。
図5.7 斉藤の三鷹と吉祥寺の島の地図 問題点として、以下があげられる。
1. 島と島がくっついてしまい一つの大きな島になってしまう。
2. 島が地図を覆い隠してしまう(図5.8左)。
1の問題は、ユーザーの各島での行動履歴が増えれば解決する。建物とどうように島も カスタマイズできる機能を提供することで、島を分割するようにしたいと考えている。
2が原因で、島がどこの場所がわかりにくくなるという感想があった。
「渋谷とここはどこだ。島がもうちょっと透けてくれるといいかなと思います。」
また、他のユーザーのMyGlobeMapを閲覧しながら街を歩く際に、描画された道以外見 えないので、目的地へのナビゲーションの障害になることがあった。2を解決する為に、
図5.8の右図のように島を表示せず、建物と道だけを表示する機能を付け加えた。Google Mapsの地図も同時に閲覧することができるので、ナビゲーションの際にはより実用的に 使えるようになるであろう。
図 5.8 島がくっついている例(左図)と改善案(右図)