さて,このようにタンパク質拭き取り検査法は,
実用的かつ教育効果が期待でき,十分な汚染指標 価値として活用できると考えられる。検出感度も 著者らが実験にて確認したところでは,目視にて 40μg程度の微量なタンパク質を拭き取ることが できれば目視で検出でき,その他販売されている キットにおいても,検出感度は同程度であると報 告されている。
では,実際に食品製造ラインで用いた場合,タ ンパク質汚染と微生物汚染と相関があるのだろう
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第1図 タンパク質拭き取り検査法の概要
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か? 科学的知見から述べるのであれば,本法は いくら40μg程度の微量なタンパク質を検出でき るといっても,微生物そのもののタンパク質を検 出できるほどの感度ではない。微生物は極めて小 さく,微生物菌体量としてかなりの量が存在しな いと理論上検出できない。このことから,「タン
パク質拭き取り検査法は微生物そのものを検査し ているのではない」と言われてしまっている。し かし,だからといって,このようなツールが全く 微生物汚染と相関がないとは考えられず,実働の 食品生産ラインで活用できないほどとは考えにく い。そこで我々は,「タンパク質拭き取り検査法」
第1表 製造作業前後(洗浄後)におけるタンパク質拭き取り検査実験結果の一例
ライン名 拭き取り箇所 一般生菌数 大腸菌群数 現場監督者
の目視検査 タンパク
検査結果 タンパク検査は 原因と一致?
玉子焼き 玉子焼き収納バット < 10 - - - ○
冷蔵庫取っ手 < 10 - - - ○
玉子焼き機・ロータリーポンプ部分 < 10 - - - ○
玉子焼き機・型おさえ < 10 - - - ○
玉子焼き機・パイプ中 < 10 - - - ○
玉子焼き機・L 字パイプ < 10 - - - ○
玉子焼き機・調合タンク < 10 - - - ○
玉子焼き機・加温機パイプ < 10 - - - ○
玉子焼き機・充填機パッキン部分 < 10 - - - ○
和菓子 作業台 < 10 - - - ○
ベルトコンベアー < 10 - - - ○
バット握り部分 < 10 - - - ○
ベルト < 10 - - - ○
タオル付きローラー < 10 - - - ○
シャッター < 10 - - - ○
ローラー < 10 - - - ○
生地入りバット握り部分 < 10 - - - ○
まな板 < 10 - - - ○
包丁の柄 < 10 - - - ○
チキン バット < 10 - - - ○
タンブラー < 10 - - - ○
スコップ握り部分 < 10 - - - ○
ホース < 10 - - - ○
攪拌機 < 10 - - - ○
冷蔵庫取っ手 3.0 x 103 - - + 微生物汚染と相関
ステンレスカップ < 10 - - - ○
解凍水入れ < 10 - - - ○
野菜加工 ザル < 10 - - - ○
スライサー < 10 - - - ○
スライサー < 10 - - - ○
スライサー < 10 - - - ○
すくいザル < 10 - - - ○
カッター 押し < 10 - - - ○
カッター 刃 < 10 - - - ○
充填筒 < 10 - - - ○
脱水機 5.0 x 103 - - + 微生物汚染と相関
まな板 < 10 - - - ○
玉子 スライサー < 10 - - - ○
ローラー 1.0 x 101 - - - NG
ベーカリー 手指 2.0 x 102 - - + 微生物汚染と相関
手指 5.0 x 102 - - + 微生物汚染と相関
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と「微生物汚染」との相関について,実働の食品 生産ラインで活用を試みながら検証した。
この検証結果については既に学会誌2)に掲載 されているが,異常があった場合の結果のみ示し ている。しかし,本法に興味を持ち,学会誌をご 覧になった製造現場の方々から,「異常が無い場 合の結果についても詳細を知りたい」との要望(こ れは実際にどのような製造ラインを拭き取り検査 したか,そのモデルケースの実際を知りたいこと による)が強いことから,今回ではその一部詳細 を含めたデータとともに解説することにした。
第1表に製造作業前後における拭き取り検査実 験結果の一例を示した。すなわち,製造ラインの 洗浄がひととおり行われた後でのサンプリング結 果である。表に示したように,一つの製造ライン につき,2から10程度の汚染が残りやすいと考え られるところからサンプリングし,検証を試みた。
例えば「冷蔵庫取っ手」や「まな板」のように身 近なものから,生産ラインの「ベルトコンベアー」,
「タンク」などから測定を行った。洗浄後の検査 例では一般生菌数はほとんどのサンプルで検出限 界以下となっており,これらのサンプルでは現場 監督者による目視検査やタンパク質拭き取り検査 結果も陰性と得られ,適切に洗浄・殺菌が行われ ていることを示していた。陽性となった例では,
例えばチキン生産ラインの「冷蔵庫取っ手」では 3.0×103CFU/100cm2と一般生菌数が計測された が,この例の場合,タンパク質拭き取り検査結果 は陽性となった。この表に示すように,微生物汚 染結果とタンパク質拭き取り検査結果との関連性 は一致する傾向が見られた。全62検体中(表には 全て示していない),唯一1検体のみ微生物が検 出されたにもかかわらず,タンパク質拭き取り検 査では見つけられない例が存在した(卵ライン:
ローラー)が,この時の一般生菌数はわずか1.0
×101CFU/100cm2であり,通常の微生物検査で も検出限界に近い値であった。このように,洗浄 後における検証試験では,[(61/62)× 100]=
98.4%という極めて高い一致率を得た。
しかし,洗浄後における検証試験において62も のサンプリングを行ったが,汚染として検出され
たケースがわずか5サンプルであり,陰性のデー タだけで一致率の分母を増やしてしまっている可 能性も,この時点では否定できなかった。そこで,
汚染が頻繁に起こったであろう洗浄前における拭 き取り検査実験を検討した(第2表にその一部を 示す)。ここでは,さらに90サンプルについて検 討し,総数71の汚染状態と仮定できるサンプルを 得た。洗浄前における汚染状態においてもタンパ ク質拭き取り検査結果は微生物汚染もしくは現場 監督者の目視による汚染確認結果と概ね一致して おり,69検体が汚染原因と関連していた。2検体 が,微生物汚染が検出されたにもかかわらず,タ ンパク質拭き取り検査では見つけられない例とし て見受けられたが,これらにおいても一般生菌数 はわずか1.0×101〜3.0×101CFU/100cm2であり,
検出限界に近いごく微量の微生物汚染であった。
逆に,今回の実験ではタンパク質拭き取り検査の みが陽性と得られたサンプルが5つ確認された。
これらについては,擬陽性として考えられるが,
むしろ,幸い科学的な手法により食品残渣由来の 僅わず
かなタンパク質汚染を検出できた例として考え て洗浄不足であると判断した方が,自主衛生管理 に役立つ使い方と思われる。
大腸菌群について考察すると,大腸菌群が陽性 として得られたのは18サンプル(第2表ではその 一部のみ)であり,これらすべては野菜を取り扱 った生産ラインのみであった。また,これらの一 般生菌数はいずれも3.0×102CFU/100cm2以上で あり,102CFU/100cm2以下のものはなかった。も ともと野菜には大腸菌群が多く検出されることか ら,これらの汚染は原材料食材由来の微生物によ る証拠であることが,この例からも確認できた。
また,タンパク質拭き取り検査法においてもこれ らは陽性として検出できていた。
これら計152サンプルにおける結果の関連性に ついて第3,4表にまとめた。結局,タンパク質 拭き取り検査で陽性となったサンプルは微生物汚 染を含めた汚染原因のほとんどを包括した結果と な っ て い た。 具 体 的 に, そ の 一 致 率 は[( 9 +44+15+76)/152×100]= 94.7%であった。さら に重要な考察すべき点は,152のうち44サンプル
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第2表 作業中(洗浄前)におけるタンパク質拭き取り検査実験結果の一例 ライン名 拭き取り箇所 一般生菌数 大腸菌群数 現場監督者
の目視検査 タンパク
検査結果 タンパク検査は 原因と一致?
和菓子 製造機 粉払いブラシ < 10 - コーンスターチ
付着 + 目視検査と相関
製造機 ローラーゴム < 10 - - - ○
タレ付け機 < 10 - - - ○
製造機 シャッター < 10 - - - ○
製造機 コンベアー < 10 - きな粉付着 + 目視検査と相関
製造機 ベルト < 10 - - - ○
布巾 < 10 - - - ○
急速冷凍用ラック < 10 - - - ○
冷蔵庫取っ手 4.9 x 102 - - + 微生物汚染と相関
サンドイッチ 作業台 < 10 - - - ○
まな板 < 10 - ツナサラダ付着 + 目視検査と相関
ディッシャー < 10 - - - ○
まな板 < 10 - - - ○
包丁 < 10 - - - ○
惣菜 収納中ボール < 10 - 唐揚げ
(加熱痕)付着 + 目視検査と相関
充填筒 < 10 - 唐揚げ
(加熱痕)付着 + 目視検査と相関
秤 < 10 - - - ○
ステンレスボール < 10 - - - ○
ステンレスカップ < 10 - - - ○
成形機 ベルト < 10 - 飯付着 + 目視検査と相関
成形機 ローラー < 10 - 飯付着 + 目視検査と相関
成形機 ベルト < 10 - いなり付着 + 目視検査と相関
冷蔵庫取っ手 9.0 x 101 - - + 微生物汚染と相関
玉子 流れ受け皿 1.0 x 101 - - + 微生物汚染と相関
原料用釜 1.2 x 102 - - + 微生物汚染と相関
スライサー < 10 - - - ○
ローラー 1.0 x 101 - - - NG
作業中 手 3.0 x 101 - - - NG
作業中 手 < 10 - - - ○
カット野菜 スライサー刃 2.0 x 102 - - + 微生物汚染と相関
ザル 3.1 x 102 - - + 微生物汚染と相関
ベルト 1.0 x 103 3.6 x 102 - + 微生物汚染と相関 金網ベルト 2.4 x 103 2.7 x 102 - + 微生物汚染と相関 まな板 2.0 x 103 4.8 x 102 - + 微生物汚染と相関 包丁 4.0 x 103 1.2 x 102 - + 微生物汚染と相関
乱切り 押 7.0 x 102 - - + 微生物汚染と相関
乱切り 刃 1.1 x 104 3.5 x 102 - + 微生物汚染と相関
脱水機 5.0 x 101 - - + 微生物汚染と相関
金網ベルト 3.0 x 102 9.0 x 101 - + 微生物汚染と相関
充填筒 4.2 x 102 - - + 微生物汚染と相関
コンニャク 粉計り用ボール 1.4 x 102 - 蒟蒻粉付着 + 微生物・目視検査と一致 石灰水用 ホイッパー 2.0 x 101 - 石灰水付着 + 微生物・目視検査と一致
タンク 1.0 x 103 - 蒟蒻付着 + 微生物・目視検査と一致
タンク ホース口 9.0 x 102 - 蒟蒻付着 + 微生物・目視検査と一致
まな板 < 10 - - + タンパク検査のみ陽性
冷蔵庫取っ手 < 10 - - + タンパク検査のみ陽性
白滝製品 < 10 - - + タンパク検査のみ陽性
蒟蒻製品 < 10 - - + タンパク検査のみ陽性