第5章 開発教材を用いた実応用例
5.3 むだ時間補償
5.3.1 スミス補償のための教材開発
本節では教材としてスミス補償法の効果を明確に示すため、疑似的にむだ時間を持たせ た対象に対しシミュレーションを行いその有効性を示している。
Fig.5.3.3 にプレゼンテーション教材の一部を示す。スミス補償法の特徴やブロック線図
について記している。この中で示されるサンプルプログラム:m_chap5_smithでは各パラ メータの解説やスミス補償法を用いるためコントローラの変換等が記述され、シミュレー ション用モデル:mdl_chap5_smithが実行されている。Fig.5.3.4にそのブロック線図を示 す。制御対象𝑃(𝑠)に<delay>を直列に挿入することで疑似的にむだ時間を持たせている。
また補償の有無を比較するためにスミス補償なしの制御系、むだ時間なしの制御系を同一 条件で並列に作成した。
Fig.5.3.5 にシミュレーション結果を示す。遅れのある対象では制御性能が大きく劣化し
ている。一方でスミス補償を施した制御系では理論通りに遅れのない対象の出力波形が<
delay>によって設定された時間(0.05 s)だけ遅れている。
Fig.5.3.3 スミス補償法プレゼンテーション教材
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Fig.5.3.4 mdl_chap5_smith内のブロック線図
Fig.5.3.5 スミス補償シミュレーション結果 (m_chap5_smith)
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第 6 章 まとめ
6.1 まとめ
本稿では、制御技術者教育のためのソフトウェアとハードウェアの両方の技術が修得可能 なプログラムシステムの構築を目標に、理論から実践まで一貫した教育支援システムの提案 とその開発を行った。具体的にはパワーポイントを利用したプレゼンテーション教材とその 内容に則したプログラムをMATLAB/simulink にて作成し、各々のファイル名を統一する ことで関連付けを行った。また、利用者が他の対象を制御する際の参考のために、一例とし てDSP駆動のACサーボモータを利用したシステムを開発し、それを対象とした様々な制 御系のシミュレーションプログラムや実験プログラムを作成し付加することで、教材として のクオリティを高めている。
第 2章で作成した教材についてハードウェア、ソフトウェアに分けて説明し、第3章で はシステム同定法の教材と、一例としてそれをACサーボモータに適用した例について述べ た。第4章では各制御系のための教材について解説し、具体例でそれぞれの制御系の利点、
特徴を示すためにACサーボモータに適用し、シミュレーション、実験を行った。
第 5 章では制御の現場にて問題となるワインドアップ現象や制御入力飽和についての対策 について述べた。
本教材を用いた実施例として2011年9月16日に実際に行ったアナログナレッジにて開 発教材を用いて大学院生を対象に少人数制の実習を行った。作成したプレゼンテーションを 利用して理論の説明をしつつ、参加者が各自、MATLAB/simulink を用いてシミュレーシ ョンを行い、最後に開発したシステムを用いて各制御系のデモンストレーションとしてPID 制御器やIMC制御器、外乱オブザーバを用いた制御系の実験検証を行った。通常の講義と 比較し明らかに理解度が高かったことを付記する。
今後の課題として、むだ時間や振動特性を併せ持つ対象や、ストロークに限界がある対象、
制御対象が複数ある場合の制御など、更なるハードウェアの開発やそれに伴った実験用プロ グラムの開発が挙げられる。さらに本研究室で提唱されている外乱オブザーバに基づく内部 モデル制御等、他のアドバンスド制御系に関する教材の開発が考えられる。
また、本教材にLANを介すことにより、利用者が設計した制御系を他の場所にある対象に 適用した遠隔授業や、e-learningシステムとしての応用も考えられる。
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参考文献
[1] 涌井 伸二、橋本 誠司、高梨 宏之、中村 幸紀:現場で役立つ制御工学の基本、コロナ 社(2012)
[2] 杉江 弘:入門 MATLAB/SimuLink による制御系設計手法、株式会社トリケップス
(2003)
[3] 樋口 龍雄:自動制御理論、森北出版株式会社 (1989)
[4] 美田 勉、小郷 寛:システム制御理論入門、実教出版株式会社(1979)
[5] 足立 修一:MATLABによる制御のためのシステム同定、東京電機大学出版局(1996) [6] 山口 宏樹:構造振動制御、共立出版(1996)
[7] 吉田 和夫:「構造物の振動制御の動向」、電気学会論文誌 C、Vol.118、No.3、79/82(1998)
[8] 野波 健蔵、西村 秀和、平田 光男:MATLABによる制御系設計、東京電機大学出版局
(1998)
[9] 足立修一:ユーザのためのシステム同定理論、社団法人計測自動制御学会(1993)
[10] 足立修一:MATLABによる制御のための上級システム同定、東京電気大学出版局(2004)
[11] 木暮雅之:外乱オブザーバに基づく内部モデル制御の適応化とその産業応用、平成19
年度群馬大学大学院修士論文(2008)
[12] 新田麻弓:制御反力を考慮したアクティブ除振付き超精密ステージの統合化設計法、
平成20年度群馬大学院修士論文(2009)
[13] 山口高司、平田光男、藤本博志:ナノスケールサーボ制御、東京電機大学出版局(2007)
[14] 黒須茂、三田純義:メカトロエンジニアリング(10)制御技術、パワー社(1999)
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謝辞
最後に、本論文をまとめるにあたり、多くの方々にお世話になったことをこの場を借りて 感謝いたします。
本研究を進めるにあたり、多大なるご指導、ご鞭撻を頂きました橋本誠司准教授に深く 感謝いたします。また、主査としてご指導いただきました石川赴夫教授、副査としてご指 導いただきました高橋俊樹准教授に深く感謝いたします。また、装置製作の際にご指導、
的確なアドバイスをいただきましたマシンショップの方々に深くお礼申し上げます。
最後に数々の有益な助言、的確なアドバイスをいただき共に協力して過ごした橋本研究 室の皆様にも心から感謝申し上げます。
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付録 A 使用ツール概要
・PowerPoint (パワーポイント)
PowerPoint (パワーポイント)は、マイクロソフトが開発している Microsoft Office
に含まれるプレゼンテーションソフトウェアである。アメリカの Forethought社によって Macintosh 用のソフト "Presenter" として開発された。現在、プレゼンテーションでの利 用効果が非常に高いため、世に広く普及している。
・MATLAB/simlink
MATLABはMatrix Laboratoryを略したものであり、アメリカ合衆国のMathWorks社
が開発している数値解析ソフトウェアであり、その中で使うプログラミング言語である。
行列計算や、ベクトル演算、グラフ化や、3次元解析など豊富なライブラリを持つ。標準で 数多くのライブラリを有するが Toolbox と呼ばれる拡張パッケージをインストールするこ とで、機能拡大を図ることができる。MATLABとToolboxは総合してMATLABプロダク トファミリと呼ばれる。
SimulinkはMATLABプロダクトファミリの一つでモデリング、シミュレーション、解
析のためのマルチドメインシミュレーション及びダイナミックシステムである。直感的な インターフェースであり、ブロック線図ベースでのトライ・アンド・エラーで設計が行わ れるため可視的で非常に理解しやすいことが特徴として挙げられる。
・DSPtool
Realtime-workshopを介し、simulinkにて作成したモデルファイルをベースにフィード
フォワード、フィードバック制御などのハードウェア駆動を行うことができる。dSPACE 内の電子制御ユニット(ECU)開発向けの汎用的な試験ソフトウェアである ControlDesk にてリアルタイムで装置をモニタリング、コントロールを行うことができる。
・汎用サーボモータ
アクチュエータとして株式会社日立産機システムのACサーボモータ ADMA-R5MA111 を用い、取り付ける負荷は自作した。実習ベースの体験機器として製作のため、負荷を製 作する際、モータの回転がわかりやすくなるように穴を開け、外乱が与えやすいように取 手を取り付けた。この負荷を変化させることにより産業界の様々なモデルに疑似すること が可能となっている。システム同定法により正確なモデルが導出できればさらに実践に近 いシミュレーションも可能でとなる。
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付録 B モータ仕様表
型番:ADMA-R5MA111
項目 単位 仕様
電圧 100V 用
サーボモータ機種略号 : ADMA- R5M 01M 02M 04M
適合サーボアンプ機種略号 : AD□- R5MS 01MS 02MS 04MS
仕 様
定格出力 kW 0.05 0.1 0.2 0.4
定格トルク N・m 0.16 0.32 0.64 1.27
瞬時最大トルク N・m 0.48 0.96 1.91 3.82
定格回転速度
min-1 3000
最高回転速度 min-1 4500
回転子慣性モーメント J
(ブレーキ無し) kg・m2×10-4 0.014 0.023 0.12 0.22 回転子慣性モーメント J
(ブレーキ付き) kg・m2×10-4 0.023 0.032 0.16 0.25 許容負荷慣性モーメント J* kg・m2×10-4 回転子慣性モーメントの 30 倍
定格パワーレート* kW/s 18.1 44.0 33.8 73.3
速度・位置検出器
標準 17 ビットインクリメンタルエンコーダ (シリアル信号出力) オプション 17 ビットアブソリュートエンコーダ (シリアル信号出力)
67 基
本 仕 様
時間定格 連続
周囲温度 0~+40℃
周囲湿度 20~90%RH (結露しないこと)
振動階級 V15
保護方式 IP55(軸貫通部、コネクタを除く)
耐振性 24.5m/s2(2.5G)
取付方式 フランジ取付け
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サーボアンプ型番:ADA2-R5MS
機種略号 ADA- ADA2-
R5LS 01LS 02LS 04LS 08LS 10LS 15LS 20LS 30LS 50LS R5MS 01MS 02MS 04MS
基 本 仕 様
適用モータ
出力(kW) 0.05 0.1 0.2 0.4 0.75 1.0 1.5 2.0 3.0 5.0 0.05 0.1 0.2 0.4
電源設備
容量(kVA) 0.3 0.3 0.5 0.9 1.3 1.8 2.5 3.5 4.8 7.5 0.3 0.4 0.5 1
入力電源
(主回路) 三相 200~230V+10%,-15% 50/60Hz±5% 単相 100~115V+10%,-15%
50/60Hz ±5%
入力電源
(制御回路) 単相 200~230V+10%,-15% 50/60Hz±5% 単相 100~115V+10%,-15%
50/60Hz ±5%
定格回転
速度(min-1) 3000 3000
最高回転
速度(min-1) 5000 4500
最大トルク 300%
保護構造 開放型 IP00
制御方式 線間正弦波変調 PWM 方式
制御モード 位置制御/速度制御/トルク制御
位置・速度 帰還
17 ビット/回転 インクリメンタルエンコーダ(標準) 17 ビット/回転 アブソリュートエンコーダ(オプション) 速度制御
範囲 1:5000 1:4500
69 入
出 力 関 係 機 能
速度指令
/制限入 力
アナログ入力:0~±10V / 最高速度(ゲイン設定可)
トルク指令
/制限入 力
アナログ入力:0~±10V / 最大トルク(ゲイン設定可)
位置指令 入力
ラインドライバ信号(500k パルス/s 以下)/オープンコレクタ信号(200k パルス/s 以下)入力 (1)指令パルス+符号入力
(2)正転/逆転方向パルス入力 (3)位相差 2 相パルス入力 のいずれかより選択、電子ギヤ機能あり
接点入力 信号
接点信号/オープンコレクタ信号入力(内部 DC24V 電源供給あり)
サーボ ON、アラームリセット、制御モード切替、トルク制限、正転駆動禁止、逆転駆動禁止、多段速度 1、多段 速度 2、速度比例制御/ゲイン切替、速度ゼロクランプ、原点リミットスイッチ、原点復帰、パルス列入力許可/
正転信号、偏差カウンタクリア/逆転信号 接点出力
信号
オープンコレクタ信号出力 サーボ準備完了、アラーム、位置決め完了、速度到達、ゼロ速度検出、ブレーキ 解除(サーボ ON アンサ)、トルク制限中、過負荷予告、アラームコード 1~3(ADA2 専用)
エンコーダ モニタ信号
出力
A、B 相信号出力:ラインドライバ信号出力(出力分周比設定可) Z 相信号出力:ラインドライバ信号出力/オープンコレクタ信号出力
モニタ出力 2ch、0~±3V 電圧出力、速度検出値、トルク指令など、選択にて出力
内蔵オペレ
ータ 5 桁数字表示器、キー入力×5
外部オペレ
ータ パソコン接続可能(RS-232C ポート使用)
回生制動 回路
回路内蔵
(制動抵抗不付) 内蔵 回路内蔵
(制動抵抗不付) 内蔵 ダイナミッ
ク ブレーキ
サーボ OFF、トリップ、電源 OFF 時に動作(動作条件は設定可)