第 3 章 モジュール構造型神経ネットワークにおける時空間神経ダイナミクスの
3.4 シミュレーションプログラム
Iref(t) はニューロンが発火した後,一定期間発火が抑制される相対不応期に対応する電 流であり,ニューロンiの相対不応期電流Irefi (t)は以下の式で計算される.
Irefi (t) =−gref (
1 + t−tk τref
)−1
Pref(t−tk)[Vi(t)−Vreset], (3.7)
Pref(tk) =
{ 1 for tk < t < tk+1
0 otherwise (3.8)
gref は不応期電流のコンダクタンス,τref は不応期電流の時定数である.なお相対不応期 とは別に,ニューロンが発火した後にいかなる電位変化も生じない期間である絶対不応期 tabsを設けている.
ξ(t)は細胞の熱雑音などに起因するノイズ電流を表しており,電流の大きさは以下のα 関数で表される.
ξi(t) =ANα(t−tNk;rN;τN), (3.9) α(s;r;τ) = e−s/τ −e−s/r
e−¯s/τ −e−¯s/r,¯s= rτln(r/τ)
r−τ , (3.10)
ここで,ANはノイズ電流の最大値,tNk はk回目のノイズが発生した時刻,rNはα関数 の立ち上がり時間,τNはα関数の減衰の時定数に対応する.なお,ノイズの発生頻度は 平均をλ とする定常ポアソン分布に従うとした.これまでの式で定義した各パラメータ の代表的な値を表3.1に示した.
表3.1 ニューロンモデルにおける各パラメータの代表的な値 記号 値 単位
τE 20 mV
τI 10 mV
VLE −74 mV VLI −70 mV REin 40 MΩ RIin 50 MΩ VthE −54 mV VthI −50 mV Vreset −60 mV
ERE 0 mV
ERI −80 mV
gE 5 nS
gI 5 nS
τsrE 0.2 ms τsdE 5.3 ms τsI 6 ms
∆ij 2.8 ms
gK(Ca) 10 nS/µM
EK −75 mV cstep 0.1 µM τK(Ca) 2700 ms
gref 159 nS τref 12 ms
tabs 1 ms
AN 1000 pA
rN 30 ms
τN 50 ms
λ 0.5 Hz
パラメータファイルの読み込み
変更可能なパラメータはXMLファイルに格納し,実行時に読み出す方式を採用した.
XMLファイルにはニューロンモデルやネットワークモデルで用いられるパラメータに加 えて,解析の実行を制御するためのフラグや,他の解析プログラムが格納されているディ レクトリのパスなどが保存されている.ニューロンの数などを始めとする特に頻繁に変更 が行われるパラメータに関しては,バッチ実行における利便性を考慮して実行時のコマン ドライン引数からも変更できるようにした.
ネットワークの結合行列の作成
XMLファイルもしくは実行時の引数で指定したネットワークの構成方法に従ってネッ トワークを作成する.
ニューロンの活動の計算
指定した時間内におけるニューロンの活動を計算し,その活動を記録する.ニューロン の発火状態を示すラスタープロットや,細胞内Ca濃度のデータを出力する.
ダイナミクスの解析
得られたCa濃度やラスタープロットのデータから,細胞の相互相関係数や同期発火の 解析を行う.また相関係数行列やラスタープロットの画像の作成なども行う.
ネットワークの解析
MATLABのツールボックスを用いて.結合行列から各種のネットワーク評価指標を計
算する.また,結合行列の画像の作成も行う.
ファイルの出力
ダイナミクスの解析結果やネットワークの解析結果を一つのディレクトリに格納する.
同一のシミュレーション条件で構成したネットワークの解析結果は同一のディレクトリに 格納する.また,各種解析の結果をまとめたファイルの作成を行う.
図3.2,図3.3にシミュレーションのフローチャートを示した.フローチャートの括弧 内は関連するクラスや関数を示している.
図3.2 シミュレーション全体のフローチャート
図3.3 ネットワークダイナミクス計算のフローチャート