2.1 ザンビア国の概要
2.1.1 一般
「ザ」国は内陸に位置し、国土面積は752,610 km2 に達する。耕作可能な農地面積は16.35 百万 ha と推定されているが、この内32%にあたる5.3百万ha(国土面積の7%)が耕作面積となってい る。また約10万haはダンボと呼ばれる低湿地地域であり小規模農家により作物栽培が実施され ている。ザンベジ渓谷とルアングワ渓谷は急峻な山地地形を示すが、残りの国土は緩やかな丘陵 地形を呈する。これらの丘陵部地形について、その勾配は概ね3~5%程度で分布している。河間 地域においては、風化の進んだ土壌が広く分布する。主要河川はザンベジ川、ルアングワ川、ル アプラ川、カフエ川からなる。気候は熱帯地域に分類されるが、高標高部に位置する地域では亜 熱帯気候となる。5月から10月は乾期であり、降雨頻度、降雨量が希少となるため、低湿地等に おける水源の利用、灌漑水利が極めて重要となる。他方、11月から4月が雨期に分類され、取り 分け、12月、1月あるいは2月は年間を
通じて最も湿潤した期間となる。
「ザ」国の国土は南部、中部、北部を代 表する降雨パターンを基に3つの農業生 態区分に分類されている(右図)。特に 南部が属する農業生態区分Ⅰ(年降雨量 は<800 mm)では降雨量とその季節分布 の年変動が激しい。このため、天水農業 地帯は干ばつの影響を受けやすく、生産 が不安定となっている。一方、降雨のあ る農業生態区分Ⅲ(同>1,200 mm)では 塩基の洗脱によって土壌の酸性化が進
行、作物栽培における制約要因となっている。一般に、農業生態区分Ⅱ(同800 - 1,200 mm)に 属する地域は区分Ⅰ、Ⅲと比べて肥沃な土壌が分布する。
「ザ」国の人口は2004年では10.9百万人と推計されており、このうちの64%は農村部に居住して いる。上水供給は農村部において36%、都市部で90%となっている。人口の80%は貧困層からな り、失業率は9.5%(2004年)である。
利用水源量は2000年において1,737 km3 と推定されているが、このうちの1,320 km3 (77 %)が農 業に使用されている。今後の水源利用量は2012年までに1,922 km3/年に増加すると推定されてい る。また水力による発電量は1,670 MWであるが、発電可能量はカフエ発電所において900 MW、
カリバダムにおいて600 MW、ビクトリアフォールで108 MWである。
2.1.2 経済情勢
「ザ」国のGDPは2002年において43億ドル、経済成長率は年間約3%の伸びを示している。一方 でインフレ率は26.7%と非常に高く、貧困層に大きな影響を与えている。農業のGDPに占める割
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合は干ばつなどの影響受けるため大きく変動するが、2003年においては19.3%を占めている。農 産物輸出は1995年の46.5百万ドルから1999年には133.9 百万ドルに大きく増加している。これ らは輸出作物の契約栽培が様々な農産物の生産に大きく寄与した結果である。農村部の80%の住 民は農業に生計手段を委ねているほか、雇用の約70%は農業従事者である。
1980~1990年代の銅価格の低落から脱した現在、「ザ」国の経済状況は2005~2008年にはGDPで
年間6%の非常に高い経済成長率を保持している。(表2.1.1)銅生産も2004年以降安定しており、
価格の高騰、また外国からの投資も順調な伸びを示している。2007年には特に銅生産が急激な成 長を示し、同年には農業生産物の輸出を大きく伸ばしたが、反面インフレーションの影響も大き く、貧困層に大きな影響を与えた経緯もある。「ザ」国における貧困は現在においても大きな問題 となっており、2009年の世界同時不況により農産物の輸出価格も低下し、「ザ」国のGDP 成長も 大きく下方修正されることとなった。
各産業のGDP に占める割合は、2008 年において農業16.7%、鉱工業26%、サービス業57.3%、
また就労人口比では農業 85%、鉱工業 6%、サービス業9%(2004年)となっている。主要な農 業生産物はトウモロコシ、ソルガム、コメ、落花生、ヒマワリ、野菜、花卉、タバコ、綿花、サ トウキビであるが、畜産物、乳製品も多く生産されている。
全体輸出額は2008年において56.32億ドルに達し、このうち銅/コバルトは全体の64%を占める。
輸出先は2007年において、スイス41.8%、南アフリカ4.7%、タイ5.9%、コンゴ民主共和国5.3%、
エジプト5%、サウジアラビア4.7%、中国4.1%となっている。輸入は2008 年において44.23億
ドルに達し、品目は機械、輸送機械、石油製品、肥料となっている。主な輸入先は南アフリカ47.4%、
UAE6.3%、中国 6%、インド 4.1%、UK4%となっている。貿易収支は 2008 年において赤字額が
29.13億ドルとなっている。
表 2.1.1 近年のGDP 推移
2006年度 2007年度 2008年度 1. GDP 155.5 億米ドル 164.3億米ドル 17.39億米ドル
2. GDP 成長率 6.2 % 5.7 % 5.8%
3. GDP
(一人当たり) 1,400米ドル 1,400米ドル 1,500米ドル 出典: Zambia Economy 2009(CIA World act book)
2.1.3 社会状況
貧困率は2004年の68%から2006年には64%と僅かではあるが減少傾向にある。しかし全体の10%
の人口は生産手段を全く持たないため、慢性的な貧困状態が続いているほか、路上生活をしてい る若年層も75,000人に達する。初等教育は「ザ」国政府が取り組む国連ミレニアム開発目標(MDGs) の主要な目標となっており、ジェンダー問題も含め、約90%の就学率となっている。
鉱業、建設、サービス業、観光業は成長率の高い産業とはなっているが、全体人口の1~2%を占 めるにすぎない。就業者の55%は自営業から成り、賃金の払われない家庭内従業者の割合も26%
と非常に高い水準にある。民間企業の従業員は全体就労人口 4 百万人の 9%のみであり、政府職 員も全体の6%を占めるにすぎない。
HIVも依然として大きな社会問題となっており、全体人口の17%が感染しているが、特に若年の
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女性層に感染者が多いこと、また都市部での感染者増加が社会問題となっている。
2.1.4 農業と食料の安全保障
前述のとおり、「ザ」国の農業のGDPに占める割合は、2008年において16.7%であるが、80%の人 口が農業から収入を得ており、また、過去の銅生産を中心とした鉱業の低迷による国全体の経済 状況の落ち込みを考慮すれば、農業開発は「ザ」国の最優先事項であることは疑う余地はない。
農業生産者は耕作面積により、1) 0.5~5.0haの自家消費栽培を中心とした小規模農家、2) 10~20ha を有し、自家消費農産物の他、換金作物を栽培する新興農家、3) 20~60ha を有する中規模農家、
4) 60ha以上を有し、換金作物を中心に栽培する大規模農家に分類される。このうち小規模農家は
600,000 世帯あると見られ、このうちの 119,200 世帯は新興農家に分類される。中規模農家は
100,000世帯、また大規模農家は740世帯と見られ、商業化農業を営んでいる。
2004年において「ザ」国の食料輸入は51百万ドルに上っているが、食料輸入のピークは1992年、
1993年、また2002年の干ばつ年、また1997~1998年の洪水年に発生している。「ザ」国は食料輸 入国と位置付けられており、常に食料輸入量が輸出量を上回る状況にある。一方で食料輸出のポ テンシャルは高く、1995年の46.5百万ドルから1999年の133.9百万ドルまで推移しているほか、
2005年には300百万ドルを超える農産物を輸出している。(これら輸出農産物の70%は砂糖、綿、
タバコからなる)。現在の商業的灌漑農業の進展と契約栽培の拡大から多様な輸出作物の栽培の 増加と農業の商業化を促進していることは明かである。
一方で小規模農家は十分な灌漑手段を持たないことから、干ばつの発生に対しては非常に脆弱で あり、このような社会的弱者に対しては、最低限の自家消費作物の生産基盤である灌漑と、農民 組織化と、販路開拓による安定的な農家収入を維持するための政府施策が強く求められている状 況にある。
2.1.5 農業における小規模農家 (1) 農業における二重構造
本調査の対象地域と裨益者は、ザンビア鉄道沿線地帯の都市周辺における小規模農家である。こ こには2つの農業に関する格差構造が含まれている。すなわち、鉄道沿線地帯と遠隔地帯、少数 の大規模商業農家と大多数の伝統的小規模農家の構造である。本調査では、鉄道沿線地帯に混在 する農家のうち、小規模農家を対象に小規模な商業的灌漑農業の推進を図る。
(2) 農業政策における小規模農家
1992年の農業の自由化以降、ザンビア政府は、市場志向型農業の推進を積極的に打ち出してきて いる。国家農業政策(2004-2015)に述べられているように、農業の二重構造におかれている小規 模農家への支援に対しては、国民の主食であるトウモロコシ生産振興策(FAP、FRA)に限定されて いる。すなわち、トウモロコシ生産以外については、小規模農家も競争原理に基づく農業への貢 献が期待されており、大規模商業農業の振興による小規模農家へのシナジー効果の期待も大きい。
ただ、農業政策では、小規模農家が灌漑農業を促進し、通年栽培を通じた生産増と収入向上を目 指すために、組織化、マーケティング・加工等の振興を目指すと謳われており、政府による重点 分野支援の優先的受益者に位置づけられている。このことは、本調査の目指す方向と合致してい る。