• 検索結果がありません。

コンプトン散乱を利用した CdTe Pad 検出器のエネルギー較正

ドキュメント内 ] 博士論文、修士論文 master thesis aono (ページ 44-47)

第 5 章 コンプトンカメラのエネルギー較正

5.2 コンプトン散乱を利用した CdTe Pad 検出器のエネルギー較正

5.1 節に示したエネルギー較正法には、較正に用いることのできるエネルギーの間隔が離れて いる場合、その間のエネルギー較正がずれてしまうという問題点がある。特に高エネルギー側で は、エネルギーとPHAの間のnon-linearityが顕著となるので、その影響は大きくなる(3.2.3項 参照)。その例として、図5.2に5.1節で得られたエネルギー較正曲線を用いて解析を行った結果 を示す。線源は137Csを使用した。

コンプトンカメラの解析は、ヒット情報のリストの中からDSSDとCdTe Pad検出器で1回ず つ反応があった“2回ヒットイベント”を抜き出してくることから始まる。図5.2上図は、抜き出 した2回ヒットイベントに対し、E1とE2の値を2次元平面上にプロットしたものである。ここ で、光子の反応の順番については、以下のようにして決定した。

• E1+E2 < mec2/2 = 255.5 keVを満たす場合、エネルギーの低い方をE1、エネルギーの 高い方をE2とする。

• E1+E2 ≥ mec2/2 = 255.5 keV を満たす場合、DSSDでの反応エネルギーをE1、CdTe Pad検出器での反応エネルギーをE2とする。

図5.2下図は、2回ヒットイベントからE1+E2を計算してヒストグラムにしたものである。こ れを“2回ヒットスペクトル”と呼ぶ。ただし、E1がCdとTeの蛍光X線から±2 keVの範囲に あるイベントは蛍光X線イベント (図2.7参照) の可能性があるため、スペクトルからは除外し た。また、検出器の幾何学的配置から許可される散乱角が最大で79と計算されるので、この散

5.2. コンプトン散乱を利用した CdTe Pad検出器のエネルギー較正 37

5.2: 光電吸収ピークを利用したエネルギー較正曲線を用いて解析を行った結果。線源は

137Csを使用した。(上) エネルギー2次元プロット。全ての2回ヒットイベントについてプ ロットしてある。E1+E2= 662.7 keV を満たす直線を赤線で示した。(下) 2回ヒットスペ クトル。2回ヒットイベントに対しE1CdTeの蛍光X線から±2 keV の範囲にあるイ ベントを除き、幾何学的に許可される散乱角を満たすものを抽出してスペクトルにした。

38 第5章 コンプトンカメラのエネルギー較正 乱角の条件を満たすものを抽出してスペクトルにしている。これらの図から分かるように、正し いエネルギー較正が行われていないため、662.7 keVのピークの位置がずれたり、エネルギー分 解能が悪化してしまっている。CdTe Pad 検出器では511.0 keVと662.7 keVの間に較正エネル ギーが存在しないので、この間のエネルギー較正が不完全であることがその原因である。同様に して、356.0 keVと511.0 keVの間にも較正エネルギーが存在しないため、この2つの領域にお いて正しいエネルギー較正を行う必要がある。

この問題を解決するため、今回コンプトン散乱を利用した新しいエネルギー較正法を開発し、

CdTe Pad検出器に対して適用した。この方法ではまず、22Naと137Csのデータの取得データに 対し5.1節で作成した較正曲線を使ってエネルギー較正を行う。その後2回ヒットイベントを抜 き出し、表5.2に示した条件を満たすイベントのみを選択する。これによって、線源から放出さ れたガンマ線がDSSDでコンプトン散乱し、CdTe Pad検出器で光電吸収されたコンプトンイベ ントを抽出することができる。

5.2: コンプトン散乱を利用したCdTe Pad検出器のエネルギー較正で用いた条件。

線源 Epeak エネルギー較正範囲 E1+E2が満たす条件 ARMの条件

22Na 511.0 keV 356.0 keV< E2<511.0 keV 500 keV< E1+E2<514 keV |ARM|<

137Cs 662.7 keV 511.0 keV< E2<662.7 keV 652 keV< E1+E2<677 keV |ARM|<

抽出されたコンプトンイベントに対して、横軸にE2、縦軸にEpeak−E1をとったグラフをCdTe Pad 検出器の全てのチャンネルに対して作成する。図5.3にその一例を示した。Epeakは線源か ら放射されるガンマ線のエネルギーであり、NaでEpeak= 511.0 keV、CsでEpeak= 662.7 keV を用いた。ここで、DSSDのエネルギー較正が正確に行われていると仮定すると(表5.1に示すよ うにDSSDは14.4 keV∼136.5 keVまでの間に多くの点でエネルギー較正が行われているため、

この区間では仮定は成立する)、Epeak−E1はCdTe Pad検出器での“真の”検出エネルギーを表 していると考えられる。

5.3: コンプトンイベントに対して横軸にE2、縦軸にEpeakE1をとりプロットしたもの。

左は22Na、右は137Csのデータである。CdTe Bottomモジュール(検出器ID : 3、チャンネ: 40) のデータを元に作成した。黒い直線はEpeakE1=E2の関係を満たす直線であり、

赤い直線は3次関数でのフィッティングの結果である。

ドキュメント内 ] 博士論文、修士論文 master thesis aono (ページ 44-47)

関連したドキュメント