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クンマー理論の基本定理

ドキュメント内 代数学II(ガロア理論)2011 Akira Masuoka (ページ 48-53)

(1) L/K はガロア拡大であり, 制限写像が与える

ρ: Gal(L/K)→G1× · · · ×Gn, ρ(σ) = (σ|L1, . . . , σ|Ln) は群の単射である.

(2) L1, . . . , Ln K 上線形無関連 ⇔ ρ が全射(従って同型).

証明. (1) L/K がガロア: L K 上分離的元で生成されるから, L ⊂ Ksep (4.2節最 初の例). こうして L/K は分離的. σ ∈ AlgK(L, K) とすると, Li/K の正規性から σ(Li) = Li. 従って, σ(L) = σ(L1). . . σ(Ln) = L1. . . Ln = L. 定理 4.1 より L/K 正規.

 ρ が群の単射:群の射であるのは各制限写像 Gal(L/K) →Gi がそうだから. 単射性 は, σ|Li がすべて恒等射ならば, σ 自身恒等射であることから従う.

 (2) 前の例(の一般化)から, 線形無関連性は

[L:K] = [L1 :K]. . .[Ln :K]

に同値. 群の位数を比べて, この等式の成立と単射 ρ が同型であることが同値になる. 問 題 41. 定 理 (2) に お い て 互 い に 同 値 な 条 件 が 満 た さ れ る と き, ρ の 逆 写 像 ρ−1 : G1× · · · ×Gn →Gal(L/K)

1, . . . , σn)7→σ1⊗ · · · ⊗σn により与えられる.

例. 前の例で見たように,互いに素な整数 n, m >1 に対し, Q(ζn) Q(ζm)Q上線形 無関連である. 前定理(2) をこれらの Q 上ガロア拡大で確かめるため,制限写像が与える 群の射

ρ: Gal(Q(ζnm)/Q)→Gal(Q(ζn)/Q)×Gal(Q(ζm)/Q)

を 考 え る. 1 の 原 始 nm 乗 根 ζnm と し て ζnζm を と り, 定 理 4.3 の 群 同 型 を 用 い る と, 上の ρ は環同型 Z/(nm) −→ Z/(n)×Z/(m) (中国剰余定理) の引き起こす群同型 (Z/(nm))× −→ (Z/(n))××(Z/(m))× と同一視できるから, 確かに同型である.

 一般に, Γ において, gn = e をみたす元を n トーション元と呼ぶ. Γ がアーベルで あれば, nトーション元全体は部分群をなす. これを

nΓ ={g∈Γ|gn =e}

で表し, Γ n トーション部分と呼ぶ. nトーション元ばかりからなる(すなわち nΓ = Γ をみたす)アーベル群Γ n トーション群と呼ぶ.

定義. K n クンマー拡大とは, アーベル拡大 L/K でガロア群 Gal(L/K) n トー ションなるものをいう.

 巡回かつ nクンマー拡大が, 4.6節で定義した巡回 n クンマー拡大に一致する. 定理. 有限次体拡大 L/K について次は互いに同値になる.

(a) L/K n クンマー拡大である.

(b) L/K はいくつかの巡回 nクンマー拡大 Li/K, 1≤i≤r の合成体 L1. . . Lr に等 しい. すなわち, いくつかの元 a1, . . . , ar ∈K× に対しL =K(√na1, . . . , √nar).

(c) L/K は い く つ か の K 上 線 形 無 関 連 な 巡 回 n ク ン マ ー 拡 大 Li/K, 1 ≤ i ≤ r の 合 成 体 L1. . . Lr に 等 し い. す な わ ち, い く つ か の 元 a1, . . . , ar ∈ K× に 対 し L=K(√na1)⊗ · · · ⊗K(√nar).

証明. (c)⇒(b). 自明.

 (b)⇒(a). L/K (b) をみたせばこれはガロア拡大であり, 制限写像が与える群の射

Gal(L/K)→∏r

i=1 Gal(Li/K) は単射(定理5.2(1)の証明を見よ). Gal(Li/K) n トーションゆえ, Gal(L/K)もそう.

 (a)⇒(c). G= Gal(L/K) とおく. L/K (b) をみたせば, 有限生成アーベル群の基 本定理[1,定理2.38, p.116]により,Gの巡回(必然的にnトーション)部分群G1, . . . , Gr が存在してG=G1× · · · ×Gr となる. G の部分群 N1, . . . , Nr

N1 :=G2. . . Gr, N2 :=G1G3. . . Gr, . . . , Nr :=G1. . . Gr−1 により定めると, これらは皆 G の正規部分群で, 射影 gi 7→ giNi が同型Gi

−→ G/Ni

を 与 え る. ガ ロ ア 対 応 に よ り Ni ↔ Li と す る と, Li/K は ガ ロ ア で Gal(Li/K) = G/Ni ≃Gi. 従って, Li/K は巡回n クンマー. いま, 制限写像が与える群の射

ρ: Gal(L/K)→

r i=1

Gal(Li/K), ρ(σ) = (σ|L1, . . . , σ|Lr)

は, 射影 G → G/Ni が与えるG →∏r

i=1 G/Ni に一致. 最後の G1× · · · ×Gr = G→

r

i=1 G/Ni , 先の同型 Gi −→ G/Ni たちの直積に一致するから, 同型. 従って上の ρ は同型. 定理5.2(2) により, L =L1 ⊗ · · · ⊗Lr. [5.1–5.2 節をスキップした読者は, ρ 単射性から, L が合成体 L1. . . Lr = K(√na1, . . . , √nar) に一致することを見て, (a) ⇔ (b) を知ればよい.]

 L/K n クンマー拡大の場合に, ガロア群 Gal(L/K) と群 n(L×/K×) が密接な関 係(双対の関係)にあることを示したい. ここで, 一般の体拡大 L/K に対しn(L×/K×) は, 乗法群 L× の部分群 K× による剰余群 L×/K× n トーション部分を表す.

補題. L/K を体拡大とする.

(1) n乗射 L× →(L×)n, α7→αn が群同型

n(L×/K×)−→ (L×)n∩K×/(K×)n, αK× 7→αn(K×)n を引き起こす.

(2) n(L×/K×) ={√n

aK× |a∈(L×)n∩K×}.

証明. (1)全射性は見やすい. 単射性は,α ∈(K×)n とすると,仮定 ζn∈K よりα ∈K× となることから従う. (2) これは (1) から直ち.

 一般に,Γ からK× への群の射全体からなる集合を X(Γ)とかく. 2元χ, η ∈X(Γ) の積χ η を点ごとに

χ η(g) =χ(g)η(g), g ∈Γ

により定めると, X(Γ) はアーベル群になる. これを Γ の指標群と呼ぶ.

問題 42. 仮定 ζn∈ K のもと, n トーション有限アーベル群 Γ とその指標群X(Γ) は互 いに同型であり, とくに #Γ = #X(Γ).

  さ て, L/K n ク ン マ ー 拡 大 と し, G = Gal(L/K) と お く. 写 像 ⟨ , ⟩ : G×

n(L×/K×)→K×

⟨σ, αK×⟩= σ(α)

α , σ ∈G, α ∈L×, αn∈K×

により定義する. αK×K× とすると, ある c∈K× に対し α =cα. σ(c)/c= 1 り, σ(α)/α =σ(α)/α となるから, 上の定義は元 α の選び方によらず well-defined.

た, (σ(α)/α)n =σ(αn)/αn = 1より, ⟨, ⟩の像は1のn 乗根全体からなる群µn =⟨ζn⟩ に含まれる.

命題A. さらに⟨ , ⟩:G×n(L×/K×)→K× (1) 双乗法的, すなわち勝手な σ, αK× に対し

⟨σ,−⟩:n(L×/K×)→K×, ⟨−, αK×⟩:G→K× がともに群の射であり,

(2) 非退化. すなわち, 2つの群の射

G→X(n(L×/K×)), σ 7→ ⟨σ,−⟩,

n(L×/K×)→X(G), αK× 7→ ⟨−, αK×⟩ がともに単射(すると必然的に同型).

証明. (1) ⟨σ,(α1K×)(α2K×)⟩=⟨σ, α1K×⟩⟨σ, α2K×はみやすい.

⟨σ1σ2, αK×⟩=⟨σ1, αK×⟩⟨σ2, αK×

を示そう. i= 1,2 に対し, σi(α) =ζliα, li ∈Z/nZ とすると, σ1σ2(α) = ζnl1ζnl2α から, 示すべき等式の左辺 =ζnl1ζnl2 = 右辺.

 (2) 前定理からL K ,α = √n

a, a∈(L×)n∩K× 全体で生成される. これより 第1の群射の単射性が従う. σ(α)/α = 1,∀σ ∈G とすると, α ∈ K×. これより第2の群 射の単射性が従う. (2つの射の単射性と問題41 の結果から, #G≤#X(n(L×/K×)) =

#n(L×/K×), #n(L×/K×)≤#X(G) = #G. よって, ここに現れる群の位数はすべて 等しく, 従って2つ単射は同型になる.)

系. 巡回 nクンマー拡大 K(√na)/K に対し, K(√na)×/K× におけるnaK× の位数 をm とし b= (√n

a)m ∈K× とおくと, Xm−b n

a K 上最小多項式であり, 従っ て[K(√n

a) :K] =m である. 証明. L =K(√n

a) とおく. 明らかに ⟨√n

aK×⟩ ⊂ n(L×/K×). またn

a K 上最小多 項式は Xm−b を割る. これらと命題Aから

m≤#n(L×/K×) = [L:K]≤m.

これより, この系が従う.  同時に ⟨√n

aK×⟩=n(L×/K×) も示されたことを注意しておく.

命題B. L/K nクンマー拡大とする. 前定理の条件 (b) から L=K(√na1, . . . , √nar) の形であることがわかるが, この場合, n(L×/K×) na1K×, . . . , √narK× で生成さ れる, すなわちn(L×/K×) =⟨√na1K×, . . . , √narK×⟩. さらに次の2条件が同値になる.

(a) L=K(√na1)⊗ · · · ⊗K(√nar);

(b) n(L×/K×) =⟨√na1K×⟩ × · · · × ⟨√narK×⟩.

[5.1–5.2 節をスキップした読者は, 後半部を無視してよい.]

証明. r = 1の場合. 最後の証明の終わりに注意した事実に他ならない.

 一般の場合. 明らかに ⟨√na1K×, . . . , √na1K×⟩ ⊂n(L×/K×). 有限生成アーベル群の 基本定理[1, 定理 2.38, p.116] により, この左辺 = ⟨√n

b1K×⟩ × · · · × ⟨√n

bsK×の形を し て い る. 容 易 に L = K(√n

b1, . . . , √n

bs) が 見 て 取 れ る. r = 1 の 場 合 の 結 果 か ら, 1≤i≤s に対し

[K(√n

bi) :K] = #⟨√n

biK×⟩. L K(√n

bi) たちの合成体だから [L :K]≤[K(√n

b1) :K]. . .[K(√n

bs) :K].

最後の等式, 包含 ⟨√n

b1K×⟩ × · · · × ⟨√n

bsK×⟩ ⊂n(L×/K×), 命題Aから, 上の不等式右辺 = #⟨√n

biK×⟩. . .#⟨√n

bsK×⟩ ≤#n(L×/K×) = [L:K].

従 っ て 2 つ の 不 等 式 に 現 れ る 各 項 は す べ て 等 し く, と く に ⟨√na1K×, . . . , √narK×⟩ =

n(L×/K×) が従う.  同時に, K(√n

b1), . . . , K(√n

bs) K 上線形無関連であることが従い, (b) ⇒ (a) が示 せた.

 逆に (a)を仮定すると, [L:K] = [K(√n

a1) :K]. . .[K(√nar) :K]

= #⟨√n

a1K×⟩. . .#⟨√n

arK×⟩ ≥#n(L×/K×) = [L:K].

ここで不等号は最初に示した結果から従う. この不等号が等号に替わることが従うから (b) が成り立つ.

 K×/(K×)n の有限部分群は, (K×)n を有限指数の部分群として含む群 K× の部分群 A を以て A/(K×)n の形. しかもこの A は一意的に決まる. K×/(K×)n の有限部分群

ドキュメント内 代数学II(ガロア理論)2011 Akira Masuoka (ページ 48-53)

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