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インターネット・メディアの特性と研究課題

第 2 章 インターネット・メディアの特性と研究課題

本章は,インターネットの技術的な発展過程とそれによってもたらされる社会の特徴,

地域メディアとしてのインターネットの役割を概観した第 1章に続き,メディアの種類に 着目して,インターネット上で設計,提供される各メディアの特性を概観し,地理学的な 研究を行う際の課題を提示する。

I 技術的系譜と各メディアの位置づけ

インターネットは可塑的なコミュニケーション技術であり(池田, 2000),その利用方 法によって,コミュニケーションの方法を自由に調整できる。こうした特徴から,池田 (1997)はインターネットを「カスタマイズ・メディアJ,山下ほか (2005)は「メタ・メ ディアJと表現している。またマクルーハン・カーベンター (2003)は,メディアによっ てコミュニケーションの内容や形式とそれを使う人間の知覚習慣が変わるとして,メディ ア別のコミュニケーション分析の必要性を提起している。

インターネット・メディアは,さまざまな指標に基づいて,その分類や特性の検討が行 われてきた。それらは,技術的特徴に基づくものと利用方法に着目したものに大別できる。

このうち,技術的特徴に基づいたメディア分類として,オライリー (2005)のWeb2.0概 念による分類がまずあげられよう。彼は,概ね2000年以降に開発され,

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を基盤と する点,データベースの構築・管理が重視されている点,アプリケーションソフト 1)がモ

ノでなくサービスとして提供される点,軽量なプログラミングを採用している点,ソフ トウェアが単一のデ、パイス2)を超えたものである点などを技術的特徴とするインターネッ ト・メディアをWeb2.0と総称し,それ以前のWeb1.0メディアと区別した。また彼は,

Web1.0メディアが設計・販売者による管理・制御をベースとするのに対し, Web2.0メディ

盤整

翠 選 望

アは利用者の参加・協調によってプログラムが成長する点を強調している。 Web2.0メディ アにみられる利用者の参加・協調はソフトウェアの設計のみならず幅広い分野や活動に及 んでおり,利用者による主体的な情報の発信と交換が

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上に新たな集合的知性を生 み出すことも指摘されている。

また演野 (2008)は,生態系の概念を援用してインターネット・メディアの技術的系 譜を体系的に整理している(図

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1 )。彼は,先行的に開発され,さまざまなメディア の基盤あるいはプラットフォームとなる技術を「先行世代Jと位置づけ,そこに組み込 まれる形で発生する「島型」と,そこから枝分かれする形で発生する「バルーン型」の技 術あるいはサービスがあるとした。図

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1によれば,インターネットの基本技術であ るTCPIIPがすべての技術・サービスの基盤にあり,その上に HTTP技術をもとに開発さ れたW W W,さらにgoogle3)に代表される

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上の検索技術がそれぞれ第2,第3の基 盤となっている。第 1基盤からはファイル転送およびオンラインゲームが枝分かれする形 で発生し,オンラインゲームからはさらに仮想空間サービスが発生している。第2基盤 からはBBSがそこに組み込まれる形で発生し, BBS はさらに大規模BBS,動画共有サー ビスに発展している。また,第2基盤から枝分かれする形で,携帯インターネットのや,

mixi 5), Facebook6), MySpace7)などの SNSが発生している。第3基盤からはWKP,ブロ グ, YouTube9)などのソーシヤル・ブックマーク・サービス (SocialBookmark Service,以 下 旬BSJ という)聞がそれぞれの基盤に組み込まれる形で発生するとともに,ブログと YouTubeからはさらに新しいサービスが派生している。全体を傭敵すると,インターネッ ト・メディアには概ね6つの技術的系統があることがみてとれる。それらは,ファイル転 送,オンラインゲームおよび仮想空間, BBS, SBS, SNS,携帯インターネットである。

一方,利用方法に着目した分類として,遠藤 (2000)および山下ほか (2005)があげ られる。このうち遠藤 (2000)は,コミュニケーションの形態,同時性ー蓄積性,テー マ,管理形態,開放性ー閉鎖性を指標として,各メディアの特性を分析している。コミュ ニケーションの形態とは,コミュニケーションが 1対 1,1対多,多対多のいずれの形で

[島型] 先行世代に 組み込まれる 形で発生

[lン型] 先行世代から 枝分かれする 形で発生

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凡例後続世代 II‑1技術的系統からみた各メディアの発展過程 料:滋野(2008)一部改

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先行世代 (プラットフオームキ生環境)

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行われるかを示すものである。同時性ー蓄積性は,コミュニケーションが同期的に行わ れ,情報が蓄積されないメディアか,情報が蓄積され,非同期的なコミュニケーション が可能なメディアかを示す。またテーマはそれが特定のものか不特定のものか,管理形 態は管理者が存在するかそれとも各主体が管理するものか,開放性ー閉鎖性はコミュニ ケーションに不特定多数の者が参加できるか否かを示している。これに対して,山下ほ か (2005)は,情報の流通形態に着目し,インターネット・メディアを情報の呈示あるい は開示に基づく Web‑basedCommunicationと,情報交換を通じた相互作用に基づくArticle‑ based Communicationに分類している。

本研究では,以上の分類を参考に,技術的特徴および利用方法に両方に着目した,イン ターネット・メディアの分類方法を提示する(表II‑1 )。まず,技術的特徴については,

オライリー (2005)の概念提起を採用し,Web1.0メディアと Web2.0メディアに区分する。

この区分は第1章で概観したインターネットの開発・発展過程にも対応しており,前者は 1998年以前の第1期および第2期,後者は 1999年以降の第3期に概ね相当する。また演 野 (2008)の分類に照らせば,前者は第1基盤から一次的に派生した技術および第2基盤 に組み込まれる形で発生した技術,後者は第2基盤から枝分かれして発生したり,第3基 盤に組み込まれる形で発生したりした技術に相当する。

利用方法については,山下ほか (2005)の分類を参考に, 3パターンに分類した。第 1 は情報を開示したり,閲覧したりすることを主たる利用方法とするメディア(データベー

表E1 インターネット・メディアの区分

サイバースベ データベース コミュニケーション圏 仮想世界

ースの類型化 (Database)  (Communication Sphere)  (Vrrtual World) 

利用方法 開示/閲覧 参加/交流 没入/活動

Webl. 【類型 I】 【類型E 【類型E】

ワェブサイト 電子メール オンラインゲーム

メーリングリスト 電子掲示板 チャット

Web2.0  【類型W】 【類型V 【類型羽】

ウェプログ SNS  仮想空間

筆者作成

2章インターネット・メディアの持佐と研究課題

ス)で,山下ほか (2005)のしづ Web‑basedCommunicationに相当する。第2は利用者が 参加し,情報の交換および共有を通じて相互に交流することを主たる利用方法とするメ ディア(コミュニケーション圏)で, Artic1e‑based Communicationに相当する。第3は利 用者がそこに没入したり,仮想的に活動したりすることを主たる利用方法とするメディア (仮想世界)で, Web‑based CommunicationとArtic1e‑based~(ごommunication の両方の特徴が

みられる。

以上の結果,インターネット・メディアは6つの類型に分類される。類型Iは開示・閲 覧を主な利用方法とするWebl.Oメディアで,サイトがこれに位置づけられる。類型Eは 参加・交流を主な利用方法とする Webl.Oメディアで,電子メールやファイル転送, BBS  などがこれに含まれる。類型Eは没入・活動を主な利用方法とする Webl.Oメディアで,

オンラインゲームが位置づけられる。類型Nは開示・閲覧を主な利用方法とする Web2.0 メディアで,ブログなどが含まれる。類型Vは参加・交流を主な利用方法とする Web2.0 メディアで, SNSなどが位置づけられる。類型VIは没入・活動を主な利用方法とする Web2.0メディアで,仮想、空間が位置づけられる。なお,この分類は便宜的なものであり,

サービスの設計・運営方針によって利用方法が各分類に収まらないものや異なる場合も想 定される。

E  各メディアの特性と利用動向 1)各メディアの特性

表n ‑ 2は,遠藤 (2000)が提示した指標をもとに,インターネット上に設計され,運 営される主なコミュニケーション・メディアの特性を示している。以下,同表をもとに各 メディアの特性を概観する。

サイト(類型1) 1冊の本のように,ひとまとまりに公開されているウェブ、ページ(以 下「ページ」という)川群をいい,各ページはリンクで連結され,互いに行き来できるよ うになっている。各主体が特定のテーマに関する情報を発信でき,不特定多数の人がその

髄 襲 撃

盛璽

II‑2 インターネット上に設計される主なメディアの特性

利用 メディアの種類 コミュニケー 同時性/蓄積性 アーマ 管理形態 開放性/閉鎖性

方法 (類型) ションの形態

開示 ウェプサイト(類型I) 1対多 蓄積 特定 各主体 開放的

閲覧 ウェプログ(類型N) 1対多 蓄積 特定/不特定 各主体 閉鎖的

参加 電子メール(類型ll) 11 各主体が蓄積 不特定 各主体 開放的

交流 メーリングリスト(類型ll) 1対多 各主体が蓄積 特定 管理者 閉鎖的

電子掲示板(類型ll) 1対多 蓄積 特定/不特定 管理者 開放的

SNS(類 型V) 1対多 蓄積 特定/不特定 各主体 閉鎖的

没 入 オンフイングーム(類型ill) 11 同時/蓄積 特定の仮想世界 管理者 閉鎖的

活動 多対多

仮想空間(類型VI) 多対多 同時/蓄積 特定の仮想世界 各主体 閉鎖的

ー‑ーー」ーー

資料:遠藤 (2000)を一部改

情報を閲覧することができる。発信される情報はインターネット上に蓄積され,各主体が 随時編集することができる。

電子メール(類型II) インターネット上の信書システムで,基本的に1対 1のコミュ ニケーション手段として利用される。電子メールは発信者のメールサーバから受信者の メールサーバに転送される形で送信され,情報は各利用者のサーバに分散的に蓄積される。

メーリングリスト(類型II) 電子メールを使って,特定のテーマに関する情報を特定 の利用者間で交換するクローズドなシステムで,一人の利用者が電子メールを投稿すれ ば,他のすべての利用者はその情報を同時に受信することができる。多くの場合,管理者 が利用規約を設定するとともに,円滑なコミュニケーションに向けた管理および調整活動 を行・っている。

電子掲示板(類型II) 利用者が文章などを自由に投稿し,書き込みを連ねていくこと でコミュニケーションを展開できるページをいう。管理者がタイトルやテーマ,利用規則 などを決め,不特定多数の利用者がテーマに沿った書き込みをしていく。発信された情報 はページ上に蓄積され,不特定多数の人が閲覧することができる。

オンラインゲーム(類型ill) インターネットを介して複数の人が同時に参加して行わ れるコンビュータゲームで, 1対 1の対戦型ゲームと多対多のロールプレイングゲーム悶 などがある。特定の仮想世界を設計し,運営する管理者が存在し,その下で特定の利用者 がゲームそのものを楽しんだり,相互のコミュニケーションを展開したりしている。