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(3)武

家屋敷地区第

7地

点出土木簡の樹種

小川 とみ 。鈴木三男 (東北大学植物園)

仙台城二の丸地区か ら出土 した本簡の樹種 を調べた。 これ らは遺構 に大量 に廃棄 された もので、そのほ とん ど は伊達領内か らの物資に付 け られていた荷札 と思われる。出土資料か ら剃刀刃 を用いて木日、板 日、柾 目の薄切 片 を切 り取 り、 ガムクロラールで封入 してプ レパ ラー トとし、光学顕微鏡 で観察 同定 した。 プ レパ ラー トには

MYG‑4592〜

5000、 5644〜 5665の 番号が付 されているが、若千の重複サ ンプ リングを除 き、同定 された合計点 数は428点である。 この中か ら以下の樹種が同定 された。

1. 

カヤ Torreya nucifera(L。

)Sieb.et Zucc.イ

チイ科 写真 la̲c。

(MYG‑4862)

保存性が よい出土材で、晩材部はとて も幅狭 く、年輪 は 目立たない。樹脂細胞 はな く、仮道管 と放射組織 だけ か らなる。仮道管内壁 には顕著 ならせん肥厚があ り、

2〜 3本

づつ まとまって走 る。放射組織 は柔細胞か らな り、

細胞内容物 は黒褐色 にな らない。分野壁孔 は小 さい ヒノキ型〜スギ型で

1分

野あた り1、

 2個

ある。 これ らの形 質か らイチイ科のカヤの材 と同定 した。 イチイとは らせん肥厚が

2〜 3本

づつ まとまって走る事 によ り、イヌガ ヤ とは樹脂細胞 を欠 くことによ り区別 される。

カヤは東北地方南部 (岩手県一関市、宮城県気仙沼市

)以

南の暖温帯 に広 く生 える常緑針葉樹 で、幹径lm、

樹高

25mの

大高木 となる。木理通直で、堅 く緻密で弾性があ り、切削加工が容易、木肌美 しく、香 りがあって保 存性 も高 くて

t極

めて優秀 な針葉樹材である。建築材、各種器具材 など多様 な用途があるが、美術工芸品、 とく

に木彫像、碁盤、将棋盤 などの特用がある。

2.モ

ミ属

 Abies 

マ ツ科 写真 2a―

c.(MYG‑4630)

一見スギ材 に似 た年輪の明瞭 な針葉樹材で、早材、晩材 とも幅広 く、早材か ら晩材への移行 は緩やかである。

仮道管 にらせん肥厚 はな く、樹脂細胞 も無い。放射組織 は柔細胞のみか らな り、その垂直、水平壁 は厚 く、多数 の単壁孔があるモ ミ型壁孔 となる。特 に垂直壁 は串団子状 となる。分野壁孔 は小型のスギ型で

2‑4個

ある。 こ れ らの形質か らモ ミ属の材 と同定 した。

モ ミ属 には暖温帯 に広 く分布す るモ ミのほか、太平洋側地域では冷温帯 に多いウラジロモ ミ、亜高山帯 に多い シラベ等があ り、その材構造での区別は困難である。

モ ミは東北地方中部 (太平洋側では岩手県宮古市付近

)以

南の本州、四国、九州の暖温帯か ら冷温帯下部にか けて普通 に生 える針葉樹 で、幹径1.5m、 樹 高

30mに

なる。材 は木理通直で割裂性が よ く、加工 は容易だが、肌 目 が粗 く、軽軟で、狂 いやすい等の欠点がある。保存性 も低 い。各種建築材、箱 ものなどの器具材、小細工 もの、

棺桶、卒塔婆 などの用途がある。

3.ア

カマ ツPinus densi■ora Sieb.et Zucc.マ ツ科 写真 3a¨

c.(MYG‑4618)

年輪が幅広 く、幅広 い晩材部 を持 ち年輪界が明瞭な針葉樹材 で、水平 。垂直両樹脂道 をともに持つ。早材 か ら 晩材への移行 は緩やかで、樹脂道 は多 くは晩材部にある。放射組織 は単列 と中央 に放射樹脂道 を持つ紡錘形の2 種類があ り、その上下には

1〜

数細胞層の放射仮道管があ り、その内面は、細胞壁が断面で鋭角な鋸歯状 に不規 則 に肥厚 している。放射柔組織の水平壁 は平滑で薄 く、分野壁孔 は大型の窓状で普通一分野に一つある。以上の

形質 よ り、マツ科のアカマツの材 と同定 した。五葉松類 とは放射仮道管の内壁が厚 く肥厚す ることで、同 じ二葉 松類のクロマ ツとはその内壁の肥厚が鋭 く鋸歯状 になることで区別 される。

アカマ ツは下北、津軽両半島以南の本州、四国、九州の冷温帯か ら暖温帯 にかけて もっとも普通 に生 える針葉 樹 で、特 に痩せ地、岩盤の露出 した急傾斜地、二次林 に多い。幹径lm、 樹 高

30mに

な り、材 は木理通直で重硬、

樹脂分が多 く加工が難 しいが水湿 に良 く耐 え、保存性が よい。材 は建築材、各種器具材、土木用材、製鉄用の炭 材、薄 く剥いで経木や縄 にするなど、広い用途がある。

3'。 二葉松類 (マツ属複維管束亜属

) Pinus subgenus Diploxylon 

マ ツ科

マ ツ属 は葉の維管束が

1本

の もの (単位管束亜属

)と 2本

の もの (複維管束亜属

)の

二つ に分け られ、我が国 では前者 にはヒメコマ ツ、ハイマ ツなどの短枝 に

5本

の葉が付 く、いわゆる「五葉松類」が、後者 にはアカマ ツ、

クロマ ツな どの短枝 に2本の葉が付 く「二葉松類」がある。二葉松類の材 は幅広 い年輪 と幅広 い晩材部 を持 ち、

放射仮道管の内壁 は多かれ少 なかれ不規則に肥厚することか ら、次項 に記載 した五葉松類か ら区別 される。一方、

宮城県地方 には二葉松類 はアカマツとクロマツがあるが、前者 は放射仮道管の鋸歯状突起が激 しいことでそれほ どで もないクロマ ツか ら区別 されるが、 これは出土材の保存性が良 く、細部 まで観察で きる場合 に限 られる。 こ こで二葉松類 と同定 した ものはアカマ ツかクロマ ツかの区別が出来なかった ものである。ただ し、種 まで同定で きた ものがアカマツのみに限 られることか らこれ らのほとん どもアカマ ツであると考 えることが出来る。

4.五

葉松類 (マツ属単維管束亜属

)Pinus subgenus Hapluxylon 

マ ツ科 写真 4a―

c.(MYG‑4628)

年輪 は狭いかやや広 く、広 い早材部 と狭い晩材部 を持つ針葉樹材で、早材か ら晩材への移行 はゆるやかである。

垂直樹脂道が年輪のあちこちに散在す る。放射組織 は単列の もの と水平樹脂道 を持つ紡錘形の ものがあ り、背 は 低 く、柔細胞、放射仮道管、それに水平樹脂道 を取 り囲む分泌細胞か らなる。分野壁孔 は大 きな窓状で

1個

、放 射仮道管の内壁の肥厚 は緩やかに起伏する。以上の形質か らマ ツ属の うち、チ ョウセ ンゴヨウマ ツ、ヒメコマ ツ、

ハ イマツなどの五葉松類 (単維管束亜属

)の

材 と同定 した。

ヒメコマ ツは本州及び北海道の暖温帯上部か ら冷温帯 にかけて広 く分布 し、宮城県地方では山間部の急傾斜地 の尾根筋に分布する。幹径60cm、 樹高

20m以

上 にな り、本理通直で柔 らか く、肌 目はアカマツよ り精である。

5.ス

ギ Cryptomeria japonica(Linn。

1)D.Don 

スギ科 写真 5a―

c.(MYG‑4601)

年輪が明瞭 な針葉樹材で、年輪幅 は通常広 く、広い早材部 と比較的広 い晩材部か らな り、早材か ら晩材への移 行 は幅広い年輪ではゆるやかで、 日の詰んだ年輪ではかな り急である。樹脂細胞 は晩材部 に多 く、やや接線方向 にあつ まって散在する。樹脂細胞中には黒褐色の物質が充填 してお り、細胞の水平壁 は平滑で薄いか、やや厚 く、

多少数珠状 に肥厚す る。放射組織 は単列で柔細胞のみか らな り、背 はかな り高 くな り、垂直、水平壁 は平滑、分 野壁孔 は大型 の楕 円形で開孔部 は厚 い レンズ状 とな り長軸がほぼ水平方向で、スギ型、

 1分

野 に

1〜 2個

ある。

以上の形質か らスギの材 と同定 した。

スギは本州北部 (青森県津軽地方南部

)か

ら九州屋久島までの冷温帯か ら暖温帯 に広 く分布す る針葉樹 で、 日 本海側 と東海地方に特 に多い。宮城県地方では天然分布 は殆 どない。一般 に、幹径2m、 樹 高

35mを

超 える大高 木 とな り、材 は木理通直で割裂性が よく、軽軟で強靭、加工性が よく仕上げは中位であるが大材が多量 に得 られ るので、大型か ら個人住宅 まで建築物のあ りとあ らゆるところ、あ りとあ らゆる器具材、その他、国産材では も っとも広い用途がある。

ドキュメント内 東北大学埋蔵文化財調査年報19 第5分冊 (ページ 74-92)

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