第 5 章 イメージセンサの配線接続部における信頼性
5.5 Al ビアのエレクトロマイグレーション試験結果
エレクトロマイグレーション試験の結果を図5-5の対数正規グラフに示した。グラ フには3ロット(1st, 2nd, 3rd) のエレクトロマイグレーション試験の結果をプロッ トした。楕円内部のエリアで示した部分に、対数正規分布に乗らない早期故障が確 認された。
図5-5 エレクトロマイグレーション試験結果の対数正規プロット
故障過程を詳細に調べるため、エレクトロマイグレーション試験中の抵抗変動履歴に ついて調べた。結果を図5-6に示す。以下の3種類の抵抗上昇履歴が明らかになった。
それらは、(A)試験開始後、30分以内で故障する非常に短時間の故障、(B)試験開始後、
2~4時間耐久する比較的早期の故障、(C)数十時間後に故障する通常の故障の3種で 100
1 10 30 50 70 90 99
Cumulative Failure (%)
○
○
○ ○○○○○○○
○
○
▲
▲
▲▲▲▲▲▲▲▲
▲
▲
△
△
△△△△△△△△
△
△
0.01 0.1 1 10
Stress Time (h)
Normal failure
Early failure Quick failure
○: 1st lot
△: 2nd lot
▲: 3rd lot
100 1
10 30 50 70 90 99
Cumulative Failure (%)
○
○
○ ○○○○○○○
○
○
▲
▲
▲▲▲▲▲▲▲▲
▲
▲
△
△
△△△△△△△△
△
△
0.01 0.1 1 10
Stress Time (h)
Normal failure
Early failure Quick failure
○: 1st lot
△: 2nd lot
▲: 3rd lot
図5-6 エレクトロマイグレーション試験における3種の代表的な抵抗変動
故障時間と初期抵抗の関係を図5-7に示した。図より、(A)の非常に短時間で故障し た試料に関しては、初期抵抗R0が高かったことが分かる。これに対して、(B)の比較 的早期の故障サンプルでは初期抵抗は通常故障品と同等の値であった。また、(C)の 通常の故障品は初期抵抗も安定した値であった。5.6 において故障モードの詳細を述 べる。
図5-7 故障時間と初期抵抗の関係
140 150 160 180 200 210
J
0 5 10 15 20 25
170 190
R0 (Ω)
Failure Time (h)
2 1 4 3
5 (B) (A)
(C)
6 0
5 10 15 20 25 30
0 1 2 3 4 5 (A)
(B)
(C)
Stress Time (104sec.)
∆R/R0 (%)
5.6 3種の故障モード (1) Quick Failure Mode
第1の故障モードは、試験開始後30分以内で故障に至る非常に短寿命のモードで ある。このモードでは、図5-7に示したように、初期抵抗が高かった。ビアの埋め込 み方法が Al リフローであることから、埋め込み不良に起因した故障と考えられる。
しかしながら、OBIRCHでは故障を検出することはできなかった。この故障に関して は、Al埋め込みプロセスに起因する欠陥が短寿命を招いていると考えられる。
(2) Early Failure Mode
第2の故障モードは、図5-7に示したサンプル4,5のグループである。これらの 特徴は、初期抵抗は低いが、故障時間が短いことである。これらのサンプルの故障過 程を調べるために、抵抗が5%上昇した時点でエレクトロマイグレーション試験を中 断し、故障箇所を OBIRCH 法によって調べた。その結果、図 5-8 に示したような故 障箇所を検出した。図5-8の(a)は光学像、(b)はOBIRCH像である。(a)の光学像では 故障箇所を観察することはできないが、OBIRCH像では明るいコントラストとして故 障箇所を特定することができた。OBIRCHで特定された故障箇所をFIBで断面カット し、観察を行った。その結果、図5-9に示すようにビアにボイドを検出した。ボイド は接続孔の中程に存在しており、Wビアのエレクトロマイグレーションに見られるよ うなリザーバからの故障ではなかった。この結果、第2の故障モードは、Alビアに発 生するボイドが原因であることが明らかになった。
M2 M1
Failure site
(a) Optical Image (b) OBIRCH Image
図5-8 Early Failure Mode による故障箇所のOBIRCH像
10μm
図5‐9 故障箇所の断面像
(3) Normal Failure Mode
第3の故障モードは、最も頻繁に発生する通常の故障である。これらは図5-5の対 数正規グラフの直線に乗っているグループである。図5-6に示すように、通常故障に おいては、その抵抗上昇は3つのステージに分けられる。エレクトロマイグレーショ ン試験直後からのステージ1においては、抵抗は約5%までゆっくりと上昇する。そ の後ステージ2においては、抵抗上昇が止まり一定期間変動しない状態が続く。最後 に、急激に抵抗が上昇する。これがステージ3である。ステージ1の終了する時にエ レクトロマイグレーション試験による通電を中断し、OBIRCH法を用いて故障ビアの 解析を行った。図5-10にステージ1終了時の、OBIRCH法で特定した故障箇所の光 学顕微鏡像、及び、OBIRCH像を示した。OBIRCH像においては、故障箇所は図5-10(b) に示したように明るいスポットとして観測された。
図5-10 ステージ1終了時の故障箇所の光学像(a)、OBIRCH像(b) 500 nm
(a)
M1 M2
(b)
Failing site
10μm
OBIRCH法によって特定された故障箇所のTEM観察像を図5-11に示した。図にお いて、A、B、C の 3 つの粒子が観測されており、その内、平坦な配線部分に存在し ている結晶A及び結晶BはAl(111)の格子回折像を示していた。一方、接続孔内に存 在している結晶Cは Alの結晶構造とは異なった回折像を示した。この回折像に指数 付けをするために JCPDS カード(i)を用いて調査を行った。その結果、この回折像は
<1 –3 1>入射のCuAl2の回折像に一致していることが判明した。
この接続孔底部に形成されたCuAl2結晶は、CuやAlよりも抵抗値は大きく、これ までの報告によると約20~40μΩcmの値を持つとされている。接続孔底部の高抵抗 物質となるCuAl2結晶は導電性の劣化を招くことが考えられることから、エレクトロ マイグレーション試験の抵抗上昇履歴におけるステージ1の5%程度の抵抗上昇は、
この接続孔底部にエレクトロマイグレーションによって形成されるCuAl2が要因と考 えられる。
C B
A
200 nm 1
2
(a) (b)
(c) (d)
図5-11 故障箇所と制限視野回折像
さらに、オージェ電子分析により、接続孔内部のポイント 1(×1)と配線部分のポイ ント2(×2)の箇所、それぞれの組成分析を行った。結果を図5‐12に示した。ポイン ト1ではCuのピークが検出され、ポイント2ではCuのピークが検出されなかった。
従って、エレクトロマイグレーション試験により接続孔内部にCu原子がマイグレー ションし、CuAl2結晶を形成したものと考えられる。以上のことから、エレクトロマ イグレーション試験における初期の 5%抵抗上昇はアノード側の接続孔に形成された CuAl2結晶が原因と考えられる。
図5-12 故障箇所のオージェ電子分析結果