第 9 章 イメージセンサ信号の M 変換による光ショット雑音の低減
9.8 まとめ
光ショット雑音混入画像の復元において、M変換により雑音を小振幅の信号に変換 し、非線形フィルタであるεフィルタにより雑音を除去し、逆 M 変換により復元画 像を得る方法を提案し、自然画像に対してPSNRによる定量評価及び主観評価により 有効性を確認した。
最大入射光子数が32、64、128、256、512の光ショット雑音混入シミュレーショ ン画像を作成し、各種フィルタでの処理結果の比較を行った。また、エッジ部を保存 するためにSobel法を用いエッジ部を抽出し、その部分にはフィルタを適用しない事
でエッジ部の保存を行った。実験結果において、最大入射光子数が128以上の場合は、
提案手法はウィナーフィルタ同等以上に良い PSNR 値を示した。最大入射光子数が 32の場合は、提案手法よりも平滑化フィルタの PSNR値が良好であった。その理由 としては、提案手法では M 変換を行った後信号を縦と横にそれぞれ1次元信号を作 りフィルタを適用したため、雑音と原信号の判別をする事が2次元信号で処理をする その他のフィルタに比べ難しくなるためと考える。最大入射光子数が32、64の場合 は極めて低照度な撮影環境である。最大入射光子数が128の場合、約2Luxの環境と 見積もられ、十分に暗い撮影環境である。このような環境下で提案手法が他の手法に 比べてPSNR値で優れ、主観的評価においてもぼけの少ない良好な画を復元出来てい ることから、提案手法はウィナーフィルタ以上に有効な画像復元手法であると考えら れる。
結論として提案手法は光ショット雑音混入画像の画像先鋭化、雑音低減にとって有 効な手法であると考えられる。
参考文献
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第10章 結論
次世代CMOS イメージングシステムにおいては、CMOSセンサとCPU、メモリ、
インターフェース等のチップを薄く貼り合わせて、高密度で体積最小のシステムが理 想的である。例として図10-1にその構造を示した。
上記構造は、CMOSセンサで光電変換されたデータを画素並列で処理するのに最適 な構造といえる。本構造をゴールとして描き、上記構造実現のための課題を抽出し、
実験、シミュレーション、考察を行い、課題解決に取り組んだ結果を本論文はまとめ たものである。
第1章では、配線をAlからCuに変更することでフォトダイオードの開口率が増大 し、その結果、センサ特性として高感度化を実現できることを示した。さらに、信頼 性特性としてエレクトロマイグレーション耐性に優れたイメージセンサチップを実 現することの目的を示した。
第 2章では、Al 配線および Cu配線の場合に有機系の低誘電率膜(Low-k 膜)と組 み合わせた場合の配線遅延をシミュレーションにより論じた。Cu 配線と有機 Low-k 膜の両者の組み合わせによって、Al 配線に無機系の SiO2膜を用いた従来の構造より も、グローバル配線の微細配線において遅延時間に改善効果が高いことを示した。Cu 配線においては、Low-k膜との組み合わせが配線遅延の改善に有効であることを示し、
デバイスの高速化の観点からCu配線の導入効果を明確化した。図10-1に示す構造で 課題の一つは積層構造による発熱密度の問題とチップ積層化による機械的応力であ
CMOSセンサ
/ADコンバータ SRAM
DRAM DSP(CPU)
システムインパッケージ(SIP)
図10-1 積層型イメージングシステム
薄く研磨し、チップを貼り合わせる
ードルである。本論文では熱と応力によって配線を劣化させる信頼性上の課題につい て取り組んだ。
第3章では、エレクトロマイグレーションとストレスマイグレーションの複合故障 について論じた。イメージングシステムにおける実使用環境を想定して複合故障モー ドのメカニズムを考察した。積層構造配線において、従来エレクトロマイグレーショ ン耐性が最弱と考えられていた線幅である2μm~4μmよりも、0.3μm以下の配線 におけるエレクトロマイグレーション耐性が低下してしまうという事実が明らかに なった。複合故障のメカニズムを以下のように考察した。はじめに、ストレスマイグ レーションによってAlSiの粒界にスリット状ボイドが発生する。次いで、エレクトロ マイグレーション試験の際にバリアメタル部分の局所的な電流集中によりジュール 発熱を招き、エレクトロマイグレーションによる故障を加速させる。上記メカニズム によれば、スリットボイドが発生しやすい0.3μm以下の配線においてエレクトロマ イグレーションとストレスマイグレーションの複合故障が重要な問題になる。このこ とは今後の配線設計の上で十分な注意が必要になることを示している。
第 4章では、微細な接続孔の埋め込み性に優れる CVD-TiN 膜をバリアメタルとし たプロセスにおける高温スパッタ、及びリフロー法により形成した Al-Cu-(Si)積層配 線のエレクトロマイグレーション耐性を結晶配向性から論じた。リフローAlCu の配 向性は(111)配向を示すが、(111)配向は基板法線に対して傾斜して成長していると考 えられる。(111)配向の傾斜はリフロー前の低温で形成するAlCu膜の成長過程で生じ るものであり、リフロー後(111)が傾斜した配向性が引き継がれて成長していると考察
した。Al(111)配向軸の傾きはAlCu膜の堆積過程で発生したものと考察した。またAlCu
に 1%の Siを添加することによって、リフローAlCu 膜の結晶軸のランダム成長が阻 止され、基板法線方向に±5°以内に揃った(111)配向が得られることを見出した。Si 添加によりリフローAlCu 膜の(111)配向性が高まり、かつ平坦性に優れた配線が得ら れることが分かった。
第5章では、配線材料として現在広く使われている、AlCu配線を用いたAlビアの エレクトロマイグレーション故障メカニズムを論じた。CMOSイメージセンサではビ ア部におけるエレクトロマイグレーション故障が重要な課題である。AlCu ビアのエ レクトロマイグレーションについて、初期の抵抗上昇に注目し故障のメカニズムを論 じた。エレクトロマイグレーション試験において、CuAl2結晶粒の析出がAlビアの内
部に生じ、これが 5%程度の抵抗上昇をもたらしていることを見出した。ビアを塞ぐ ように成長するCuAl2結晶粒は、LSIの集積度が増すにつれて、ますます縮小するビア 径において、早期の抵抗上昇を引き起こし深刻な問題になることが予測される。Al プ ラグの故障モードを3タイプに分類した。一番目は埋めこみ不良に起因する試験開始 直後に生じる故障、二番目はビア内部に形成されるボイドによって比較的早期に生じ る故障である。これら2つの故障モードは対数正規分布にあてはまらないグループで ある。三番目は対数正規分布に従った通常故障モードである。通常故障モードにおい て抵抗変動履歴を3ステージに分離した。第1のステージでは、アノード側のビア内 部への Cu の拡散によりビア内部に ClAl2グレインが形成され、試験開始直後から次 第に抵抗が上昇し5%程度抵抗上昇が生じる。第2のステージでは、抵抗が一定値を 保っている。このステージでは Al がリザーバから消失していくが、リザーバ部分の Al は抵抗に寄与しないため抵抗は一定となる。第3のステージでは、リザーバ部の Alが消失し、ビアを横切るまでに成長することで急激に抵抗が上昇する。本メカニズ ムによれば、ビアのサイズが縮小するに従って早期にビアを塞ぐCuAl2の発生率が高 くなるので、AlCu を用いたビア埋めこみプロセスの大きな課題となる。このメカニ ズムから、上層Alと下層Al配線の間にバリアメタルを存在させないような工夫が必 要と考えられる。
第6章では次世代イメージセンサの配線材料であるCu配線について論じた。窒化 によりCu配線の表面に自己整合的にTiN を形成するプロセスで形成したCu配線の 膜特性、エレクトロマイグレーション特性を考察した。Cu に Ti の不純物を混入させ て窒素雰囲気で熱処理することによりCu配線の表面にTiNバリア層を形成するプロ セスを説明した。本技術はTiNのCu配線表面への自己整合形成というシンプルなプ ロセスで、Cu配線の酸化防止に十分な効果があることが分かった。更に、本プロセス で形成したTiN被覆の Cu配線は、通常のCu配線に比べて二桁高いエレクトロマイ グレーション耐性を示すことが分かった。これは窒化後にCu膜中に固溶限以下のTi が混入していることによるものと考察した。0.4%程度の Ti 混入は Cu 配線のエレク トロマイグレーション耐性を向上させることがわかり、上記の窒化させたTiN被覆Cu 配線のエレクトロマイグレーション耐性向上を裏付けるものである。TiN 被覆 Cu 配 線は従来問題であったCuの酸化を防ぐだけでなく、エレクトロマイグレーション耐