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時変切換面の設計

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第 5 章 指定された領域を動く時変切換面を用いた離散時間スライディングモード

5.3 時変切換面の設計

スライディングモード制御においてロバスト性が保証されるのは状態が切換面上に拘束さ れているときのみであり,切換面に到達するまでのロバスト性は一切保証されない。また,

制御対象に外乱が印加された場合,その情報を事前に知ることが出来れば的確な対処が可 能である。しかしながら,その情報を事前に知ることは難しく,外乱の影響は避けられず,

チャタリングが発生してしまう。

そこで,本章では外乱の影響を考慮し,チャタリングを低減する手法として,図 5.1のよ うな時変切換面を導入する[64, 65]。

5.1 時変切換面の設計

切換面のパラメータS(k) = [s(k) 1],状態x(k) = [x1(k) x2(k)]T とすると,

σ(k) =S(k)x(k) =s(k)x1(k) +x2(k) (5.1) となる。ここで,s(k) =−x2(k)/x1(k)とすれば切換面までの距離 σ(k)は0となり,状態 は常に切換面上に拘束されている状態となる。

しかしながら,現在の状態から切換面s(k)を設計すると,入力に1サンプリング先の状 態値x(k+ 1)が含まれてしまうため設計が非常に困難である。そこで,切換関数を(5.2) とする。

σ(k) =S(k−1)x(k) (5.2)

切換面のパラメータ S(k−1) = [s(k1) 1] とすると,切換関数σ(k)は(5.2)式より σ(k) =S(k−1)x(k)

=S(k−1)x1(k) +x2(k) (5.3)

S(k−1) =−x2(k1)/x1(k1)

となる。上式におけるσ(k)がほぼ0となるように設計を行うことで,(5.3)式を(5.1)式と 見なし扱うことができる。

したがって,時変切換面のパラメータは次式のように表現できる。

S(k−1) = [s(k1) 1], s(k−1)>0 (5.4)

ただし,s(k−1) 0 の場合,切換面上のシステムが不安定となり発散してしまうため,

s(k−1)0の場合では固定切換面を使用する必要がある。したがって,時変切換面のパラ メータは次式となる。

S(k−1) =

{[s(k1) 1] s(k−1)>0のとき

[s1 1] s(k−1)0のとき (5.5)

(5.5) 式を 図 5.1 において説明すると,s(k−1)> 0 のとき,すなわち状態が第 2, 4 象 限にある場合には時変切換面l1s(k−1)0 のとき,すなわち状態が第 1, 3 象限にある 場合には固定切換面r0 を使用する。式で表すと次のようになる。

l1 :S(k−1)x1(k) +x2(k) = 0 r0 :S1x1(k) +x2(k) = 0

時変切換面の特徴として,状態が常に切換面上にあり,非線形入力項を使わないため操作 量を低減できる,未知の外乱があった場合でも対応可能があげられる。

スライディングモード制御の入力は状態を切換面に拘束する等価制御入力項ueq(k) と状 態を切換面に到達させる非線形入力項unl(k)から構成される[26]。。

u(k) =ueq(k) +unl(k) (5.6)

等価制御入力項は切換面に拘束されていると仮定した場合に必要な入力である。(1.26)式に おける公称なシステム h(k) = 0に対して,σ(k) = σ(k + 1) =· を満たさなくてはならな い。したがって,等価制御入力項ueq(k)は(5.7)式となる。

ueq(k) =−{S(k)B}1{S(k)A−S(k−1)}x(k) (5.7) 制御器を求める際に,(5.2)式を用いることとした。また,非線形入力項unl(k)は現在の 状態から1サンプリング先の状態が切換面に近づくよう設計する[26]。

unl(k) =−{β(k) +γ(k)}sgn(σ(k))

= {

η |σ(k)|

|S(k)B| +β(k) }

sgn(σ(k)) (0< η <1) (5.8) ここで,β(k) は不確かさを打ち消す働きをし,不確かさの上界値より大きい値を選択す るものとする。

β(k)≥Hmax

(5.7), (5.8) 式を (5.6) 式に代入し,スライディングモード制御器を導出する。

u(k) =−{S(k)B}1{S(k)A−S(k−1)}x(k)− {

η |σ(k)|

|S(k)B| +β(k) }

sgn(σ(k)) (5.9) スライディングモード中は切換面までの距離σ(k) = 0である。(5.7)式を (1.26)式に代 入することで,スライディングモード中のシステムを得る。

x(k+ 1) =[

A−B{S(k)B}1{S(k)A−S(k−1)}]

x(k) (5.10)

上式より,A−B{S(k)B}1{S(k)A−S(k−1)}の極が単位円内に収まるように切換面の パラメータS(k−1)を設計すれば,外乱の影響を受けないシステムを実現できる。

状態を切換面上に到達かつ留めるための条件を保証する[26]。リアプノフ関数候補関数 V(k)を次のように定義する。

V(k) =σ(k)2 (5.11)

離散時間系において,リアプノフ関数の微分が負定となる条件は次式で表される。

V(k+ 1)< V(k) (5.12)

(5.12)式の負定条件を満たすために許容されるηの範囲はつぎのように求められる。

∆V(k+ 1) =V(k+ 1)−V(k)

= 2σ(k)∆σ(k+ 1) + ∆σ(k+ 1)2

= 2σ(k)S(k)B{unl(k) +h(k)}+{S(k)B}2{unl(k) +h(k)}2

2σ(k)S(k)B{unl(k) +β(k)}+{S(k)B}2{unl(k) +β(k)}2

≤ −2σ(k)S(k)Bσ(k) +{S(k)B}2σ(k)2

={−2η+η2}σ(k)2 <0 (5.13)

となり,0 < η < 2の領域で到達条件を満たす。(5.8)式を考慮すると,0< η < 1のとき チャタリングを抑制しながら状態は漸近安定となる。

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