第 6 章 離散時間スライディングモードオブザーバの新しい構成
6.5 おわりに
る。図 6.6から,変動する状態に対しても,提案したスライディングモード制御オブザーバ は正しい状態推定を導き出していることがわかる。
これより,従来のスライディングモードオブザーバに必要であった切換面と出力行列との 依存関係による出力制約や外乱の上界値が既知であるなどの条件を課すことなく構成可能と なった。また,正しい状態を推定できることが確認できた。
第 7 章
結論
第1章では,操縦性・安定性研究の歴史的な流れを述べ,そのうえで,本研究の目的と本 論文の構成を述べた。
第2章では,非線形ゲインの調整法を用いたスライディングモードを用いた四輪操舵制御 について詳述した。横加速度の操舵に対する位相遅れを考慮し,制御入力における非線形ゲ イン値を調整した。この調整により,前後輪のバランスを保ち,外乱抑制性を向上させ目標 車線への追従を実現した。前後輪のバランスを考慮せず前後輪独立制御を行うと,目標車線 に追従することは困難であったが,前後輪バランスを考慮した非線形ゲイン値を決めること で,横風外乱の影響を抑制し,目標車線に追従したことを述べた。横風外乱およびコーナリ ングパワーの不確かさについて考慮した設計を行ったが,実際には路面状況の変動が加わっ てくるため,それを考慮した設計およびシミュレーションを行う必要があると考え,今後の 課題とする
第3章では,速度追従スライディングモード制御とスリップ率追従スライディングモード 制御をスリップ率に値により切り換えるハイブリッドブレーキシステムを設計した。速度追 従スライディングモード制御とスリップ率追従スライディングモード制御をスリップ率に値 により切り換える制御系を用いたことにより,規範モデルが乾燥路面を走行するのに対し,
制御対象モデルは,乾燥路面,濡れた路面,乾燥路面を走行後,急に濡れた路面と路面状況 が変化しても,制御対象モデルの車輪速度を規範モデルの車輪速度に追従させることができ ることを述べた。
第4章では,横加速度制御とヨーレート制御を両立するアクティブ制御の一方式ついて述 べた。D∗制御に用いる重み係数d値を,状況に応じて切り換え,横風,路面状況の変化な ど,外乱に対応した新しいD∗ 制御則を構築した。状況に応じてd値を切り換えることに より,軌道追従することを検証するため,スプリット路面をはじめ様々な条件でシミュレー ションによる検討を行っている。その結果,重み係数d値が固定ならば目標軌道に追従しな い条件下でも,横滑り角の微分値に応じてd値を適切に切り換えることにより目標軌道に追
従できた。
第5章では,指定された領域を動く時変切換面を用いた離散時間スライディングモード制 御法を提案した。離散時間系では,サンプリング時間は有限であるため,チャタリングが発 生してしまう。実際のシステムへスライディングモード制御を適用しようとした場合,チャ タリングが生じるとシステムの状態は切換面付近で高周波振動やスピルオーバなどの発振の 原因となり,制御器の劣化に繋がりかねないという問題点が指摘されている
このチャタリングの低減を図るため,状態の変化にあわせ切換面を動かす設計法を考案し た。さらに切換面が動くことのできる範囲に限界を設けることで,チャタリングを防ぎつ つ,操作量を低減できることを述べた。この手法を垂直駆動アームに適用し,安定性および 有効性を確認した。その結果,状態が指定領域の中であれば非線形入力項を使用ないため操 作量が低減され,指定領域の外であれば限界線r1, r2に引き付けることでチャタリングが低 減されることを示した。
今回,状態値が1サンプリング間で大きく変化しないように設計を行った。しかしなが ら,時変切換面のパラメータによっては,切換関数σ(k)が0にならない場合が考えられる。
状態が切換面に載っていない場合,制御対象の特性や設計仕様にもよるがロバスト性が確保 されないため応答が不安定になってしまう可能性がある。今後,時刻k+ 1における状態推 定値x(k+ 1)を求め,状態は常に切換面上に留まりロバスト性も確保させたい。
第6章では,適用条件を緩和することが可能なオブザーバの構成を提案した。スライディ ングモードオブザーバでは,モデル化誤差,モデルのパラメータ変動,外乱など,不確かさ の上限値を用いて設計した非線形入力項を利用して状態誤差の抑制を行う。そのため,不確 かさの影響が少ない場合では過剰な入力が含まれ,チャタリングや状態の発散が生じる。も し,不確かさを推定できれば,非線形入力項による状態誤差の抑制を行わずにすむ。そこ で,未知入力オブザーバとスライディングモードオブザーバとを組み合わせた誤差推定スラ イディングモードオブザーバを構成した。この設計により,不確かさの上界値が得られない 場合でも,真値に近い状態推定とチャタリングの抑制できたことを述べる。
今後,D∗ 制御とスライディングモード制御を用いて,より急ブレーキ,急ハンドルが必 要な状況下でも有効なアクティブ後輪操舵制御則を導出する。D∗ 制御に用いる重み係数d 値を,スライディングモード制御における重み係数Sに置き換え,D∗ 制御とスライディン グモード制御の考えを融合した制御則を完成させ,横風,路面状況の変化など,外乱に対応 した新しいD∗ 制御則の構築していきたい。その際,時変切換面とその動く範囲を設定する ことにより,チャタリングの影響を低減したい。
さらに,スプリット路面に対し,車輪の操舵角やキャンバー角をスキーのボーゲンのよう に動かし,より効果的なブレーキシステムを開発したい。
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