第 8 章 積層配線 20x20 ピクセルアレイの完成と X 線性能評価 93
8.2 実験セットアップ
8.2.1 無冷媒希釈冷凍機
本実験で用いた無冷媒希釈冷凍機は太陽日産製 TS-3H100-GM型希釈冷凍機(図8.6)で、高さ 96.1 cm、直径
25.4 cmの円柱形をしている。通常の液体Heによる冷却はHeの沸点である4.2 Kまでしか冷却することができな
いが、希釈冷凍機の冷却は3Heと4Heとの混合希釈によってなされる。3He–4He混合液(mixture)は、0.87 K以 下で超流動性を示さない 3He含量の多い 3He–濃厚相 (concentrated phase) と超流動性を示す3He含量の少ない
3He–希薄相(dilution phase)とに分離する。冷却は、3He–濃厚相と3He–希薄相中の3–Heのエントロピーの違いを 利用するもので、3He–濃厚相から3He–希薄相中へ3Heが混入するときに吸熱反応が起こり、∼100 mKの極低温を 得ることができる。低温にシール部を持たずサンプル交換が容易であり、液体Heの代わりに4KGM冷凍機を同じ 真空断熱容器内に設置し4.2 Kの低温を作ることで、寒剤としての液体Heを必要としない。ガスハンドリングシス テムは自動制御でスイッチを押すだけで100 mK以下の極低温を得られる。表8.1に機器の仕様を示す。
図8.4 マイクロカロリメータの製作プロセス2。
表8.1 無冷媒希釈冷凍機の機器仕様。
無冷媒希釈冷凍機 形式 TS-3H100-GM
最低到達温度 ∼80 mK
冷却能力 ∼20µW@100 mK
試料スペース 内径80 mm×高さ120 mm
温度計 酸化ルテニウム(RnO2)抵抗4 個(混合器内・外、分留器、凝縮器)
計測用コネクタ SMAコネクタ2 個
同軸ケーブル 室温導入部のみ、配線は無し 配線48本(LOOMワイヤー 12ペア2 セット)
4KGM冷凍機 形式 SDRK408
最低到達温度 4.2 K以下
冷凍能力(1st) 30 W@40 K
冷凍能力(2nd) 1 [email protected] K
メンテナンスサイクル 30000 hr
圧縮機ユニット 形式 F-50L
冷却水量 7∼10 L/min
メンテナンスサイクル 30000 hr
8.2.2 断熱消磁冷凍機
金沢大では自作の断熱消磁冷凍機(ADR: Adiabatic Demagnetization Refrigeration)を用いている。自作冷凍機 の外観を図8.5に載せる。自作冷凍機はヘリウムクライオスタット、超伝導マグネット、磁性体カプセル(ソルトピ ル)、ヒートスイッチから構成されており、さらに磁性体カプセルの低温側に実験ステージが設置されている。
図8.5 金沢大の自作ADR。 図8.6 首都大の無冷媒希釈冷凍機。
8.2.3 検出器ステージ
図8.7 TESカロリメータ素子とコリメータ、55Fe線源、較正温度計を取り付けた検出器ステージの様子。
検出器ステージには銅板にTES、55Fe線源、較正温度計が取り付けられている(図8.7)。TES基板は厚さ1 mm の銅板にワニスで固定し、その銅板を検出器ステージにネジ止めしている。その真上に55Fe線源が取り付けられた 銅の治具をスペーサーを用いてTES 基板と線源が離れるようにして取り付けた。スペーサーはプラスチック製であ
るが、治具と検出器ステージを固定するネジが金属であるため、線源と治具は検出器ステージと同等な温度まで冷え ると考えられる。検出器ステージの温度は較正温度計を用いて測定している。
検出器ステージは上からさらに銅製のふたを被せて全周囲を同じ温度で覆い、さらにその上からTESを地磁気によ る磁場から保護するためにクライパーム磁気シールドで覆っている。これまで金沢大で測定を行ってきた TMU146 は大きさが2 cm角であったのに対し、今回測定した基板は大きさが3.5 cm角でありこれまで使用していた銅製の ふたに入らなかったため今回は銅製のふたは省略した*1。TESを設置した銅板は、銅製の熱リンクでソルトピルと 熱的に繋がっている。熱リンクは検出器ステージの機械的な支持も兼ねている。ADRクライオスタットに検出器ス テージを組み込んだ様子を図8.8に示す。
図8.8 磁気シールドを被せた超伝導マグネットとTESをHeステージに設置した様子。
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