第 1 章 、 第 2 章 で も 述 べ た 様 に 、2008 年 に 米 国 で 発 生 し た リ ー マ ン ショ ッ ク に よ る 世 界 金 融 危 機 は 、 グ ロ ー バ ル な 活 動 を し て い た 欧 米 金 融 機 関 の バ ラ ン ス シ ー ト 調 整 等 を 通 じ て 世 界 中 に 波 及 し 、 日 本 の 金 融 市 場 及 び 実 体 経 済 に も 大 き な 影 響 を 及 ぼ し た 。 特 に 、 実 体 経 済 へ の 影 響 を 増 幅 さ せ た の が 、 金 融 機 関 の 行 動 で あ っ た こと か ら 、 金 融 危 機 以 降 、 銀 行 監 督 規 制 の あ り 方 が 問 わ れ 、 バ ー ゼ ル 銀 行 監 督 委 員 会 を 中 心 に 国 際 的 な 規 制 強 化 が 進 ん で い る 。 中 で も 、2013 年 か ら 段 階 的 に 実 施 さ れ てい る バ ー ゼ ル Ⅲ は 、 金 融 機 関 の 自 己 資 本 比 率 規 制 を 強 化 し て 、 危 機 時 の 損 失 吸 収 力 を 高 め る こ と を 目 的 と し てい る 。 これ は 事 実 上 の 所 要 自 己 資 本 比 率 の 引 き 上 げ を 意 味 し て い る こと か ら 、 金 融 機 関 に 対 す る 行 動 規 制 が 実 体 経 済 に どの 様 な 影 響 を 及 ぼ す の か と い った 経 済 主 体 的 な 側 面 と 、リ ー マ ン ショ ッ ク の 様 に 外 国 で 発 生 し た 金 融 危 機 が 国 内 経 済 へ 及 ぼ す 影 響 を 抑 制 出 来 る の か と い った グ ロ ー バ ル な 側 面 の 両 方 か ら 、 定 量 的 に 分 析 す る 必 要 性 が 高 ま っ てい る 。
で は 、 こ う し た 分 析 を 可 能 と す る 経 済 モ デ ルで あ る 動 学 的 確 率 的 一 般 均 衡 (Dynamic Stochastic General Equilibrium; DSGE) モ デ ル に お い て は 、 ど の 様 な 研 究 が 行 わ れ て き た の だ ろ う か 。 金 融 危 機 以 前 の 先 駆 的 な 研 究 と し て は 、 Bernanke, Gertler, and Gilchrist (1999) が 、 資 金 の 借 手 と 貸 手 の 間 に 情 報 の 非 対 称 性 の 存 在 を 仮 定 し て モ デ ル 構 築 を 行 っ た 研 究 や 、Kiyotaki and Moore (1997) が 、 資 金 の 借 手 に 返 済 を 約 束 さ せ る こ と が 出 来 る 資 金 量 は 限 定 され る と い う 、 借 手 の コ ミ ッ ト メ ン ト の 不 完 全 性 を 仮 定 し て モ デ ル 構 築 を 行 っ た 研 究
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等 が 挙 げ られ る 。 し か し 、 ど ち らも 金 融 機 能 を 考 慮 し て い る も の の 、 金 融 機 関 自 身 の バ ラン ス シー ト の 状 態 を 分 析 す る こと は 出 来 な い と い う 問 題 が あ る6。
そ の た め 、 金 融 危 機 以 降 の 研 究 で は 、 金 融 シ ス テム の 役 割 が 重 視 さ れ る よ うに な り 、 金 融 機 関 を 組 み 込 んだ DSGE モ デ ルの 研 究 が 進 ん で い る 。 例 え ば 、 閉 鎖 経 済 モ デ ルに 関 し て 見 る と 、Gertler and Karadi (2011) は 、Bernanke, Gertler, and Gilchris t (1999) で 用 い られ てい る 情 報 の 非 対 称 性 に 伴 うエ ー ジェ ン シー 問 題 を 金 融 機 関 と 預 金 者 で あ る 家 計 と の 間 に 導 入 し 、 金 融 機 関 の 資 本 変 化 が 借 入 と 貸 出 に 影 響 す る こと を モ デ ル 化 し てい る 。 更 に 、Rannenberg (2013) 、Iiboshi, Matsumae, and Nishiyama (2014) 等 は 、 同 様 の エ ー ジ ェ ン シー 問 題 を 中 間 財 生 産 企 業 と 金 融 機 関 、 金 融 機 関 と 預 金 者 の 間 の 2 カ 所 で 導 入 す る こ と で 、Bernanke, Gertler, and Gilchrist (1999) モ デ ル と Gertler and Karadi (2011) モ デ ルを 統 合 し て 現 実 妥 当 性 を 高 め る モ デ ル を 構 築 し て い る 。ま た 、 榑 林 ・ 小 池 ・ 須 藤 ・ 大 東 ( 2012) は 、 マ ク ロ プル ー デ ン ス 政 策 を 分 析 す る た め 、Gertler and Karadi (2011) モ デ ルに お ける 金 融 機 関 の 自 己 資 本 リ スク ウ ェ イ ト に 、Angelini, Enria, Neri, Panetta, and
Quagliariello (2010) モ デ ル の 景 気 変 動 リ ス ク ウ ェ イト 遷 移 式 を 組 み 込 む こ と で 、 好 況 期 に は リ ス ク ウェ イ ト が 小 さ く 見 積 も られ 自 己 資 本 比 率 が 甘 く な る 一 方 、 不 況 期 に は リ ス ク ウェ イ ト が 大 き く な り 自 己 資 本 比 率 が 厳 しく なる と い う モ デ ル を 構 築 し てい る 。 更 に 、Gertler and Kiyotaki (2010) は 、 イ ン ター バ ン ク 市 場 に エ ー ジ ェ ン シー 問 題 を 導 入 す る こ と で 、 あ る 金 融 機 関 が 別 の 金 融 機 関 へ の 貸 出 を 拒 む 状 況 を モ デ ル 化 し てい る 。ま た 、Gerali, Neri, Sessa, and Signoretti (2010)、 福 田 (2014) 等 は 、G ertler and Kiyotaki (2010) と 同 様 に 、 イ ン ター バ ン ク 市 場 で 銀 行 に 貸 出 を 行 う 貯 蓄 銀 行 と 、 貯 蓄 銀 行 か らの 借 入 を 元 に 企 業 に 貸 出 を 行 う 貸 出 銀 行 と い う 、2 種 類 の 金 融 機 関 を 導 入 す る こ と で 、 政 策 金 利 か ら 預 金 金 利 、 貸 出 金 利 へ の パ ス スル ー を 表 現 し た DSGE モ デ ル を 構 築 し て い る 。
し か し 、 金 融 機 関 の 資 産 構 成 に 着 目 し て 見 て み る と 、 こ う し た 研 究 の 多 く が 貸 出 に つ い て は モ デ ル 化 し てい る も の の 、 それ 以 外 の 資 産 に つ い ては 考 慮 し て い な
6 例 え ば 、 福 田 ・ 溜 川 ( 2 0 1 3 ) も 指 摘 し て い る 。
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い 。 銀 行 の 最 も 基 本 的 な 役 割 が 、 個 人 か ら 預 金 を 集 め 企 業 に 貸 出 を 行 う と い う 、 資 金 の 余 剰 主 体 か ら 不 足 主 体 へ の 資 金 移 転 で あ る こ と を 踏 ま え る と 、 貸 出 の み に 焦 点 を 当 て て モ デ ル 構 築 を 行 う こ と は 一 定 の 妥 当 性 は あ る も の の 、 近 年 の 国 内 金 融 機 関 の 状 況 を 見 る と 必 ず しも 十 分 と は 言 え ない 。 実 際 、 日 本 銀 行 「 国 内 銀 行 の 資 産 ・ 負 債 等 ( 銀 行 勘 定 ) 」 に よ る と 、1994 年 か ら 2016 年 ま で の 国 内 金 融 機 関 の バ ラン ス シー ト 構 成 の 時 系 列 推 移 を 見 る と 、 当 初 は 貸 出 金 の 比 率 が 70%
弱 程 度 を 占 め る 一 方 で 、 有 価 証 券 の 比 率 は 1 5%程 度 に 過 ぎ な か った の に 対 し 、 年 々 貸 出 金 の 比 率 が 低 下 し 、 近 年 で は 、 貸 出 金 の 比 率 は 50%を 割 り 込 む 水 準 ま で 低 下 し て き て い る 。 一 方 、 有 価 証 券 の 比 率 は 30%程 度 ま で 上 昇 し てき て お り 、 この こ と か ら 、 金 融 機 関 の 行 動 を 分 析 す る 際 に は 、 貸 出 金 以 外 の 資 産 構 成 に つ い て 、 例 え ば 、 有 価 証 券 等 の 公 債 投 資 も 考 慮 す る 必 要 性 が 高 ま っ てき て い る 状 況 に あ る と 言 え る 。 こ う し た 複 数 の 資 産 を 有 す る 金 融 機 関 を 扱 っ た 研 究 と し て 挙 げ られ る の が 、 青 木 ・ 須 藤 (2012) で あ る 。 青 木 ・ 須 藤 (2012) は 、Adrian and Shin (2011) モ デ ル を 基 に 、VaR (Value at Risk) 制 約 下 で 貸 出 ( 資 本 ス ト ッ ク 投 資 ) と 公 債 投 資 を 行 う と い う 金 融 機 関 の 資 産 選 択 行 動 を 明 示 化 し た DSGE モ デ ル を 構 築 し て い る 。
次 に 、 金 融 機 関 を 組 み 込 んだ 開 放 経 済 モ デ ル に つ い てみ る と 、 例 え ば 、 Garcia -Cicco, Kirchner and Justel (2014) は 、Bernanke, Ge rtler and Gilchrist (1999) と Gertler and Karadi (2011) を 統 合 し た モ デ ルに 、 小 国 開 放 経 済 の 仮 定 を 設 け る こ と で 外 国 経 済 を 考 慮 し た モ デ ルに 拡 張 し てい る 。 更 に 、 Dedola, Karadi, and Lobardo (2013) 、K renz (2016) は Gertler and Karadi (2011) モ デ ル を 2 カ 国 モ デ ル へ 拡 張 し て い る 他 、Carniti (2012)、 Cuadra and Nuguer (2016) は 、Gertler and Kiyotaki (2010) モ デ ルを 2 カ 国 モ デ ル へ と 拡 張 し た モ デ ル を 構 築 し て い る 。
し か し 、 金 融 機 関 の 資 産 構 成 に 着 目 し て み る と 、 開 放 経 済 モ デ ル で は 、 金 融 機 関 の 資 産 選 択 行 動 を 明 示 化 し た DSGE モ デ ル は 筆 者 の 知 る 限 り 見 当 た ら な い 。 一 方 で 、 バ ー ゼ ル 規 制 等 の 金 融 機 関 の 自 己 資 本 比 率 規 制 の 強 化 に よ っ て 、 金 融 機 関 の 資 産 選 択 行 動 が 変 わ り バ ラン ス シ ー ト 構 成 も 変 化 す る こ と を 踏 ま え る
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と 、 金 融 規 制 に よ っ て 外 国 で の 経 済 シ ョ ッ ク が 自 国 経 済 に どの 様 な 影 響 を 及 ぼ す の か を 分 析 す る 際 に は 、 金 融 機 関 の 資 産 選 択 行 動 を 組 み 込 ん だ 開 放 経 済 DSGE モ デ ルの 構 築 が 求 め られ る と い え よ う 。
そ こで 、 本 章 で は 、 ま ず 金 融 機 関 に つ い て は 、 青 木 ・ 須 藤 (2012) の モ デ ル を 基 と し て 、 更 に 金 融 機 関 が 自 己 資 本 比 率 制 約 の 下 で 行 動 す る と い う 制 約 を 加 え て 定 式 化 し 、 そ の 他 の 経 済 主 体 に つ い て は 、Gertler and Karadi (2011) 等 の 先 行 研 究 を 参 考 に 定 式 化 し た 閉 鎖 経 済 DS GE モ デ ル を 構 築 す る 。 そ し て 、バ ー ゼ ルⅢ の 様 に 自 己 資 本 比 率 規 制 が 強 化 さ れ た 場 合 や 、 近 年 確 認 さ れ てい る 国 内 金 融 機 関 の 資 産 構 成 の 変 化 が 起 こ った 場 合 に 、 各 種 シ ョ ッ ク が 実 体 経 済 に ど の 様 な 影 響 を 及 ぼ す の か 、 そ の 波 及 効 果 に つ い て 政 策 分 析 を 行 う 。
次 に 、 青 木 ・ 須 藤 (2012) モ デ ル 及 び 、 それ に 金 融 機 関 が 自 己 資 本 比 率 制 約 の 下 で 行 動 す る と い う 制 約 を 加 え て 拡 張 し た 松 村 (201 8a) モ デ ル を 基 に 、 閉 鎖 経 済 の 仮 定 を2カ 国 ( 対 称 ) 開 放 経 済 モ デ ルへ と 拡 張 し た 開 放 経 済 DSGEモ デ ル を 構 築 す る 。 そ し て 、 構 築 し た モ デ ル を 用 い て 、 金 融 機 関 の 自 己 資 本 比 率 規 制 の 強 化 に よ っ て 、 外 国 で 発 生 し た 経 済 シ ョ ッ ク の 国 内 経 済 へ の 波 及 効 果 が どの よ うに 変 化 す る の か 、IRF 分 析 を 用 い て シ ミ ュ レー ショ ン 分 析 を 行 う 。
以 下 、 本 章 で の 構 成 に つ い てま と め る 。 次 の 2 節 で は 、 閉 鎖 経 済 DS GE モ デ ルの 定 式 化 を 行 う 。3 節 で は 、2 節 で 構 築 し た 閉 鎖 経 済 DSGE モ デ ル を 用 い た 分 析 と し て パ ラ メ ー タ 設 定 等 の カリ ブ レー シ ョ ン を 行 い 、 そ の モ デ ル を 用 い て シ ミ ュ レー シ ョ ン 分 析 を 行 う 。4 節 で は 、2 節 で 構 築 した 閉 鎖 経 済 DSGE モ デ ル を 拡 張 し た2 カ 国 開 放 経 済 D SGE モ デ ルの 定 式 化 を 行 う 。5節 で は 、4 節 で 構 築 し た 2 カ 国 開 放 経 済 D SGE モ デ ル を 用 い た 分 析 と し てパ ラ メ ー タ 設 定 等 の カリ ブ レー シ ョ ン を 行 い 、 そ の モ デ ル を 用 い た シミ ュ レー ショ ン 分 析 を 行 う 。 最 後 に6節 で 本 章 の ま と め に つ い て 記 述 す る 。
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