• 検索結果がありません。

発達障害が疑われる児童生徒に対する経験豊富なスクールソーシャル ワーカーの関わりについての調査ワーカーの関わりについての調査

第1節 インタビュー調査の方法

Ⅰ.研究の目的

発達障害が疑われ医療機関で診断を受けている事例では、主治医と連携を図りながら、

学校・家庭・地域など環境を調整する。一方、診断がされていない場合、日頃の横暴な態 度やこだわり、異常なまでの執着、暴言・暴力などがある児童生徒については、教師側が

「発達障害の疑いあり」とラベリングをするものの、その後適切な対応が行われていない 事例があることから、実態とあるべき対応を明らかにする必要があると考える。

本章では、経験豊富なスクールソーシャルワーカーへのインタビューから、発達障害が 疑われる事例に対して、どのように関わりを持つことが有効であるのかを検証する。

第 6 章第 5 節の Y の事例では、支援経過に沿って、

①学校への働きかけ

②医療機関等との連携

③診断を必要とするタイミング

④家庭との連携

という 4 つの着眼点を意識し支援を実施したことが、学校と保護者の関係を悪化させるこ となく、症状を安定させ、落ち着いた学校生活を送る手助けとなった。特に①受診のタイ ミングに関しては、他の事例も含めて、学校側との関係が悪化していると単に医療を勧め るための役割だと誤解をされてしまう。横のつながりとして、医療機関とも連携をするこ とは心強いことではあるが、そのタイミングを決めることは非常に難しいことがこれまで の事例からも明らかとなった。また、発達障害が疑われる事例に対して、診断がついた後、

学校側が学校でできる支援を基本として、子どもや保護者に関わっていくことに課題があ ることが明らかになった。

こうしたことから、著者の実践で得られた 4 つの着眼点が、9 人のスクールソーシャルワ ーカーにも当てはまるかに焦点を絞って、学校と保護者に関する語りの部分を抽出し、検 証を行った。

Ⅱ 研究方法 1.方法

2013年7月13日~11月5日に、研究への参加に同意が得られた対象者のもとを訪問し、

インタビューガイドに沿って 4 つの質問を半構造化面接として実施した。インタビュー調 査による抽出されたコードを質的データ分析法でカテゴリー化した。医療機関を受診する 一歩手前でできる支援について、コードを軸にして検討する方法と事例を軸にして検討す

110

る方法の比較分析を行い、共通する概念カテゴリー(コード)から概念モデルを作成した。

分析は質的分析ソフトMAXQDA(Qualitative Data Analysis)11を援用して行った。定性デ ータ分析用のソフトウェアは、従来は紙のノートやカードで行ってきた作業をコンピュー タに移し替えたもので、その代表的なものとして、MAXQDAは欧米ではすでに20年以上 前から使用されている。近年、日本語対応のソフトが開発され、日本においても質的研究 に取り入れられるようになってきている(佐藤、2008)。このソフトを活用することによっ て、紙媒体では整理困難であったテキストデータを効率的に分類・整理したりテキストデ ータを見ながらコーディング作業を行うことができるようになる。また、図解機能もある ことから、コーディングしたものを体系的に整理し、図式化することも可能である。また、

手順として、事例を横軸、コードを縦軸にして文書セグメントを位置づける方法であるこ とから、認識文脈について概念化する以前の段階である事例コードマトリックスを作成す ることができる。次に、全体を通して見渡せるような「見取り図」を作成していく作業と なるコーディングを行う。定性的コーディングは、同じコードが幾度となく振り付けられ、

何度となく登場してくる小見出しとしての性格を持っている。一つのデータの断面にラベ ルを割り振っていく作業それ自体を通して、最終的にできあがるストーリーラインを徐々 に作りあげていくプロセスをたどる。また、コーディングの作業を進めながら文字テキス トを読み上げていくなかで、当初予想していなかった概念的カテゴリーを思いついた場合 には、それに対応する新しいコードを分析図式の中に追加していく。

インタビューガイドは、かつてクライエントが在籍していた学校や保育園などの社会資 源を活用した〈縦のつながりを活用した支援〉と、医療機関などとの連携を活用した〈横 のつながりを活用した支援〉とに大別し、以下のように小項目を設定した。

〈縦のつながりを活用した支援〉

(1)過去に遡って子どもや家庭の状況などの情報収集のために、積極的に卒業した学校や 卒園した保育園・幼稚園を訪問したことがありますか。それによって、保護者との関係に どのような変化が見られましたか。また、訪問先で得た情報を担任教師などに伝えること によっての効果はありましたか。

(2)これから中学校や高校に入学する前に、入学する学校の教員やスクールカウンセラー と支援に関わる情報を交換したことがありますか。その際に、本人の持つ発達障害の特性 についてどのように伝えましたか。また、入学前の事前訪問は入学してからの学校生活に どのような効果がありましたか。

〈横のつながりを活用した支援〉

(1)発達障害が疑われる症例に関して、保護者に児童相談所などの相談機関、児童精神科 や心療内科などの医療機関の受診を勧め同席したことがありますか。また、面接や受診に 同席するなどの積極的訪問活動の効果として①保護者との関係、②担任教師の子どもへ理

111

解の二つの観点で見た場合どのようなことが挙げられますか。

(2)特別支援学級通級指導などの活用について保護者に説明し、利用を勧めたことがあり ますか。また、通常学級から特別支援学級への転籍に関わったことがありますか。その結 果、特別支援学級に移行し、それまでの問題行動や対人トラブルなどに変化は見られまし たか。

以上、合計 4 点について主に尋ねるが、一問一答にならないように注意し、できるだけ 対象者に自由に語ってもらうことを心がけた。このうち、本項では、横のつながりを活用 した支援(1)についての結果を分析した。

2.対象

東北、関東、関西地区のスクールソーシャルワーカー、チーフスクールソーシャルワー カー、スーパーバイザーを対象とした。対象者は9人、男女比は2:7で、年齢は30代3 名、40代4名、50代2名であった。勤務形態は常勤2名、非常勤7名であった。専門分野 は社会福祉士6名、臨床心理士3名、スーパーバイザーを兼任2名、チーフスクールソー シャルワーカー兼任2名であった(表7-1)。インタビュー調査で得られた発話の音声デー タを書き起こして事例コードマトリックス作成し、そのテキストデータを分析に用いた。

分析にあたっては、社会福祉、精神医学、特別支援教育を専門とする複数の者からスー パーバイズを受け、分析の信頼性・妥当性の確保に努めた。

表7-1 スクールソーシャルワーカー 性別、年代、職種、専門分野一覧

性別 年代 職種 専門分野

A 女性 30代 スクールソーシャルワーカー スーパーバイザー兼任

社会福祉士

B 男性 40代 スクールソーシャルワーカー 社会福祉士 C 女性 40代 スクールソーシャルワーカー 社会福祉士 D 女性 40代 スクールソーシャルワーカー

チーフスクールソーシャルワーカー兼任

社会福祉士

E 男性 50代 スクールソーシャルワーカー 臨床心理士 F 女性 30代 スクールソーシャルワーカー 臨床心理士 G 女性 40代 スクールソーシャルワーカー 社会福祉士 H 女性 50代 スクールソーシャルワーカー

チーフスクールソーシャルワーカー スーパーバイザー兼任

臨床心理士

J 女性 30代 スクールソーシャルワーカー 社会福祉士

112 3.倫理的配慮

本研究をまとめるにあたり、東洋大学大学院倫理委員会からの審査を受け、対象者から も、以下の2点について、プライバシーに配慮して公表することについて文書による同意 を得た。

①情報の保護については、取得情報の目的外使用をしない。論文・学会等における結果 の発表は個人・学校が特定されないような公表方法をとる。許可を得て録音した取得デー タは書き起こし後その日のうちに消去する。②調査協力は任意であり、協力に同意した同 意した場合でも本人の意思によりいつでも撤回できることを保証する。

第2節 調査の結果

Ⅰ.学校と保護者に関する概念カテゴリー

学校と保護者に関することに着目し、そこで語られたコード、カテゴリー、セグメント の一覧について表7-2に示した。

なお、文中ではカテゴリーを< >、サブカテゴリーを≪ ≫で示した。

113

表7-2 学校と保護者に関するカテゴリー、サブカテゴリー、セグメント一覧

カ テ ゴ リ ー セグメント

A-1 保護者と一緒に 一緒に保護者とプランを考える。家でのハードルを下げて、学校でできることを増やしていく。

A-2 家庭環境が発達に影響 医療につなぐだけでなく、家庭環境が本人への発達に影響している場合がある。医療に通院す るのもお金がたくさんかかることが気になる。

A-3 保護者が変われば変わる

保護者が対応を変えれば、発達障害の診断を受けていても、関わる 親( 環境)によっ て症状は 回復していく。行動療法として、できることを一緒にしていこうと提案。スモールステ ップ でレベル を下げて「一つやろうよ」と伝える。叩くのを止めるなどできることから。宿題を見てくださいなど。

B-1 行動療法 機関につなぐより、学校で行動療法的にできることを担任にヒントを与えて して もら う。それでも 尚課題が残る場合は発達検査などを勧める。

B-2 発達障害と決めつけ

抽象的な言葉を具体的な単語に変えていく。具体的にどんな時にどんな切れ方をする のか、そ のエピソードを拾っていく。先生によっての切れ方の違いを知り、関わりを自分で気付いてもら う。発達障害だと思って関わることによってのメリットはあまりなく、症状が悪化して いくことに繋 がってしまう。決めつけてしまうことで。良い関わりかを伝えていく。

C-1 特別支援学級レベルだから 両親の育てにくさによって困っているかもしれないと転換していった。発達障害だから 特別支援 学級レベルだから関わらなくていい。入れる方向で。じゃまだから、大変だから。

C-2 学校をベース

学校をベースに支援を行う。ステップを踏んで支援す れば確実に子ども は変わる ことを理解し てもらう。小3ケース、入学時から問題があった。学校と家庭との接点の部分をSSWが見極めで 支援する。学校が変わってきている。

C-3 学校との関係修復 学校はクレーマーとして捉え、母親は孤立してしまった。「しんどさは伝えないと伝わらな い」 「伝 えていこう」と伝え、学校との関係を修復していく。一緒に話をしていく。

C-4 最後はSSW 保護者が孤立しているケースはいろんな場へ相談はす るが、最後はSSWにすがって くる こと がある。

C-5 発達の見立て

発達の見立てをもう1度しようと助言。子ども、母親がここにしんどさを抱えていたことを理解して もらった。学校に困っていたことをフィードバックしてもらっ た。苦情を言って来る 保護者は発達 に偏りがある場合が多い。

C-6 児童理解 同席した後に担任へ、医師からの助言を伝えることに児童理解が進む。担任への「 こう してくだ さい」とは言わず、先生ができる支援を自分で選択してもらう。

C-7 医療からの言葉を通訳

困っている担任はどこにつないでも満足しないので、医療からの言葉を通訳、代弁する。子ども を理解したい気持ちは変わらない。行動の要因を各専門家からの言葉を通訳。

C-8 担任が困っている 担任が困っているということが特別支援へ移行することの理由にはならない。

D-1 服薬を開始 ADHDと診断され、服薬開始。薬は効果があるが、本当に良かったのか。診断を学校には伝え ずに、SSWには告知。障害と思われたくない。

D-2 医療に行かされた 医療に行かされた感がある。薬も飲んでいない。薬を飲まなくていいように、医師にも伝えるよう になっていた。

D-3 学校の対応に不満

診断はでるが、その後の手立ては教えてくれない。所見だけ見ても、何をしたらいいかわからな い。保護者も発達障害の対応については一つのきっかけであって、不満もっ ているのは学校の 対応や言動の方が多い。

D-4 指導的に受診させている

精神科に行けと言われて受診し、傷ついて帰ってきた親御さんの話を聞くことはある。教師が指 導的に受診させていることが関係悪化の原因となる。

学校に言われたから来ました、家では問題ありませんでは診断もつかない。子どもにストレスが かかっただけで、状況は悪化。保護者も本人も納得した形でないと医療機関に行っても意味が ない。

診断がでていない子どもを担当することが多い。グレー ゾー ンや小学校や幼稚園の時から大 変だったと聞くことはある。心理検査を受けて、障害だと言われることが嫌で受けない場合も。医 療機関のつなぎをした方がいいケースは、落ち着きがなく怒られることが多い現状が、怒ら れる 回数が10から9に減り、褒められる経験を積み重ねることができる、ちょっとずつ褒め るら れる 回数を増やすために勧める。

サブ カテ ゴ リー

D-5 診断がつかない A

姿

B

C

D