第 5 章 ポリスチレンマトリックス界面に存在するポリスチレンブラシ鎖の分子鎖熱
5.3. 結果および考察
5.3.3. ポリスチレンマトリックス界面に存在するポリスチレンブラシ鎖の界面分子鎖
混合挙動とminor chainの影響
KimとWoolは、ポリマー同士の界面における分子鎖拡散について、“minor chain”を 用いて理論的に議論している1。管の中に入っている高分子鎖が抜け出すとき、まず末 端付近が動きだし、分運動鎖熱運動はレプテーション模型の管の直径よりも大きくなっ ている。この動き出した末端付近の分子鎖のことをminor chainと呼ぶ(Figure 5-13)2,
3。
Figure 5-13. Disengagement of chain from its initial tube. The emergence and growth of minor chains are also shown. Tr is the tube renewal time. reported by Kim and Wool.
また、緩和時間について、τeとτrを用いて議論している。τeは、minor chain形成のため に必要な時間であり、τrはレプテーション時間と考えればよい。このminor chainの理論 は、ラウス模型、レプテーション模型と並び、高分子の分子鎖熱運動性の理解に役立つ。
界面での分子鎖拡散・混合においてminor chain の理論は、非常に有効である。フリ ーポリマー同士の界面拡散において、τr以上の時間域では、Figure 5-14に示すように分 子鎖が混合する。緩和時間がτrよりも短い時間域にて、ポリマー界面に存在するフリー ポリマーの分子鎖熱運動をminor chainを用いて説明すると、Figure 5-15のようにminor
chain が形成されることによって高分子鎖末端から拡散が進行すると説明することがで
きる。
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Figure 5-14. Conformations of two chains at the interface before and after the stages of diffusion and randomization. reported by Kim and Wool.
Figure 5-15. Disengagement of a chain from its initial tube near the interface. Only portions of the initial tube that still confines part of the chain are shown. reported by Kim and Wool.
Gennesらは、このτeおよびτrと分子量の関係について、式(5-1)、(5-2)を用いて説 明している4。
2
e M
(5-1)
3
r M
(5-2)
本章で用いたdPS/hPSブラシ二層膜のそれぞれのポリマーの分子量は、大きく異なり、
hPSブラシ鎖だけのτeおよびτrを十分に評価できると思われる。
Figure 5-11に示したように、333 Kおよび343 Kで60 min熱処理しても、界面厚の増 大は観測されなかった。Figure 5-11 から見積もった hPSブラシ鎖の Tgiである 349.7 K よりも、低温で熱処理した場合、τeが熱処理時間t = 60 minよりも短いために、界面混
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合が生じなかったと考えられる。また、353 Kで熱処理した場合、界面混合がフィック の第二法則に従ったことから、分子鎖熱運動がラウス模型で説明できると思われ、ブラ シ鎖末端にminor chainが形成され、界面混合が生じたと考えられる。つまり、353 K に おいてt(5~60 min)は、τe < t < τrであると思われる。更に高温の363 Kで熱処理した場 合、界面混合はレプテーション模型で説明でき、τr < tとなった。界面における分子鎖混
合は、Figure 5-16の模式図の様に進行すると予想できる。
Figure 5-16. Conformations of dPS and hPS brush chain at the interface before and after the stages of intermixing.
以上の結果より、dPSマトリックス界面に存在するhPSブラシ鎖は、τr以下の時間域 においてもFigure 5-17に示すような高い分子鎖熱運動性を持つことが示唆される。
Figure 5-17. Disengagement of the hPS brush chain from its initial tube near the dPS matrix interface. Only portions of the initial tube that still confines part of the chain are shown.
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