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街なかの活動を支えるエリアビジョンとその検討・作成方法

4-1 本章の目的と構成

本章は、研究課題(1)「「何」と「なぜ」を見出す「プロセスとその方法」を探る」

ことのうち、街なかレベルにおける「何」と「なぜ」を見出す方法を探り構築するこ とが目的である。これは、街なかレベルにおける活動要素「エリアビジョン」を検討・

表現・記述する方法の構築となり、第三章で残された課題である。また第三章と同様 に、研究課題(4)「街なかの活動で方法論を活用するための問題点や条件等を整理す る」に関連する、「活動者及び方法論と活動者の関係」についても適宜捉えていく。

エリアビジョンは街なかレベルの活動要素であり、検討・作成するには事業レベル とは別の方法が必要となる。しかし、エリアビジョンの検討・作成方法は、本研究の 目的である活動を支援する方法論と同じく、既往研究や文献を見出すことができてい ないため、独自に方法を構築することが必要となる。そこで本章では、新たに経営学 やマーケティングで用いられる方法あるいは考え方である、「消費者の購買行動プロセ ス」と「ポジショニング」に着目する。

まず次節では、第三章で構築した方法論に含まれる「階層性」の考え方を用いて、

街なかの活動にはエリアビジョンとそれ以外の2つのビジョンが存在することを示し、

その2つの違いについて説明する。そして、都市像・将来像であるエリアビジョンに は、どういった機能や役割が期待され、また果たす必要があるのかを示すことで、そ の重要性を明らかにする。さらに、本研究で考える街なかにおける活動とエリアビジ ョンの関係を述べる。

3節では、黒石通り再生におけるエリアビジョンの作成プロセスをふり返り、どう いった課題があるのかを整理して提示する。その課題を踏まえて、アメリカのまちづ くりで活用されているビジョニングプロセスを検討する。本 研究では、事業を検討・

表現・記述する方法(事業レベル)と、エリアビジョンを検討・作成する方法(街な かレベル)は、活動プロセス及び方法論として区別している。同様の考え方と区別は、

アメリカの街なかの活動であるメインストリートプログラム(Main Street Program:

MSP)において確認できる。その2つの区別として MSP に示されているのが、ビジョ

ニングプロセスである。アメリカのまちづくりでは、ビジョニングプロセスが一般的 に活用されているようである。

4節では、エリアビジョンの検討・作成方法の構築を試みる 。黒石通り再生のエリ アビジョンの作成プロセスと、ビジョニングプロセスは共通の課題を持っている。そ れは、エリアビジョンを検討・作成していくプロセス上の問題である。エリアビジョ

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ンの検討・作成方法を構築するには、プロセスに関する課題を解決し独自に構築する ことが必要となる。さらに、エリアビジョンの検討・作成方法には、プロセスとして の問題だけではなく、エリアビジョンをどのように捉えるか、つまり定義についての 問題もある。都市像や将来像といった字義以上の意味がないため、何がエリアビジョ ンなのかを判断できず、あらゆる記述がエリアビジョンとなってしまうことを意味す る。これでは、エリアビジョンを作成する意味・意義を失ってしまう。以上の問題を 解決するために着目したのが、先に述べた経営学やマーケティングの考え方あるいは 方法である。

5節では、研究課題(4)「街なかの活動で方法論を活用するための問題点や条件等 を整理する」に関連する、「活動者及び方法論と活動者の関係」について、4節までの 検討を踏まえてまとめる。

最後の6節では、本章のまとめと課題を述べる。

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4-2 街なかの活動における都市像・将来像としてのエリアビジョンの 役割

4-2-1 街なかの活動に関連する2つのビジョン

前章では、街なか・商店街レベルと事業レベルの2つの階層だけを扱うことになっ たが、街なかにおける活動の考え方や取り組みに係わる対象は他にも存在する。図4

-1は、街なかの活動に係わる対象範囲(あるいは立場)を大まかに、あるいは概念 的に明示したものである 1)

もっとも狭い範囲 A は、個店や商業・居住等の複合施設、公共公益施設等の建物を 対象にした範囲である。その外側は、複数存在する商店街や町内 会、場所によっては 歴史的地区などの範囲 Bとなり、範囲 Aはここに含まれる。それら商店街や各地区の 集合した範囲が、本研究で対象とする街なか・中心市街地の範囲 C となる。この範囲 C も都市によっては複数設定している場合もある。そして、その外側に都市計画法に おける都市計画区域や郊外などすべてを含んだ行政区分としての範囲 D となる。つま り Aは Bに含まれ、B はCに含まれるというように、包含関係としての入れ子構造に なっている。各範囲の中には様々な要素が含まれ、例えばもっとも狭い範囲 A には、

建造物から店舗内の備品まで多くの要素が存在する。

これら各範囲において事業が実施されることになり、それを階層的に示したのが図 4-2及び図4-3である。これらの図は、前章で示した街なかレベルではコンセプ ト(手段の基本的考え方)だった事業が、別の階層(下位の階層)となる事業レベル では、ビジョンの位置づけとなったことを踏まえて作成している。図の縦方向が、街 なかでの活動に関する対象範囲を階層的に示し、横方向に枠組みに含まれる4つの活 動要素を示している。

図4-2は店舗や施設等で事業が実施された場合を階層的に表現しており、図下段 の事業・活動におけるビジョンは、中段の店舗・施設等の手段と関連することになる。

A

B

A A

C

A

B

A A A

B

A A

C D

Cの例:中活法における区域 Dの例:市区町村の行政区域等 Aの例:小売店・ショッピングセンター・公共施設等

Bの例:商店街・歴史的地区・町内会等

図4-1 街なかの活動に関する対象範囲

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そして店舗・施設等のビジョンが、上段の街なか・商店街にお ける手段と関連する。

つまり、最終的には街なか・商店街のビジョン(エリアビジョン)に収斂していくこ とになる。これは、図4-3の場合も同じである。

従って、街なかの活動に関連するビジョンは、街なか・商店街レベルのエリアビジ ョンとそれ以外の2つが存在していると言える。エリアビジョン 以外とは、事業レベ ルのビジョンや組織の目的としてのビジョンなど を意味する。この2つのビジョンを 混同せずに区別することは、実際に街なかで活動を行う場合にも重要である。

2つの捉え方あるいは区別は、第二章で扱ったイギリスの TCM とアメリカの MSP の2つの街なかの活動でも示されている。MSP では、都市像・将来像としてのビジョ ンと、組織の目的としてのミッションに区別されていた。TCM ヨーロッパの場合は、

都市像・将来像であるビジョンと活動組織のビジョンの主要な違いとして、表4-1 の内容を示している。この表には、両者のビジョンの関係 性は示されていないが、本 研究では図4-2及び図4-3を用いて既に述べたように、組織のビジョンは最終的 にエリアビジョンに収斂していくと捉えている。

従って、街なかにおける活動では、事業レベルのビジョンや組織の目的としてのビ ジョンを実現する場合、街なか・商店街のエリアビジョンに貢献することが求められ る。例えば、商業振興政策では店舗の支援は経済活動の一部となるため、慎重であっ たことを第一章で述べた。仮に、店舗を支援する事業を実施する場合、図4-2に示 しているように、支援対象とする店舗はエリアビジョンに貢献するかどうかで判断す

想い・意図

(理由:why)

ビジョン

(目的:what)

コンセプト

(手段:how)

ビジョン

(目的:what)

想い・意図

(理由:why)

コンセプト

(手段:how)

現状

(背景等)

現状

(背景等)

【街なか・商店街

:C・B】

【事業・活動】

【店舗・施設等:A】 ビジョン

(目的:what)

想い・意図

(理由:why)

コンセプト

(手段:how)

現状

(背景等)

想い・意図

(理由:why)

ビジョン

(目的:what)

コンセプト

(手段:how)

現状

(背景等)

【街なか・商店街

:C・B】

【事業・活動】 ビジョン

(目的:what)

想い・意図

(理由:why)

コンセプト

(手段:how)

現状

(背景等)

図4-2 街なかの活動と事業の階層的関係:3層構造

図4-3 街なかの活動と事業の階層的関係:2層構造

134 る必要がある。

つまり、街なかや商店街の都市像・将来像であるエリアビジョンにとって、特に関 係があり重要となる店舗・施設等や事業・活動に着目する必要があることを、階層性 は示していると言える。逆に言えば、エリアビジョンが存在しない場合、収斂してい く活動要素がなくなることを意味する。この点が、街なかの活動にとって、エリアビ ジョンが重要な役割を果たしていることを表している。

そこで次は、街なかレベルの都市像・将来像であるエリアビジョンの役割、及び街 なかの活動とエリアビジョンの関係について検討・整理する。

4-2-2 都市像・将来像であるエリアビジョンの役割

以下では、都市像・将来像であるエリアビジョンの役割について、階層性の考え方 を用いて検討・整理していくが、その役割を果たしているビジョンを本研究では「意 味あるエリアビジョン」として述べていく。

(1)エリアビジョンの有無と街なかまちづくり活動のタイプ

最初に、意味あるエリアビジョンが存在する街なかでの活動と存在しない活動の区 別を図4-4の通り整理する。各タイプの活動は次の関係にある。タイプ1、2、3 の活動は、エリアビジョンの実現に関連する活動あるいは貢献する活動である。「タイ プ1:地域ビジョン実現型の活動」とは、エリアビジョンの実現を目指した活動を主 とするものである。街なかの活動では、黒石通り再生のようにエリアビジョン の検討・

Town Centre Vision TCM Business Plan 中心市街地のビジョン

・ 10 年から 20 年の中長期

・ 戦略は2年から 10 年をカバー する

TCM 組織のビジョン

・ 5年から 10 年の短中期

・ 戦略は2年から6年をカバーす る

中心市街地のビジョンは、全体的な ものである。

ビ ジ ョ ン は 、 経 済 だ け で は な く 文 化、社会のインフラ、環境などを反 映させる。

TCM のビジョンは、将来の組織の役 割や目的に対して関心持つ。

中心市街地のビジョンは、すべての 関係者の協議によって作成される。

あ ら ゆ る ビ ジ ネ ス プ ラ ン の 作 成 と 同じく、組織の関係者や参加者の同 意よって作成される。

表4-1 2つのビジョンの違い

(出典:TOCEMA Europe “Vision and strategy in Town Centre Management”

より拙訳)