まず,平和をどのように捉えるかが閥題となった。そこで,欧米に始 まった平和学の視点を取り入れた。J・ガルトゥングの「構造的暴力論」
によって「平和」概念が「戦争のない状態」という限定されたものから,
一 175 一
『構造的暴力のない状態」へと拡大された。R・フA一一クを中心とした
平和研究者のプロジェクトチームであるWOMPは,この拡大された平
和観の中に4っの指標を抽出した。すなわち,①集合釣暴力の極小化 ②経済的安寧の極大化
③社会的および政治的正義の極大化
④環境バランスの極大化である。本研究においては,「直接的暴力」の否定を「①集合的暴力の 極小化」に,また,「構造的暴力」の否定を「②経済的安寧の極大化
③社会的および政治的正義の極大化 ④環境バランスの極大化」に対応 させた。さらに,イリイチの「パクス・エコノミカ〈経済に人間が隷属 することによって得られる平和)」を「構造的暴力」に対応させて捉え
た。
こうして,教育政策を分析する指標として,次に示す項目が上がって
きた。
L直接的暴力に関する方針
2.構造的暴力に関する方針 ア・価値が一元的かどうか。イ・4っの平和価値のうち何処に重点がおかれていたか。
ウ・教育制度がハードかソフトか。
第2章では,昭和20年代の占領下にあった教育致策を,占領数禽演薫,
教育基本法,学習指導要領において分析した。これらに共通してい海の は,直接的暴力と構造的暴力を否定し,より平麹的な思想や制度を導入
することであった。一一 176 一
直接的暴力の否定は,戦争の否定であり,軍国主義の排除であっだ。
構造的暴力の否定は,極端な国家主義の排除として現れた。より平和的 な思想や制度の導入としては,平和主義と民主主義であった。教膏劉度
への具体化としては,教育の地方分権化,教育委員会制度が挙げられる。昭和20年代の教育改革は,直接的暴力からみても構造的暴力からみて
も,より平和的な方向への改革であり画期的なものであった。しかし,改革自体が上からの改革であり,結局国民に十分理解されることができ なかった。
学習指導要領に現れた価値観を見ると,西欧文明を最高のものとし,
工業生産に重点をおく一元的価値観に陥っている。
WOMPの4っの平和価値に対応させてみると,
1.集合的暴力の極小化は,完全にこれを達成しようとしていた。
2.経済的安寧の極大化は,国内的には最も重視していた。しかし,
国際的な経済関係についてはほとんど考えられていない。
3.社会的および政治的正義の極大化については,教育内容としては,
これを追求する自由主義的民主主義の方向性が示されていた。
4.環境バランスの極大化は,ほとんど考えられていない。
ということが明かとなった。
教育制度は,地方分権的で地域に応じ,児童に応じた教育が目指され,
ソフトな教育制度が目指されていたということが分かった。
以上の分析によって,ほとんど理想に近い平和主義の方向性を示しな がら,国内的経済の発展のみを追求する一元的な価値観を押しつける傾 向を持ち,環境とのバランスを考えに入れていなかったという点が出超
できる。
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第3章では,昭和20年代から昭和30年代にかけての教育政策がどのよ
ドキュメント内
平和研究の視点からみた戦後日本の教育政策 : 昭和20年代・30年代を中心として
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