2.5mTまで磁束密度が減少しなければならないものがあるということです。ホールICを用いた製品が不具合を発生しないために は、磁石が近づいたときは10mT以上、遠ざかったときは2.5mT以下になるような磁石を選定しなければなりません。
(注意2)ホールICの温度特性について
ホールICには他の半導体と同様に温度特性があります。一例として図3に片極検知タイプのホールICであるEW-750Bの温度特 性を示します。測定素子数は3素子です。一般的には感度が悪いホールICを考慮し、強い磁石を利用することになります。交番検知 タイプでは問題になりませんが、片極検知タイプの場合、磁石の移動量が小さいと磁束密度がBrpの値まで減少せず、ホールICが OFFしないことがあるので注意しなければなりません。この他に、先述した素子感度のばらつきを考慮しなければならないのは言う までもありません。
2.スイッチの設計例
スイッチとしてホールICを用いる場合に一般的に用いられる機構の例を図4に示します。タイプAはホールICのパッケージ表面に 対して磁石の移動方向が垂直の場合です。一方、タイプBはホールICのパッケージ表面に対し、磁石の移動方向が水平方向の場合で す。
表2 EW-750Bの磁場特性(Ta=25℃ Vcc=12V)
図4 ホールICを使用したスイッチの機構
項 目 出力H→L磁束密度 出力L→H磁束密度 ヒステリシス幅
記 号 Bop Brp Bh
最 小 3 2.5 0.5
標 準 6 5 1.1
最 大 10 9.5 2.5
単 位 mT mT mT タイプA
B 0 5 7 -W E B
0 5 7 -W E
タイプB ホールIC
磁石
NS N
S N
S NS
素子表面の磁束密度 [mT]
3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
希土類ネオジム系磁石 5×5×t1mm フェライト系磁石 25×15×t10mm Bop̲max.(@25℃)
Brp̲min.(@25℃)
参考資料
ここでは、タイプA、タイプBのそれぞれにおいて、ホールICにEW-750Bを用いた場合の、磁石とホールICの配置例を示します。
この例での磁石は、汎用品である以下の2種類で計算を行っています(希土類ネオジム系磁石:5mm×5mm×t1mm,Br=1300 mT、フェライト系磁石:25mm×15mm×t10mm,Br=300mT)。磁石のNSの極(着磁方向)は厚さ方向(ホールICのパッ ケージ表面に垂直方向)です(※汎用磁石のサイズは他にも多種類あります)。
表2にEW-750Bの磁気特性を示します。
■以下の計算は、初期位置で磁石の中心とホールICのセンサ部分の中心が一致した場合のものです。
(タイプA)
図5に2種類の直方体磁石の磁極面からの距離dと磁束密度Bの関係を計算したものを示します。
磁石の種類とサイズ
希土類ネオジム系磁石 5mm×5mm×t1mm フェライト系磁石
25mm×15mm×t10mm
ホールICがH→L時のホールICの パッケージ表面から磁石表面までの距離[mm]
6.7以下(@25℃)
18.6以下(@25℃)
ホールICがL→H時のホールICの パッケージ表面から磁石表面までの距離[mm]
11.9以上(@25℃)
35.3以上(@25℃)
表4 ホールICにEW-750Bを用いた時の磁石とホールICの配置例
(ホールICのパッケージ表面から磁石表面までの距離が5mmの場合)
磁石の種類とサイズ 希土類ネオジム系磁石 5mm×5mm×t1mm フェライト系磁石
25mm×15mm×t10mm
ホールICがL→H時の磁石の移動距離[mm]
6.1以上(@25℃)
13.2以上(@25℃、移動方向:磁石の短辺方向)
18.1以上(@25℃、移動方向:磁石の長辺方向)
磁石の移動距離 [mm]
素子表面での磁束密度 [mT]
0 4 8 12 16 20
−4−3
−2−11011121314150123456789
希土類ネオジム系磁石 5×5×t1mm フェライト系磁石 25×15×t10mm
(短辺方向)
フェライト系磁石 25×15×t10mm
(長辺方向)
Brp̲min.(@25℃)
図6 磁石の移動距離と磁束密度の関係
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(タイプB)
図6にホールICのパッケージ表面から磁石表面までの距離を5mmとして、2種類の直方体磁石がホールICのパッケージ表面に対 して水平に移動したときの、移動距離dと磁束密度Bの関係を計算したものを示します。
この結果より、上記2種類の磁石とホールIC(EW-750B)の配置を表4のようにすればよいことがわかります。
注:これらの結果はすべて周囲温度が25℃でのものであり、広い温度範囲で用いる場合は、磁石とホールICの温度特性を考慮す る必要があります。