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社会福祉学科長  阿 部 一 彦

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ようこそ学びの世界へ

域において社会福祉のしくみがどのように変化しようとも、十分な対応力と課題 解決力を発揮することができるのです。

 社会福祉における学修をもとに、人々の幸せを実現するために解決すべき課題 を見いだし、困難を抱えている人との協働作業を通して、その解決に向かって取 組む姿勢をご自身のものにしていただきたいと思います。そのためには、「考える 力」、「コミュニケーションする力」、「実践する力」そして、様々な制度や社会資 源についての知識とそれらを活用するための技術を身につける必要があります。

3 .資格について

 さて、社会福祉学科では、社会福祉専門職として資格取得に向けたいくつかの カリキュラムがあります。

 しかし、社会福祉学科で学ぶ最終目標は、単に「資格」を取ることではありま せん。皆さん一人ひとりがどのように社会に向き合い、どのようにかかわるかに ついて主体的に考えを進め、その実現のために必要な「資格」を取得していただ きたいのです。

 充実した学生生活のなかで、さまざまな体験や実践に取り組み、振り返り、さ らにより良いかかわりのために、学びを深め、将来どのような形で社会に貢献す るのかについて考えていただきたいと思います。そのためにこそ資格が必要にな りますし、資格取得に取り組むための学修、実習の意義が大きいのです。資格取 得のためには、費やす時間と労力が大きく求められますので、さまざまな社会の 課題について身近に考える姿勢をもとに、将来、どのような職業に従事するかに ついてイメージし、その目標に向かって必要な資格取得に取り組みましょう。目 標を明確にして取り組むことこそが、常に意欲を持って必要な資格を確実に取得 することにつながることです。

4 .むすびに

 社会福祉領域の意義と役割は、時代に応じ、社会の背景とともに大きく変わっ てきています。現在は基本的人権そして個人の尊厳の重要性が謳われているにも かかわらず、少子高齢化や人口減少社会を背景に様々な課題が顕在化してきてい ます。

 このような社会において、人々の生活ニーズを把握し、当事者を中心にした支 援を計画して、より良い実践を行うためには。多職種、多機関の連携、そして、

それらをコーディネートすることが必要になります。

 入学された学生の皆さんには、ご自身の卒業後の専門性、社会とのかかわりに ついてイメージを深め、現代社会における諸課題などについてスクーリングやレ ポート作成、そして実習などを通して理解と考察を深めていただきたいと思います。

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誌上入門講義

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◆「はじめてのドキドキ感」 

 未知なる世界に入っていくときの、何ともいえないドキドキ感を、今味 わっておられると思いますが、いかがでしょうか。期待と可能性、そして一 抹の不安の入り混じったような緊張、何とも言語化できにくい感覚こそ、今 の皆さんの心の中のあり様なのではないかと考えます。この新鮮な感覚を、

ぜひとも卒業まで忘れずに持ち続けていていただきたいと切に思います。そ して、自分の気持ちの動きを知ることができることこそ、これから皆さんが 学んでいく、心理学の世界の一部と言うことになります。

 ご入学おめでとうございます。ようこそ、東北福祉大学通信教育部福祉心 理学科へ。心より皆様を歓迎致します。

◆「福祉心理学科で学ぶ心理実践力」 

 これから心理学を学んでいくことになるのですが、大学での勉強は、知識 を蓄えればよいというものではありません。高校まででしたら、知識の集積 が大切なことだったかもしれません。しかし、大学は自らの自己努力によ り、学問を深め、自分の身につけたものをどのように社会や人々のために活 かしていくことができるかにあります。そこで、福祉心理学科では、学問を 通して、心理実践力を高めていくことを求めています。

 1974年にここ東北福祉大学に、わが国で初めて福祉心理学科が産声を上げ ました。社会で生活をしている人々の幸せに貢献することを目的に、心理学 を活用しながら実践を試みていくということが行われてきました。40年とい う歴史の中で、人々の生命の重みを考え、一人ひとりに見合った生活の質を 向上させるためのQOLの考えを取り込みながら発展をとげてきたのです。

その考え方の骨格を担っているのが、心理実践力です。心理学ワールドへの スタートは、個々人それぞれの想いでよいと考えますが、卒業時には自分な

福祉心理学科長  渡 部 純 夫

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ようこそ学びの世界へ

りの心理実践力を身につけて巣立って行っていただきたいと思います。

◆「応用編としての学び」 

 心理学を学び、皆さんなりにどのように応用し、人々の幸せに貢献して行 くかは、皆さんの考え方次第ということになります。皆さんがこれから学ん でいく心理学の世界は、実に広く深いものです。あるものに特化した学び方 もできるし、バランスを考えながらの学びも可能です。「福祉心理学」をは じめ「発達心理学」「教育心理学」「社会心理学」「産業心理学」「健康心理 学」「犯罪心理学」「学校心理学」などなど、枚挙に遑いとまがないほどたくさんの 心理学で構成されています。どの心理学に興味を持ち、どのようなつながり を意識しながら、新たな発見をして行くかは、皆さんの今後にかかっていま す。

 学問を身につけ、実践の世界に飛び出していく時、対象となる人のことを よく知り、どのような注意を払う必要があるかについても、知識だけではな く体験を通して身につけておく必要があります。人々の心を考える時、身体 についての配慮も大切なものになります。身体と心は一体として本来捉えら れなければならないものなのです。しかし、現実には、理屈としてはわかっ ていても余りにも難しいために、私たちは哲学者デカルトの言う二元論の考 え方を応用して、心と身体を分けることで、人間を理解しようとしてきまし た。この手法が、近代科学を飛躍的に発展させてきたことは、事実として認 めなければならないことですが、いつしか心と身体が解離して行くような出 来事を生み出してきています。福祉心理学では、今一度、環境や発達のあり ようなども取り込みながら、全体としての人間に眼を向けていかなければな らないと思います。

◆「人間研究の在り方」 

 人間を研究して行くに当たっては、 2 つのことを考えておく必要があると 思います。一つが、人間の個別性ということです。当たり前のことですが、

人間は一人ひとり固有の存在であり、同じ人間は一人としていません。理論 を覚えると、すべての人にこの理論が当てはまるものだと思い違いをしやす

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いくために重要なものであることに、変わりはありません。理論と個別性の 検証を常に意識しつつ、行っていく必要があるということです。もうひとつ は、人間を研究しようとしている人間も、人間であるということを意識して おかなければなりません。つまり、心理学の世界では、人間を研究するに於 いて、近代科学のような完全な対象化は起こらないということを念頭に置く ことが重要になります。

◆「心理学を学ぶことの意味」 

 心理学を学ぶということは、主体性をもった人と人の間でなにが起こって いるかを明らかにし、対象者の幸せに応えるということですから、謙虚な姿 勢を持ち続け、対象者から教えてもらうという心がけが大切になります。ひ いては、自分の人間性を育て、高めていくことになるのです。さあ、スター トです。

 福祉心理学科の学習内容については『福祉心理学科スタディ・ガイ ド』もご覧ください。

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