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くずり(食 肉 目 の獣 )のばけもの

ドキュメント内 増訂 ウイルタ口頭文芸原文集 (ページ 111-116)

北川五郎(Grgulu)口述

sigd biŋdti taani nari. xaald čii bičimri čii

さて 猟に行った そうな, 人人が。 いつでも ずーっと 猟をし ずーっと

bičuuččiči. naači tari. g geeda unnee

猟具をしかけている。 かれらの土地だ, それは。 さて 一つの 川を

solooti taani

čii anani anani putačimari.

tari

čii

nari

のぼった そうな, ずーっと 年 年 わなをかけながら。 そのころ いつも 人が

wdpčini. čii

buǰini čaa unnee

putaččini 1) tauni.

みえなくなる。 いつも 死ぬ, その 川(すじ)に わなをかける みなが。

ŋnneewri taunduni čii buǰiči. gee narree silmačiti taani

行く たびに いつも 死ぬ。 さて 人を えらんだ そうな

sigdlkk maŋganneepa. ga čawa saabuddoori sik sikpuni

いまや, つよい人を。 さて そのことを 知るために ねむ ねむらない

sikpuni 2) sikpuni maŋganneepa silmačiči. gaa suun naalani

ねむらない 眠らない つよい人を えらんだ。 さて 南の 地方から

geedanneekk doro naalani geedanneekk ŋnxni taani sigdlkk.

一人と 北の 地方から 一人が 行った そうな いまや。

suun naani gl 3) naalani 4) ŋnxnnee bkk. g putandamari

南の 地方 地方から 行った人は せむしだ。 さて かれらはわなをかけに

ŋnxti čaa naatai 5). uni drttini ŋnči. ga putačigati taani

行った, その 土地へ。 川の みなもとへ 行った。 さて わなをかけていた そうな

sigd čii putačimari. g liisini maŋgaŋuči 6) utkki

いまや, ずーっと わなをかけて。 さて いびきをかくのが 大きい人が 戸口へ

akpaččini taani sigd. otoo utduuǰi liisini maŋga narree

ねた そうな いまや。 一番 戸口の近くに いびきをかくのが 大きい 人を

ksči taani sigd. liisini takkuramǰiči. čimai

おいた そうな いまや。 いびきをかいている, かれらの使用人が。

tgččeeri ittjiči tariŋuči xaalanda buččini. taŋgamǰi.

おきて みると それは いつかに 死んでいた。 こまったことだ。

ri 7) xai. pujjni glljini pujjn 8) anaa.

これは どうしたことか。 きずを さがせば きずは ない。

xaikkeend pujl anaa bučči.

xooni toilakka psiǰigči taani

どこにも きずが なくて 死んでいる。 どう しようもなく 葬った そうな,

čakki čiidda. orkimba

xai 9) xai tpunǰini psiǰǰilkk.

そこへ そのように。 つまらない人は なに なにか 粗末に 葬るのだ。

ri

xaimidda ambalu

bill tdd

ri.

これは どうしても ばけものが いるのだろう, 本当に これは。

g doronŋ 10) doro maŋgaannii suun maŋgaannii silmačiti taani

さて 北の つよい者と 南の つよい者とを えらんだ そうな

sigd. ga sikpuni sikpu. ga dnnee tčiti taani sigd

いまや。 さて 一番眠らない者。 さて 二人は すわっていた そうな いまや,

baǰǰeetaalinǰi gaksee kaltaaduni bkk gaksee kaltaaduni doro

向かい合って 側に せむし, 側に 北の

maŋgannii. čii tmǰee dolboni taldaani inneetini lax

つよい人が。 ずーっと すわっていて 夜 中 夜あけ 近くに

doro maŋgani xawuus oččini taani. čadu ut kunduu

北の つよい人は うとうと した そうな。 そのとき 戸口が はじがちょっと

oččini taani. ut kunduu oiduni tari bkk garpaxani

あいた そうな。 戸口が はじがちょっと あいたとき その せむしは 射た

taani sigdlkk geeda ailiga iixmbni 11). ŋaalikkeeni

そうな いまや, 一匹の くずりが 入ったのを。 かれの手から

giltaramǰi. doro maŋgani uččini taani.

はずれて(弓がおちた)。 北の つよい人は 言った そうな。

andaxa xairisiga. anaa uččini taani. tolčičim 12) burigbi

「お客さん 何するのか。」 「いや」 と 言った そうな。 「ゆめをみていて おれの弓が

tuuxnee uččini taani. burigbi tuuxni. xaiwaddaa ččimbi anu

おちたのだよ」 と 言った そうな。 「弓が おちた。 なにも あのー

waaraa. g čimai tgččeeri itti taani. ngččeeri itči.

とらなかったよ。」 さて 朝 おきて みた そうな。 出て みた。

geeda ailigamba bkk garpaxani. durani tas iixni lkkni.

一匹の くずりを せむしが 射ていた。 まんなかに 一気に 入った, 矢が。

tari ailiga ambambani waaxani bkk. suun naani maŋgani

かれが くずりの ばけものを 殺した, せむしが。 南の 地方の つよい人が,

narree anani anani. tamaččuk13) tari 14) čawa 15)

人を 殺すくずりを。 それからは かれらは そこに

putaččisal čii uliŋga. tamaččuu čii

uliŋga. čii uliŋga.

わなをかける人たちは ずーっと 無事だ。 それから ずーっと 無事だ。ずーっと 無事だ。

čii spp waarini. anani anani pulisini. tamaččuu tari

ずーっと 貂を とる。 あるいている。 それから その

ailiga ambani čii wdptuxni. čalaa biččind tari tluŋuni 16).

くずりの ばけものは ずーっと なくなった。 そこまでだと, それの 言い伝えは。

北 川 五 郎 さ ん か ら 1 9 59 年 に 録 音 し た 。 こ の む か し ば な し を 北 川 さ ん は ム イ ガ ッ タ

(Mu igtt)氏 族 のジャワイじいさん (ǰa wai ma pa a čča)か らきいたよし。もともと ウイ ルタの

tlu ŋ u であると いう。ウイ ルタ人 か ら日 本 語 で採 録 し たおなじは なしが山 本 祐 弘 『北 方

自 然 民 族 民 話 集 成 』(19 6 8)54-5 7 ページにの る。 くずりは 食 肉 目 の獣 で あ る。日 本

語 のクズリ (屈 狸 )の語 は アイヌ語 から来 たものだが,さ らにギリヤク語 に由 来 するだろう。

な お, 話 の 進 み方 と し て みて ,せ むし が 選 ば れ たのは 使 用 人 が死 ん だあと のこ と で は ないだろうか。佐 藤 チ ヨさん がこ のテキストの語 り方 はへんだと言 っていたが,こ の辺 の事 情 を言 っていたのではないかと 思 われる。

1)p ut a ččin i 《 か れ( ら ) が わなを か け る 》 の か わ りに p ut a čči nn ee 《 わなを か け る 人 》 と あ る の が いい(佐 藤 による ) 。

2)s ik si kp u n si k pu n とく りか えしてか ら言 いなおし て si kp u nと言 っ ている 。 3)na an gl 言 いそこ ない。

4)na ala ni は na a du un i と言 うのが いい(北 川 ,佐 藤 によ る) 。

5)na ata i この語 形 は 北 川 さん の教 示 に よる 。na arr e eの よ うに きこえ る 。

6)li isi ni ma ŋ ga ŋu či 《いびきをかく のが大 声 のか れらの 仲 間 》 は使 用 人 のことを言 っ ている 。 7)r こ の語 は佐 藤 さ んの聴 取 によ る 。

8)puj jnp ujlとある のが いい,またp ujniでもいい(佐 藤 によ る) 。 9)xai く りか えし言 っ ている。

1 0)d or on ŋ 言 いそこ ない。

11)ii xm bni この語 形 は北 川 さん の教 示 によ る。xrの よ うに きこえ る 。

1 2)t ol či či m 《自 分 で ゆめをみ て》 のか わりに t ol či čči duw w e e《お れが ゆめをみ ていると き に 》とあ る のが いい(佐 藤 によ る) 。

1 3)t a ma čču kta ma čču k ooと ある のが いい(佐 藤 による ) 。 1 4)t ari よけ いなことば (北 川 ,佐 藤 によ る) 。

1 5)čawa čakkiとある のが いい(佐 藤 によ る) 。

1 6)tl uŋ un i この語 形 は 北 川 さん の教 示 に よる 。niは きこ えない。

第 2 部

まえがき

2 部 に収 録 するウイルタ語 テキストは,ウイルタの思 い出 話 (1)や昔 話 (2-4,

追 加 1 6)と歌 (5-15)である。これらは1990年 から92年 にかけてサハリンにおいて ウイルタの下 記 の方 がた(いずれも婦 人 )から採 集 した。しかし,これらの方 がたはす べてすでに亡 くなられた。御 冥 福 を祈 る。

小 川 ハ ツ子 さん ポ ロ ナイ スク市 在 住 。1925 年 , ワーレー ッタ(Waa leetta

氏 族 に生 れる。

金 ナ ツ 子 さ ん ポ ロ ナ イ ス ク 市 在 住 。1924 年 生 れ 。 母 は ダ ー ヒ ン ネ ー ニ

(Da ax innee ni)氏 族 。

セミョーノワ・ オリガ・ニコラーエヴナ(Semenova Ol’ga Nikolaevna)さん ワ

ール在 住 。1 910 年 ガラマイ(ウイルタ名 Grmi, ロシヤ名 G or oma j)川 沿 岸 の地 に生 れる。バヤウサ(Ba ja usa)氏 族 。

ミ ヘ ー エ ワ ・ マ リ ー ヤ ・ ス テ パ ー ノ ヴ ナ (Mikhee va Ma r ija Stepa novna) さ ん

ワール在 住 。191 2 年 トゥイミ(ウイルタ名 Tm, ロシヤ名 Tym’)川 河 口 近 く の 地 で , ゲ ー ッ タ (G eetta) 氏 族 に 生 れ , バ ヤ ウ サ (Ba ja usa) 氏 族 に 嫁 す。

セミョーノワ・アンナ・ワシーリエヴナ(Semenova Anna Vasil’evna)さん ネク

ラソフカ在 住 。19 19 年 ナビリ(ウイルタ名 ŋaa b beela , ロシヤ名 Nabil’)に 生 れる。ムイガッタ(Muigtt)氏 族 。

このテキ ストは,カセ ットテ ープに録 音 した ものを音 韻 表 記 によ って表 記 し たも の で ある。なお ,ロ シヤ語 もま じっている。録 音 されている言 語 音 声 は できる範 囲 です べて表 記 することにし,話 し手 の言 い誤 りやまわりの人 へ発 することばも,また,まわ り の人 が話 し手 に発 する質 問 な どの ことば もテキス トに記 入 した 。テキ ストには日 本 語 による逐 語 訳 をそえてある。訳 文 中 の( )内 は補 足 や説 明 である。なお,意 味 が いまだ不 明 の語 などは訳 の欄 を空 白 にしてある。

テキストの表 記 において,斜 体 ロ ーマ字 の部 分 は,そ の語 の明 確 な発 音 では発 音 されるが,略 して実 際 には発 音 されなかった部 分 である。なお,t のあとで ič が省 略 されている ti, tčは,そ の部 分 が省 略 されない語 形 では,それぞれ či, ččとな る。

また,[ ]のなかは,歌 をうたう上 でその語 の通 常 の発 音 より特 に音 を長 く のばし た部 分 である。

下 線 を引 いた部 分 は,ロ シヤ語 で あり,ロシヤ字 をローマ字 に翻 字 して記 してあ る。

( )の なかは ,言 い誤 りや 言 いか け て途 中 でや めた 発 音 や内 容 に直 接 関 係 の ないことば,たとえ ば聞 き手 への質 問 などである。

〔 〕のなかは,話 し手 のまわりの聞 き手 が発 したことばである。

…の部 分 は,小 声 か,不 明 瞭 な発 音 で音 がききとれない部 分 である。

歌 謡 (5-1 5)においては,一 編 の歌 はほぼ同 じ旋 律 のくり返 しで歌 われている。

5-8 は,大 きな間 隔 をおいて記 された各 句 が,また 11,1 5 は各 行 が,ほぼ同 じ旋 律 で歌 われている。一 方 ,9(daa ji siir okku 以 下 の 4 行 を除 く),1 0,13,1 4 は,

2行 のかしらをさげて記 してある2行 ごとに,12は,第2,3行 のかしらをさげて記 してある 3 行 ごとに,ほぼ同 じ旋 律 がくり返 されて歌 われている。その旋 律 は,歌 に よって,または歌 い手 によ って異 なる。

5-1 4の歌 は,おとなの間 で歌 われるものである。ウイルタの歌 謡 には,ある一 定

の折 り返 し句 をともなうハーガ(xg)という歌 のジャンルがあり,やはり成 年 者 の歌

であるが,5-1 4の歌 は,その折 り返 し句 がなく, これとはまた別 のジャンルの歌 であ る。5-1 0 の歌 は,内 容 からみて,叙 情 歌 とよんでおく。1 5 は,子 もり歌 であり,幼 児 に向 けて歌 われる。

録 音 の表 記 にあたって,ウイルタ語 については,語 り手 ,歌 い手 のほか,ウイルタ 婦 人 の イ ・ ヤ ・ フ ェ ジ ャ ー エ ワ ( I.Ja .Fedja eva ) さ ん , エ ・ ア ・ ビ ー ビ コ ワ

E . A.Bib ikova)さん,小 川 ウメさん,北 川 アイ子 さんの助 力 をえ たこと,ロ シヤ語 に

ついてもロシヤ語 を話 す幾 人 もの方 がたの助 けをえ たことを記 して謝 意 を表 わす。

ドキュメント内 増訂 ウイルタ口頭文芸原文集 (ページ 111-116)