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この章ではまず自律神経について簡単にまとめ、次いで各年度の問3(多肢選択式)の問題を解いていく。問3 は主に自律神経系と脳神経からの出題である。

5-1、⾃律神経系の概要

自律神経系 autonomic nervous systemは、生物にとって必須の生理機能や無意識下の行動の調節を行う機構の 末梢部分(!)である。機構の中枢側にあるのは大脳辺縁系、間脳の視床下部、脳幹網様体などで、これら4つ は機能的に関連の深いグループをなす。自律神経系の最高中枢は視床下部であるとされるが、視床下部は網様体 の呼吸中枢や循環中枢に投射し、網様体脊髄路を介して自律神経系を支配する。よって感覚系や運動系のような 明確な伝導路をつくるわけではない(たとえば「視床下部側角路」みたいなものはない)。

自律神経系は通常、次の2つのニューロンで構成される末梢系である:脳幹や脊髄にある節前ニューロンはすぐ に末梢に出て、自律神経節で節後ニューロンに交代し、末梢の平滑筋・心筋・腺に分布する。よくみかける自律 神経系まとめ図と、脊髄周辺の自律神経の走行を示す図をそれぞれ示すので、これらをみながら順にポイントを おさえていこう。

1. 交感神経系はT1~L3から出る。副交感神経系は、脳幹のCN3(動眼),CN7(顔面),CN9(迷走)

CN10(副)と、仙髄のS2~S4から出る。

2. 交感神経は中枢に近い方に神経節をつくり、副交感神経は支配器官の近くに神経節をつくる。

◆この違いは、交感神経と副交感神経の機能および分布域の違いと関連している。交感神経は「たたかうか 逃げるか」のときに、<全身の>活動状態を<急速に>高めようとするから、末梢の範囲内でより中枢側 に神経節をおいて、各器官の中央集権的な操縦を行う。いっぽう副交感神経は、交感神経に拮抗するもの として発達し、支配器官の近くに神経節をおいて、末梢での制御にまかせるような分権的な体制をとる。

そのため交感神経に比べると、その作用は緩慢で、範囲も限定されている。このように「拮抗支配」とい っても、単に二つの力がバランスしているのではなく、両者の守備範囲が時間的・空間的にある程度分離 されているということを知っておこう。たとえばまさにバトル中で交感神経優位の状態でも、眼に光が入 れば対光反射(副交感支配)が起こる!

交感神経節は椎骨体の腹側にあるから、椎前神 経節とも呼ばれる。これは上下につながって交 感神経幹 sympathetic trunkをつくる。以上に 加えて、各ニューロンが有髄か無髄か、また各 シナプスでの神経伝達物質の種類を右図にま とめる。神経伝達物質について、交感神経の節 後ニューロンのみノルアドレナリン(NA)で、

その他はアセチルコリン(Ach)。

38 3. 交感神経系の節前ニューロンは、脊髄の中間質外側部(T1~L3で側角と呼ばれる外側に突出した構造を

つくる)に発して、前根と白交通枝を通って交感神経節に入り、次の3つの様式でニューロンを交代する(下 図で経路を追ってみよう):

a. 交感神経節ですぐにニューロンを交代し、灰白神経節を経て脊髄神経に戻り、全身の血管や皮膚の汗腺 に分布する

◆上図だと、各レベルの交感神経節から、向かって左に出ているのがこのパターン。

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◆灰白交通枝をとおるのはa. のパターンのみ。つまり灰白交通枝は節後ニューロン(無髄)のみが通る から、「灰白」なのである(有髄神経は、髄鞘の脂肪のため白色にみえる)

b. 交感神経幹を上行して上中下の頚神経節をつくり、顔面から胸部内臓へ向かう。

c. 交感神経節を素通りして、その後に神経節や神経叢をつくって腹部や骨盤の臓器に分布する。

◆上図で副腎髄質に分布する交感神経は、腹腔神経節も素通りして、節前線維が髄質にまで至っている。

節後ニューロンはどこにいったかというと、副腎髄質の分泌細胞になってしまっている。この分泌細胞 になってしまった副腎髄質の節後ニューロンを、クロム親和性細胞(組織切片がクロム酸塩で染まるこ とからこの名前がある)といい、アドレナリンまたはノルアドレナリンを分泌する。つまり、交感神経 の節後ニューロンは一般にシナプスへとノルアドレナリンを放出するが、クロム親和性細胞は血中へと ノルアドレナリンを放出するのである。

以上の経路を上図でも確認し、また副交感神経の経路と比較してみることが重要である。眼の内眼筋(毛様体 や瞳孔括約/散大筋)にいたる自律神経を例すると:

副交感神経の節前ニューロンは中脳EW核にあり、眼球の近くで毛様体神経節をつくる。

交感神経の節前ニューロンは胸髄側角にあり、交感神経幹を上行して上頚神経節をつくる。

問題と解答解説 2008年度 問3

40 1.自律神経節にあって,後根神経節に無いものはどれか.

a. 衛星細胞 b. シナプス c. 偽単極神経細胞 d. リポフスチン顆粒 2.交感神経節において誤っているものはどれか.

a. 節前神経の軸索は交感神経節内で節後神経にシナプス結合する.

b. 一部の節前神経の軸索は,同じ高さの交感神経節を通過し,それより上下に存在 する交感神経節でシナプス結合をする.

c. 腹部内臓,骨盤内臓に分布する交感神経の節前神経の軸索は交感神経幹を通過し,

大動脈近傍の神経節でシナプス結合をする.

d. 一部の節前神経節の軸索は神経節を通過し,直接,平滑筋を支配する.

3.調節反射について誤っているものはどれか.

a. 瞳孔括約筋に分布する副交感神経が縮瞳を起こす.

b. 毛様体筋に分布する副交感神経が水晶体の厚みを増す.

c. 大脳皮質視覚野が関与する.

d. 内直筋に分布する動眼神経が関与する.

e. 瞳孔散大筋に分布する交感神経が散瞳を起こす.

4.分泌に関わる軸索を涙腺に送っている細胞体はどこにあるか.

a. 上唾液核 b. 下唾液核 c. 膝神経節 d. 耳神経節 e. 翼口蓋神経節 5.損傷によってホルネル症候群が起こりうるのはどれか.

a. 三叉神経視床路 b. 毛様体神経節 c. 動眼神経 d. 上頚神経節 e. 視放線 6.対光反射に関わっている神経核はどれか.

a. 孤束核 b. 迷走神経背側核 c. 上唾液核 d. 顔面神経核 e. エディンガー・ウェストファール核

7.右目に光が入っても縮瞳しないが,左目に光が入ると両眼の縮瞳が見られた場合,以下の部位のうち損傷が 疑われるのはどれか.

a. 右の視索 b. 右の視神経 c. 右の動眼神経 d. 左の動眼神経

8.料理の匂いで唾液の分泌が促されるが,このとき,関わっていない部位はどれか.

a. 扁桃体 b. 嗅球 c. 視床下部 d. 舌下神経核 9.嗅覚について正しいものはどれか.

a. 嗅覚伝導路は同側の嗅覚野のみに投射する.

b. 僧帽細胞は一次嗅覚野に直接シナプス結合する.

c. 嗅神経は扁桃体に直接シナプス結合する.

d. 損傷した嗅神経は再生しない.

e. 嗅索は嗅上皮内の知覚神経細胞からの軸索からなる.

10.視覚について正しいものはどれか.

a. 大脳皮質視覚連合野の損傷で同名半盲が起きる.

b. 黄斑部の視覚情報は,視覚野の後方に投射する.

c. 視覚野の細胞は,視索を通ってきた軸索からシナプス結合を受ける.

d. 鳥距溝の下面の細胞には,反対側下方の視野からの視覚情報が投射する.

e. 片側の視索の損傷で,両耳側半盲が起きる.

11.視覚について正しいものはどれか.

a. 視神経の髄鞘はシュワン細胞によって作られる.

b. 網膜の黄斑部の視力が最も良いのは,錐体細胞が密在しているからである.

c. 眼房水が過剰になると,うっ血乳頭(乳頭水腫)が起きる.

d. マイヤーのループは後頭葉にある.

e. 網膜右半分からの情報は,左側の視覚野に投射する.

12.内側縦束について正しいものはどれか.

a. 動眼神経,滑車神経,外転神経の神経核を連絡する神経線維を含む.

b. 三叉神経脊髄路核のすぐ外側を通る.

c. 下丘と内側膝状体とを連絡する.

d. 辺縁系を連絡する.

e. 大脳皮質の感覚性言語中枢と運動性言語中枢とを連絡する.

13.角膜反射に関わっていないものはどれか.

a. 三叉神経脊髄路

41 b. 三叉神経節

c. 顔面神経核 d. 眼神経

e. 三叉神経視床路

14.二次知覚ニューロンの細胞体や軸索ではないものはどれか.

a. 三叉神経脊髄路核 b. 三叉神経視床路 c. 内側毛帯

d. 三叉神経主知覚核 e. 三叉神経中脳路核

15.上顎の歯の痛みの伝達に関わっているのはどの視床核か.

a. 前外側腹側核 b. 視床内側核 c. 後内側腹側核 d. 後外側腹側核 e. 視床前核

16.眉毛が生えている部位の皮膚の痛みを伝える経路はどれか.

a. 三叉神経-三叉神経主知覚核-視床後内側腹側路-大脳皮質一次知覚野 b. 眼神経-三叉神経節-三叉神経運動根-三叉神経毛帯-大脳皮質一次知覚野 c. 眼神経-三叉神経脊髄路核-三叉神経毛帯-視床-大脳皮質一次知覚野 d. 三叉神経-翼口蓋神経節-三叉神経毛帯-視床後外側腹側核-大脳皮質 e. 顔面神経-膝神経節-三叉神経脊髄路核-三叉神経毛帯-視床-大脳皮質 17.第VI 脳神経で支配されるのはどれか.

a. 内側直筋 b. 外側直筋 c. 上斜筋 d. 下斜筋 e. 上眼瞼挙筋 18.顔面神経核の軸索が終止するのはどれか.

a. 顔面筋 b. 顔面の皮膚 c. 顎下神経節 d. 涙腺 e. 孤束核

19.側頭骨内の顔面神経管の損傷で左の顔面神経が切断されてしまった場合,どのような所見がみられるか.

a. 左側の顔面上半分の顔面筋の麻痺が見られるが,下半分の顔面筋の機能は保たれる.

b. 左側の顔面下半分の顔面筋の麻痺が見られるが,上半分の顔面筋の機能は保たれる.

c. 左のすべての顔面筋の麻痺が見られる.

d. 両側の顔面下半分の顔面筋の麻痺が見られるが,上半分の顔面筋の機能は保たれる.

20.聴覚系について正しいものはどれか.

a. 高音(周波数の高い音)は蝸牛底の近くの有毛細胞によって受容される.

b. コルチ器の基底面によって,前庭階と鼓室階が分けられる.

c. 外有毛細胞は,音情報を受容し,その軸索によって音情報を聴覚中枢へ伝える.

d. 蝸牛神経の中を走る軸索は,下丘に投射する.

21.平衡感覚の一次知覚神経はどの部位で脳幹に入るか.

a. 延髄の尾側 b. 延髄と橋の境界 c. 橋の中央 d. 中脳の脚間窩 e. 乳頭体の基部 22.頭部の位置の変化や,直進運動を受容する仕組みについて正しいものはどれか.

a. 平衡斑の有毛細胞の興奮によって受容される.

b. 膨大部稜の有毛細胞の興奮によって受容される.

c. 膨大部稜のゼラチン頂の傾きが刺激となる.

d. 外リンパの流れによって有毛細胞が刺激されて興奮する.

23.前庭神経核のニューロンが直接シナプス連絡をしないものはどれか.

a. 動眼神経核

b. 頚部の筋を支配する脊髄前角運動ニューロン c. 小脳片葉

d. 大脳皮質

24.舌の後ろ1/3 の味覚を伝える神経線維が通っているのはどれか.

a. 内側縦束 b. 中間神経 c. 孤束 d. 三叉神経脊髄路 e. 迷走神経 25.舌咽神経について正しいものはどれか.

a. 舌咽神経に含まれる知覚神経のうち三叉神経脊髄路核へ投射する成分は,頚動脈

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