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【研究活動報告】
電子機能解析研究分野
(2009.1〜2009.12)教 授:野田幸男 准 教 授:木村宏之 助 教:鬼柳亮嗣 博 士 課 程:石川喜久
修 士 課 程:小山内雅人(2009.3卒業),山崎 但(2009.3卒業),坂本勇馬,
玄 知奉(2009.4入学),堀尾 哲(2009.4入学),林 勁(2009.4入学) 学 部 生:山崎健太 (2009.4より), FEY Arno(短期留学生2009.8まで)
教育研究支援者: 福永 守
本研究分野ではX線・中性子を使用して,物性の構造的起源(構造物性)についての研究活動を行っている.
また,そのための計測技術や装置の開発も行っている.2009年の研究活動としては,以下のように概括される.
1. 構造解析用データの統計精度と解析結果との関係についての研究
0.001 0.010 0.100 1.000
0.01 0.1 1 10 100
dF2 /F2
NaCl #1
0.2degree/min
3.0degree/min
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06
0.01 0.1 1 10 100
R(F2 )
omega-speed 0.2degree/min 3.0degree/min
構造解析用データは,強度データの統計精度が良いほど解析 結果の信頼度が上がるとされている.しかしながら,測定には 必ず系統誤差が入るものであり,中性子四軸回折装置でこの関 係を詳細に調べた.標準試料のNaClで結晶回転速度を0.05◦/ 分から50◦/分まで3桁の範囲で変えて統計精度と構造解析の信 頼度因子の関係,およびその時の核密度分布のイメージ変化を最 大エントロピー法(MEM)で解析した.図は,統計精度と信頼
因子R(F2)の回転速度依存性である.統計精度は,結晶回転速
度を遅くして長時間測定することにより,当然ながら改善されて いく.一方,構造解析の信頼度因子R(F2)はある統計精度から 頭打ちとなる.これらのデータを使用してMEM解析を行うと,
R因子が頭打ちになった領域では明確なゴーストが現れてくる.
図下に示したのフーリエ合成(左),MEM(真ん中はR因子が頭 打ちになる前,右は極端に統計精度を上げた場合)である.これ らの理由は,多重反射などの偽の強度が統計誤差を相対的に上 回ったためと解釈できる.つまり,誤差の評価が,統計誤差だけ
を使う近似が成り立たなく成る領域と考えられる.もちろん,ここで示した信頼因子は,通常の構造解析では全く 問題ないぐらいに良く構造が解けているのであるが,さらなる精度の構造解析を目指す場合,多重反射などを避け たり,未知の系統誤差の原因究明など,解決しなければいけない問題と思われる.
2. 原子炉の単色中性子と二次元カウンターを組み合わせた測定と構造解析手法の開発 過去6年間,韓国原子力研究所HANAROのメンバーと共同で中性
子用二次元カウンター(2D-PSD)の開発とそれを使用した構造解析手 法の開発を行っている.これまでは,有効面積16cm角程度のプロト タイプ装置の評価実験,実証機にあたる60 cm x 40 cm大型湾曲型 2D-PSDで実験を重ねてきた.2009年に有効面積100 cm x 50 cmの 最終装置を作成してテストした.右図に韓国でテストしたときの写真 を示す.一度に測定可能な範囲は2θで100◦,χで53◦であり,NaCl
やTbIGの標準試料での構造解析も,今回開発したソフトウェアと共にうまくいき,2D-PSDの有効性が立証さ
れた.NaClの場合は四軸回折装置と同程度の信頼度因子R(F)が得られた.TbIGでは5時間の測定で1000点 以上のブラッグ反射が測定された.これは,通常の四軸回折装置だと50時間以上かかる測定である.また,過去に 測定したことのあるLiNH4SO4と言う物質を測定したところ,格子定数が大きく変わっており,34 Aという大 きな格子定数を持っていることが分かった.このような大きな格子定数を持つ物質では非常に測定効率が良いこと も明確となった.特に,有機物のようなこれまで時間が掛かりすぎて実験出来なかった物質での構造解析には大 きな威力を発揮するものと思われる.
3. 室温マルチフェロイック物質BiFeO3−BaTiO3混晶系の構造と相図 BiFeO3は1100Kで強誘電相転移するが,さらに650K
で反強磁性相へと相転移し,室温以上の温度でマルチフェ ロイックな性質を示す唯一の物質として注目されている.
また,BaTiO3は典型的な強誘電体であり,広く応用に使 われている.この両者の混晶系は強磁性が出現したりし て,マルチフェロイックの性質を拡張できるのではない かとの期待から様々な研究が行われている.しかしなが ら,これまでの研究結果は色々な点で受け入れがたいも のであった.そこで,BiFeO3−BaTiO3混晶系セラミッ クスを作成して,中性子粉末回折法とX線粉末回折法を 組み合わせて構造の組成変化と相図を研究した.右図は 得られた相図で,これまでの報告と違って,組成の広い範
囲で菱面体相と立方相の共存相であることと同時に菱面体相は全ての組成で強誘電・磁気秩序相であることが分 かった.また,BaやTiの濃度は菱面体相と立方相で違っていることも判明した.
4. YMn2O5の非磁性イオンGa3+置換による磁気相互作用の制御と電気分極の起源
0 10 20 30 40 50
0 0.1 0.2 0.3 0.4
TN TD
TCM=TC1
TICM=TC2
T(K)
xobs
(FE)CM 2DICM (PE)
LT-2DICM (WFE)
1DICM (WFE?) (PE)PM
YMn4+(Mn1-xGax)3+O5
RMn2O5系の物質(R=rare earth, Y, Bi)は強誘電秩序と磁 気秩序が同時に逐次相転移することが我々の研究から分かって いる.磁気構造はc軸方向に横スパイラル構造を取り,ab面内 に反強磁性秩序構造を取る.また,磁気伝搬ベクトルも不整合 構造から整合構造さらに低温不整合構造と複雑に変化していく.
強誘電相の電気分極の起源としては,磁歪として表現される機 構とスピンカレントとして表現される二種類の理論がある.前 者はab面内の反強磁性秩序と整合構造が,後者は横スパイラル 構造が重要と考えられるが,実験的に確かめられていない.我々 は,横スパイラル構造を取るMn4+O6鎖を保ちつつ,二本の独 立なMn4+O6鎖を繋いでいるMn3+O5ピラミッドの磁性を非 磁性イオンGa3+で希釈して鎖間相互作用を弱めることを試み た.中性子構造解析,誘電率と帯磁率測定からGa濃度,誘電相 転移温度,磁気相転移温度を決定して相図を作成した.右図が得
られた相図である.明らかに,Mn4+O6鎖間の相互作用が弱まると磁気的整合相であり電気分極が大きな強誘電 相が急速に消滅していく.一方,磁気的不整合相で弱強誘電相はあまり影響を受けない.このことより,磁気的 整合かつ強誘電相はMn4+O6鎖間の反強磁性相互作用による磁歪が起源であり,磁気的不整合かつ弱強誘電相は Mn4+O6鎖内の横スパイラル磁気構造を起源とすることが明らかとなった.