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図3 医療秘書の評価 ―常勤医師に対するアンケート調査結果より―
は,院長・副院長それぞれ1名と医療秘書とかかわり のない麻酔科医3名,常勤嘱託医師1名であった。
「業務が楽になり,それまで時間外や休日に書類を作 成していたので時間外労働が減った」という項目は34 名(87%)が選択し,「煩雑な外来業務が省けて楽にな った」15名(38%),「その他の良い影響が認められた」
6 名(15%)な ど,プ ラ ス 評 価 を す る も の が37名
(95%)に及んだ。「医療秘書と係わっていないのでわ からない」としたものが2名(5%)認められたが,
「良い影響も悪い影響もない」,「反って煩雑になっ た」などの選択は皆無であった。
2.時間外労働の推移
図4は医師自ら申請した時間外労働時間に基づいて 平成15年度から平成19年度の月平均時間外労働時間の 推移をみたものである。前述のように医療秘書の導入 は平成17年6月より試験的に開始されたが,平成18年 1月より段階的に増員し,文書作成は平成18年5月よ り配置したので,医療秘書導入の矢印は平成17年度と 18年度の間に図示した。月平均時間外労働時間は平成 15年度に比して16年度・17年度と年々増加傾向にあっ たが,医療秘書導入後は平成18年度から減少傾向にあ る。
図5は超過勤務により発生する時間外手当ての年度 別月平均金額を見たものであるが,時間外労働時間と 同様の傾向を示した。このグラフに常勤医師数の推移
日本病院会雑誌 《2008年1月号》 77(77)
日本病院会雑誌
勤 務 医 の 診 療 外 業 務 軽 減 へ の 取 り 組 み
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図4 時間外労働時間の年度別推移
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図5 時間外労働手当てと常勤医師数の年度別推移
をプロットすると,平成17年度における医師数の減少 により超過勤務手当てが一時的増加する傾向を示した。
医療秘書の導入後はその後の医師数減少傾向にも係わ らず,時間外労働手当ての発生が抑制される傾向にあ った。平成17年度と18年度の比較ではその差は月約 100万円,年間で約1,200万円の減少となり,病棟ク
ラーク外部委託費に匹敵するものであった。
3.出来上がりまでの期間(図6)
文書作成担当を導入する以前の平成18年1―3月 までの受付けから完成までの期間は13日であった。
導入後平成18年7月からデータを示すが,多少変動 はあるものの短縮傾向にあった。
考 察
数年前,紙面を賑わせていた医療事故報道にとって 代わって,最近では医師不足に始まった医療崩壊の実 態があちこちから伝えられている1−3)。その対応策 として,国においても,日本医師会や日本病院会をは じめとする各種医療団体においても,勤務医の労働環 境の改善へ向けての政策課題がいくつか提案されつつ ある。
当院でも独自に医師不足対策・医師の労働時間対 策・医療従事者への攻撃への対応など別表のようにさ まざまな医師労働環境改善の取り組みを行ってきた。
その中でも,医療秘書の導入は,医師不足対策や時 間外労働短縮のための取り組みとして有効な手段であ ると考え,数年前より当院が積極的に取り組んできた
重点プロジェクトの一つである。すでに欧米では多く の医療秘書4)が院内に配置されており,医師をサポー トする不可欠なスタッフとして確立された職種となっ ている。
準備期間も含めて導入後2年が経過したわけである が,この度医師によるアンケート調査や時間外労働時 間の推移,書類作成時間の推移などから評価検討を試 みた。
医師による評価はアンケート集計で感覚的なものに 止まるが,医療秘書導入により業務負担が軽減し時間 外労働が減ったと回答する医師が多数を占め,医療秘 書に係わったものはすべて高い評価を下し,導入につ いて否定的な意見は皆無であった。
時間外労働時間も導入前は増加する傾向にあったが,
医療秘書導入とともに減少する傾向にあり,アンケー ト結果にあった医師の実感を裏付けるものであった。
この時間外労働減少による人件費コスト抑制効果は,
新たな人件費コストである外部委託費に匹敵するもの であったことは興味深い。
ただし,この超過勤務減少効果は決して医療秘書導 入だけがもたらしたものではなく,地域医療支援病院 認定に向けて逆紹介を積極的に推進し,結果として外 来数が減少し,病棟業務や検査業務に専念できる余裕 ができて超過勤務が減少したことも大きいと考える。
しかし,この逆紹介が順調に進められたのも紹介状 作成や臨床検査データの準備など外来業務を補佐した 医療秘書の存在は大きく,さらに従来は外来看護師が 行っていた事務作業の多くが,医療秘書でもできるよ うな業務内容であり,現在問題となっている看護師不 足の解決策としても有用な方法と考えられる。
勤 務 医 の 診 療 外 業 務 軽 減 へ の 取 り 組 み
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図6 入院証明書等の受付から仕上がりまでの日数の推移
医師の時間外労働短縮に伴う疲弊感の減少で,通常 の診療効率が良くなり,医療ミス防止や増収につなが る可能性も考えられるが,この度の検討だけではそこ までの効果を示す客観的指標は提示できなかった。
ただし,この医療秘書制度の導入により,勤務医の 疲弊感を解消する効果が期待されることは,社会問題 化している勤務医の現状を考えると非常に意義深いこ とであり,たとえ医療秘書導入に関連して生じる人件 費コストの増加の相殺効果が得られなくても,公的資 金を注入などして積極的に普及すべきシステムである と思われる。
患者サービスの面からも書類作成までの期間は医療 秘書導入により短縮傾向にあったことは,非常に歓迎 されるものである。各種保険会社による生命保険医療 給付金の支払い件数も年々増加する傾向にあり,複数 の書類をもって証明を依頼する患者も増加し,勤務医 に一層過重な労働をもたらす原因の一つになっている。
そのうえ,各保険会社によって書類の書式が異なるこ とも,書類作成の業務負担に拍車をかける一因になっ ており,各社で異なる様式を統一化することも期待し たい。
最近報道された来年度予算に関して厚生労働省から の概算要求5)の中に,過重労働を強いられている勤務 医の業務負担軽減策の一つとして医師業務補助者の配 置促進という項目も上げられているが,許容される業 務の内容や資格など具体的なものは示されていない。
この度の当院の取り組みにおいては,医療秘書の人材 は病棟クラークや医事課職員を配置転換し,現場の実 情を把握する作業をしながら自ら仕事探しをしたり,
医師の指導を仰ぎながら入院証明書の補助業務を徐々 に身につけた。医療秘書教育全国協議会による医療秘 書技能検定を受けているものの,診療情報管理士の資 格を有するものもいない。
ただし,法令順守の観点から医師による確認や責任 の所在を明確にするために内規を定め,オーダリング の代行入力についても平成19年3月に厚生労働省によ り公表された医療情報システムの安全管理に関するガ イドライン6)に沿ったものを内部規定に追加している。
公的医療保険はほとんどの医療機関が医師に代わっ
て医事課職員や委託業者が保険請求するための公文書 であるレセプトを作成しているわけであり,私的保険 の請求や証明書の発行も医療秘書などの事務職員だけ でも可能なシステムを構築することも今後の課題かと 思われる。
おわりに
医療崩壊と叫ばれる状況をもたらした底流には低医 療費政策があり,我が国の絶対的医師不足と密接に関 連していると分析されている。抜本的に解決するため に我が国の医師数を国際標準並みに養成することが不 可欠と思われるが,実現のためには多くの時間とコス トが必要であることは明白である。
この度の検討では姑息的ではあるが医療秘書の導入 は,過重労働を強いられている勤務医の負担軽減策と して,非常に効果的であり即効性があることが示唆さ れた。医師不足→勤務医の疲弊感の増大→医療事故の 増加や勤務医の立ち去り→地域医療の崩壊というスパ イラルに呑み込まれる前に,医師不足→医療秘書の配 置→勤務医の疲弊感の軽減→診療効率や安全性の増加
→地域医療への貢献という発展性を追究することが,
この時代そしてこの時期においてこそ,喫緊の重要課 題であると考えられた。
参考文献・資料
1) 本田 宏:『誰が日本の医療を殺すのか―医療崩 壊の知られざる真実―』,洋泉社,2007
2) 小松秀樹:『医療の限界』,新潮新書,2007 3) 鈴木 厚:『崩壊する日本の医療』,2006 4) 高岡善人:『病院が消える―苦悩する医者の告白
―』,講談社,1993
5) 厚生労働省医政局:『平成20年度概算要求の概 要』,2007
6) 厚生労働省:『医療情報システムの安全管理に関 するガイドライン』,2007
日本病院会雑誌 《2008年1月号》 79(79)
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