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Fig.  1 HALS (経腹膜アプローチ)腎摘除術の代表的なポー トと皮切の位置.術者が手を挿入する.

一皮切 (7cm) 012mmポート

2 . 術野の確保

腹腔鏡手術を安全に行うために最も重要な操作の一つで ある.この際に,後述する項目以外に,術野を確保するた めに使用する鈎やHALSの際の手などで引きすぎたり,そ れらの操作がブラインドになることが多いため,臓器損傷 や出血などをおこすことがあり注意を要する.また前述の ごとくボートや手を入れる創の位置も関係してくるが,術 野が臓器等のブラインドになり,重要な部分が見えないこ とがあり,その際は300の光学視管を使用するなどの工夫 が必要である.

(4)鈎や甜子,手 (HALS)での術野の展開が十分できて いるか

手術の基本であるが,術野に集中するあまり,展開が 十分できていないことに気づかない場合が比較的多い.鈎 や手 (HALS)は術野には見えないこともあるためである が,やりにくさを感じたら,視野を大きくし術野の展開 を確認すべきである.

4 . 剥離切開操作,器具の使用法

(1)道具の出し入れ

甜子などをポートに挿入する際には通常ブラインドとな るため,光学視管の向きと角度を目安に先端の抵抗を感じ ながら挿入し,抵抗があればすぐにそれ以上の挿入をやめ ることが重要である.必要に応じて角度を変えて挿入する か直視下に挿入する.無理に挿入しようとすると臓器損傷 の可能性がある.HALSの場合は,手で挿入を補助するこ

HALS 

Fig.  2 HALS (後腹膜アプローチ)腎摘除術の代表的なポー トと皮切の位置助手が手を挿入する.

一皮切 (7cm) o12mmポート

ともできるが,手の損傷に注意する必要がある.

(2)超音波メスの使用法が不適切(ブレードの向き,先端 が組織に当たるなど)

(3)電気凝固の使用法が不適切(クリップが焼けた,凝固 すべき組織以外が焼けたなど)

HALSの場合は,超音波メスや電気凝固で手を損傷しな いように注意が必要である.特に,助手が手を入れる場合 は,術者と十分に声を掛け合いながら,超音波メスや電気 凝固を使用する必要がある.

(4)剥離切開法が危険(臓器損傷の危険,安全を確認しな いで切開,操作が乱暴, トラクションをかけすぎて出血な ど)

こ の 項 目 は 非 常 に 多 く の 危 険 な 操 作 が 考 え ら れ る . HALSの場合,通常は甜子で行う操作を手で行うため,繊 細な操作が不可能である.例えば,薄い膜をつまみあげて 剥離する,血管の後面を剥離するために持ち上げるなどの 操作は,手では荒っぽくなることが多い.特に血管の剥離 では,手のみで行うのではなく,手で持ち上げて錯子を使 用して剥離する,糸を通し牽引するなどの工夫をすると安 全に行える (Fig.3.  4). また,手での術野の展開の際,

トラクションをかけすぎると出血して危険である (5)盲目的に手を使用している (HALS)

HALSの場合,手をブラインドで操作するべきではな い.特に腎の後面や上方などを剥離する際は,ブラインド になりやすいため,必要なら30度の光学視管などを使用し て,直視下に行うべきである.

Fig.3  手で血管をを持ち上げ.~甘子で剥離をする.

5 . 血管の処理

(1)血管の扱い方が危険(甜子で乱暴に把持など)

HALSの場合は,丁寧に行えば血管を手で把持すること は可能である.ただ,前述のごとく,周囲の剥離は手のみ で行うべきではない.

(2)クリッピングについて

(3)腹腔鏡下手術用自動縫合・切断器の使用法

HALSにおいてクリップや自動縫合・切断器の使用時,

血管を子で上手に持ち上げて行えればよいが,持ち上げず に直接血管の下に通す,あるいは押し付けるようにしてか けるビデオがよく見られる.この方法では血管損傷を引き 起こしたり,クリップの先の確認が難しい場合があり,安 全のためには前述のように糸を支持としてとおしその糸 を手でヲ│き上げながらクリップや自動縫合・切断器をかけ るようにすると,比較的簡単に行うことができる.特に自 動縫合・切断器は太く,かけにくいので注意を要する.

6 . 出血に対する対応

急、な出血に対する対応に関しては,一般的に手を使用で きるHALSは安全に行うことができる.特に.SLSで、行っ ている際に大血管損傷などがおこったとき.7cmの切聞を

Fig.4  糸をかけ.牽引をして剥離しやすくする.

おきHALSに移行すると,低侵襲J性を保ったまま,修復で きる可能性があるため,試してみてもよい方法である.

7 . その他

( 1)左右の甜子,はさみなどの協調性がない.

(2)手と甜子の協調性がない(HALS)

術者が手を挿入する場合は,甜子との協調性が審査の対 象になる.前述のごとく,細かい操作を行う際は甜子を 使用するべきであり,その際,子は甜子操作がやりやすい ように視野を作る働きをする必要がある.手による強引な 鈍的剥離(開放手術に習熟したベテラン医師に多く見られ る)や盲目的な剥離はすべきでない.

助手が手を入れる場合,助手の手は主に術野の展開,臓 器の庄排といったリトラクターの役割を行うべきである.

助手の手が手術の主要な操作をしている場合は技術認定制 度の審査対象外となる.

8 . 審査対象外

(1)重要な手術操作を助手の道具が行っている場合 前述したごとく,助手が手を入れるハンドアシスト法 で,助手の手に頼った手術は審査対象外となる.

以上,泌尿器腹腔鏡技術認定制度を踏まえて.HALSを 安全に行うためのポイントを概説した.

HALS 

Jpn J Endourol ESWL (2006)  19: 42 

並木幹夫

企画にあたって

近年,女性の下部尿路や骨盤底を扱うFemaleUrology  またはUrogynecologyに対する医療従事者や患者の関心は 年々高まりをみせています.また, 日本ウロギネコロジー 研究会の発足,発展に見るように,産婦人科医と泌尿器 科医が協力してより良い診療を目指す体制ができつつあり

ます.Female Urology の代表的疾患である腹圧性尿失禁,

性器脱治療についても日進月歩の進化をとげています.

尿失禁は生活の質を著しく障害するため, WHOでは解 決すべき最重要課題のひとつに挙げています.また,おむ つや尿失禁治療薬に対する支出は莫大な額にのぼり,医療 経済の観点からも重要な問題になっています.

女性における腹圧性尿失禁は多数の患者が存在すると推 測されますが, 2002年度患者調査では腹圧性尿失禁の患者 数は約3000人で,実際に診療を求めて病院を訪れる患者は 極めて少ないのが現状です.この理由は種々考えられます が,患者を尿失禁から開放するために,年齢,病状,美 容,

QO

L.そして治療成績を重視した低侵襲治療を提供

並木幹夫 金沢大学大学院医学系研究科集学的 治療学(泌尿器科学)

(C)Japanese Society of Endourology and ESWL 2006 

することがわれわれに今求められていると思われます.

過去には前睦壁形成術,恥骨後式腸脱頚部挙上術,経腫 式跨脱頚部挙上術などが腹圧性尿失禁の手術の主流であっ た時代もありましたが, 1999年9月にTVT手術が腹圧性尿 失禁の保険適用となって以来, TVTを含め種々の低侵襲 治療がこの疾患の主治療になってきました.

今回の特集では薬物療法,骨盤底筋体操以外の保存的治 療として仙骨表面電気刺激,磁気刺激治療を,手術療法と しては尿道注入療法, TVT手術,そしてTVT手術より合 併症が少ないといわれるTOT手術を取り上げました.腹 腔鏡手術による尿失禁治療として腹腔鏡下Burch手術も加 えました.

以上,現在普及している術式から最新の治療法までを泌 尿器科,産婦人科のエキスパートに概説していただくこと により, Female Urology,腹圧性尿失禁診療の向上に役 立つことを期待しています.

Jpn J Endour1ESWL (2006)  19: 43 ‑48 

E 露霊園圏直盟理翠翠富盛霊璽霊ヨ・

高 橋 悟

尿道注入療法

要旨 米国泌尿器科学会のメタアナリシスの報告以来,良 好な長期成績を有する尿道スリング手術が腹圧性尿失禁治 療の標準術式のーっとなり,低侵襲なTVT手術が今日広 く普及している.さらに骨盤内合併症のリスクがなく,勝 脱鏡が不要なTOT手術が開発され,欧米で良好な治療成 績が報告されつつある.一方GAXcollagen注入に代表さ れる尿道周囲注入療法は,低侵襲で術後排尿障害のリス クが少ない長所を有するが,長期成績が十分で、なくその適 応は限られているのが現状である.近年長期成績の改善を 目指し, Ethylene Vinyl Alcohol copolymerなどの新しい bulking agentを使用した注入療法が開発され,欧米で臨 床応用されつつある.また再生医学的アプローチとして,

muscle derived stem cellsを用いた画期的な治療法が開発 された.すなわち患者の上腕から横紋筋を採取し分離培養 後myoblastsとfibroblastsを経尿道的に注入し良好な治療 成績が報告された 各種注入療法の国内外での治療成績を 踏まえて,今後の可能性について考察した.

Key words :腹圧性尿失禁,尿道注入療法.再生医学

高 橋 悟 日本大学医学部泌尿器科 173‑8610東京都板橋区大谷口上町30‑1

TEL 03‑3972‑8111 (内線2511,医局2513),FAX 03‑3972‑5930  E‑mail : tsatoru@med.nihon‑u.ac.jp 

Satoru Talahashi: Department of Urology, Nihon University  School of  Medicine, 30‑1, Oyaguchikamimach

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Itabashi‑ku  Tokyo, 173‑8610 Japan 

Phone : +81‑3‑3972‑8111 (ext. 2511 2513)  Fax: +81‑3‑3972‑5930 

E‑mail : tsatoru@med.nihon‑u.ac.jp 

(C)Japanese Society of Endourology and ESWL 2006 

緒 言

現在,骨盤底筋体操などの理学療法が無効な腹圧性尿 失禁に対する外科治療法として,尿道注入療法 (periure‑ thral injection), needle bladder neck suspension, pubo‑ vaginal sling, retropubic cystourethropexyなどがあげ

られるが,米国泌尿器科学会のメタアナリシスにより,

pubovaginal slingとBurch法などに代表されるretropubic cystourethropexyが長期成績で、優れていることが報告され た1)以降, Stamey法などのneedlebladder neck suspen‑ slOnは今日あまり行なわれなくなり,新しいpubovaginal sling法としてTVTスリング法が広く普及し標準的術式

となっている2) さらに最近海外では骨盤腔の穿刺による 合併症の少ないTOTスリング法が開発され, TVT法と同等 の治療効果と低侵襲性・低合併症率が報告されている3) し かしいずれの方法も腔ならびに皮膚に小切開をおく「手 術」であること,術後排尿障害が発生する可能性があるこ とには変わりはない.これに対して尿道注入療法は「究極 の低侵襲性治療」と考えられるが,長期成績が十分で、なく その適応は限られているのが現状である4) 近年長期成績 の改善を目指し,いくつかの新しいbulkingagentsを使用し た注入療法が開発され,欧米で臨床応用されつつある.Q5叩

また再生医学的アプロ一チとして, muscle derived stem  cellsを用いた画期的な治療法などが開発された11玖 す な わち患者の上腕から横紋筋を採取し分離培養後myoblasts とfibroblastsを経尿道的に注入し良好な治療成績が報告さ れた.本稿では各種注入療法の国内外での治療成績を踏ま えて,今後の可能性について考察する.

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