し、「道徳的寓意」を描こうとしていたことが理解できる。(Millhouse, 66) 18)
寓意性を持つとは、描かれた対象が一義的な意味を超え、別の次元での意味を帯びることで ある。描写が写実的である場合、意味はその次元にとどまる。まさにロッカーの場合がそうで、 彼は写実的な描写に徹しており、描かれた人間が寓意性を帯びることはない。科学の発展によ り科学的知識に裏付けされた彼の認識では、人間も自然も写実的にとらえるしかない。彼の作 品においては、自然の中で人間が浮き立ってしまうことが多いが、自然の中に不自然に佇む人 間の描写を見るとき、そこからは、自然と対峙する姿勢を身に付け、もはや自然の中に溶け込 むことのできない人間のありようが伝わって来るようである。さらには大自然の中に人間が配 されること自体が不自然である、という悲しむべきメッセージも聞こえてきそうである。ノヴ ァックによると、ハドソン・リヴァー・スクールの画家たちは、その絵の中に文明の象徴であ る斧や汽車、そして人間を描くことで、来るべき未来を予感させることはあっても、「その未来
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