3. 仕事柔軟性の現状把握
分析を行う前に,我が国における仕事柔軟性の現状を分析対象の雇用者データを用いて 把握しておこう。図 1 は,雇用者における勤務時間・勤務日・勤務場所自由度の平均値の推 移を見たものである。前節で説明した通り,これらは 1 から 5 の値を取る質的変数であり, 5 に近づくほど柔軟であると解釈することができる。2015 年 12 月における雇用者と比較し て, 2016 年,2017 年と仕事の柔軟性は年々高まっていることが分かる。これは,近年の働 き方改革の流れをくむような動きであろう。仕事の柔軟性は,個人が属する雇用形態,業種, 職種,組織の属性に応じて変化すると考えられる。そこで図 2 からはそれぞれ,雇用形態, 企業規模,業種,職種別に年ごとの勤務時間・勤務日・勤務場所の自由度の平均を取ったも のを示した。まず,雇用形態別に仕事の柔軟性を見ると (図 2~4),正規の職員・従業員は非 正規雇用と比較して仕事の柔軟性が小さいことが分かる。しかしながら,いずれの雇用形態 であっても仕事の柔軟性は高まる傾向にある。図 5~7 は職種別に見た仕事の柔軟性である が,サービス職や農林漁業関連職が仕事の柔軟性が高い傾向にある。ただいずれの職種にお いても 3 年間を通じた仕事の柔軟性の上昇トレンドは確認できる。ただし,農林漁業関連 職の場合は,柔軟性が低下している傾向にある。これは第一次業種の仕事の性質を考慮すれ ば,仕事の量や行う時間帯を容易にコントロールできないといった事情が考えられよう。図 8~10 は,業種別に見た仕事の柔軟性である。仕事の柔軟性が比較的高い業種として挙げら れるのが,サービス業,流通・小売業といった業種である。一方で製造業,金融業といった 業種で柔軟性が低い。仕事の柔軟性が高いサービス業,流通・小売業といった業種はアルバ イト・パート比率の高い労働集約的な業種であることが特徴である。業種別の仕事の柔軟性 の違いは当該業種のアルバイト・パート比率をある程度反映させたものになっていると解 釈することもできるだろう。いずれの業種においても 3 年間を通じた仕事の柔軟性の上昇 トレンドが確認できる。
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