第 5 回 絹糸線の利用 遺伝子組換えカイコ ( I )
― 遺伝子工学の基本技術の紹介ー
DNA
RNA
Protein Function
「遺伝子の発現」
遺伝子産物の機能発現
Phenotype
Phenomenon
形質・生命現象の発現genome gene
校正・修復
遺伝情報の正確な複製
転写制御
翻訳制御
翻訳後修飾による制御
他の分子との相互作用
・いつ、
・何処(どういう環境)で、
・どの遺伝子が
・どれくらい
発現するか。
多様な生命現象
遺伝子情報の機能 への変換過程
逆転写
生命現象を司る遺伝情報の流れ
解析したい⽣物(細胞)のDNAの抽出
⽬的の領域(塩基配列)を取り出す(単離・増幅)
取り出した領域を解析
遺伝子(DNA)の解析では、
目的の遺伝子領域を単離することが基本
遺伝⼦(DNA)のクローニング
DNAの抽出と精製(フェノール抽出法)
遺伝子の構造や機能を解析するためには、細胞や臓器などからDNAを 抽出し精製する必要がある。
ゲノムDNAはタンパク質などと複合体を形成(クロマチン 構造)して核内に凝集しており、抽出操作の中心は
タンパク質およびRNAの除去にある。
概略
①DNAの抽出操作ではまずタンパク質を変性・除去 しなければならない。
この操作に有機溶媒のフェノールが使用される。
②RNA分解酵素(RNaseA)やタンパク質分解酵素(プロテアーゼK)処理する ことで高純度のDNA標品を得ることができる。
③核酸水溶液にエタノールと塩を加えると、すでに溶けていた核酸は エタノールに溶けないため、次第に析出する。
http://rizo-inc.cocolog-nifty.com/blog/dnad/
制限酵素
は、1968年に、スイスのウェルナー・アーバー (Werner Arber) やアメリカ のハミルトン・スミス (Hamilton Othanel Smith) によって発見された。制限酵素の名前 の由来としては、大腸菌のある種の株でファージの増殖が制限されるという現象が 確認されていたことによるもので、そのような菌からファージのような外来DNAを切断 する制限酵素が発見された。(Werner Arber) (Hamilton O. Smith)
クローニングにおける3種の神器
制限酵素(ハサミ)・ DNA リガーゼ(ノリ)・プラスミド(ベクター)
I 型制限酵素
特異的な認識部位でDNAに結合し、認識部位から様々な距離(400~7000bp)で二本鎖 DNAを切断する。活性には、Mg2+, ATP, S-アデノシルメチオニンが必要で、ATP(アデノシン 三リン酸)の加水分解に伴って切断が起こる。メチラーゼ活性を併せもつ。 切断個所には 再現性が乏しく、また、DNAのメチル化を引き起こすため、遺伝子工学には使えない。
II 型制限酵素
II型の酵素は4~8塩基対の回文構造を認識するものが多い。400種以上知られているが、
遺伝子工学の実験に広く利用できることから、その内100種ほどが市販されている。I型や III型と異なり、DNAのメチル化は起こさない。同じ配列を認識するものでも切断個所を異に する酵素もあり、アイソシゾマー(isoschizomer)と呼ばれる。酵素反応には、Mg2+が必須。
III 型制限酵素
特異的な認識部位に結合し、それから約25bp離れた位置を切断する。 活性には、ATP とS-アデノシルメチオニンが必要であるが、ATPの加水分解は伴わない。 I型と同様、メ チラーゼ活性を併せもつ。 メチル化活性は、自身の制限酵素で自分のDNAを分解しな いために、制限酵素部位をメチル化によってマスクするためにある。
回文(かいぶん)とは上から読んでも、下から読んでも同じ文となる文の
ことで言葉遊びの一種である。
竹薮焼けた ( たけやぶやけた ) 例)
II 型制限酵素によって認識される塩基配列のパターンの 多くは回文になっており、 5' 端側から読んでも、その相補 鎖の 5' 端から読んでも同じ配列になっている。
Bal I
HindⅢ
TGGCCA ACCGGT
AAGCTT TTCGAA
ACC GGT TGG CCA
A AGCTT TTCGA A
平滑末端突出末端
5‘
5‘
KpnI Klebsiella
pneumoniae 5'GGTACC
3'CCATGG 5‘---GGTAC C---3' 3‘---C CATGG---5' NotI Nocardia otitidis 5'GCGGCCGC
3'CGCCGGCG 5‘---GC GGCCGC---3‘
3‘---CGCCGG CG---5' PovII Proteus vulgaris 5'CAGCTG
3'GTCGAC 5‘---CAG CTG---3' 3‘---GTC GAC---5'
制限酵素による3種類の切れ⽅
制限酵素によって切断された2本鎖DNAの末端の1本鎖部分 1本鎖の突出部分を持たない末端を平滑末端(blunt end)
そうでないタイプを粘着末端(sticky end)
アガロースゲル電気泳動
(その他、ポリアクリルアミドゲル電気泳動など)アガロース電気泳動法は、DNAやRNAなどの核酸をそれ らの電気的な性質を利用して分離する方法です。 核酸は
「-」の電荷を帯びているため、電場に置かれると、アガ ロース(寒天)のゲルの網目構造内を+極側に移動する。
長いDNA断片は網目構造内をゆっくりと(引っかかり ながら)動くのに対して、短いDNA断片はより速く(あま
り引っかからずに)動くことから、アガロースゲル電気泳 動法では、DNA断片を長さによって分離することが できます。
アガロースゲルのネットワーク アガロースの化学構造
(ガラクトースの交互結合からなる多糖類)
DNAはその構成要素にリン酸基を持つこと からマイナスの電荷を持っています。
n
http://www2.biglobe.ne.jp/~ashida/kurekousen/2-8.htm http://www.tatourui.com/about/type/09_agar.html
DNAを連結する「ノリ」として働く酵素がDNAリガーゼ(ligase)である。組換え 大腸菌株由来のT4 DNA ligaseがよく利用される。
HindIII 切断点の例
DNAリガーゼ
とは?HindIIIで切断 したDNA断片 同士を連結す る場合
リガーゼ
二重らせん構造の中で隣り合う3'-水酸基と5'-リン酸基 の間をリン酸ジエステル結合でつなぐ。
反応にはATPが必要
プラスミド
(plasmid) は細胞内で複製され、娘 細胞に分配される染色体外で存在するDNA分 子の総称。細菌や酵母の細胞質内に存在し、染色体の DNAとは独立して自律的に複製を行う。一般 に環状2本鎖構造をとる。
遺伝子工学分野においては、遺伝子組み換え の際にベクター(目的DNA断片を目的の細胞内 に導入する際の運び屋)として多く用いられる
組換えプラスミドを見分けるための様々な工夫
(大腸菌への抗生物質耐性付与など)
AmpR
T4ファージ由来のT4 DNAリガーゼ が用いられることが多い。末端に相 補的な一本鎖が突出している粘着 末端の場合、対合した二本鎖に作用 することで高効率に反応が進むが、
T4 DNAリガーゼを用いると条件次 第で突出のない平滑末端を結合さ せることもできる。
http://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textbook/geneteng.htm
DNAシーケンシング
(塩基配列の決定)
目的の DNA (断片)の塩基配列を調べる
Sanger-dideoxy法(ダイデオキシ法)
サンガーらが1975年にその原理を発表して以来様々な改良が加 えられてきた。DNAポリメラーゼによる合成を利用することから「酵 素法」とも呼ばれ、現在では未知のDNA断片の塩基配列を決定す るのにはもっぱらこの方法が用いられている。
ddNTPは3’末端にーOH基を持たないので、
DNA合成過程で、dNTPの代わりにddNTPが 取り込まれるとそこで鎖の伸長が停止する。
http://www.sci.kumamoto-u.ac.jp/bio.iden/takano/14_jyugyo/14_tokuron/kitagawa-2.html
DNA 合成
フォスフォ ジエステル 結合
5’
3’
5 ’
3 ’
dNTP
deoxyribonucleotide triphosphate
ddNTP
dideoxyribonucleotide triphosphate OH
H
ここが
Hだと、
次のヌクレオチドが結合できない。
電気泳動により、1塩基差で分離
3’・・・ATCGGTGACTACTTAAGCGCGAT・・・・・・・・・・・・
5’ TAGCCACTG
合成 3’
配列を決めたいDNA(鋳型DNA ): DNApol., dNTP, ddNTP+
* ** * プライマー
⼤腸菌や真核細胞で 遺伝⼦を発現させる
遺伝子の 機能解析 や 有用タンパク質の 生産
もう⼀歩先へ
目的の遺伝子の単離、クローン化
目的に応じた加工を行い
ハサミ(制限酵素)とノリ( DNA リガーゼ)で
塩基配列が判明している領域を利⽤
して、解析したいDNA領域をクロー ニングせずに⼤量に増やす⽅法
PCR
Taqポリメラーゼ
好熱菌(こうねつきん)は、至適生育温度 が45℃以上、あるいは生育限界温度が 55℃以上の微生物の総称。特に至適生育 温度が80℃以上のものを超好熱菌と呼ぶ。
極限環境微生物の一つ。 熱水噴出孔の一つブラックスモーカー
Taqポリメラーゼの構造
Taqポリメラーゼはイエローストーン国立 公園の温泉中に生息するThermus
aquaticus YT1という好熱性真正細菌か ら単離されたもので、90℃以上の高温で も比較的安定であるため、PCRに利用さ れている。
1993年 キャリー・マリスが耐熱性DNAポリメラーゼを用いた PCRの研究によりノーベル化学賞を受賞する。
https://www.earthtripper.com/most-barren-and- lifeless-places-earth/page/7
http://www.wikiwand.com/ja/%E7%86%B1%E 6%B0%B4%E5%99%B4%E5%87%BA%E5%AD%
94
https://microbewiki.kenyon.edu/index.php/File:Taq_polymerase.jpg
定量PCR
リアルタイムPCR
定量RT-PCR
定量PCRの一つ。ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) による増幅を経時的(リアルタイム)に測定す ることで、増幅率に基づいて鋳型となるDNAの 定量を行なう。
リアルタイムPCRの一つ。逆転写ポリメラーゼ連鎖 反応(reverse transcription とPCRを組み合わせたも の; RT-PCR)を用いて少量のmRNAの定量を行う。こ れにより特定の時間、細胞、組織での遺伝子の発 現を容易にみることができる。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の 産物(DNA) を定量できるように 改良した方法。
細胞で発現している遺伝子産物の構造を調べる目的で,mRNAのヌクレオチド配列を決 定することが行われる。mRNAは3’末端にポリ(A)鎖をもつので,オリゴ(T)をプライマーと して
逆転写酵素
を作用させると,mRNAに相補的なDNA鎖が合成 できる。RNaseH処理でmRNAを 部分分解後,生じた1本鎖DNAを 鋳型としてDNAポリメラーゼで 2本鎖にし,クローニングに用い られる。
cDNA合成
逆転写酵素
RNaseH