Levi 平坦面の Diederich–Fornaess 指数の 大域評価の CR 幾何的証明
足立真訓
GAIA, POSTECH /名大・多元数理
2015年3月23日
日本数学会2015年度年会幾何学分科会 at明治大学
Levi 平坦面とは? (簡単のため, 多様体等はC∞を仮定) Levi 平坦 CR 多様体:
複素多様体による余次元1 (非特異)葉層 (Levi 葉層)を持つ多様体. Levi 平坦面:
複素多様体内に実超曲面として実現された Levi 平坦CR多様体.
⇐⇒ 非特異複素超曲面により foliate された実超曲面. 例:C×R⊂C2 は Levi 平坦面.
未解決問題の例
複素射影空間CPn内にコンパクトな Levi 平坦面はあるか?
CPnにおけるPoincar´e–Bendixson の定理の類似?(1980s) n≥3での非存在. Lins Neto (1999), Siu (2000)
Levi 平坦 CR 多様体を Levi 平坦面として実現できるのはいつか?
コンパクト葉のホロノミーに制約. Barrett, Inaba (1990頃)
多変数関数論による伝統的なアプローチ
Levi 平坦面 (葉層構造) を強擬凸面(接触構造)により, どの程度近 似できるか?(近似することで, 解析を行えるか?)
定義(Diederich–Fornaess指数, 1977)
X: 複素多様体, Ω⋐X: 相対コンパクト領域, M =∂Ω: 実超曲面. M =ρ−1(0) (0は正則値) と表す実関数ρ に対して,
ηρ:= sup{
η ∈(0,1]| ∃K ⋐Ω,i∂∂(−|ρ|η)>0onΩ\K}
∪ {0}.
η(Ω) := supρηρ. 注意
ηρ>0 =⇒ M に十分近いρ のレベル集合は強擬凸.
あるρに対し ηρ= 1 が達成される ⇐⇒ M 自身が強擬凸.
実際, Bergman 射影の Sobolev 評価に関わる. cf. (Kohn, 1999),
Levi 平坦境界の領域の DF 指数に関する既知の結果
X: (n+ 1)次元複素多様体, Ω⋐X: 相対コンパクト領域. M =∂Ω: (2n+ 1)次元コンパクト Levi 平坦面.
1. (Fu–Shaw, A.–Brinkschulte, to appear) η(Ω)≤1/(n+ 1).
2. (A., 2015) η(Ω)はM の正則法束NM1,0 (=C⊗TM/TF, FはMの Levi 葉層) の Hermite計量h2の leafwise Chern接続形式αh, 曲 率形式Θhに関する上限値として表せる.
系. (2n+ 1)次元コンパクト Levi 平坦面の正則法束NM1,0のいかなる計 量h2に対しても, 不等式iΘh>iαh∧αh/nは成立しない.
問題
系は(Levi平坦面とは限らない)コンパクトLevi平坦多様体に対し ても成立するか?
主結果
Yes. (2n+ 1)次元コンパクト Levi 平坦多様体の正則法束NM1,0のいか なる計量h2に対しても, 不等式iΘh>iαh∧αh/nは成立しない.
証明 Mは有向と仮定してよい. NM1,0の計量h2に対し, h により正規化 した Levi 分布の定義1形式をηhとおく. 仮に iΘh>iαh∧αh/n なら,
0<
∫
M
(iΘh− 1
niαh∧αh)n∧ηh
=
∫
M
d (
(iΘh−1
niαh∧αh)n−1∧iαh∧ηh
)
= 0
となり矛盾.
注意 従来の証明は, K¨ahler 計量i∂∂(−|ρ|η) によるMの除外近傍の体 積の増大度を評価していた.
(Bejancu–Deshmukh, 1996)
K¨ahler曲面(X,JX,g)内のコンパクト有向Levi平坦面Mを考える. gに よりM をRiemann多様体とみなす. Mの単位法ベクトル場νをとり, Reeb ベクトル場をξ:=−JXνで定める. この時,Mのξ方向の Ricci曲 率 RicM(ξ, ξ)≤0となる点がある.
別証明 Levi 葉層Fの葉のM内での Gauss–Kronecker 曲率 (型作用 素の行列式)をGF/Mで表す. 葉はX 内で極小なので, GF/M ≤0.
一方, K¨ahler計量g からHermite計量h2をNM1,0に誘導すると, 4(iΘh−iαh∧αh)∧ηh= (RicM(ξ, ξ)−2GF/M)dvolM. M 上積分すると0なので, RicM(ξ, ξ)≤0となる点の存在が従う.