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0.序論“腐朽材のブロックせん断試験について”

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(1)

褐色腐朽がブロックせん断試験に及ぼす影響

環境資源学専攻 修士課程

石原 亘

(2)

0.序論“腐朽材のブロックせん断試験について”

0.1 緒言

腐朽材の強度試験は古くより数多く行われているが、その殆どは圧縮試験または曲げ試験で ある1)。しかし、両試験には以下の問題点が挙げられる。

① 圧縮試験については、加力面に腐朽が生じた場合、そこのつぶれが主となり圧縮抵抗し ているとは言い難い。

② 曲げ試験については、試験体寸法が大きくなるため試験体数が制限される。

また、木材の規格試験には圧縮試験、曲げ試験の他に、せん断試験(ブロックせん断試験)

が挙げられるが、腐朽材のせん断試験に関する研究は過去に水本2)、遠藤3)らが行っている もの報告例が少なく、また既に報告されている例であっても、腐朽材の圧縮試験と同様に、加 力面に腐朽が生じた場合のつぶれの影響を考慮されていない。

そこで、本論ではJISせん断強度試験(JIS Z 2101)の試験体に加工を施し、腐朽材の試験 に適用する方法を考案した。その上で、せん断強度試験を用いた木材の腐朽機構に関する2つ のテーマを設定し、それぞれについて研究を行うこととした。以下に設定したテーマの題目及 び概要を記す。

テーマ①

“トドマツ及びスギ高温乾燥材の腐朽によるせん断強度の変化”

〈概要〉

近年、需要が高まっている針葉樹高温乾燥材は、生産性や寸法安定性に優れているものの、

耐朽性の面で懸念が持たれている。そこで、トドマツおよびスギの高温乾燥材と天然乾燥材に 強制腐朽処理を施し、腐朽によるせん断強度、及び質量減少率の変化を比較した。

テーマ②

“エゾマツ初期腐朽段階におけるせん断破壊面の観察”

〈概要〉

褐色腐朽菌は、腐朽のごく初期段階において木材強度を速やかに低下させる。しかし、その メカニズムに関しては不明な点が多く、またその予測も困難である。引張試験と比較してブロ ックせん断試験は容易に破壊面が得られることに着目し、本研究では、木材の初期腐朽段階に おけるせん断破壊面の変化を観察し、木材の腐朽機構に関する考察を行うと共に、破壊面観察 による劣化診断の可能性について検討した。

(3)

0.2 腐朽材のブロックせん断試験

今回の研究では、JIS せん断試験(通称“ブロックせん断試験”、もしくは“椅子型せん断 試験”)を腐朽材に適応できるように改良を加え、各テーマに取り組んだ。ブロックせん断試 験の概略図及び標準試験体寸法は図-0.2.1に示す。

なお、腐朽材のブロックせん断試験を行うにあたっては、加力面に腐朽が生じた場合に、加 力による“つぶれ”を防がなければならない。そこで、腐朽菌の菌糸が木口面より侵入するこ とを利用し、図-0.2.2に示す方法で選択的にせん断破壊面のみを腐朽させる方法を考案した。

以下、本論において腐朽材における“せん断試験体”は図-0.2.2に示す加工を行うものとし た。

図-0.2.1 せん断試験JIS Z 2101の標準試験体外略図 全体寸法 20×20×30mm 切り欠き部寸法 10×20×10mm

せん断破壊面

(4)

〈ブロックせん断試験体の加工過程〉

試験体(20×20×30mm)全体にエポキシ樹脂を塗布。

試験体中央部にスリット(10mm)を入れる。

試験体を菌叢に接地

スリット付近を選択的に腐朽させる

腐朽処理後、試験体を成型

せん断面に腐朽の影響が選択的に現れる試験体を得る

図-0.2.2 考案した“腐朽材に適応したブロックせん断試験”の加工法

(5)

テーマ①

トドマツ及びスギ高温乾燥材における

腐朽によるせん断強度の変化

(6)

1.トドマツ及びスギ高温乾燥材における

腐朽によるせん断強度の変化

1.1 背景と目的

近年、天然乾燥材と比較して寸法安定性等に優れる高温乾燥材の需要が高まってきている。

高温乾燥材の主な特徴としては以下の点が挙げられる4)

① 乾燥時間が 1/5~1/2 に短縮でき、乾燥コストの低減が図られる(但し、単位時間当たり に消費されるエネルギーは標準条件に対し数倍となる)。

② 低温や中温条件に比べ材面割れが少ない。

③ 載荷乾燥を併用することにより、標準温度よりも狂いが抑制できる。

④ 材色が変化する(但し、焼け色は材表面を切削することによってかなり低減できる)。

⑤ ヤニ滲出効果がある。

⑥ 乾燥スケジュールによっては、内部割れが発生する可能性がある。

⑦ 強度低下の可能性がある。但し、温度条件や処理時間によって異なり、適正な高温スケジ ュールを適用することにより利用上の問題はない。

また、⑦については高温乾燥による強度低下には異方性があることも指摘されている5)。 上記のように、高温乾燥材には多少の短所、あるいは留意点があるものの、木材利用上のメ リットは大きい。

しかしながら、樹種や乾燥温度等の条件にもよるが、高温乾燥処理が耐朽性の低下を引き起 こす例も知られている。例えば、120~140℃の高温で乾燥したスギ材のオオウズラタケに対 する耐朽性は天然乾燥・中温乾燥したスギ材のそれと比べて大幅に低下するとの報告がある6)

7)。なお、その要因としては、高温乾燥による抽出成分の揮発あるいはヘミセルロースの変質 との関係が指摘されている8)

こうした耐朽性の低下は、褐色腐朽菌による強度の急速な低下を招きかねない。そこで本研 究では、トドマツ(Abies sachalinensis)およびスギ(Cryptomeria japonica)の高温乾燥材 と天然乾燥材に強制腐朽処理を施し、前章で述べたブロックせん断試験を用い、腐朽によるせ ん断強度、及び質量減少率の変化を比較することにした。

(7)

1.2 実験材料及び実験方法 1.2.1 トドマツ高温乾燥材

本研究では、トドマツ材及びスギ材のそれぞれについて、2種類の高温乾燥材と天然乾燥材 を用意した。トドマツにおいては、105 ㎜角 3m正角材 19 本から切り出した 500 ㎜長さの木材 を、図-1.2.1 に示すように屋内にて天然乾燥させ、残り 2.5m材を高温乾燥処理に供した。正 角材 19 本のうち、9 本を表1に示す乾燥条件TA、残り 10 本を乾燥条件TBで、北海道立林 産試験場内にて高温乾燥処理を行った。各乾燥条件の乾燥スケジュールを表-1.2.1 に示す。

なお、図-1.2.2 に示すようにトドマツの高温乾燥材の乾燥処理による材の変色は、両者とも 微かにキツネ色になる程度であった。なお、トドマツの高温乾燥処理は北海道立林産試験場に て行った。

図-1.2.1 トドマツの天然乾燥(上から2~3段目)

(8)

表-1.2.1 トドマツ高温乾燥材の高温乾燥スケジュール

図-1.2.2 トドマツ:乾燥条件による見た目(材色)の違い 天然乾燥材 乾燥条件TA 乾燥条件TB

(9)

1.2.2 スギ高温乾燥材

スギの天然乾燥材には屋内に桟積みにした 120 ㎜角 3m正角材 29 本を用いた。スギの高温 乾燥材には、表-1.2.2 に示す乾燥条件の、市販の 2 種類(SA、SB)の 120 ㎜角 3m正角材 各 6 本を用いた。但し、市販の高温乾燥材の詳細な乾燥スケジュールは企業秘密に当たるため、

表 1.2.2 に記載される数値はあくまでも参考値である。

今回の実験では、トドマツ材と異なりスギ材は天然乾燥材と高温乾燥材の木材を異なる経路 で入手しているため、単純に比較することはできないが、これら高温乾燥材の心材は天然乾燥 材と比べて大きく色合いが変化していた。図-1.2.3 に示すように天然乾燥材の心材が赤褐色 であるのに対し、高温乾燥材の心材は茶褐色を呈していた。

表-1.2.2 スギ高温乾燥材の乾燥スケジュール

(10)

図-1.2.3 スギ:乾燥条件による見た目(材色)の違い 天然乾燥材 乾燥条件SA 乾燥条件SB

(11)

1.2.3 試験体の作製

本研究では、JISブロックせん断試験と並行して、JIS耐朽性試験(JIS Z 2101)による質量 減少率の測定を行った(この試験の手順については後述し、ここでは試験体の作製手順のみを 述べる。なお、質量減少測定用の試験体の寸法は20×20×20㎜である)。

試験体の製作手順であるが、トドマツの場合、各正角材の 15 年輪以上の年輪位置から 20×

20×250 ㎜の材を切り出し、この材より 20×20×30 ㎜のせん断試験体を 4 体以上(コントロ ール 2 体、腐朽処理 2~6 体)、20×20×20 ㎜の質量減率測定用の試験体を作製した。せん断 試験体はせん断面がR(柾目)方向とT(板目)方向のものを約半数ずつ用意した。また、腐 朽材の腐朽期間は3週間、4週間、5週間の3種を設定した。

スギの場合、正角材の 15 年輪以上の心材から 20×20×500 ㎜の材を切り出し、天然乾燥材 ではこの材より 20×20×30 ㎜のせん断試験体を 6 体(コントロール 2 体、腐朽処理 4 体)作 製し、高温乾燥材では 9 体(コントロール 3 体、腐朽処理 6 体)、これに加えて腐朽処理試験 体と同数の質量減少率測定用の試験体を作製した。また、トドマツと同様、せん断試験体はせ ん断面がR(柾目)方向とT(板目)方向のものを約半数ずつ用意した。また、腐朽材の腐朽 期間はスギの耐朽性がトドマツ等より高いことを勘案して、3ヶ月と5ヶ月の2種を設定した。

せん断試験体の総製作個数を表-1.2.3、表-1.2.4に示す。ブロックせん断試験は“バラつき”

が大きくなりがちであるため、その欠点を補うべくサンプル数の確保には留意した。トドマツ、

スギ共に総計で200体以上の試験体を作製した。

表-1.2.3. トドマツ:せん断試験体の作製個数  

せん断面 柾目(R) 板目(T) 柾目(R) 板目(T) 柾目(R) 板目(T) 合計

コントロール 19 19 9 9 10 10 76

腐朽3週間 18 17 7 8 8 9 67

腐朽4週間 18 17 9 9 10 10 73

腐朽5週間 10 10 3 3 6 7 39

合計 65 63 28 29 34 36 255

天然乾燥 乾燥条件TA 乾燥条件TB

表-1.2.4 スギ:せん断試験体の作製個数  

せん断面 柾目(R) 板目(T) 柾目(R) 板目(T) 柾目(R) 板目(T) 合計

コントロール 28 28 12 6 11 6 91

腐朽3ヶ月 28 27 12 6 11 6 90

腐朽5ヶ月 28 27 12 6 11 6 90

合計 84 82 36 18 33 18 271

乾燥条件TA

天然乾燥 乾燥条件TB

(12)

1.2.4 試験手順及び腐朽処理

【せん断試験】

せん断試験は、前述のようにJIS Z 2101 に規定されるせん断試験(“ブロックせん断試験”

もしくは“椅子型せん断試験”)に準じて行った。この試験では、木材の繊維方向のせん断強 度は、“いす型”のせん断試験による一面せん断試験によって求められ、せん断破壊を起こさ せるための最大荷重P(N)、せん断面積A(mm)より、せん断強度τを以下の式で求める。

なお、試験体には一定速度で荷重をかけ、負荷開始から1~2分で破壊するように試験を行う。

せん断強度τ=P/A (MPa)

ただし、この方法によるせん断試験は純粋にせん断強度のみを評価しているとは言い難く、

あくまで相対値であることを留意しなくてはならない(よって、この場合のせん断強度は“ブ ロックせん断強度”と呼称するのが適切であるが、本論では便宜上、以降も“せん断強度”と 記載する)。このことについては、テーマ②“エゾマツの初期腐朽段階におけるせん断破壊面 の観察”の中で詳しく記述することとする(2.4.2 参照)。

なお、腐朽材の試験に際しては、腐朽終了後屋内にて天然乾燥させ(調湿)、質量が恒量に 達してから(即ち、気乾含水率に達してから)試験に供することとした。

【耐朽性試験】

質量減少率は、前述のようにJIS Z 2101に規定されている耐朽性試験に準じて行なった。

実験の手順は以下の通りである。

① 規定寸法(20×20×20cm)の試験体を作製する(前項参照)。 ② 質量を測定し、密度を計算する。

③ 60℃、48時間で乾燥を行った後、直後に試験体の質量を測定する。

④ せん断強度試験体と同時に強制腐朽処理を行なう。

⑤ 強制腐朽終了後、60℃、48時間で乾燥を行い、質量を測定する。

⑥ ③⑤の結果より、質量減少率を計算する

以上である。なお、③⑤の過程では質量が恒量に達していることを前提としている。

(13)

【腐朽処理】

①腐朽菌の培養

腐朽菌の培地は、適当な培養容器に石英砂を敷き、標準培養液(D‐グルコース4.0%、麦芽 抽出物1.5%、ペプトン0.3%)及びエゾマツ木粉を少量入れて作製した。培地は菌糸培養前に、

オートクレープ(121℃、15分間)及び殺菌灯(約30分間照射)によって滅菌処理を行った。

②試験体の腐朽

強制腐朽に使用した褐色腐朽菌はオオウズラタケ(Fomitopsis palustris)であり、標準的 な試験菌種として広く用いられている腐朽菌である。菌床に腐朽菌を接種後、1週間程度培養 した後に、試験体の菌叢への接地を行った。なお、培養及び強制腐朽処理は恒温恒湿環境(気

温26℃、湿度98%)の下で行った。せん断試験体及び耐朽性試験体(質量減少測定用試験体)

は、菌叢接地前にオートクレープ(121℃、15分間)及び殺菌灯(約30分間照射)による滅 菌処理を予め行った。試験体の強制腐朽の様子を図-1.2.4に示す。

試験体の腐朽期間は前項で述べたように、トドマツ材では2週間、3週間、4週間の3種類 を設定、スギ材では3ヶ月と5ヶ月の2種類を設定した。

なお、本テーマにおける一連の腐朽処理に関しては、秋田県立大学木材高度加工研究所に依 頼して行った。

図-1.2.4 試験体の強制腐朽の様子

(14)

1.2.5 滅菌による質量減少について

本実験においては、腐朽処理段階前にオートクレープ(121℃、15分間)で試験体を滅菌す るが(1.2.4 参照)、ごく短時間であっても高温下に試験体が曝されるため、例えば抽出 成分の揮発によって質量が減少し、適正に質量減少が測定できない懸念がある。そこで、一連 の滅菌処理で質量が変化するか否かを確認するための検定試験(以下“質量減少検定試験”と 呼称)を行った。手順を以下に示す。

【質量減少検定試験】

① トドマツの場合は天然乾燥材、高温乾燥材(TA 及び TB それぞれ)から無作為に選ん だ5体、スギの場合は天然乾燥材から無作為に選んだ13体、高温乾燥材(TA及びTB それぞれ)全6体より、心材部から20×20×20mmの試験体を3体ずつ作製した。

② 60℃48時間で乾燥を行った後、直後に試験体の質量を測定する。

③ 質量測定後、滅菌時と同様のオートクレープ(121℃、15分間)による処理を行う。

④ オートクレープによる処理の後、再び 60℃48 時間で乾燥を行い、乾燥後に質量を測定 する。

⑤ ②④の結果より質量減少率を求め、滅菌による質量の変化を推定する。

この試験の詳細な結果については次章(1.3.3)で述べるが、おおよそ滅菌による質量減 少は無いものと推定された。

(15)

1.3 結果

1.3.1 試験結果(トドマツ)

以下にトドマツ材の試験結果を記述する。図-1.3.1に質量残存率と腐朽期間の関係、図-1.3.2 にせん断強度と腐朽期間の関係、図-1.3.3 に腐朽によるせん断強度の変化を示す。また、表

-1.3.1に結果をまとめた。トドマツの場合、今回設定した腐朽期間では腐朽によるせん断強度

の低下を観測することができなった。

質量減少も際立った差異はみられなかったが、4週目及び5週目で天然乾燥材と高温乾燥材 TBの平均に有意差が認められた(有意水準5%:両側t検定)。高温乾燥材TAに関してもご く一部の試験体で質量減少がみられた。

図-1.3.4に示すせん断強度減少率と質量減少率の関係をみると、一部の試験体でせん断強度 および質量の両方が低下していた。しかし、30%近い質量減少がありながら強度が全く低下し ていない試験体もあり、本実験における質量減少率の測定結果がせん断試験体と適正に対応し ていたか疑問が残った。

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110

腐朽期間

質量残存率(%)

天然乾燥材 高温乾燥材TA 高温乾燥材TB 平均値

3週間 4週間 5週間

図-1.3.1 質量残存率と腐朽期間の関係(トドマツ)

(16)

0 2 4 6 8 10 12 14 16

腐朽期間

せん断強度(MPa)

天然乾燥材 高温乾燥材TA 高温乾燥材TB 平均値

コントロール 3週間 4週間 5週間

図-1.3.2 せん断強度と腐朽期間の関係(トドマツ)

0 2 4 6 8 10 12 14 16

0 2 4 6 8 10 12 14 16

コントロール せん断強度(MPa)

腐朽処理材  せん 断強度( M P a)

天然乾燥材

高温乾燥材TA

高温乾燥材TB

(17)

表1.3.1 試験結果まとめ(トドマツ)

腐朽期間 非腐朽 腐朽3週間 腐朽4週間 腐朽5週間

せん断強度(MPa) 7.9±1.6 8.5±1.5 9.1±2.0 9.0±2.6

質量減少率(%) - 0.2±1.2 0.2±.07 0.1±0.7

 

腐朽期間 非腐朽 腐朽3週間 腐朽4週間 腐朽5週間

せん断強度(MPa) 6.6±1.6 8.1±1.7 7.7±1.8 8.0±1.9

質量減少率(%) - 2.2±4.0 1.9±5.7 8.1±11.0

 

腐朽期間 非腐朽 腐朽3週間 腐朽4週間 腐朽5週間

せん断強度(MPa) 6.9±1.9 7.8±1.7 8.8±2.1 7.9±2.2

質量減少率(%) - 2.9±6.5 4.1±6.7 8.6±10.1

平均値±標準偏差

トドマツ天然乾燥材

トドマツ高温乾燥材TA

トドマツ高温乾燥材TB

0 20 40 60 80 100 120

-10 0 10 20 30 40

質量減少率(%)

せん断強度残存率(%)

天然乾燥材 高温乾燥材TA 高温乾燥材TB

図-1.3.4 腐朽処理材のせん断強度減少率と質量減少率の関係(トドマツ)

(18)

1.3.2 試験結果(スギ)

図-1.3.5に質量残存率と腐朽期間の関係、図-1.3.6にせん断強度と腐朽期間の関係、図-1.3.7 に腐朽によるせん断強度の低下を示す。また、表-1.3.2に結果をまとめた。スギの場合、顕著 な質量減少も高温乾燥材(とりわけSA)の試験体に散見された。また、天然乾燥材のせん断 強度が腐朽処理後もほぼ変化していないのに対して、高温乾燥材において急激なせん断強度の 低下がみられ、ほとんど強度を保てていない試験体も多数みられた。腐朽期間3ヶ月、5ヶ月 ともに、天然乾燥材と高温乾燥材TA及びTBの平均には有意差があった(有意水準5%:両 側t検定)。

図-1.3.8にはせん断強度減少率と質量減少率の関係、図-1.3.9に腐朽処理材におけるせん断 強度と密度の関係も示した。質量減少と比してせん断強度の低下が急速であることが伺える。

なお、図-1.3.10 に示すように、せん断面の方向(R方向及びT方向)による差は今回の実験 では特にみられなかった。

このように、スギの場合は天然乾燥材と高温乾燥材との間に耐朽性の差がみられ、図-1.3.11 に示すように、腐朽時において高温乾燥材の試験体が腐朽菌糸で包まれているのに対し、天然 乾燥材では腐朽菌糸を肉眼で確認することができなかった。

しかしながら、今回の試験においてスギの質量減少率に関しては疑問点が残った。つまり、

天然乾燥材のほとんどの試験体が、強度低下を伴わないにも関わらずほぼ均一に 10%程度の 質量減少を示していたのである。これに関しては次項で述べる。

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110

腐朽期間

質量残存率(%) 天然乾燥材

高温乾燥材SA 高温乾燥材SB 平均値

3ヶ月 5ヶ月

(19)

0 2 4 6 8 10 12 14 16

腐朽期間

せん断強度(MPa)

天然乾燥材 高温乾燥材SA 高温乾燥材SB 平均値

コントロール 3ヶ月 5ヶ月

図-1.3.6 せん断強度と腐朽期間の関係(スギ)

0 2 4 6 8 10 12 14 16

0 2 4 6 8 10 12 14 16

非腐朽材のせん断強度(MPa)

腐朽材のせん断強度(MPa)

天然乾燥材 高温乾燥材SA 高温乾燥材SB

図-1.3.7 腐朽によるせん断強度の変化(スギ)

(20)

表-1.3.2 試験結果まとめ(スギ)

腐朽期間 非腐朽 腐朽3ヶ月 腐朽5ヶ月

せん断強度(MPa) 7.3±1.4 8.5±1.8 8.6±2.1

質量減少率(%) - 1.0±6.6 3.6±12.3

 

腐朽期間 非腐朽 腐朽3ヶ月 腐朽5ヶ月

せん断強度(MPa) 6.6±1.6 1.8±1.6 1.4±2.3

質量減少率(%) - 24.4±9.2 39.1±8.6

 

腐朽期間 非腐朽 腐朽7ヶ月 腐朽9ヶ月

せん断強度(MPa) 7.4±2.2 5.7±3.4 3.7±3.8

質量減少率(%) - 10.2±17.1 24.3±18.7

平均値±標準偏差 スギ天然乾燥材

スギ高温乾燥材SA

スギ高温乾燥材SB

0 50 100 150 200 250

0 10 20 30 40 50 60 70

質量減少率(%)

せん断強度残存率(%)

天然乾燥材 高温乾燥材SA 高温乾燥材SB

(21)

0 2 4 6 8 10 12 14

0 100 200 300 400 500

密度(kg/m3

せん断強度(MPa)

天然乾燥材 高温乾燥材SA 高温乾燥材SB

図-1.3.9 スギ処理腐朽材におけるせん断強度と密度の関係

(22)

-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

せん断強度(MPa)

非腐朽 腐朽 3ヶ月

天然乾燥材 高温乾燥材SA 高温乾燥材SB

○ R方向平均値

△ T方向平均値

エラーバーは標準偏差を示す

腐朽 5ヶ月

非腐朽 腐朽 3ヶ月

腐朽 5ヶ月

非腐朽 腐朽 3ヶ月

腐朽 5ヶ月

図-1.3.10 せん断面(R方向及びT方向)方向別のせん断強度

(23)

図-1.3.11 スギ試験体の腐朽処理中の様子

(上)天然乾燥材 菌糸の試験体への付着が肉眼で観察できない

(下)高温乾燥材 試験体は菌糸に覆われている

(24)

1.3.3 質量減少率の補正及び質量減少の検定

【質量減少率の補正】

今回の実験では、スギ天然乾燥材の質量減少に関して疑問点が残る結果となった。スギ天然 乾燥材の腐朽後の質量と腐朽前の質量の関係を図-1.3.12 に示す。これを見ると、質量が大き く低下している数体(8 体)の試験体を除いて、ほとんどの試験体(全試験体の約 93%)に おいて一律割合で質量の減少がみられた。腐朽の影響によってこのような質量の一律した減少 がみられるとは考えにくく、ここでは腐朽以外のなんだかの要因で全試験体に同程度の質量減 少が生じたと仮定して(すなわち、これらの試験体の腐朽による質量減少率を“0”として)

実験結果の補正を試みた。図-1.3.12 にも示しているが、質量が一律減少した試験体に対して 回帰直線を設定すると、腐朽処理後の試験体質量Yは処理前の試験体質量xを用いて以下の 式で表すことができる。

Y = 0.8572ⅹ + 0.0435

この回帰式を用いて得られた Y を腐朽後補正質量とし、スギ天然乾燥材の全試験体の質量 減少率を求め直した。即ち、

質量減少率=100―(腐朽前質量/腐朽後補正質量(Y)×100)

として、質量減少率の補正を行った。質量減少補正後の結果として、質量残存率と腐朽期間の 関係を図-1.3.13、せん断強度減少率と質量減少率の関係を図-1.3.14に示す。

y = 0.8572x + 0.0435

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

腐朽処理後質量(g)

腐朽後質量が一律割合減少 腐朽後質量が大きく減少

(25)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110

腐朽期間

質量残存率 : 補正後 ( %)

天然乾燥材 高温乾燥材SA 高温乾燥材SB 平均値

3ヶ月 5ヶ月

図-1.3.13 補正後質量残存率と腐朽期間の関係(スギ)

0 50 100 150 200 250

-10 0 10 20 30 40 50 60 70

質量減少率(%)

せん断強度残存率補正後(%)

天然乾燥材 高温乾燥材SA 高温乾燥材SB

図-1.3.14 せん断強度減少率と補正後質量減少率の関係(スギ)

(26)

【質量減少率の検定】

このような一律した質量減少が生じた要因として、天然乾燥材心材部に含まれる抽出成分等 が試験体の殺菌処理(オートクレープ121℃、15分)によって失われた可能性が考えられる。

そこで、滅菌処理時に質量減少が生じるのかを確認することにした(1.2.5参照)。しか しながら、この確認試験(質量減少検定試験)においては滅菌による質量減少は確認できず、

天然乾燥材の質量が一律減少した要因について特定することはできなかった。なお、質量減少 検定試験の結果を表-1.3.3に示す。

表-1.3.3 質量減少検定試験(滅菌処理による質量減少)の結果

乾燥条件 天然乾燥 TA TB 天然乾燥 SA SB

滅菌処理による質量減少率 0.0±0.3 -0.2±0.4 -0.2±0.3 0.0±0.3 0.0±0.4 0.0±0.5

トドマツ スギ

平均値±標準偏差

(27)

1.4 まとめ及び考察

本研究で得られたデータを整理し結果をまとめると、

① トドマツにおいては、今回の腐朽期間ではほとんどの試験体で腐朽によるせん断強度の 変化はみられなかった。しかしながら、高温乾燥材の一部の試験体で腐朽によるせん断 強度の低下及び質量減少がみられた。

② スギにおいては、天然乾燥材のほとんどが腐朽処理後もせん断強度の低下がみられない のに対して、高温乾燥材の腐朽によるせん断強度の低下が著しかった。また、質量減少 も高温乾燥材の方が顕著であった。

以上より、条件によっては高温乾燥によって、耐朽性低下に伴う大幅なブロックせん断強度 の低下が生じることが示唆された。

しかし、結果から、今回行った実験において、以下に挙げる課題点もいくつか浮かび上がっ た。

① とりわけトドマツにおいて、質量減少率が顕著であるにも関わらず強度が低下していな い試験体が散見された(図-1.3.4参照)。

② スギ天然乾燥材の試験体のほとんどが、一律して 10%程度の質量減少率を示していた

(図-1.3.5、図-1.3.8参照、)。状況から判断して、腐朽処理以外の要因で質量が減少した 可能性が高い。

以上のように、質量減少の測定に関して信頼の欠けるところがあり、エンドマッチ及び同一 容器内で腐朽処理したにも関わらず、せん断試験体と質量減少測定用試験体(耐朽性試験体)

の対応が適性になされていたのか疑問が残った。せん断強度試験体の質量減少をどのように把 握するかは重要な課題であり、今後はこうした点に配慮して実験方法の改良を検討する必要が あろう。

(28)

テーマ②

エゾマツの初期腐朽段階における

せん断破壊面の観察

(29)

2.エゾマツの初期腐朽段階における

せん断破壊面の観察

2.1 背景と目的

木材の破壊面観察(フラクトグラフィー)に関しては、過去に佐伯9)や古川10)などによっ て優れた研究及び報告がなされているが、引張試験による破壊面観察がその中心となっている。

しかし、せん断破壊面の観察に関しては過去に僅かな例11)があるのみで、腐朽材のせん断破 壊面の観察に関する研究は皆無といってよい。

また、褐色腐朽菌は、質量や材色の変化を伴わない腐朽のごく初期段階において木材強度を 速やかに低下させる。しかし、その腐朽のメカニズムに関しては不明な点が多く、生物学ある いは生化学的視点から報告が数多くなされているが、いずれも仮説の域を出ない

こうした 褐色腐朽菌の特徴から、初期腐朽の検出あるいは予測も困難である。

そこで、引張試験と比較してブロックせん断試験は容易に破壊面が得られることに着目し、

テーマ②では、木材の初期腐朽段階におけるせん断破壊面(ブロックせん断破壊面)の変化を 観察し、木材の腐朽機構に関する考察を木材組織構造及び破壊力学の観点から行うと共に、破 壊面観察による劣化診断の可能性について検討した。

(30)

2.2 既往の研究

2.2.1 褐色腐朽と強度低下

褐色腐朽菌の初期腐朽(incipient decay、もしくはearly wood decay)、及び腐朽機構に関 する研究は、既に数多くの報告があり、実に多方面からのアプローチが試みられている。まず、

これら既往の研究を整理して述べたい。

褐色腐朽菌による腐朽、すなわち褐色腐朽は木材の諸強度を急速に低下させるとの報告は古 くよりなされている。例をいくつか挙げると、Richards は僅か質量減少率 1%の段階で靭性

が75%低下すると報告12、Tooleは質量減少率2%で横圧縮強度が約18%低下すると報告し

13。(国産材を用いた)日本での報告事例もいくつかあり、代表的なものに水本2や高橋1 の報告がある。こうした褐色腐朽材と木材強度に関する数多くの研究のうち、一例として先述 の水本の研究の結果をグラフにまとめたものを図-2.2.1に示す。

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100 120 140 160

腐朽日数(日)

残存率%)

縦圧縮強度残存率 曲げ強度残存率 せん断強度残存率 硬度残存率 質量残存率

図2.2.1 褐色腐朽の進行に伴う各強度指標の変化(水本の研究より編集)2)

樹種や培養環境などの諸条件、あるいは加力の方法によって多少の差こそあれ、褐色腐朽が 質量減少、あるいは材色の変化を伴わない腐朽初期段階において強度に大きな影響を与えるこ とはこうした多くの報告によって裏付けられている。また、このことは褐色腐朽による木材劣

(31)

2.2.2 初期腐朽の検出方法

褐色腐朽における劣化の把握は困難であるが、現在までに様々な検出法及び予測法が考案さ れている。そのうちの数例を紹介したい。

物理的手法において、簡便にかつ部材の保持している強度を予測する機器としてはピロディ ン(PYRODINE)が挙げられ、これは釘を一定圧力で打ち込んだ深さが数値として表示され るようになっており、条件によっては部分的な腐朽予測に有効であるとの報告がある14

非破壊的な劣化予測手法として代表的なものに、音波の伝播を利用したものが挙げられる。

しかし、音波の変化は木材の劣化がかなり進み、細胞壁の崩壊が顕著な段階に達して初めて検 出可能であること、不均一物体である木材を音が伝わる場合、信号としてはもっとも速く伝わ る経路を経るため必ずしも直線状を伝播していないことなどの点で、結果の信頼性に欠けると ころがある15

また、特徴的な劣化検出法として、今村らによって AE による検出法16、高橋らによって 赤外スペクトルを用いた方法17が提案されている。前者は腐朽初期段階の検出が可能である とのデータがあるが、AEの発生挙動が条件によって変動することから実用化には至っておら ず、後者は初期腐朽を把握するほど鋭敏な精度を有してはいないと報告されている。

このテーマにおいては、初期腐朽段階における破壊面の変化を観察すると共に、こうした劣 化予測方法への応用可能性も検討するが、このように破壊面から劣化評価を行う試みは全く行 われていなかったわけではない。まず、褐色腐朽によって木材細胞がどのように変化するかに 関しては古くより報告があり 18、腐朽材のフラクトグラフィーに関しても、過去に今村など によって、図-2.2.2に示すように腐朽材の引張破壊面が健全材のそれと比べて平滑で脆性破壊 の様相を呈することがSEM画像として示されている16。また、このように腐朽材で脆い裂片 がみられることを利用し、釘状のものを用いて木材表面から裂片を採取し、その性状を観察す

るpick testが現場での簡単な検出法として考案されており、Wilcoxによってその有効性も示

されているが 19、これもやはり初期腐朽の検出に関しては精度の鈍さが指摘できる。また、

この他にフラクトグラフィー的手法による材質劣化度の評価については古川による報告があ る 20。この研究では腐朽材を用いてはいないが、人工的に劣化(脱リグニンなどの化学的劣 化処理、熱負荷による材質劣化処理など)させた木材の引張破壊面観察を行っている。ただ、

こうした研究はそのほとんどが引張破壊面を対象としており、仮道管のせん断破壊面の変化が 腐朽状況をどれだけ反映させているのかについては研究の余地がある。

この他に、化学的な検出手法として、木材が腐朽菌の攻撃を受けると、質量減少が認められ ない段階でも木材構成成分の変化・分解が生じていることに着目し、構成成分の変化を分析す ることでこれを検出する方法が考えられる 15。もっとも、こうした方法は実際には試料調整 に手間がかかるため実用的ではないが、実際に褐色腐朽による急激な強度低下には、腐朽初期 に観測されるヘミセルロースの分解が関与しているとの報告が近年なされている212223。例

(32)

として、表-2.2.1 にSimon らによる報告を載せるが、これによれば少量のヘミセルロースの 分解であっても強度に大きな影響を及ぼすことが示唆されている。このように、初期腐朽段階 では(腐朽菌種にもよるが)わずかな構成糖の変化でも強度に大きな影響を与えている可能性 がある。今回は、こうした報告にも留意しながら破壊面観察を行うことをし、質量減少測定に 用いた試験体を用い糖分析も行い、参考までに破壊面の変化と構成糖の変化を比較することに した。

図-2.2.2 健全材(左)と褐色腐朽材(右)の引張破壊面の例(今村)16

表-2.2.1 初期腐朽段階におけるヘミセルロース減少が強度に与える影響(Simonら)21

(33)

2.3 実験材料

実験材料には主要北海道産材のひとつであるエゾマツ(Picea jezoensis)角材4本を用い、

それぞれA,B,C,D とした。表2.3.1 に各正角材のヤング率等を示す。なお、使用樹種に

エゾマツを用いた理由は、エゾマツ及びアカエゾマツは耐朽性が極めて低い道産材であり24、 短期間での腐朽実験に適していると考えたからである。

せん断試験体(コントロール含む)及び各試験体とエンドマッチさせた質量減少測定用試験 体(耐朽性試験体)を1セットとして、各角材から軸方向連続的に試験体を作製した。 各角 材あたり試験体をそれぞれ約40セット作製したが、後述する様々な不手際により実際に試験 に供することができた試験体は合計18セットに留まった。なお、各試験体の寸法はテーマ① で用いた試験体と同一で、せん断試験体が20×20×30㎜、耐朽性試験体が20×20×20㎜で ある。

表-2.3.1 使用したエゾマツ角材

正角材名 重さ(g) ヤング率(GPa)

A 3651 ×90 ×99 14044 11.6 B 3652 ×89 ×98 13812 9.8 C 3649 ×99 ×91 11774 11.9 D 3331 ×89 ×100 14214 10.5

寸法(㎜)

(34)

2.4 実験方法

2.4.1 試験方法及び腐朽処理

本研究においても、テーマ①と同様に、せん断強度及び質量減少の測定はJIS Z 2101に準じ て行った。

腐朽菌種及び培地の組成もテーマ①と同一で、前者にはオオウズラタケ、後者には標準培養 液(D‐グルコース4.0%、麦芽抽出物1.5%、ペプトン0.3%)と石英砂を用いた。培地は菌糸 培養前に、オートクレープ(121℃、15分間)及び殺菌灯(約30分間照射)によって滅菌処理 を行った。テーマ①では腐朽処理を秋田県立大学木高研にて行ったが、今回の試験においては、

菌糸は北海道立林産試験場より提供して頂き、培養及び腐朽処理は本学内の恒温室内(24℃、

湿度非制御)で行った。また、本試験では、せん断試験体と質量減少測定用試験体の対応をよ り適正にするために、図-2.4.1に示すように試験体セットごとに別々に培養瓶を用意し、培地 の作製の約2週間後に試験体を菌叢に接地させ腐朽処理を開始した。

腐朽処理に供する試験体には菌叢接地前に滅菌処理を行ったが、今回の試験では試験体に熱 負荷を与えるのを避けるため、テーマ①で用いたオートクレープ滅菌ではなく、EOG滅菌を 採用することにした。なお、EOG滅菌処理は北海道立林産試験場に代行して頂いた。

(35)

2.4.2 観察試料の作製

【観察試料の採取】

せん断強度計測終了後、試験体が2つに分離するまで(即ち、“ブロック”が分離するまで)

治具で変位を与え、観察面を露出させた。試験終了後の試験体から、図-2.4.2 に示すように、

せん断試験体の破壊面上端部及び中央部の2箇所から観察片(約6×6×1㎜)を採取し、そ れぞれ観察片A、Bとした。観察片はデシケーター内で乾燥させた後にSEM試料台(直径約 10㎜)に接着させた。観察片接着後、に白金(Pt)を蒸着させ、これを SEM 観察試料とし た。

ブロックせん断試験においては、せん断面内の位置によって応力分布状態が大きく異なるこ とが知られており、例えば応力集中が生じやすい上端部付近では引張応力、垂直応力の影響を 受けにくい中央部ではせん断応力の割合が高くなる。これについては大草の詳細な研究があり、

参考としてせん断面における応力分布の概要図を図-2.4.3 に示す 25。上記のように、ブロッ クせん断試験においてはせん断面の位置によって応力特異性があり、破壊性状も位置によって 異なる可能性があるため、上記のように複数個所(観察片A、B)から観察片を採取すること とした。また、上記理由より、観察片はあらゆる位置から採取するのが望ましいが、図-2.4.4 に示すように、健全材のせん断試験体は加力面から遠ざかるほど木理由来の凹凸が大きくなる ため、せん断面下端部からの観察片採取が困難な試験体もあり、今回の研究においては観察対 象外とした。

なお、作製したSEM観察試料の観察には高分解能走査型電子顕微鏡(SEM):JSM-6301F

(日本電子)を用いた。

図-2.4.2 観察片の採取位置

(36)

図-2.4.3 ブロックせん断試験体:せん断面における応力特異性(大草)25

(加力開始時は右図、破壊直前時は左図)

図-2.4.4 健全材のせん断破壊面における凹凸

左図:破壊面上端部、右図:破壊面下端部。下端部にかけて凹凸が大きくなる。

(37)

【コントロール試験体の観察:予備試験】

参考までに、せん断試験体のコントロール材の観察を破壊面の複数位置にて行った。破壊面 のうち、図-2.4.5に示す位置(①~⑩)より観察片を採取し、観察位置による破壊面の様相の 違いをおおまかに把握することにした。付録4.2にそれぞれ上端部、中央部、下端部の観察 写真例(倍率:×20~30)を示す。なお、図中の②及び⑤の位置における観察例は結果2.

5.2に記載した(図-2.5.3、図-2.5.4参照)。

図-2.4.5 コントロール試験体の観察片採取位置

(38)

2.4.3 表面粗さの計測

結果の章で詳細を述べるが(2・5・1参照)、腐朽の進行に伴い、せん断破壊面が平滑化 する傾向が観察された。こうした傾向を定量的に評価するために、SEM観察試料の表面をレ ーザー顕微鏡(超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK-9500、図-2.4.6)にて観察し、表面粗さ

(Ra:算術平均粗さ等)及び表面積の測定を行った。このレーザー顕微鏡での観察結果につ いては2.5.5で述べる。

図-2.4.6 超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK-9500 森林化学研究室所有

(39)

2.4.4 硬さ試験

腐朽材の規格試験のうち、硬さ試験に関する報告は過去に水本などが行っているが2)、その 例は極めて少ない。そこで、質量減少率測定(耐朽性試験)に使用した試験体(20×20×20

㎜)に対して硬さ試験を行い、ブリネル硬さを求めることにした。

ブリネル硬さは、ある物体に他の物体が接触し、圧入されるときの抵抗力であり、直径が10

㎜の鋼球を0.32mmめり込ませたときの荷重から求められる(下式参照)。

( ブリネル硬さ=  N/

2

10 P

P:圧入深さが1/π㎜となるときの荷重(N)

JIS Z 2101の硬さ試験では測定点の選択によるばらつきを防ぐために測定点3点以上の平均 値から求めることしているが、試験に供した試験体寸法が規定されている試験体に比べて極め て小さいため、各面の各1ヶ所(板目面×2、柾目面×2、木口面×2)に硬球を圧入させて、

面毎の平均を測定値とすることにした。早晩材の違いによるバラつきを出来る限り抑えるため、

各試験体における計測点には木口面を除いてある程度の統一性を持たせた。具体的には、柾目 面においては晩材を含む地点で計測、板目面では追い柾となっている場所は避けて計測した。

なお、この試験の結果は2.5.4に記載する。

(40)

2.4.5 構成糖分析

前述のように、初期腐朽においては、腐朽菌によるヘミセルロースの分解と強度低下の関連 が指摘されている。本研究では、構成糖の組成変化と、強度低下及び破壊面の変化との関係を 把握するために、質量減少測定に用いた試験体(耐朽性試験体)を、2.5.4で述べた硬さ 試験に供した後、ウィレーミルによって粉砕し、得られた木粉から構成糖の分析を行った。

構成糖分析はPettersenらの手法26などを参考に、以下の手順で行った。

〔酸加水分解〕

① ウィレーミルによって粉砕した耐朽性試験体より、木粉を約 0.5gを採取し、ビーカー に入れる。

② 72%濃硫酸を7.5mℓ加え、木粉を溶解(4時間放置)する。

③ ②を蒸留水215mℓを加え、4%濃硫酸にする。

④ ③をオートクレープにて121℃60分間、反応させる。

⑤ 反応終了後、ガラスフィルター(IG4)で濾過、残渣(クラソンリグニン)を取り除く。

〔中和〕

⑥ 濾液から20mℓを採取、30%水酸化バリウム水溶液を滴下し、濾液を中和させる。

⑦ 遠心分離機により、硫酸バリウム沈殿を除去する(上澄みのみを採取し、サンプル液と する)。

⑧ ⑦で得たサンプル液を用い、HPLCによる糖分析を行う。

なお、カラムはShodex SUGAR SP0810を用いた。HPLCによる糖分析の結果は2.5.7 に示す。

なお、腐朽処理材の糖分析を行うにあたっては、本学科森林化学研究室の浦木康光教授、幸 田圭一助教、田崎裕佳女史にご指導を頂き、多大なご迷惑おかけしました。

(41)

2.5 結果

2.5.1 せん断試験結果

せん断強度試験及び質量減少率測定(耐朽性試験)の結果を表-2.5.1に示す。なお、平均年 輪幅と比重はコントロール試験体より求めた。今回の試験では、合計で約 150 セットもの試 験体を用意したが、①何だかの要因で腐朽菌糸が不活性になり試験体の強制腐朽ができなかっ た、②培養器内の菌叢上に子実体が生じ、菌糸の栄養成長が著しく緩慢になった(培養器内に おいて発生した子実体に関する報告は本章.2.5.7参照)、③実験過程で観察面が損傷し、

適正な観察片の採取ができなかった等の理由により、腐朽材の強度測定及び質量減少率測定、

観察片作製を一貫して行うことができた試験体はわずか18セットに留まった。

しかし、図-2.5.1に示すように、せん断強度残存率と質量減少率の関係をみてみると、質量 減少が殆ど観測されていなくても強度が大幅に低下している試験体が散見され、いわゆる褐色 腐朽の“初期腐朽”をある程度再現することができた。

表-2.5.1 せん断強度試験及び質量減少率測定結果

コントロール 腐朽材

A 30 1.8 0.5 7.6 6.1 19.7 -0.9

A 33 1.8 0.4 7.1 5.8 18.4 1.0

A 34 1.8 0.4 6.4 6.5 -0.4 -2.3

A 35 2.2 0.4 6.1 5.5 10.8 -1.0

B 14 2.2 0.4 5.9 5.4 8.4 3.1

B 27 2.2 0.4 6.2 3.8 39.1 -2.2

B 28 2.2 0.4 7.4 5.2 29.5 -2.7

B 29 2.2 0.5 6.9 5.6 19.1 2.4

B 33 1.8 0.5 8.5 8.8 -4.3 6.8

B 35 2.0 0.5 8.5 7.4 13.0 -1.5

B 37 1.8 0.5 5.7 6.7 -17.8 -2.1

C 1 2.0 0.3 6.2 5.5 11.7 -4.0

C 34 2.9 0.3 5.3 1.3 75.6 17.7

C 36 2.5 0.3 4.3 4.3 -1.8 4.7

C 37 2.5 0.4 4.8 4.3 10.5 9.6

C 40 2.5 0.4 5.1 4.8 5.3 -1.1

D 29 2.5 0.5 10.2 6.0 41.6 0.3

D 30 2.5 0.5 7.4 8.0 -8.2 -1.0

せん断強度(MPa)

試験体名 平均年輪幅(㎜) 比重 せん断強度減少率(%) 質量減少率(%)

※試験体名のアルファベットは使用した角材名(2・4章参照)

(42)

0 20 40 60 80 100 120

-5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 質量減少率(%)

せん 断強度残存率 ( %)

図-2.5.1 せん断硬度残存率と質量減少率の関係

(43)

変色なし

一部に変色

全体に変色

また、せん断試験後、破壊面を目視で観察し、材の変色の程度を確認した。森林総研では、

例えばステークテスト等における目視による木材腐朽の評価法として、表-2.5.2に示す6段階 評価27を用いることが多い。これに準じて評価を行った結果、せん断試験体18 体中、ごく 部分的な軽度の変色が確認された試験体(腐朽段階1に相当)が4体、全面的に軽度の変色が 確認された試験体(腐朽段階2に相当)が1体あった。これら目視の結果とせん断強度低下及 び質量減少との関係を図-2.5.2に示す。

表-2.5.2 目視による腐朽段階の評価

目視による木材腐朽の 6 段階評価(森林総研)

0・健全

1・部分的に軽度の腐朽または虫害 2・全面的に軽度の腐朽または虫害

3・2の状態の上に部分的に激しい腐朽または虫害 4・全面的に激しい腐朽または虫害

5・虫害または腐朽によって形がくずれる

0 20 40 60 80 100 120

- 5 . 00 . 0 5 . 0 1 0 . 01 5 . 02 0 . 0 質量減少率(%)

せん断強度残存率(%)

腐 朽に よ る変 色なし 一 部に腐 朽に よ る変 色あり 腐 朽に よ る変 色あり

図-2.5.2 変色と強度残存率・質量減少率の関係

(44)

2.5.2 定性的観察結果

SEM 観察試料の定性的観察は、以下に述べる①せん断破壊面における腐朽の進行に伴う破 壊形態の変化、②せん断破壊面早材部に観察される“ささくれ”の腐朽の進行に伴う変化の2 点に着目して行った。なお、今回の研究に使用したSEM画像の全データは付録のCD-Rに収 録、そのうち一部データについては本論付録4.2に示す。

〔観察ポイント①:腐朽の進行に伴う破壊形態の変化〕

既往の木材のフラクトグラフィー研究より、細胞壁の破壊形態は(細胞)壁切断破壊

(trans-wall fracture)と(細胞)壁界破壊(inter-wall fracture)の2つに分類できる20。 図-2.5.3に示すように、壁切断破壊は文字通り細胞壁を切断するような破壊を呈し、壁界破壊 は細胞間層~S1 層で破壊を示す。腐朽が進むにつれて、せん断破壊面におけるこれらの破壊 形態がどのように変化するのかを観察した。

〔観察ポイント②:せん断面における“ささくれ” 〕

健全材の早材部せん断破壊面においては、破壊面が“ささくれ”てけばだっているように見 える。こうした“ささくれ”はせん断破壊面特有のものであり、ここではその大きさや発生頻 度を観察することにした。なお、健全材早材部のせん断破壊面にこのような“ささくれ”が生 じることは既にCoteら11によって報告されており、Coteらはこの“ささくれ”を“flags”

と表現している。

(45)

〔定性的観察の結果〕

観察結果のより詳細な記録については付録4.2を参照するものとする。ここでは以下図

-2.5.4~図2.5.15に抜粋した10例のSEM観察例(倍率:×50)を示すことにした。

図-2.5.4 健全材の定性観察例:観察片A

・晩材部は壁界破壊、早材部は壁切断破壊を示した。早材部では多くの大小の“ささくれ”がみられた。

図-2.5.5 健全材の定性観察例:観察片B

・晩材部は壁界破壊、早材部は壁切断破壊を示した。

・早材部では多くの大小の“ささくれ”がみられた。また、の一部(画像右下)で“段差”がみられた。

(46)

図-2.5.6 腐朽処理材(せん断強度減少率0%未満)の定性観察例:観察片A

・晩材部は健全材同様に壁界破壊、早材部は壁切断破壊を示した。

・早材部では多くの“ささくれ”がみられ、複数仮道管による大きなものもみられた。

図-2.5.7 腐朽処理材(せん断強度減少率0%未満)の定性観察例:観察片B

(47)

図-2.5.8 腐朽処理材(せん断強度減少率約20%)の定性観察例:観察片A

・晩材部は健全材同様に壁界破壊、早材部は壁切断破壊を示した。

・早材部では“ささくれ”が確認できるが、仮道管断片由来の小さいものが主となった。

図-2.5.9 腐朽処理材(せん断強度減少率約20%)の定性観察例:観察片B

・晩材部は健全材同様に壁界破壊、早材部は壁切断破壊を示した。

・早材部では“ささくれ”が多数確認できた。

(48)

図-2.5.10 腐朽処理材(せん断強度減少率約30%)の定性観察例:観察片A

・晩材部は主に壁界破壊(一部壁切断破壊)、早材部は壁切断破壊を示した。

・早材部では“ささくれ”が確認できたが、その構成要素は小さくなっているように思える。

図-2.5.11 腐朽処理材(せん断強度減少率約30%)の定性観察例:観察片B

(49)

図-2.5.12 腐朽処理材(せん断強度減少率約40%)の定性観察例:観察片A

・晩材部は健全材同様に壁界破壊、早材部は壁切断破壊を示した。

・ 早材部では目立った“ささくれ”はほとんど確認できず、散見される程度であった。

・ 早材部仮道管に微小クラックが散見された。これに関しては、2.5.4を参照とする。

図-2.5.13 腐朽処理材(せん断強度減少率約40%)の定性観察例:観察片B

・晩材部は健全材同様に壁界破壊、早材部は壁切断破壊を示した。

・ 早材部においては、 “ささくれ”は散見される程度で、直線的な破壊部もみられた。

(50)

図-2.5.14 腐朽処理材(せん断強度減少率約75%)の定性観察例:観察片A

・晩材部、早材部共に壁切断破壊を示し、破壊形態の移行が認められた。

・早材部においては、 “ささくれ”が全く見られない。

図-2.5.15 腐朽処理材(せん断強度減少率約75%)の定性観察例:観察片B

(51)

先に述べた2つの観察ポイントから定性的観察結果をまとめると、以下の点が示唆された。

① 晩材部における破壊形態の移行は初期腐朽段階では見られなかった。

② 早材部の“ささくれ”は初期腐朽段階においても矮小化する傾向がみられた。

③ 腐朽による強度低下がみられなかった試験体においては仮道管由来の“ささくれ”がみ られたが、腐朽の進行に伴い仮道管断片由来の“ささくれ”が主となった(即ち、腐朽 の進行に伴って“ささくれ”の構成単位が小さくなる傾向にあった)。

④ 観察片 A とB ではさほど差異は見られなかった(少なくとも、破壊形態及び“ささく れ”には目立った差異はなかった)。しかし、観察片B には時として早材部などに“段 差”が見られた。

以上より、“ささくれ”が初期腐朽を把握する上でのキーポイントになると考えられた。2.

5.3ではこの“ささくれ”の定量評価の可能性について検討する。

(52)

2.5.3 表面粗さの計測結果

2.5.2で述べたように、早材部破壊面に生じる“ささくれ”は腐朽の進行に伴い矮小化 していく傾向がみられた。また、破壊形態の移行は腐朽がある程度進行しなければ見られない 一方で、早材部の“ささくれ”の矮小化は初期腐朽段階においても進行しているように思われ た。

そこで、この“ささくれ”の定量評価を試みることにし、2.4.3で述べたようにレーザ ー顕微鏡を用いて、各観察試料(観察片A、B)の表面粗さ及び表面積を測定した。なお、今 回は用いた表面粗さの指標はRa:算術平均粗さ、Rq:RMS(二乗平均粗さ)、の2つであり、

概要を以下の図-2.5.16 に示す 28。表面粗さの指標としては、この他代表的なものに Ry:最 大高さがあるが、これは高低差の著しい観察試料には不向きであるため今回の計測では省略し た。

図-2.5.17、図-2.5.18にこれら各指標の計測結果を、図-2.5.19に3D観察画像の例を示し た。観察片 A においては、せん断強度の低下に伴い表面粗さ及び表面積の低下(指数関数的 減少傾向)がみられ、腐朽の進行による強度低下に伴い破壊面が平滑化していく傾向がみられ た。しかし、観察片 B においては目立った傾向がみられなかった。これは、2.4.2で述 べたように、ブロックせん断破壊面は加力面から遠ざかるほど、木理由来の凹凸が大きくなる 傾向にあり、観察片 B においては“ささくれ”以外の要素による凹凸が大きいためと考えら れる。

以上のように、いくつかの課題点はあるものの、観察片 A における表面粗さの測定結果に より、“ささくれ”の定量的表現の可能性が示唆された。

算術平均粗さ:Ra

dx x l f

l

) 1 (

Ra

0

RMS(二乗平均粗さ):Rq

dx x l f

l

0

)

3

1 ( Rq

図-2.5.16 表面粗さの定義式

(53)

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450

-20.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

せん断強度減少率(%)

Ra:算術平均粗さ(μm)

0 50 100 150 200 250 300

-20.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

せん断強度減少率(%)

Rq:RMS(二乗平均粗さ)

0 50 100 150 200 250 300

-20.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

せん断強度減少率(%)

表面積/面積

図-2.5.17 各表面粗さ指標とせん断強度減少率の関係(観察片A)

(54)

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450

-20.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

せん断強度減少率(%)

Ra:算術平均粗さ(μm)

0 50 100 150 200 250 300

-20.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

せん断強度減少率(%)

Rq:RMS(二乗平均粗さ)

0 50 100 150 200 250 300

-20.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

表面積/面積

(55)

図-2.5.19 3D計測画像の例

(上:せん断強度減少率30%(試験体名B28)、下:せん断強度減少率0%(試験体名B33)

“ささくれ”の影になっている部分も表面として表現されるため注意が必要である。

(56)

2.5.4 微小クラック及び菌糸の観察

【微小クラック】

破壊性状とは関係ないが、腐朽材のせん断破壊面より、仮道管上にミクロクラックの走向方 向と無関係に生じる図-2.5.20(左)のような微小クラックが観察された。このクラックは図

-2.5.20(右)に示す 3 つの試験体で観察され、おおよそ材の変色段階とリンクするものと思

われた。

(57)

【菌糸の観察】

2.5.2で述べたように、主に早材部でのせん断破壊面は壁切断破壊を示し、細胞内腔が 露出する。腐朽菌糸は内腔に沿って伸長するため、せん断破壊面は菌糸の伸長状況を把握する のに適していると考えられた。しかし、今回の観察では、最も腐朽が進んだ試験体であっても 腐朽菌糸の確認ができなかった。参考に、ニセアカシア腐朽材において観察された白色腐朽菌 の菌糸を図-2.5.21、今回の試験で最も腐朽が進んでいた試験体の早材部の画像を図-2.5.22 に 示す。

既往の研究より、腐朽菌は非酵素的な細胞壁構成成分(セルロース及びヘミセルロース)の 分解機構を有することが知られており 29、菌糸より分泌される拡散物質(明らかにはされて いないが、シュウ酸などとの関係が指摘されている 30)によって細胞壁を“遠隔攻撃”する ことが知られている。今回の観察結果はそれらを裏付けるものであったと考えられる。

図-2.5.21 ニセアカシアに侵入した白色腐朽菌糸(著者撮影)

(58)

図-2.5.22 最も腐朽が進んだ試験体(C34)の早材部 細胞壁の劣化は著しいが、はっきりとした菌糸の存在は確認できない

(59)

2.5.5 硬さ試験の結果

本研究では、参考までに質量減少測定用試験体(耐朽性試験体)を用いたブリネル硬さの測 定を行った(2.4.4参照)。

図-2.5.23 に柾目面におけるブリネル硬さと質量減少率及びせん断強度減少率の関係、図

-2.5.24 に板目面におけるブリネル硬さと質量減少率及びせん断強度減少率の関係、図-2.5.25

に木口面におけるブリネル硬さと質量減少率及びせん断強度減少率の関係を載せる。

全体的にバラつきは大きいものの、とりわけ板目面においてはネブリル硬さと質量減少率、

及びせん断強度減少率との間にやや相関があった。一方で、木口面などはバラつきが非常に大 きく、全般的にみて、ブリネル硬さが初期

表 1.2.2 に記載される数値はあくまでも参考値である。
表 1.3.1  試験結果まとめ(トドマツ)
図 2.2.1  褐色腐朽の進行に伴う各強度指標の変化(水本の研究より編集) 2)
表 5.1.1  結果:トドマツ天然乾燥材
+4

参照

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