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論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

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Academic year: 2024

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氏 名 青木あ お きEA A EあつしE 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 甲第 438号

学 位 授 与 年 月 日 平成 26 年 3月 19日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第2項該当

学 位 論 文 名 2型糖尿病患者における血管石灰化と動脈硬化:骨代謝マーカーと RBP 4からの検討

論 文 審 査 委 員 (委員長) 教 授 苅 尾 七 臣

(委 員) 准教授 安 藤 仁 准教授 大須賀 淳 一

論文内容の要旨

本研究は2部構成となっている。

第Ⅰ部 頸動脈石灰化と骨代謝マーカーとの関連

第Ⅱ部 2型糖尿病患者における血管内皮前駆細胞および レチノール結合蛋白4の動態:急性運動負荷

の順番で論じる。

1 研究目的 第Ⅰ部

血管石灰化は骨代謝関連因子の影響を受けるか検討するために本研究を立案した。血管平滑筋 細胞は、骨芽細胞様細胞あるいは軟骨細胞様細胞に分化し、骨・軟骨における石灰化過程と類似 の機構で血管石灰化を引き起こす。破骨細胞の分化には骨芽細胞上に発現しているRANKLと未熟 破骨細胞に発現しているRANKとのシグナル伝達が必要である。RANKLのdecoy receptorとして、

RANKの活性を抑制するサイトカインとして、Osteoprotegerin(OPG)がクローニングされた。本研 究では2型糖尿病患者を対象に、血管石灰化と血清OPG濃度との関係を検討した。

第Ⅱ部

Retinol-binding protein 4 (RBP4)は、21KDaの蛋白質で主に肝細胞で合成されているが、骨 格筋や脂肪細胞でも合成されインスリン抵抗性を表す指標の1つである。最近、Kahnらは、ラッ トでの急性運動負荷による筋由来のRBP4を調べた。彼らは、対照群と比較して糖尿病ラットでは、

筋由来RBP4 mRNAの発現が亢進するが、運動はこれを修飾することを報告している。同様に我々は、

糖尿病患者や虚血性心疾患患者において、急性運動負荷が骨髄由来の血管内皮前駆細胞(EPC)を速 やかに増加させることを見い出した。本研究では、2型糖尿病患者を対象に急性運動負荷が、血 清RBP4値やEPC数に与える影響を検討した。さらに急性運動負荷によるこれらの反応性が糖尿病 腎症の進展により変化するかについても検討した。

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2 研究方法 第Ⅰ部

2型糖尿病患者124例(男性88例 女性36例, 65.6 ± 8.2歳)を、血清OPG、osteocalcin、

FGF23、25-hydroxyvitamin D3 の値により四分位に分け、総頸動脈石灰化の有無を評価した。

また対象患者を、糖尿病腎症の病期分類に従い分けた場合の骨代謝マーカーならびに血管石 灰化の有無を評価した。さらに、血清 OPG と様々な因子との間の単回帰分析や血管石灰化に 影響を及ぼす因子を検討するために多変量解析を行った。

第Ⅱ部

2型糖尿病患者62例(男性50例 女性12例, 年齢65.1 ± 8.1歳)を糖尿病腎症1期、糖 尿病腎症2期から4期 の2群に分けて、最大酸素摂取量に達するまで急性運動負荷をかけ た。急性運動負荷前後での血清RBP4値、EPC数を検討した。

3 研究成果 第Ⅰ部

血清OPG値によって四分位に分けた場合、最下位群 は他3群に比べて、有意に総頸動脈石 灰化なしの割合が多く、石灰化ありの割合が少ない。一方、最上位群は他3群に比べて、有 意 に 総 頸 動 脈 石 灰 化 な し の 割 合 が 少 な く 、 石 灰 化 あ り の 割 合 が 多 い(P=0.015)。 血 清 osteocalcin、FGF23、25-hydroxyvitamin D3 の値により四分位に分け総頸動脈石灰化の有無 を評価したが、有意な関係性は生じなかった。

また対象患者を糖尿病腎症の病期分類に従い分けた場合、血清 FGF23 は腎症4期において 高値を示した(P=0.007)。血清 OPG、osteocalcin、25-hydroxyvitaminD3 は腎症病期におい て差異はなかった。頸動脈石灰化の有無に関しても、腎症病期とは関連性がなかった。血清 OPG は年齢(P<0.0001)、収縮期血圧(P=0.030)、Ln(adiponectin)(P=0.001)と正相関を示し、

BMI(P=0.045)、Ln(25-hydroxyvitamin D3)(P=0.001)と負相関を示した。血管石灰化の有無を 従属変数として、年齢、BMI、収縮期血圧、Ln(25-hydroxyvitamin D3)、Ln(adiponectin)、

Ln(OPG)を独立変数として、多重ロジステック回帰分析を行ったところ Ln(adiponectin)と

BMIが有意であった。

第Ⅱ部

糖尿病腎症1期の群において、最大酸素摂取量に達する急性運動負荷をかけたところ、血 清RBP4は有意に増加した(負荷前48.2 ± 4.3, 負荷後 54.3 ± 4.2 μg/ml P=0.0006) 、一 方、糖尿病腎症2-4期の群においては、血清RBP4の変動に影響を与えなかった(負荷前53.5

± 3.6, 負荷後 52.2 ± 2.9 μg/ml P=0.57) 。糖尿病腎症1期、糖尿病腎症2期から4期 の2群に分けて、恒常状態における EPC 数を検討したが、2群間に差異はなかった(糖尿病 腎症1期の群88.9 ± 18.6, 糖尿病腎症2-4期の群 63.2 ± 13.4 cells/100 μl、P= 0.259 )。 急性運動負荷後両群において、血清EPC数は有意に増加した(糖尿病腎症1期の群 P=0.0003, 糖尿病性腎症2-4期の群 P=0.005)。また急性運動負荷による血清RBP4の変動は、eGFRと正 の相関を示した(r=0.30, P=0.018)。

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4 考察 第Ⅰ部

2型糖尿病患者の血管石灰化は、血清OPG値との関連が示唆されたが、血清osteocalcin、

FGF23、25-hydroxyvitamin D3 などの骨関連液性因子との関連性はみられなかった。他の骨 関連因子がリンや鉄などを介して作用するのに対して、OPGは直接に血管平滑筋の骨芽細胞化 に影響を与える。また、FMDは動脈硬化初期の変化として現れる血管内皮機能低下を評価する のに良い指標である。FMDの変化は、血清OPG値とは関連がなかった。対象患者124例中糖尿 病腎症4期の症例は6例のみで糖尿病腎症が軽度から中等度の患者を対象にしているが、血 管石灰化の割合や血清OPG値は糖尿病腎症の進展とは関連がない。OPGは動脈硬化や糖尿病腎 症の進展とは独立して、血管石灰化に抑制的に作動することが示唆される。

第Ⅱ部

Kahnらは、糖尿病ラットではコントロールラットと比較して、骨格筋でのRBP4mRNAの発現 が4倍亢進していることを、また筋由来RBP4mRNAの発現が急性運動負荷により増加すること を報告した。Kahn らの報告より、急性運動負荷は僅か8分の負荷であり、我々の研究で見い 出した、血清RBP4値の上昇は筋由来ではないかと推察される。本研究は、急性運動負荷によ

り血清RBP4値が上昇することを示した初めての報告であるが、その生理学的、病理学的な役

割は未解明のままである。急性運動負荷による筋組織から放出されるRBP4やRBP4の病態生 理学的役割に関して今後の研究で解明する必要がある。

細小血管障害がない、またはわずかに糖尿病腎症がみられる糖尿病患者において、EPC数は 急性運動負荷により有意に増加した。急性運動負荷により誘発される EPC の機序は明らかで はないが、急性運動負荷は、骨髄由来の EPC を誘導することにより、血管内皮を修復するも のと推測される。

5 結論 第Ⅰ部

2型糖尿病患者において、血清OPG値の上昇は血管石灰化に関連がある。OPGの作用は、糖 尿病腎症の進展と関わりなく、直接石灰化を抑えることが示唆される。

第Ⅱ部

2型糖尿病患者において急性運動負荷により血清 RBP4値は腎症のない症例で速やかに増 加するが、腎症のある症例では変化がみられなかった。EPC数は、腎症の有無に関わらず、急 性運動負荷により増加した。これらの成績より、急性運動負荷により増加したRBP4は、糖尿 病腎症進展に伴って低減するが、急性運動負荷により増加した EPC 数は、腎症の進展に関わ らず保持されることが示唆される。

論文審査の結果の要旨

本学位論文は、2 型糖尿病患者 124 例を対象とした横断研究において、骨代謝に関連する

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osteoprotegerin(OPG)のバイオマーカーとしての意義を明らかにした。本研究において、血 中 OPG レベルと頸動脈エコーで評価した血管石灰化の有無に関連があることを見出した。さ らに、血中OPGレベルの関連因子として、年齢、血中 25-hydroxyvitamin D3、血中アディポ ネクチンレベルの 3 因子を明らかにした。これらは、新規性のあるところである。血中 OPG レベルは定量的に頸動脈石灰化に関連しているわけではなく、血中 OPG レベルは他のリスク 因子と独立して頸動脈石灰化と関連しているわけでもない。しかし、本研究は、今後、さら に、血中 OPG が個人の動脈硬化の石灰化にどの程度、関わるかを示す縦断研究を行う必要性 を示す貴重な研究であると考える。

後半の研究では、2 型糖尿病患者において急性運動負荷を行い、血清 Retinol-binding protein 4 (RBP4)値の変化を検討している。急性運動負荷により、糖尿病性腎症のある群で は、血中血管内皮前駆細胞上昇は見られるものの、血中RBP4の上昇は抑制されていることを 新たに明らかにした。この現象の機序と臨床的意義は、今後の研究にゆだねられる。

以上の学位論文内容は、糖尿病患者の臓器障害の進展と非薬物治療の指標となる新規バイオ マーカーの臨床的意義を明らかにするものである。一部、統計解析を追加し、結果と結論が 異なる点を修正した上で、審査員全員より本研究は学位論文に値すると判断した。

最終試験の結果の要旨

本審査に関する諮問では、血中バイオマーカー上昇の機序と臨床的意義、さらに統計解析 に関する質問がなされた。その受け答えは的確であり、本人自身が本研究を主体的に遂行し たことが伺えた。その後の審査員の指摘に対する修正も適切であり、十分な学識を有するこ とが伺えた。

以上より、申請者は本学の学位授与に値すると審査員全員により判断した。

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