はじめに
欧米諸国と同様に,日本でも,2型糖尿病をはじめと した生活習慣病の増加と若年化が進んでいる(1)
.生活習
慣病が国民医療費の35.2%,死亡数割合の55.3%を占め る現状(2)において,これらの予防や改善は重要な課題で ある.生活習慣病は「食習慣,運動習慣,休養,喫煙,飲酒等の生活習慣が,その発症・進行に関与する疾患」
と定義づけられている(3)が,医食同源という言葉がある ように,食品が健康の維持増進や疾病予防に果たす役割 は大きい.日本が世界に誇る長寿国となった背景にも,
玄米などの未精製穀類を主食とし,魚や肉などの主菜,
野菜や海藻などの副菜,そして汁物を組み合わせた伝統 的な日本型の食事の影響があると考えられている.
玄米は,収穫された籾米から籾殻のみを除去した状態 のコメであり,糠層(果皮,種皮,糊粉層)
,胚乳,胚
芽で構成されている(4).玄米から糠層と胚芽を一部残し
て除去した状態の米が分づき米,十分に除去した状態の コメが精白米(白米)である(図1
).
胚乳は約70%がデンプンで構成されているのに対し,
糠層と胚芽には現代人に不足しがちな食物繊維やビタミ ン,ミネラルが豊富に含まれていることから,玄米は白 米に比べて栄養価が高いとされている(5)
.また,玄米に
はγ
-オリザノールやγ
-アミノ酪酸などの生体調節機能を 有する成分も多く含まれている(6).これまでに,白米と
のランダム化比較試験やコホート研究において,玄米に よるメタボリックシンドロームの改善可能性(7)や,2型 糖尿病の発症リスク低下(8)などの効果が示唆されてい る.また,玄米に含まれる食物繊維について,排便促進 効果(9)や体重減少効果(10)が報告されているほか,マウ スを用いた実験において,
γ
-オリザノールの高脂肪食に 対する嗜好性低減効果や脂質代謝改善作用(11)も明らか となっている.したがって,玄米を主食として普及する ことは,生活習慣病の予防や改善を介した健康増進およ び医療費削減に貢献しうるものと期待される.しかし,農林水産省の『食料品消費モニター調査』(12) で「購入している米の種類」を玄米と回答した人は全体 の18%に過ぎず,玄米食が普及していないのが現状で ある.玄米が主食として選択されにくい要因として,白 米に劣る食味(13)や炊飯時間の長さ(14)が考えられる.す なわち,食味が良く炊飯時間が短い玄米を作ることがで きれば,嗜好性や利便性の高い健康食品として普及が拡 大する可能性が期待される.そこで,玄米の栄養成分を 保持しつつ,食味や吸水性が改善された玄米の開発を目 指した検討が始まった.
表面加工玄米とは
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(農研機構)では,全粒粉を配合した製パンの風味向上
日本農芸化学会
● 化学 と 生物
セミナー室
機能性農産物開発-1表面加工玄米のヒト介入試験による機能性評価
健康に良くておいしい新たな玄米に関する研究
荒木理沙,橋本幸一
筑波大学医学医療系
を図るため,穀粒の表面に微細な擦過傷をつけた全粒粉 を製造する加工技術を開発した(15)
.この技術を玄米果
皮に適用して作られたのが表面加工玄米である.食品には,生命維持のために必要なエネルギー源や栄 養素を補給する栄養機能(一次機能)
,味,におい,色,
触感,形,大きさなど,おいしさに影響を及ぼす因子が 含まれる感覚・嗜好機能(二次機能)
,健康の維持や向
上に関与する生体調節機能(三次機能)の3つの機能が あるとされている.表面加工玄米は,この一次機能,二 次機能,三次機能のすべて(六次機能)の向上を目指し て新規に開発された.表面加工玄米の開発および機能性評価は,平成25〜
27年度の農研機構『機能性を持つ農林水産物・食品開 発プロジェクト』の一課題として実施した.当プロジェ クトは,健康の維持・増進作用が期待される農作物につ
いて,その機能性を科学的に解明することを目的とした ものであり,筑波大学でのヒト介入試験実施に先立ち,
原料米の品種選定や生育条件を茨城県農業総合セン ター,表面加工玄米の製造および供給システムの開発を
(株)大和産業,基本的特性の評価を農研機構の食品研究 部門が担当した.その結果,茨城県産コシヒカリを原料 米,精米歩合を99.8%とした表面加工玄米が,食味,物 性,流通に最適であることが確認された.
表面加工玄米の生可食部100 g中のエネルギーおよび 栄養素含量は,未処理の玄米とほぼ同等に保持されてい る(16)
.また,目視では未処理の玄米との判別が困難であ
る(図2
)が,穀粒表面に擦過傷がある表面加工玄米(図
3
)は吸水速度が速く,浸漬時間,加水量,炊飯モー ドを同一とした条件で炊飯した場合の炊き上がりは玄米 に比べて軟らかくなる(16).通常,玄米は炊飯前に浸漬時
図1■玄米の構造と精米過程(イメージ図)日本農芸化学会
● 化学 と 生物
連載開始にあたって:機能性農産物開発 わが国には,多様で豊かな旬の食材を用い,栄養バラン
スのとれた和食という食文化がある.また,わが国の農作 物の品質の良さ,種類・品種の多様さ,安全に関する信頼 性は世界屈指の水準と言われ,健康を維持・増進する作用 が期待される(健康機能性をもつ)農作物も多くある.一 方,近年の生活習慣の変化などにより,メタボリックシン ドローム,各種の生活習慣病などの健康上の問題が大きく クローズアップされて食と健康のかかわりについて注目を 集めるとともに,認知機能や精神的ストレスなどについて も食品による改善作用が明らかになってきている.しか し,消費者のニーズに応えて適切な食品や栄養指導を提供 するための知見は十分とは言えず,ヒトでのエビデンス獲 得を含む総合的な検証が強く求められてきた.こうした情 勢に対応するため,平成25年(2014年)7月に機能性を持 つ農林水産物・食品開発プロジェクト(農研機構,2012〜
2015年度,総額20億円)研究がスタートした.農林水産 物や加工食品のもつ機能性をヒトの介入試験や基盤的な研 究により科学的に解明することで,わが国の豊かな食材を 活かした自然な食生活により健康で豊かな生活を享受出来 る社会の構築に貢献するため,公募により選ばれた課題に
より,国立・公立研究機関,大学,民間企業等が連携し て,健康上のリスク低減などに効果が期待される農産物や その加工品の開発およびそれらの生産・流通技術の確立を 行うとともに,医療機関との連携により,農産物やその加 工品について,疾病リスク低減への影響をヒト介入試験に て評価し,栄養・機能性,安全性,特性情報等を盛り込ん だ農林水産物データベースを構築して,個人の健康状態に 応じたテーラーメイドな提供システム・栄養指導システム の開発を行うことを目的とした.また,機能性農産物を組 み合わせた複合食品のヒト介入試験による検証も実施され た.
今回の「機能性農産物開発」シリーズでは,本プロジェ クトを通じて得られた研究成果として,表面加工玄米,そ ば,大豆,タマネギ,麦類のヒト介入試験による機能性評 価と効果検証,柑橘類,リンゴの機能性評価と機能性食品 開発,機能性弁当の抗メタボ効果検証とプロジェクトから 見えてきた機能性農産物の今後,について各ご担当の先生 から内容を紹介していただく.
(山本(前田)万里,農研機構食品研究部門)
間を設け,白米よりも多い加水量かつ玄米モードで炊飯 する必要がある.一方,表面加工玄米は浸漬時間を設け ずに炊飯することが可能であり,玄米と同等の加水量か つ白米モードで炊飯した場合に,食味の良い米飯となる ことが報告されている(17)
.また,常食されている白米と
同程度のかたさとなる炊飯条件で米飯を調製した場合,表面加工玄米は白米に比べて咀嚼回数が多く,咀嚼時間 が長く,一噛み当たりの咬筋活動が大きく,嚥下までの 総筋活動量が大きいことも報告されている(18)
.
機能性表示食品制度と表面加工玄米
これまで,健康の維持・増進に役立つ旨の表示(機能
性表示)が認められる食品は,国が個別に許可した特定 保健用食品と,国の規格基準を満たした栄養機能食品の 2つのみであったが,平成27年4月から,新たに機能性 表示食品が追加された(19)
.新制度において,届出後の
事後チェック制度の導入により,特定保健用食品では既 許可品のなかった生鮮食品の機能性表示も可能となっ た(20)ことは,農林水産物の機能性研究を後押しするも のといえる.日本は稲作に必要な水資源に恵まれており,米を主食 とする食文化が育まれてきた.しかし,農林水産省によ る『米の消費に関する動向』では,米の一人当たりの年 間消費量は昭和37年をピークに一貫して減少傾向にあ 図2■炊飯前後の玄米と表面加工玄米 図3■玄米と表面加工玄米の果皮表面拡大図
日本農芸化学会
● 化学 と 生物
日本人の主な主食は,今も昔も米である.ただし,
日本農業新聞が東京都内の20代男女を対象とした街 頭調査で,「直近1カ月間に1度も米を食べなかった 人」が全体の約2割,一人暮らしに限定した場合には 約3割を占めていたように,若者を中心に米離れが進 んでいるのも事実である.なお,この調査で,米を食 べない主な理由としてあがっていたのは「手軽でな い」,「ダイエット」だったそうだ.たしかに,手を加 えずに食べることができる惣菜パンなどに比べたら,
炊飯の手間がかかり,別途おかずを準備しなければ ならない米は「手軽でない」かもしれない.コンビニ 弁当なら自分で炊飯する必要はないが,同じ棚に並 ぶパンや麺類に比べて値段が高い場合が多く,安価 なほうを選びたくなるのも理解はできる.そして,
炭水化物を控えないとやせないといった昨今の風潮 が,「ダイエット」のために主食を抜く人を増やして いるのだろう.それと同時に,このような食生活が,
健康で長生きするために推奨される バランスの良 い ものでないことも,多くの人がわかっているはず だ. かつての日本人は,玄米を主食とし,野菜や海 藻,発酵食品を積極的に摂取していた.日本が世界
に誇る長寿国であり,2013年に和食がユネスコの世 界無形文化遺産に登録されたこともあり,伝統的な 日本型の食事が,健康に良い食事として国内外で評 価されている.白米に比べて玄米の栄養価が高いこ と,玄米には
γ
-オリザノールなどの有効成分が多く含 まれていることも明らかとなっているが,実際に玄 米を主食として日常的に食べている人はそれほど多 くない.おそらく,玄米は白米に比べて炊飯に時間 がかかるうえに,白米よりもぼそぼそとしておいし くないと感じられる場合が多いからだ.白米ですら「手軽でない」と思う若者にとっては,玄米は白米以 上に遠い存在であろう.稲作に適した気候風土の国 でありながら,米が消費されないのは非常に残念で あるし,国民の健康増進はもちろん,食料自給率の 観点からも,米の消費量を増やす意義は大きいと考 えられる. 現状のままでは受け入れられないのであ れば,皆が食べたくなるような玄米,つまり,おい しくて短時間で炊飯することができ,健康に良い成 分は保持されたままの玄米を作れば良い.そして,そ の有効性を科学的に証明できれば,より魅力的な商 品にできる.それが,今回紹介する 表面加工玄米 の研究が始まったきっかけである.
コ ラ ム
り,米の需要量も毎年約8万トンずつの減少傾向にある ことが明らかとなっている(21)
.需要に対して作付けが
超過した場合には,製品の価格が低下する.平成26年 産米価格の大幅な低下を受け,平成27年には主食用米 の超過作付けが解消された(21)ものの,過剰米処理のた めの財政負担が増加するという課題は解決していない.環太平洋経済連携協定(TPP)が発効して安価な輸入米 が国内に流通しても,政府による備蓄米の買い取りで,
国産米価格への影響はないとされているが,国内の米生 産農家にとって厳しい情勢となる可能性も否定はできな い.輸入米との差別化を図り,国産米の輸出促進につな げるためにも,農業の高付加価値化は重要な課題であ る.われわれが着目する表面加工玄米について,臨床的 なエビデンスを構築することができれば,国産米の付加 価値が高まり,農業の国内活性化や輸出拡大に貢献しう るものと考えられる.
また,信頼性の高いエビデンスをもとに,表面加工玄 米の機能性を表示して販売することができれば,すでに 玄米を食事に取り入れている人だけでなく,これまで玄 米の「何がどのように健康に良いのか」がわからず敬遠 していた人も含め,消費者に表面加工玄米が選択される 機会が増えると予測される.
自分自身の健康状態にあった健康食品を補完的に利用 することは,健康づくりの一助となりうる.ただし,健 康の維持・増進にあたっては,あくまで主食,主菜,副 菜をそろえたバランスの良い食生活が基本となる.主食 を表面加工玄米にすることで健康状態が改善した人は,
それをきっかけに,主菜や副菜にも気を配るようになる かもしれない.さらに,表面加工玄米に限らず,機能性 が表示されたさまざまな生鮮食品が食品売り場に並ぶよ うになれば,意識せずとも食事内容が良好に変化する可 能性も考えられる.これらが国民の健康寿命の増進や Quality of Lifeの向上につながることが期待され,消費 者にとっても,機能性表示食品制度は重要な意味をもつ ものと考えられる.
表面加工玄米の食べやすさに関する検討
表面加工玄米の普及拡大による健康増進を目指すに は,表面加工玄米が消費者に受け入れられやすい食品で あるかどうかを確認する必要がある.そこで,表面加工 玄米を一定期間継続して食べ続けることが可能かどうか を検討するため,表面加工玄米と玄米を試験食とした探 索的な2期2群ランダム化クロスオーバー試験を実施し た(16)
.この試験では,最初の4週間に表面加工玄米,次
の4週間に玄米を摂取する「加工玄米‒玄米群」と,摂取 順序を逆にした「玄米‒加工玄米群」の2群を設定し,40
〜64歳の健常男女10名(平均50.1±7.4歳,男性4名,女 性6名)を,5名ずつ無作為にどちらかの群に割り付け た.期間中は,全員に同一機種のマイコン炊飯器を貸し 出して各自で試験食を炊飯してもらい,原則として試験 食摂取回数は週7回かつ1日1回以上として試験を行った.
この試験に参加した10名は,全員が研究参加以前に 玄米を食べた経験があったが,ほぼ全員が玄米は好きで も嫌いでもないと答え,日常的に玄米を食べている人は いなかった.このような対象であっても,期間中の脱落 者はなく,表面加工玄米,玄米ともにそれぞれ4週間ず つ食べ続けることができた.8週間の試験が終了した 後,各期間の試験食がどちらだったのかを伏せた状態 で,試験食に関する質問紙調査を行ったところ,被験者 のほとんどが玄米のほうがかたく,表面加工玄米のほう がおいしく食べやすいと評価した.試験終了後に食べ続 けることが可能だと思う期間についても,玄米に比べて 表面加工玄米で長い傾向にあった.これらの結果から,
表面加工玄米は,玄米と比較して食味が良く,長期間食 べ続けられることが示唆された.
表面加工玄米の機能性に関する検討
前述のヒト介入試験(16)において,表面加工玄米を長 期間食べ続けられることが明らかとなった.また,統計 学的な差は認めなかったものの,加工玄米期にはほぼ全 員の体重が減少し,女性に限定すると,玄米期に比べて 加工玄米期の体重が有意に減少していた.肥満は生活習 慣病の主な要因とされ(22)
,減量は糖・脂質代謝改善に
有効とされている(23).そこで,探索的検討に続いて,
表面加工玄米を長期間食べ続けることが体重や糖・脂質 代謝指標に及ぼす効果を検討することを目的とした12 週間のランダム化並行群間比較試験(24)を行った.この 試験では,軽度肥満(Body Mass Index 25.0 kg/m2以 上30.0 kg/m2未 満) か つ 前 糖 尿 病(空 腹 時 血 糖 値 100 mg/dL以上126 mg/dL未満,またはHbA1c 5.7%以 上6.5%未満)の40歳以上65歳未満の男女を対象とし た.参加基準を満たした42名を被験者として登録し,
無作為に21名ずつ表面加工玄米群と白米群の2群に割り 付けた.介入前と試験食摂取開始から6および12週後に 体重,腹囲,血圧,糖・脂質代謝指標を測定し,介入期 間中の試験食の摂取状況,排便回数などの情報も収集し た.試験食は,表面加工玄米または白米とし,米飯 200 gを1日2回摂取することとした.介入前に自己都合
日本農芸化学会
● 化学 と 生物
で辞退した表面加工玄米群の1名を除く41名をinten- tion-to-treat(ITT)解析対象とし,得られたデータに ついて検討した.
その結果,介入前における男女比,年齢,体格,血 圧,糖・脂質代謝指標は両群で差がなかった.期間中の 試験食摂取量や身体活動量も両群間で差がなかったが,
表面加工玄米群では,試験食摂取開始6週後および12週 後の体重と腹囲が介入前に比べて有意に減少していた.
これに対し,白米群では期間中を通して体重,腹囲はほ とんど変動せず,変化量の群間差も顕著であった.表面 加工玄米群の排便回数は介入前に比べて試験食摂取開始 6週後および12週後に増加し,白米群に比べても多い傾 向にあった.糖・脂質代謝指標のうち,中性脂肪濃度の 変化量が表面加工玄米群で負,白米群で正の値を示した が,いずれの項目についても各群の期間中の変化および 変化量の群間差を認めるにはいたらなかった.ただし,
表面加工玄米群では,12週間でリポタンパク質プロ ファイルが白米群に比べて良好に変化しており,表面加 工玄米を食べ続けることで,血中脂質の質が改善される 可能性も示唆された.
2つのヒト介入試験において示唆された表面加工玄米 の機能性について,その作用機序や関与成分を明確にす るために,新たなヒト介入試験を計画した.表面加工玄 米の機能性には,糠や胚芽に含まれる成分が関与してい るものと推測されることから,3つめのヒト介入試験で は,糠や胚芽を含む表面加工玄米,糠や胚芽の量が少な い7分づき米,糠や胚芽を全く含まない白米の3種類を 試験食とし,機能性成分の量との関連も考慮した検討を 行うこととした.また,測定項目に内臓脂肪面積や腸内 細菌叢を加え,試験食摂取開始6および12週後における 体格や糖・脂質代謝指標を介入前と比較するとともに,
各指標の変化について3群間で比較を行った.ITT解析 対象は,試験の参加基準を満たし,被験者として登録さ れた155名のうち,自己都合により介入前に辞退した7 分づき米群の2名,白米群の2名を除く表面加工玄米群
52名,7分づき米群50名,白米群49名の計151名とした.
この3群のランダム化並行群間比較試験においても,表 面加工玄米を食べ続けることによる腹囲などの減少効果 が得られており,現在詳細にデータを解析中である.
おわりに
これまでに実施したヒト介入試験(図
4
)の結果か ら,表面加工玄米に含まれる成分がヒトの健康増進に寄 与する可能性が示唆されている(図5
).われわれが表
面加工玄米に期待する効果の一つは,機能性成分の供給 源として,生体指標に直接的に作用することである.ま た,主食を表面加工玄米に置き換えることで満腹感が得 られやすくなり,食事全体の量や主菜,副菜の選び方が 変わるなど,食行動の改善につながる可能性も考えられ る.さらに,健康に良い食品を食べているという意識や 食べることの楽しさが自己効力感を向上させ,食事以外図4■表面加工玄米の機能性評価のためのヒト介入試験実施の 流れ
図5■表面加工玄米の特徴およびヒト介入試 験結果のまとめ
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の健康行動を誘発する可能性も期待できる.このような 複合的な効果を期待できるのが,生鮮食品の優れた点で あり,機能性表示食品制度の対象となる食品に生鮮食品 が含まれたことの意義は大きいと考えられる.
現在,表面加工玄米は,共同研究機関の(株)大和産業 から,「やわらかい玄米®」として試験販売が開始され ている.今後,表面加工玄米の効果を示す機序を解明 し,機能性成分を特定したうえで,機能性表示食品の届 出を目指していく予定である.
将来的には,表面加工玄米を用いたコンビニ弁当や冷 凍・レトルト食品などの外食・中食産業への展開も視野 に入れ,消費者が表面加工玄米を手軽に利用できる環境 を作っていきたいと考えている.
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DOI: 10.1016/j.clnesp.2017.01.015 プロフィール
荒木 理沙(Risa ARAKI)
<略歴>2002年日本女子大学家政学部食 物学科卒業/2004年同大学大学院家政学 研究科修了/2005年同大学家政学部食物 学科助手/2011年同大学家政学部食物学 科助教/2014年筑波大学医学医療系研究 員,現在に至る<研究テーマと抱負>機能 性を有する食品のヒトにおける有効性検証
<趣味>野球観戦,料理
橋本 幸一(Koichi HASHIMOTO)
<略歴>1991年東京薬科大学博士課程修 了(薬学博士)同年日本グラクソ株式会社
(現グラクソ・スミスクライン株式会社)
入社,研究本部,開発本部勤務を経て,
2007年9月筑波大学大学院人間総合科学研 究科准教授,CREILセンター研究開発部 門長に就任/2012年9月筑波大学医学医療 系教授/2015年6月よりCREILセンター が改組して発足したつくば臨床医学研究開 発機構(T-CReDO)中央管理ユニット長
<研究テーマと抱負>臨床研究・橋渡し研 究の基盤整備,研究開発マネジメント<趣 味>ランニング,スポーツ鑑賞<研究室 ホ ー ム ペ ー ジ>http://www.md.tsukuba.
ac.jp/clinical-med/clin-res/
山本(前田)万里(Mari MAEDA-YAMAMOTO)
<略歴>1984年千葉大学園芸学部農芸化 学科卒業/1986年同大学大学院園芸学研 究科修士課程修了/同年農林水産省農業研 究センター,中国農業試験場研究員/1992 年野菜・茶業試験場研究員/1996年同試 験場主任研究官/2002年野菜茶業研究所 研究室長/2012年農研機構食品総合研究 所研究領域長,現在に至る<研究テーマと 抱負>農産物の機能性解明と機能性食品開 発,食品で健康維持増進をはかるセルフ フードプランを提案していきたい<趣味>
美味しいお酒と食べ物を各地で楽しむこと
<研究室ホームページ>http://www.naro.
affrc.go.jp/nfri-neo/introduction/chart/
02/index.html
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