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生活関連図を用いた介護過程展開の理解度と考察 : 試験評価と実習後の自己評価

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Academic year: 2021

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生活関連図を用いた介護過程展開の理解度と考察

−試験評価と実習後の自己評価−

横尾 成美

介護過程の授業に本学科で考案した「生活関連図」学習を導入して3年目になる。生活 関連図を活用した介護過程の展開プロセス11項目を試験評価し、学生の理解度を検証した。 試験問題と評価基準をもとに成績評価の分類を行った。生活関連図作成の評価結果は、高 い評価であったが、その後の展開となる3項目(課題把握、介護計画立案の目標設定、援 助内容の設定)になると、低い評価結果になった。さらに、介護実習Ⅲ終了後に試験項目 と同じ11項目についての自己評価を行い介護過程の理解度に対する認識を調査した。試験 評価で低い結果になった3項目については、他の項目と同じ程度の理解を認識しているこ とが分かった。この二つの調査結果を比較し、生活関連図学習と介護過程の教育方法につ いて考察する。 Key Word:介護過程の展開 生活関連図 試験評価 自己評価 介護実習

Ⅰ.はじめに

平成21年度から新カリキュラムがスタートして3年が経過し2年課程の養成校では、 基礎科目、専門科目1650時間のカリキュラムを「人間と社会」「介護」「こころとから だのしくみ」の3領域に再編成し1800時間以上の課程に改められた。その特徴の一つ に、科目「介護過程」150時間の配置が挙げられる。 本学科では、平成21年度、文部科学省による大学教育推進プログラムとして採択さ れたテーマ「生活関連図による地域活動体験と授業の統合」を現在展開中であり、教 材の中心となる生活関連図学習の方法について授業科目「介護過程」の中で取り組ん できた。求められる介護福祉士の養成教育には多角的に対象者を把握し、問題状況の 分類や課題解決能力と実践力の育成が課題となっている。しかし学生にとって対象者 をとりまく様々な状況を把握し理解することは容易なことではない。授業に生活関連 図を導入した当初、生活関連図作成の一次調査結果1) では、平均80%以上の高い理解 度が確認された。しかし、二次調査2) で生活関連図作成とアセスメント表への記入ま ―169―

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でを評価した結果では、傾向として生活関連図を作成することは容易にできても、諸 問題の関連性を統合化し、分類、整理することや、説明として書き表すことが困難な 状況があることがわかった。生活関連図*1 は①事例②顕在問題③要因④潜在問題⑤も てる力⑥可能性⑦介入要素の項目を使い作成していくが、書き表す事柄が、専門知識 を活かした具体的なものではなく、抽象的であったり、根拠に弱いところがある。 せっかくアセスメントができていても、介護計画立案になると、利用者のニーズより、 自己のニーズが優先したり、一貫性に欠ける傾向がある。また、他職種との連携を踏 まえた日常生活の支援方法が具体化されない傾向が伺える。介護過程の科目は、専門 科目で学んだ知識や実習体験をもとに総合的な展開をする科目であるが、学生の学び を統合化し、活用していくことは今後の大きな課題といえる。そこで、今回は、生活 関連図を用いた介護過程展開の試験評価結果と介護実習後の自己評価結果を比較し、 今後の生活関連図学習方法の課題を把握することを目的とした。

Ⅱ.研究方法

1.試験評価 2年生授業科目「介護過程Ⅲ」の前期試験として事例問題を作成し、指定の用紙に 回答させた。回答用紙は3枚(生活関連図作成シート、アセスメント表、介護計画表) である。独自に作成した評価基準のもと、4段階評価を行った。 1)対象 本学人間福祉学科に在籍する2年生84人(回収率100%)を研究対象とした。 2)実施日 平成23年7月25日(月) 3)内容 (1)試験問題 介護過程Ⅲ試験課題事例 事例紹介 Bさん・77歳・女性・要介護度3 介護老人保健施設に入所して3年 障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準A2(屋内での生活は概ね自立しているが、 介助なしには外出しない−外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている) 【病気・障害】平成19年3月脳梗塞 脳梗塞後遺症による右片麻痺 右側の感覚麻痺がある。 (視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚など五感がにぶくなっている。) 【健康状態】 1週間前に風邪をひいてしまった。現在は回復してきている。 熱は平熱36度台であり、血圧も安定している。 【コミュニケーション】言葉掛けに対して、意味を理解している。言葉に出して返すことがで きるが、声が小さいために、正しく伝わらないことがある。 【日常生活】 □移 動・・・片手駆動型車椅子使用(右片麻痺用) 車椅子移乗、移動ともにゆっくりであれば自力可能。 しかし、風邪のためベッド上で過ごしている。 ―170―

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□排 泄・・・トイレで排泄できるが、風邪のため、居室ベッド左の足元にポータブル トイレを置いて使用している。一部介助を受けている。コール対応。以 前から便秘傾向がある。 □一日の過ごし方・・風邪をひく前は規則正しく時間を守り、何事にも積極的に活動していた。 しかし、風邪で体調を崩してからは居室のベッドで過ごしている。 【性 格】 几帳面 世話好き 気分の落ち込みがある 【好きなこと】 植物の手入れや観賞 散歩 テレビ観賞 【家族の願い】 本人らしい生活をおくって欲しい。 【本人の願い・思い】家族や家のことが心配。家族に迷惑をかけたくない。 (2)回答用紙 ①生活関連図作成シート 構成要素としている6項目(顕在問題、要因、潜在問題、もてる力、可能性、介入 要素)に記入させ、相互関連性のある項目を線分で繋ぐ。事例の情報量に合わせ、各 項目を6個ずつ用意した。 ②アセスメント表 中央法規出版「介護過程」にあるアセスメント表を参考にした記述シートである。 情報の解釈・分析・統合化を記入し、課題を導き出し、課題の優先順位をつける形式。 シートの上段には、生活関連図の構成要素を活用するために、記入の視点を設けてい る。 ③介護計画表 上記と同様に、中央法規出版「介護過程」にある介護計画表を参考にした記述シー トである。左から、課題、短期目標、期間、具体的な援助方法、頻度・時間を記入す る形式。 ―171―

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評価項目 優 良 可 不可 生 活 関 連 図 1 事例の顕在問題(問題点)を理解している 4 3 2 1 2 事例の要因(問題の理由)を理解している 4 3 2 1 3 事例の潜在問題(今後の問題)を理解している 4 3 2 1 4 事例のもてる力に着目している 4 3 2 1 5 事例の可能性を見出している 4 3 2 1 6 事例に対する介入要素(具体策)がわかる 4 3 2 1 7 要因や問題点、もてる力などの関係を線で結び 関連性を理解している 4 3 2 1 アセスメント表 8 情報の解釈・関連づけ・統合化ができる 4 3 2 1 9 事例の課題が把握できる 4 3 2 1 介 護 計 画 表 10 課題に応じた適切な目標が設定できる 4 3 2 1 11 課題に応じた具体的な援助方法が立案できる 4 3 2 1 生 活 関 連 図 1 ∼ 6 共 通 4点:6個の内、5∼6個、記入している。 3点:6個の内、3∼4個、記入している。 2点:6個の内、2個、記入している。 1点:6個の内、0∼1個、記入している。 7 4点:1項目から複数項目に向けて線分を結んでいる(全体的) 3点:1項目から1項目に向けて線分を結んでいる(全体的) 2点:部分的に線分を結んでいる(部分的) 1点:一部分のみ線分を結んでいる(一部分的) ア セ ス メ ン ト 表 8 4点:7個以上の項目を使い記入している。全体的に情報を解釈し関連づけ、統合化している。 3点:5∼6個の項目を使い記入している。部分的に情報を解釈し関連づけ、統合化している。 2点:3∼4個の項目を使い記入している。部分的に情報を解釈し関連づけ、統合化している。 1点:1∼2個の項目を使い記入している。一部分の情報を解釈し関連づけ、統合化している。 9 4点:6個以上の項目を使い記入している。全体を通して課題を把握している。 3点:4∼5個の項目を使い記入している。部分的に課題を把握している。 2点:3個の項目を使い記入している。部分的に課題を把握している。 1点:1∼2個の項目を使い記入している。一部分の課題を把握している。 介 護 計 画 表 10 4点:課題に応じた適切な目標である。優先順位の高い課題である。 3点:課題に応じたやや適切な目標である。優先順位のやや高い課題である。 2点:課題にあまり応じていない目標である。優先順位のやや低い課題である。 1点:課題に応じていない目標である。優先順位の低い課題である。 11 4点:課題に応じた具体的な援助方法である。アセスメントが反映されている。 3点:課題に応じた援助方法である。アセスメントがやや反映されている。 2点:課題にあまり応じていない援助方法である。アセスメントの反映が乏しい。 1点:課題に応じていない援助方法である。アセスメントの反映がない。 4) ①評価基準 ②運用基準 5)倫理的配慮 本研究の目的を説明し、個人的な不利益が生じないよう配慮することを伝え同意を 得た。 ―172―

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図1:成績別評価の人数(n=84) 図2:全体の試験評価平均値(n=84) 図3:S評価群の平均値(n=25) 図4:A評価群の平均値(n=35) 図5:B評価群の平均値(n=35) 図6:C評価群の平均値(n=4) S評価群平均 A評価群平均 B評価群平均 C評価群平均 成績評価の内訳 全体評価平均 6)結果 評価項目1∼11の合計点を100点に換算した。100∼90点をS評価群、89∼80点をA 評価群、79∼70点をB評価群、69∼60点をC評価群、59点以下をD評価群と分類した。 さらにA∼C群の評価傾向について各項目の平均値をレーダーチャートで表す。 ―173―

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(1)試験評価結果 100∼90点(S評価群)の学生は30%、89∼80点(A評価群)の学生は42%、79∼ 70点(B評価群)の学生は22%、69∼60点(C評価群)の学生は5%、59点以下(D 評価群)の学生は1%であった。 全体評価の平均は85.06点であり、各項目(1∼11)の平均は、1顕在問題93.45点、 2要因88.99点、3潜在問題90.18点、4もてる力90.18点、5可能性88.1点、6介入 要素89.29点、7線分81.85点、8情報の解釈・関連づけ・統合化94.35点、9課題把 握79.17点、10目標設定75.3点、11援助方法64.88点であった。 S評価群の平均は95.09点であり、各項目(1∼11)の平均は、1顕在問題98点、 2要因95点、3潜在問題98点、4もてる力100点、5可能性100点、6介入要素100点、 7線分89点、8情報の解釈・関連づけ・統合化99点、9課題把握91点、10目標設定90 点、11援助方法86点であった。 A評価群の平均は85.54点であり、各項目(1∼11)の平均は、1顕在問題93.5点、 2要因91.5点、3潜在問題93.5点、4もてる力90.75点、5可能性89.25点、6介入要 素90.75点、7線分82.25点、8情報の解釈・関連づけ・統合化95.75点、9課題把握 81.5点、10目標設定71.5点、11援助方法60.75点であった。 B評価群の平均は76.57点であり、各項目(1∼11)の平均は、1顕在問題86.75点、 2要因80.25点、3潜在問題77.75点、4もてる力80.25点、5可能性76.25点、6介入 要素77.75点、7線分77.75点、8情報の解釈・関連づけ・統合化92点、9課題把握 68.5点、10目標設定69.75点、11援助方法55.25点であった。 C評価群の平均は65.91点であり、各項目(1∼11)の平均は、1顕在問題93.75点、 2要因75点、3潜在問題点68.75点、4もてる力75点、5可能性75点、6介入要素75 点、7線分62.5点、8情報の解釈・関連づけ・統合化81.25点、9課題把握43.75点、 10目標設定50点、11援助方法25点であった。 (2)項目10.目標設定の結果内訳(優先度の高い目標設定) ①20%の学生は寝たきりの改善をするために移動に関する項目を挙げている。 ②16%の学生は本人の好きな散歩をすることを挙げている。 ③14%の学生は本人の好きな植物の手入れを挙げている。 ④13%の学生は便秘解消やトイレでの排泄を挙げている。 ⑤13%の学生は会話によるコミュニケーションを挙げている。 ⑥その他24%の学生は、レクリエーションへの参加、食事、役割のある生活、着替え、 麻痺側への意識、体調管理、家族への関わり等を挙げている。 2.アンケート調査 介護実習Ⅲ段階終了後に、生活関連図の理解度に関する自己評価について、アン ケート調査を行った。 1)対象 本学人間福祉学科に在籍する2年生84人のうち、研究協力の得られた72人(回収率 85.7%)を研究対象とした。 2)実施日 平成23年12月21日(水)介護過程Ⅴの授業時間内 ―174―

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図1:全体の理解度平均値(n=72) 図2:S評価群の理解度平均値(n=23) 全体の理解度平均 S評価群理解度平均 3)アンケート調査項目 1∼11について5段階評価を行い、それぞれにその理由を記入する形式とした。 5段階評価は5できた、4まあまあできた、3普通、2あまりできない、1できな いと分類し、自己評価の項目を選択させる。 1顕在問題(問題点)について理解することができましたか。2要因(問題の理由) について理解することができましたか。3潜在問題(今後の問題)について理解する ことができましたか。4もてる力(思いや願いを含む)について理解することができ ましたか。5可能性について理解することができましたか。6介入要素(具体策)に ついて理解することができましたか。7各要素を線分で結ぶことについて理解するこ とができましたか。8アセスメント表の、情報の解釈・分析・統合化について理解す ることができましたか。9アセスメント表の課題について理解することができました か。10計画立案の目標の設定について理解することができましたか。11計画立案の援 助方法について理解することができましたか。 4)倫理的配慮 本研究の目的を説明し、成績評価に影響するものではなく個人的な不利益が生じな いよう配慮することを伝え同意を得た。 5)結果 アンケート調査項目1∼11の自己評価結果については、100点に換算しその平均を レーダーチャートに表す。全体結果を図1に表す。さらに、介護過程Ⅲ試験評価結果 で分類したS、A、B、C評価群に分け自己評価結果を図2∼図5に表す。自己評価 の理由記述については、5できた、4まあまあできた、を選択した項目を理解できた 群とし、3普通、2あまりできない、1できない、を選択した項目を理解できない群 と分類し、表1に表す。 ―175―

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図3:A評価群の理解度平均値(n=30) 図4:B評価群の理解度平均値(n=17) 図5:C評価群の理解度平均値(n=2) A評価群理解度平均 B評価群理解度平均 C評価群理解度平均 (1)自己評価結果 全体自己評価の平均は72.92点であり、各項目(1∼11)の平均は、1顕在問題 74.44点、2要因68.88点、3潜在問題74.16点、4もてる力74.72点、5可能性73.33 点、6介入要素66.38点、7線分72.5点、8情報の解釈・関連づけ・統合化71.66点、 9課題把握75.83点、10目標設定74.16点、11援助方法76.11点であった。 S評価群の平均は75.02点であり、各項目(1∼11)の平均は、1顕在問題80点、 2要因69.56点、3潜在問題76.52点、4もてる力79.13点、5可能性73.91点、6介入 要素67.83点、7線分75.65点、8情報の解釈・関連づけ・統合化74.78点、9課題把 握78.26点、10目標設定73.91点、11援助方法75.65点であった。 A評価群の平均は72.72点であり、各項目(1∼11)の平均は、1顕在問題72点、 2要因68.66点、3潜在問題72点、4もてる力71.33点、5可能性75.33点、6介入要 素66点、7線 分72.66点、8情 報 の 解 釈・関 連 づ け・統 合 化73.33点、9課 題 把 握 75.33点、10目標設定76.66点、11援助方法76.66点であった。 B評価群の平均は71.23点であり、各項目(1∼11)の平均は、1顕在問題71.76点、 2要因68.24点、3潜在問題75.29点、4もてる力76.47点、5可能性68.24点、6介入 要素64.71点、7線分69.41点、8情報の解釈・関連づけ・統合化67.06点、9課題把 ―176―

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握75.29点、10目標設定70.59点、11援助方法76.47点であった。 C評価群の平均は66.36点であり、各項目(1∼11)の平均は、1顕在問題70点、 2要因70点、3潜在問題70点、4もてる力60点、5可能性80点、6介入要素70点、7 線分60点、8情報の解釈・関連づけ・統合化50点、9課題把握60点、10目標設定70点、 11援助方法70点であった。 表1.調査項目1∼11自己評価の理由記述 1.顕在問題(問題点)について理解することができましたか。 理解できた群の記述 理解できない群の記述 ・コミュニケーションを通して理解できた ・観察・質問がよくできた ・職員の助言やケース記録から理解できた ・フェイスシートをもとに記入できた ・問題はあったが優先順位がつけられな かった ・直接本人から聞くことができた ・外見だけでなく内面の問題も重要である ことが理解できた ・日常生活の様子からも本人のニーズが把 握できるよう努力できた ・本人からの情報収集が難しかった ・生活上の問題についての十分な理解がで きていない 違う問題があるのではと思う ・本人が満足していると発言し何を支援し ていいかわからなかった ・問題点の抽出に時間がかかってしまった ・全てはできない ・大きな問題しか分からなかった ・問題点がすぐ浮かばない ・教科書を見ないとわからない ・複数の問題を理解できた ・実際困っていることだったのかわからな かった ・自分の知識がなかった 2.要因(問題の理由)について理解することができましたか。 理解できた群の記述 理解できない群の記述 ・原因要因を調べた ・病気から考えると分かりやすかったが、 精神面は難しかった ・職員に相談して理解を深めることができ た ・本人と関わりながら常になぜという疑問 を持って関わることができた ・生活歴を見ることでまあまあできたと思 う ・考えられる要因や実際の要因を照らし合 わせて考えることができた ・利用者の身体状況を踏まえ要因に結びつ けることができた ・疾病だけでなく利用者の周りの環境や関 わり方も要因だったと思う ・精神的な要因については抽出できなかった ・病気の原因を知ることができたものとで きないものがあった ・疾病との関係の有無などはっきり判断で きないものもあった ・病気など詳しく分からない部分は看護師 の専門職に聞いた ・生活歴も知る必要があるので難しい ・完璧に理解できたわけではない ・一つの視点からしか考えられなかった ・どれが問題の要因なのか分からないこと も多々あった ・たくさん調べて分かった ・利用者の問題の原因が職員も良くわから ずカルテにも記載されていなかった。推 測で援助した ―177―

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3.潜在問題(今後の問題)について理解することができましたか。 理解できた群の記述 理解できない群の記述 ・計画に繋げることができた ・病気の症状を知り、その後にどのように なるのか考えることができた ・予測しながら慎重にケアができた ・問題点が抽出できれば今後の問題につい ても繋げて書くことができた ・生活の様子と疾病から予測して考えた ・自分の推測も入っているが問題を導くこ とができた ・一つだけでなく多く潜在問題があると感 じた ・観察を全てできないために正確な判断が できなかった ・現在の問題から今後の問題を予測できた ・問題が多くて全てはできない ・考えられたが確信がなかったため ・今後どのような問題が出てくるか考える ことができた ・ありきたりな潜在問題しか考えられな かった 4.もてる力(思いや願いを含む)について理解することができましたか。 理解できた群の記述 理解できない群の記述 ・利用者の思いを想像することができた ・利用者の自己決定につなげることで尊厳 を尊重できると理解した ・もてる力と思いが違ったときどうするべ きかと思った ・できることは見つけることができたが、 思いや願いまではわからなかった ・寝たきりでも残存能力や思いは残ってい るのでそれを活用する支援が行えた ・利用者が話してくれた ・コミュニケーションが困難だった ・なかなか願いなど言葉として聞けなかっ た ・接することで知ることができた ・自立支援になっていなかったと思うから ・全体からもっと多く見つけられたらよ かった ・進めていくにつれてもてる力が分かった 5.可能性について理解することができましたか。 理解できた群の記述 理解できない群の記述 ・利用者が「何ができるか」が考えること ができた ・本人の意欲などを引き出すことができた ・プラス思考で利用者をとらえることがで きた ・残存能力を活かすことが大切だと学んだ ・たとえ体は動かなくてもその人が可能で あることを最大限に活かしていくことが 理解できた ・進めていくうちに新たな発見がありそこ からも∼できるかもしれないと考えるこ とができた ・一度本人にやってもらうことで知ること が出来た ・できる所に着目して伸ばしていけるよう 努力した ・できる活動の考察ができた ・現状を見ることが難しかった ・自分の願望になってしまっていた ・情報収集や観察を行い知ることができた ・書き方が身についていなかった ・症状的な面から過小評価してしまった ・要介護度が高くてなかなか思いつかな かった ・できるところやできないところとはっき り分かれていた ・進めていくにつれて持っている力がわ かった ―178―

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6.介入要素(具体策)について理解することができましたか。 理解できた群の記述 理解できない群の記述 ・見守りをするといった介入がワンパター ンになりがちだった ・多くのことを考えることができた ・優先順位を決めるのが難しかった ・本人の状態に合わせて実施できた ・自分の行ったことが正しいかどうかわか らないが、結果がでたのでよかった ・問題点からどのようなことが必要なのか 考えられたと思う ・目標と具体策が一致しないところがあっ た ・OTにたよりがちになってしまった ・自分で考えて行ってみたが職員の人に否 定された ・先輩のケーススタディを参考にしたため 本人に合った方法にかけていた ・どうしたらいいか時間がかかった ・考えることはできるが利用者にとって一 番正しいケアなのか分からない ・必ずしも回復を目的にしなくても維持と いう形でも得ることが多いと思った ・考えが一つに集中してしまった ・介護職と他職種が行うことが混在してし まった ・実際は楽しむことを優先させた ・具体的な援助を取り組むことはできな かった ・継続して行えるという視点が欠けていた ・アセスメントを通して考えることができ た ・偏りがちになる 7.各要素を線分で結ぶことについて理解することができましたか。 理解できた群の記述 理解できない群の記述 ・顕在問題、要因、など中には合併してで きる潜在問題もあったため線で繋ぐこと でより理解を深めることができた ・全てを繋げて考えることが難しかった ・線で結ぶことで新たな発見がある場合が あるのではないかと思った ・要素同士がよく関係しており、わかりや すく書けた ・介入する時の根拠が明確になったから。 繋がりを持たせることで理解が深まった ・資料を参考に引いた ・様々結ぶことができると思うが、一方向 で線を結ぶという考え方にとらわれてい る自分がいる ・関連しているところを知ることができた ・多少難しかったが情報収集などをもとに 考えることができた ・同じ内容のものがたくさんあったり迷っ てしまった ・理解できたが、実際に活用することがで きなかった ・生活歴と既往歴など関連づけて考えるこ とが難しかった ―179―

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8.アセスメント表の、情報の解釈・分析・統合化について理解することができましたか。 理解できた群の記述 理解できない群の記述 ・何回かいても難しい ・正しい援助をするために必要だと分かっ た ・それぞれの情報に沿って自分なりにアセ スメントできた ・一つのまとまりとして考えることができ た ・利用者をもっとよく知ることができた ・授業のプリントを見ながらおこなった ・事例と違い、実際にはどのようにしてい いのか分からず苦労した ・書き方にあてはめようとして大切な情報 が抜けている気がする ・一部つながっていないこともあった ・本人にとってよいアセスメントを行うこ とができたかどうかわからない ・問題の要因がそのことだと言い難くわか らないことがあった ・利用者の思いをあまり考えていなかった ・できないところだけを考えてしまった ・情報収集が足りないところがあり、偏っ てしまった 9.アセスメント表の、課題について理解することができましたか。 理解できた群の記述 理解できない群の記述 ・介護計画立案に必要だとわかった ・現状から課題を考察することができた ・まとめた上でその人が何をするのが良い かがわかった ・本人にこうなって欲しいという思いが強 くあった ・ADL状況などからアセスメントし課題 を設定できた ・流れを覚えることはできた ・もっと身体状況に目を向ける必要がある ・課題のレベルがその人に合っているか不 安だった ・本人の望むできこと、問題点からどうな りたいかなど考え行った ・授業で書いたものを参考にしないと書け なかった 10.計画立案の目標の設定について理解することができましたか。 理解できた群の記述 理解できない群の記述 ・小さな事の積み重ねが大切だと分かった ・長期目標より短期目標を立てるほうが悩 んだ ・期間の設定が難しかった ・目標を具体的に立てることで達成状況が わかる ・本人の思いも交えながら計画立案を作成 していくことができた ・本人に合った無理のない設定ができた ・利用者のニーズをもとに目標を設定する ことができた ・本人の視点で考えることができた ・達成できたかは不安だが、自分の目標と して頑張れた ・「こうなって欲しい」と思うことと目標 が一致していなかった ・まだ具体的なことが計画できない。大き い目標は立案できる ・効果が見える目標にすればよかった ・決めた日にちと合わないことが多かった ・書き方が難しい ・自分の目標設定が正しいのか不安であっ たが理解はできている ・本人に合った目標設定ができた ・本人の視点で考え短期間で達成できそう な目標にした ・目標を立てることで達成状況がわかる ―180―

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Ⅲ.結

試験評価結果は、全体の平均が85.06点であり高い結果となった。また成績評価の 内訳では、100∼90点(S評価群)と89∼80点(A評価群)の学生を合わせると72% であり、79∼70点(B評価群)の学生は22%、69点∼60点(C評価群)と59点以下(D 評価群)の学生を合わせると6%であった。全体の記載の傾向としては、生活関連図 への記入はできるが、相互関係性を線分で結ぶ(項目7)は、多少評価が下がった。 また、アセスメント表に記述し、課題の抽出になると評価が下がり、さらに介護計画 立案としての目標設定、援助内容の方法を記述する部分(項目9∼11)になると評価 が下がっていることが明らかになった。 アンケート調査による自己評価の結果は、全体の平均が72.92点であった。試験評 価結果より、全体的に約10%ずつ下がった傾向になった。しかし、試験では評価が低 かった項目9∼11については、他の項目と同様の評価結果であった。レーダーチャー トの形はバランスのよい円形になった。自己評価の理由については、理解できなかっ た群を選択した学生の記述内容には、実習先での反省点や、より正確な情報や支援方 法と比較して不足があることを挙げていた。理解できた群を選択した学生は、実習先 での成功体験が多く含まれ、利用者を受け持ち介護過程の展開をすることで理解でき た内容が挙げられていた。 11.計画立案の援助方法について理解することができましたか。 理解できた群の記述 理解できない群の記述 ・その援助方法にした根拠も考えることが できた ・もっと詳しく書いて要点もまとめないと いけないと思った ・理解できたが、自分だけでなく他の人も 見やすいように書けるようになりたい ・進めていくうちにこれでよかったのかと 不安になった ・決められた時間ではできることとできな いことがある ・理学療法士の方に相談したり自分だけで はわからないことを聞きながら実践に繋 げることができた ・職員の方や先生のアドバイスを受けて行 うことができた ・無理なく行える援助方法について考え実 施することができた ・情報を頭に入れながらケアが行えた ・記入はできているが具体的に誰が読んで も実践できるようには書けていない ・どの方法がよいか考えることができた ・なかなか方法が思いつかなかった。もっ といろんな本を読んでおくべきだった ・具体策を書けなかった ・実施できたが変化が見られなかった ―181―

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Ⅳ.考

介護過程Ⅲ試験評価結果(前期)と、介護実習Ⅲ終了後のアンケート調査結果(後 期)を比較すると、学生の試験評価が低かった3項目(9課題、10目標、11援助内容) が、自己評価では、他の8項目と変わらない理解度であった。試験評価では、全員が 同じ事例問題についてペーパーシミュレーションを行う形式である。問題用紙にある 限られた情報について分析し介護過程を展開するため、ある程度は容易に回答できた と思われる。しかし、事例の対象者に適切な介護計画を立案する内容については、実 在の事例と直接関わることはないため、具体的なイメージに乏しく、詳細な援助内容 を記載することが困難だったのではないかと思われる。小車ら3) は、第2段階実習後 よりも第3段階実習後の方が、学生は利用者のニーズ把握と具体的で目標に沿った介 護計画を立案することができるという自覚が高まり、介護計画の実践では、具体的な 介護方法を考える創造力とあれこれと実施してみる実行力が必要である。第3段階実 習で学生が受け持ち利用者に立案した介護計画を実践してみることで、利用者のニー ズが明確になり具体的で目標に沿った介護方法を考えることができるようになるとい う自覚が高まったと推測される。と述べている。 本学科の介護実習Ⅲは、27日間の最終段階の実習である。この期間で担当利用者を 決定し、情報収集、アセスメント、介護計画立案、実施、評価までの介護過程を展開 する。ここでは、実在の事例と直接関わり、積極的にコミュニケーションを図りなが ら、担当利用者にとってよりよい生活を支援するために必要なニーズを把握し、自ら が考案した介護を提供することになる。森4) は、モデルを活用した授業展開の研究結 果について以下のことを述べている。介護過程の展開能力を向上させるためには、介 護過程のプロセスや記載方法の理解だけでなく、対象を理解しようとする姿勢やその 人への関心を示すことで観察内容を増やすこと、および生活全般に関する気づきがあ ることなどが重要であることが明らかになった。気づきができれば必然的に情報収集 からアセスメントの視点が刺激され実際のアセスメントを記述できるようになり介護 の方向性を考えていく方向に学習が進むと述べている。学生はペーパーシミュレー ションと違って、実習ではイメージがしやすく担当利用者について深く考えることが できたため、全体的には理解ができたと回答していると思われる。しかし、実在の事 例は、試験で提示する限られた情報ではなく、多岐に渡って多くの情報があり、さら に過去の情報、現在の情報を把握しなければならず、現在は一刻一刻と変化する情報 でもある。今後、変化する状況を予測しながら、問題解決に向けた支援やよりよい生 活に向けた支援を行うため、学生は悩み不安に思いながら取り組んだと思われる。自 己評価の理由には反省点や、正しい情報に基づいたより効果的で正確な支援と自己の 支援を比較して低い評価をつける傾向にあるといえる。介護過程を展開するためにま ずは情報収集があるが、利用者から直接得られる情報収集には、疾病や障害などによ るコミュニケーション障害があったり、ケースファイルなどから得る記録物に過去の 生活歴が詳細にないために、その後のアセスメントが不十分で、経験不足の学生とし て予測しながら展開していくことに確信が得られないことから高い自己評価を選択す ることはできなかったことが伺える。自分が行った介護が良かったのか悪かったのか の判断基準に、担当利用者の反応や、結果が現れたことを挙げる学生が多くみられる。 自己評価の理解できた群を選択した学生の記述には担当利用者に合った介護を提供す ―182―

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ることができたことが挙げられる。富岡5) は介護実習における「介護過程の展開」に ついての研究結果として次のことを挙げている。学生は情報収集、アセスメントの概 要について理解していたつもりでも、実際の場面では対人援助技術の未熟、コミュニ ケーション不足や、情報の整理に時間がかかり、立案した介護計画の実施期間が短く なってしまうケースが多いことがわかった。(中略)強化すべき演習項目として1コ ミュニケーションスキルを高める、2多事例を用いた介護過程の展開技法、3課題の 解決志向:介護過程の思考プロセス、4表現する力、記録、を挙げている。また、森6) は、学生の評価に変化のない群「伸びなかった群」について次のことを挙げている。 介護過程のプロセスが理解できないか、または、記載すべき内容が思いつかない状況 があり、個別にヒントを示して行ったが、考えがまとまらず誘導的指導が続いた。対 象者との接し方において自ら声を掛けて行動したり、会話(言葉掛け)を続けられな かったり、指導者からの指示を受けてから行動するといった反応を示す傾向があった。 習熟があった学生は、実習時の行動も自ら対象に声を掛け、ケア面では自分の立案し た介護の視点を実施するために、指導者の協力を得て実践する姿があった。また、不 明な点については、教員や指導者にアドバイスを求めるなどその場での対処を行う傾 向があった。この傾向は本学科でも同様で、授業後の試験評価は高くても、実際の場 面で展開すると、低い評価になる学生が多く見られている。事後指導の際、介護過程 の再指導としては、展開方法より、コミュニケーション方法や行動力について話し合 うことになる。対人関係が苦手な学生に対する指導も今後の課題といえる。 利用者に合った介護過程を展開するためには、根拠に基づいた介護計画立案、実践 が求められる。その根拠を明らかにするために、本学科で開発した生活関連図は有効 な教材となると考えている。自己評価の記載内容には、利用者が抱える生活上の問題 点やその理由、利用者がもっているプラス面の力や可能性、そこから介入すべき具体 策を考えることの必要性を実感し、多くの気づきが得られていた。福原7) は、介護過 程の展開記録様式に関するアンケート結果から一連の介護過程の流れの中で学生が最 も苦手としているのは、問題の明確化の部位であると考えられる。実習後の自己評価 からも概ね低い結果である。問題点の明確化の過程において根拠を十分に把握してい ないために適切な問題解決策への展開が困難になる学生が多い。問題点の挙げられな い学生には、実習中、巡回教員が学生の持つ情報が混乱している部分や欠けている部 分を整理して導くことが必要であり、その過程を通して思考の整理ができ、プロセス が繋がったことで納得する。問題点の明確化を問題点とその根拠に分類して整理する ことで根拠を持ってつなげることができる。次の展開となる目標が具体的に浮かび上 がる。と分析している。また、岩崎8) は介護過程理解度の結果、情報収集以後の理解 度が徐々に低くなる傾向が見られている。また、「介護上の課題」の過程においては エビデンスを十分に把握していないために適切な問題解決策への展開が困難になって いる。収集した情報をアセスメント(整理・分析)する中から「介護上の課題」への 過程で大半の学生は壁に直面しやすい状況にあると思われた。と述べている。森9) は、 情報収集した内容からのアセスメントの導き出しが出来ていなかった。(中略)本来 記載してほしい生活上の障害やその人の持つ希望などを見つめているものは少なく、 アセスメントの記載量も乏しかった。(中略)アセスメントした内容を抽象化してお り対象の状況が漠然とする傾向にあった。と調査結果を述べている。他の養成校でも、 アセスメントによる問題の明確化、ニーズの把握についての課題を取り上げている。 ―183―

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学生が取り上げる利用者のニーズ傾向として、池森10) は「他者との交流」が最も多 く次いで「日常生活の活性化」「下肢筋力の向上(転倒防止)」「精神的安定(行動障 害への対応)」「身体機能の向上」などの社会性の回復や精神的な介護に比重を置いて いる。一方、「入浴の自立」「車椅子の自走」「着脱行為の自立」「誤嚥防止」「拘縮」 に関して回答数は少なく、日常生活における介護に視点が低いことが言える。と述べ ている。また永島11) は学生が取り組んだ利用者のニーズとして一番多かったのは「承 認のニーズ40.8%)」であり、「生理的欲求」や「安全の欲求」に取り組んだ割合が少 なかった。疾患や心身機能・身体構造に関する知識の活用が苦手であり、医学知識の 習得が課題であると述べている。さらに現場の問題として、介護計画書が書面として 存在しないためにケアマネジメントとの混同があり、学生には区別がつきにくいこと も挙げている。森ら12) は、国際生活機能分類に基づく記録用紙を用いた介護過程の分 析結果として、心身機能・身体構造の領域について学生は、心身機能・身体構造の情 報を記録用紙に記入することはできるが、その情報の活用ということが苦手であるこ とがわかった。これは、人体の構造と機能および疾病の成り立ちの分野の知識が希薄 であるということに関連がある。と述べている。これらの傾向は、本学科としても共 通の問題点である。試験評価の回答では、筆者の意図する解決策を最優先に挙げた学 生は33%であり、その他の学生は、直接の問題点を飛び越えて、利用者の好きなこと や余暇の支援を挙げる傾向があった。学生が苦手とする医学知識を活用する具体的援 助方法が展開できないのは、その分野の知識が不十分であると言える。高橋13) は、「質 の高い介護福祉士」の要件に「気づき」があると推察する。専門職者としての観察力 と強い使命感を持つ実践者といえる。介護福祉士養成課程においては、専門知識や技 術は勿論のこと、学生の更なる深化が求められることは、エビデンスに基づく介護福 祉士観の確立と職業倫理を基盤とする高次な人間性であり、その一助を担うのが「介 護過程」と考える。演習事例としての事例研究や先人の行き方を通して「考える力」 「感じる力」を養っていくことが、利用者理解や専門職としての人間性を涵養してい くと考える。と述べている。生活関連図の各構成要素(顕在問題、要因、潜在問題、 もてる力、可能性、介入要素)について、さらに専門的で具体的な記入を学習するこ とで、根拠に基づいた介護過程が展開できるのではないかと考える。しかし、詳細な 分析に偏ると、全体像が見えなくなる危険性も考えられるため、段階的な思考トレー ニングと、実践力も含めた展開を視野に入れ教育改善する必要があるといえる。

Ⅴ.結

介護過程における生活関連図学習の今後の課題は、生活関連図によるアセスメント 内容を介護計画に反映させることや専門知識を活用した具体的な援助方法が立案でき ることである。さらに、介護実習の場でコミュニケーションスキルを活用し介護計画 に基づいた介護行為の実施および評価ができる教育方法の工夫が必要であるといえる。 ―184―

(17)

(引用文献)

1)横尾成美,橋本美香:生活関連図を用いた介護過程の取り組み−生活関連図の理 解度−,山形短期大学教育研究第9号,66,2009. 2)横尾成美:生活関連図によるアセスメントの評価−生活関連図作成と統合化の理 解度−,第17回日本介護福祉教育学会発表要旨集,73,2010. 3)小車淑子,松山郁夫:介護過程に関する教育アプローチ,西日本短期大学社会福 祉学科紀要6,5,2009. 4)森和子:介護過程の教育方法−モデルを活用した授業展開−,高田短期大学紀要 27,56,2009. 5)富岡郁子:介護実習における「介護過程の展開」−実習効果を上げる演習項目は 何か−,北陸学院大学短期大学部研究紀要1,251,256,2008. 6)4)前掲書,55−57. 7)福原裕子:介護過程の展開における思考プロセスに関する考察,美作大学短期大 学部紀要51,42,2006. 8)岩崎房子:「介護過程」授業展開の現状と考察,鹿児島国際大学福祉社会学部論 集26,59,2008. 9)4)前掲書,53. 10)池森康裕,鍋澤信子:介護過程教育方法に関する一考察,國學院短期大学紀要 26,101,2009. 11)永島稔子:介護過程における教授方法の検討−情報分析の視点を養うワークシー ト作成の試み−,西九州大学健康福祉学部紀要39,40−41,2008. 12)森扶由彦他:国際生活機能分類に基づく記録用紙を用いた介護過程の分析,愛知 新城大谷大学研究紀要5,96,2008. 13)高橋謙一:「質の高い介護」と「質の高い介護福祉士」に関する一考察−介護福 祉士法およびカリキュラム改正からの検証−,日本赤十字秋田短期大学紀要14,75− 76.2009.

(参考文献)

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・岩 井 恵 子:本 学 に お け る「介 護 過 程 の 教 授 法」3,大 阪 体 育 大 学 短 期 大 学 部 9,2007. ・足立圭司:ICF・介護過程を基本にした介護研究に求められるスキル−エビデン ス・ベースドの事例研究−,別府大学短期大学部29,2010. ・黒田しづえ:「理論に基づいたアセスメントから学んだこと」∼介護過程の展開を 効果的に学ぶ取組∼,神戸女子短期大学紀要55,2010. ・関谷栄子他:個別介護計画作成における介護実習指導成果の解析−介護過程構成要 素の抽出−,白梅学園大学紀要44,2008. ・伊藤幸子他:国際生活機能分類に基づいた介護過程に関する一考察−ICFに基づ いた生活福祉専攻における介護過程シート作成の過程を中心に−奈良佐保短期大学紀 要15,2007. ・青木君代他:施設実習に於けるケース研究報告集の個別介護過程の展開に関する考 察,京都短期大学紀要33,2005. ・緒方まゆみ:「介護過程の展開」の教授法に関する一考察∼21年度新カリキュラム を視野に入れて∼,精華女子短期大学紀要35,2009. ・播本雅津子:教材として用いる演習事例に関する研究,大阪健康福祉短期大学紀要 3,2005. ・根本曜子,古川繁子:「介護過程」授業研究,植草学園短期大学紀要11,2010. ・杉山せつ子:聖隷学園における介護福祉教育と介護過程研究の変遷−介護過程の展 開ツールの作成に至るまで−,聖隷クリストファー大学紀要6,2008. ・小林朋美他:基礎教育における介護の専門的思考の発達過程−介護過程の事例展開 を通して−,聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要6,2008. ・田家英二:介護福祉士養成教育の改革と今後の課題−介護実習を焦点に−,鶴見大 学短期大学部紀要47,2010. ・佐藤真,中澤秀一:介護過程における論理的な思考スキルの育成を目指した教材開 発−ロジカルシンキングに基づくワークシートの活用−,兵庫教育大学紀要35,2009. ・綾部友絵:介護過程指導の展開と今後の課題,宮崎女子短期大学紀要,2007. ・由田美津子,道下千春:介護技術講習会における介護過程教育方法の試み−ICF モデルの活用と事例記載シートの考察−,北陸学院短期大学紀要39,2007. ・末廣洋子:介護過程教授の方法について(1),山口芸術短期大学紀要38,2006. ・末廣洋子:介護過程教授の方法について(2),山口芸術短期大学紀要39,2007 ・柴原君江:生活機能向上の目標に視点をおいた介護過程教育の試論,田園調布学園 大学紀要1,2006. ・横山正子他:E-Learning を活用した介護過程教授のための授業改善の成果,神戸女 子大学紀要2,2010.

註)

*1「生活関連図」とは 生活関連図は、看護領域において患者の健康障害を理解し、看護の方向性を見出す ために記述する病態関連図を基盤にして、介護の利用者の状況や生活環境、介護に必 ―186―

(19)

要な問題点についてその概念をキーワードで表示し相互関連性を線分で繋いだ図であ る。 この図によって学生の体験内容が介護福祉の諸問題とどのような関係があり、今後 学生は課題解決のために何を学ぶべきかが明示されるようになっている。また利用者 をとりまく具体的な問題と全体像を把握できるのが特徴である。図に表す各言葉の意 味を以下に定義づけする。 ① 事 例・・・対象者または対象者の問題 ② 要 因・・・問題が起きた原因 ③ 顕在問題・・・対象者の問題と関連する表面化している問題 ④ 潜在問題・・・まだ現れていない問題・今後起こりうる問題 ⑤ もてる力・・・対象者のできること・前向きな思い ⑥ 可能性 ・・・期待される結果 ⑦ 介入要素・・・介護計画:目標と具体的な行動計画 *横尾成美,橋本美香:生活関連図を用いた介護過程の取り組み−生活関連図の理解 度−,山形短期大学教育研究.第9号,64,2009. ―187―

参照

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