総合研究所・都市減災研究センター(UDM)研究報告書(平成24年度)
テーマ3 小課題番号3.1-3
*:工学院大学建築学科4年 **:建材試験センター ***:工学院大学建築学部 教授 工博
経年コンクリートの品質評価に関する研究
経年コンクリート 非破壊試験 コア 透気係数 中性化 鈴木 健之* 田迎 聡士* 中村 建*
中村 則清** 阿部 道彦***
1. はじめに
年月を経過したコンクリート構造物におけるコンクリート の品質は、養生条件により内部と表層部で異なってくる場合 がある。特に建築物では十分な湿潤養生が行われないときに 両者の差が大きくなることがある。内部のコンクリートの品 質は一般にその強度で評価され、コンクリート構造物の場合 には、構造体からコアを採取して強度試験が行われている。
一方、表層部のコンクリートの品質はその強度を直接的に 測定することが困難なことから、非破壊試験を含めた他の手 法による評価が行われることが多い。本研究では、経年コン クリートの品質評価に資するため、25年経過したコンクリー ト試験体を対象として、各種試験を行い、併せて表層部の品 質評価への透気試験の適用性を検討することとした。
2. 文献調査 2.1 調査方法
内部のコンクリートの品質評価に関する文献は 16 件で調査 結果をまとめた。表層部のコンクリートの品質評価に関する 文献は 64 件中、透気試験に関する文献をコンクリート工学年 次論文集より 16 件収集して表 1 にまとめた。
2.2 調査結果
2.2.1 内部コンクリートの調査結果
採取したコアを水中養生すると強度低下が著しいので、コ ンクリート構造物の耐久性診断用のコアは水中保存せず、で きるだけ早めに試験するのが良い。また、材齢3ヵ月以内の 構造物の場合はその部材のコンクリートの含水量とほぼ同じ 条件にするか採取後のコアを2日間水中保存し、湿試験の補
正として10%の強度増加が考えられる。また、材齢1年の場
合では、圧縮強度は湿試験が乾試験に比べて、室内で約20%、
屋外で10%低下するので約2倍の差がある。その原因は、室
内の方が乾燥しているためである。
2.2.2 表層部コンクリートの調査結果
透気試験の結果(表1)から、コンクリートの透気係数と促 進中性化深さ、中性化速度係数は相関する。浸水シートを敷 設した型枠を使用することにより、コンクリート表面の透気 性が軽減され、含浸材塗布の場合では中性化の進行がある。
また、透気係数は敷設していないものと比較して1/10~1/10³ 程度に軽減する。トレント法が改善され、より正確な結果が 得られると、安全性能が低下する品質の構造物であるかを定 量的に評価できるため、変状が発生する前に対策を実施する ことで効率的に維持管理が可能である。
表 1 透気試験に関する文献調査 文献
番号 構造物試験体 経過年数 水セメント比 中性化 透気試験 透気係数
(×10⁻¹⁶m²)
1 高架橋 17-18 ○ トレント法 0.631,0.996
2 試験体300×300×100 118日 47.5,73.0 ○ トレント法 0.003,2950
3 試験体150×150×530 91日 ○ トレント法
4 試験体200×200×500
400×200×500 28日 55 ○ トレント法 0.03-0.6 5 試験体300×400×2350 2年 58,57.5,32 ○ トレント法 0.5-1.1
6 構造物3件 18、41、
50年 ○ トレント法 0.8-800
7 試験体100×100×100
Φ150×50 63日 50 ○ 水中置換法 8 試験体100×100×100 56日 55 ○× トレント法 0.05-0.6,
0.01-0.7 9 試験体150×150×600 5年 30-100 ○ トレント法 0.094-71 10 試験体100×100×400
150×150×530 91日 50 ○ トレント法 0.08-1.0 11 試験体300×100×300 2ヵ月 44,54,63 ○ トレント法 60-5000 12 試験体1000×1000×1000 28日 48.5 ○ トレント法 0.003-0.843
13 試験体Φ50×33 1ヵ月 40-60 ○ 加圧法
14 試験体100×100×400 26週 45,55,65 ○ 簡易透気 0.1-0.3 (kPa/sec) 15 試験体Φ100×100 91,180日 45,55,65 ○ 簡易透気 0.03-5.9
(kPa/sec) 16 試験体450×450×1200 2年8ヵ月 45-61 ○ 簡易透気 0.33-3.009 (kPa/sec)
3. 内部コンクリートの品質評価に関する実験 3.1 実験方法
コアの強度に及ぼす試験時の乾湿の影響を把握するため、
コア採取用の管理用供試体と角柱供試体の含水率を確定する ためのコンクリート供試体を作製した。これらの管理用供試 体(φ75×150)は20℃封かん、管理用供試体(φ100×200)
は、標準水中と20℃封かんの2つに分け、13週間養生した。
角柱供試体(150×150×530)の方は、13 週間封かんし、コア 抜きを行いコア供試体(φ75×150)を取り出した。このコア 供試体を、採取後2日間水中と採取後2時間水中の2つの条 件で養生した。そして、質量、超音波伝播時間、圧縮強度の 測定を行った。
セメントの種類は普通ポルトランドセメントで、細骨材は 大井川水系陸砂、粗骨材は青梅産硬質砂岩砕石2005である。
養生条件は、表 2 の通りである。水セメント比は表 3 に示す
ように30%、40%、55%、75%の4調合である。
表 2 供試体の養生条件
管理用供試体 Φ75×150 採取後
2時間 水中
採取後 2日間 水中
20℃封かん 20℃封かん 水中
13週 13週 13週 13週 13週 コア供試体
75Φ×150
管理用供試体 Φ100×200
表 3 計画調合及びフレッシュコンクリートの試験結果
セメント細骨材 粗骨材
75.0 0.58 49.8 174 232 903 941 580 16.5 3.5 20.0 19597 55.0 0.58 48.1 172 313 842 941 782 18.3 4.3 20.0 19622 40.0 0.54 48.9 172 430 810 876 2150 20.3 5.9 21.0 19428 30.0 0.50 50.5 176 587 800 811 7040 63.7 2.5 21.0 20237
質量(kg/m3) 混和剤の使 用量 (g/m3)
フレッシュ時の試験結果 スラ
ンプ (cm)
空気量
(%)
現場調合
練り上 がり温 度(℃)
単位容積 質量 (kg/m3) 単位粗骨材
かさ容積
(m3/m3) 細骨材 率(%)
単位水量
(kg/m3) 水セメン
ト比(%)
3.2 実験結果と考察
図 1 に示すように、コアの圧縮強度は 2 時間水中浸漬した ものは、2 時間水中浸漬したものより、約 6%大きくなった。
また、図 2 に示すように、最も大きくなったのはΦ75×150 の封かんであった。
寸法は小さいほうが、強度が強い傾向にあることがわかっ た。
図 1 2時間浸漬と2日間浸漬の関係
図 2 水セメント比と圧縮強度の関係
4. 表層部コンクリートの品質評価に関する実験 4.1 実験方法
今回の実験に使用した試験体のコンクリートの種類は、表4 に示す11種類である。粗骨材に一部軽量を用いている。普通
セメント、高炉B種、フライアッシュB種で、実験に使用す る25年前に作製され、表5に示す暴露条件に分けた44本の 角柱供試体を、つくば市の研究所から八王子キャンパスまで 搬送し、表6 に示す試験を行った。透気試験は、表面部を研 磨して測定した。コアは直径75㎜のものを採取した。強度は 試験時の供試体の含水状態によって変化するため、コアを抜 いてから2日間水中に浸漬してから行った。
シュミットハンマーによる反発度測定は、表面部の状態に よって反発度が正確に読み取れないため、数値が定まらない 場合がある。今回は、1本の供試体に対して片側12回ずつ両 側について測定を行った。
角柱試験体44本から各2本ずつ抜き取った88本のコアに フェノールフタレイン溶液をかけ、S面とN面で各5点ずつ 中性化深さを測った。
表 4 コンクリートの種類
粗骨材 細骨材 50 60 70
普通 砕石 砂 ○ ○ ○
高炉B種 砕石 砂 ○ ○ ○ フライアッシュB 砕石 砂 ○ ○ ○
普通 軽量 砂 ○ ○ -
セメント 骨材 水セメント比(%)
表 5 供試体の暴露条件
番号 放置場所 屋根の有無
1 屋根なし
2 屋根あり
3 屋根なし
4 屋根あり
建物の南側 建物の北側
表 6 試験の項目と方法
項目 方法 測定面
表面観察 目視、写真撮影 両面 質量
寸法測定
表面含水率 水分計 C MEX Ⅱ 両面 超音波速度
透気試験 トレント法 片面
反発度試験 シュミットハンマー 両面 中性化試験 JIS A 1152 両面
質量
(研磨後、水中浸漬と後)
寸法測定 超音波速度 動弾性係数 ヤング係数 圧縮強度 角
柱 供 試 体
電子天秤[0.1g]
スケール[mm]
パンジット
電子天秤[0.1g]
パンジット スケール[mm]
コ ア
JIS A 1127 縦振動 コンプレッソメーター
JIS A 1107
4.2 .実験結果とその考察 4.2.1 表面含水率
含水率5%以下でなければ、透気試験が行えないので測定し
た結果、全ての供試体が試験条件を満たした。図4によると、
南側は日光にあたるため含水量が比較的少なく、北側は陰で 湿っているため含水量が多くなる傾向がある。また、試験体 の南面と北面ではあまり差は認められなかった。
図 3 含水率の測定結果
4.2.2 透気係数
図 4 に透気試験結果を示す。これによると、屋根がない方 に暴露されていた供試体よりも屋根がある方に暴露されてい た供試体の透気係数が大きくなっていることがわかる。特に そのなかでも水セメント比が高い供試体の透気係数が大きく なっていることも読み取れる。
普通ポルトランドセメントを使用した供試体の暴露条件に よる比較を図5に示す。この図によると、南側と北側の屋根 ありの供試体の透気係数が高くなっているため、強度が弱い ことがわかる。一方、屋根なしの方はどちらも、透気係数が 低いため、強度が強いことが考えられる。これらの結果から、
暴露状態は方角よりも屋根の有無によって左右されることが わかるため、雨に関係していると思われる。
0 2 4 6 8 10 12
南側 屋根なし
南側 屋根あり
北側 屋根なし
北側 屋根あり
暴露条件 透気係数(×10⁻¹⁶㎡)
N50 N60 N70 S50 S60 S70 F50 F60 F70 L50 L60
図 4 各暴露条件における透気係数の関係
図 5 水セメント比と透気係数の関係
4.2.3 反発度
図 6 に反発度の測定結果を示す。水セメント比(W/C)が高い ほど、反発度が小さくなることが確認された。このため、い ずれの種類のコンクリートにおいても水セメント比が高いほ ど強度が低いことが推測できる。
セメント水比と反発度の関係を図7に示す。普通ポルトラ ンドセメントは、セメント水比によって差が大きくなった。
また、セメント種類による反発度の著しい差はあまり見受け られず、軽量コンクリートはやや小さくなった。
南面
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
南側 屋根なし
南側 屋根あり
北側 屋根なし
北側 屋根あり
暴露条件
反発度係数
N50 S面 N60 S面 N70 S面 S50 S面 S60 S面 S70 S面 F50 S面 F60 S面 F70 S面 L50 S面 L60 S面
図 6 反発度の試験結果(北面も同様)
15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0
1.00 1.50 2.00 2.50
セメント水比 反
発 度
N-1
S-1
F-1
L-1
図 7 セメント水比と反発度の関係
4.2.4 中性化
コンクリートの中性化は、空気中の二酸化炭素(CO2)が コンクリート中へ浸透して、コンクリート中の水酸化カルシ ウム(Ca(OH)2)と反応し、炭酸化カルシウム(CaCO3) を生 ずることによって起こる。すなわち、空気がコンクリート中 へ入りやすいか、入りにくいかと、コンクリート中の水酸化 カルシウムのもととなるセメントが多いか少ないかによって 決まってくる。一般にセメントの多いコンクリートは緻密と なるため、空気は浸透しにくくなる。また、コンクリートが 湿っていると空気は浸透しにくく、乾燥していると空気は浸 透しやすくなる。このため、図4に示したように、コンクリ ートの透気係数が大きくなるということは、空気が浸透しや すいということであり、図8に示すように中性化が進行しや すくなるものと推測される。
水セメント比が大きくなると、中性化深さも大きくなって いる。また、中性化深さは、コンクリートの種類よりも、暴 露条件の影響が大きいと思われる。コンクリートの透気係数 と中性化速度係数の関係を図 9に示す。透気係数が小さけれ ば、中性化速度係数もほぼ比例して小さくなっていると思わ れる。そして、南側の雨なしが最も大きい値である。暴露条 件の影響は、方角よりも雨の有無に最も関係している。
図 8 各暴露条件における中性化速度係数の関係
(北面も同様)
y = 1.36x0.587 R² = 0.584
0 2 4 6 8 10
0.001 0.01 0.1 1 10 100
透気係数( ×10-6m2) 中性化速度係数(mm/√年)
南側雨あり 南側雨なし 北側雨あり 北側雨なし 系列5 累乗 (系列5)
図 9 コンクリートの透気係数と中性化速度係数の関係
5.まとめ
(1)文献調査の結果について
①コアの圧縮強度は湿試験の方が乾試験より小さくなる。そ の程度は、条件により異なる。
②コンクリートの透気係数と促進中性化深さ、中性化速度係 数は相関する。
(2) 内部コンクリートの品質評価について
①コアの圧縮強度で 2 日間浸漬している供試体よりも 2 時間 浸漬した供試体の方が6%強度が大きかった。
②3 ヶ月間の管理用供試体の養生で最も圧縮強度が強かった 養生方法は、φ75×150 の封かんであった。
(3) 表層部コンクリートの品質評価について
①表面含水率は、屋根ありよりも屋根なしの方が、高い値を 示し、方位の影響はあまりみられなかった。
②透気係数は屋根なしより、屋根ありの方が大きくなった。
③反発度は、水セメント比が小さいほど大きくなる傾向を示 し、方位にかかわらず、屋根ありの方がその傾向が顕著であ った。
④コンクリートの透気係数と中性化速度係数は相関すること が確認された。
⑤暴露条件による表層部の品質は、方位よりも屋根の有無に 最も影響された。
謝辞
実験の実施に当たり、長谷工コーポレーションの金子樹氏、
建築研究振興協会の田山隆文氏および本学の齊藤辰弥氏と仲 摩諭氏の協力を得ました。記して謝意を表します。
参考文献
1)下澤和幸, 永山勝、今本啓一、山崎順二:鉄筋コンクリ-ト 構造物の耐久性能検証のための透気性試験による指標値と中 性 化 深 さ の 関 連 に つ い て,コ ン ク リ ー ト 工 学 年 次 論 文 集 vol.31,pp.2005-2010,2009.6