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社会システム分析のための統合化プログラム37 -医療分野への拡張- 福井

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(1)

福山平成大学経営学部紀要 第17号(2021),*-**頁

社会システム分析のための統合化プログラム37

-医療分野への拡張-

福井 正康

*1

・奥田 由紀恵

*2

・永井 純子

*3

1 福山平成大学経営学部経営学科

2 福山平成大学大学教育センター

3 福山平成大学福祉健康学部こども学科

要旨:我々は教育分野での利用を目的に社会システム分析に用いられる様々な 手法を統合化したソフトウェアCollege Analysisを作成してきた。今回は、医療 分野でよく用いられる分析手法で、罹患率に関する推定と検定、標本数の決定 の問題、ROC曲線、傾向スコアマッチング、κ係数に関するプログラムを追加 した。

キーワード:罹患率、オッズ比、標本数の決定、ROC曲線、傾向スコアマッ チング、κ係数 、College Analysis

1. はじめに

著者らが開発を進めているCollege Analysis(C.Analysis)の統計部分は元々医療について の参考文献[1]の内容を基礎としていたが、多くの汎用的な分析を加えることで、一般的な 分析ソフトの色合いを強くしていった。しかし、昨年から様々な分野に特化した統計解析 も加えて行くことを決め、最初に経済分野の統計を加えることにした。それに続いて今回 は医療分野での統計を取り上げる。

医療分野の統計は、これまでのプログラムにある程度含まれていることから、まず参考 文献[2]にある罹患率の検定と推定及び、参考文献[3]でも与えられる標本数の決定の問題を 加え、参考文献[4]に紹介された分析の中でまだプログラム化されていないものを選択する ことにした。特に、ある指標による2値の診断の検討に利用されるROC曲線、2群の差の 検定に関して交絡因子の除去に用いられる傾向スコアマッチング、2 人の診断結果の同一 性評価の指標であるκ係数などを新しく追加した。

2. 罹患率の推測

著者がプログラム開発用に利用してきた「医学への統計学」の第3版[2]では、頻度に関 する推測の章が設けられ、検定や区間推定が詳しく論じられている。この部分はC.Analysis で不足している分野であるので、この中から特に罹患率に関する分野を抜き出し、医療系 の学生のために補強することにした。死亡率についても処理は同様であるので、ここでは

(2)

罹患率を代表例として使うことにする。ここで述べる理論の内容は、プログラムで利用し た参考文献[2]の定義をまとめたものである。この章を通して、

Z ( ) 

は標準正規分布の上

100   %

の検定統計値である。

2.1 母罹患率に関する推測

罹患率を

I

、ある集団を一定期間追跡して、対象の個体ごとの観測期間の合計(人年な ど)を

T

、一定観測期間の中で罹患した人数を

r

とする。罹患率があまり高くないとする と、罹患人数の分布は以下のポアソン分布に従う。

Pr( | )

!

r

r e

r

 =

ここに、

 = IT

ポアソン分布の平均と分散は以下で与えられる。

[ ]

E r = =  IT

Var r [ ] = =  IT

罹患率の点推定値を次のように定義すると、

I ˆ = r T

標準誤差は以下で与えられる。

2 2

[ ]ˆ [ ]

Var I =Var r T =r T 母罹患率の検定

0

:

0

,

1

:

0

H I = I H I  I

として、検定の両側確率

p

は以下のように与えられる。

0 0 0

1 1

0 0 0

0

0 0

( ) ( ) ( )

2 1 1 Pr( | ) 2 1

2 ! 2 ! !

j r j

r r

I T I T I T

j j

I T I T I T

p r I T e e e

j r j

= =

   

=  − −  =  − − 

     

母罹患率の区間推定

母罹患率の

100(1 −  )%

信頼区間は以下のように与えられる。

2 2

2

(1 2)

2 2

( 2)

2 2

r

I

r

T T

 −    

+

これらの他に正規分布に基づく近似的な方法もあるが、プログラムでは上の方法を用いる。

2.2 罹患率の比較に関する推測

2つの群の罹患率をそれぞれI I1, 2、2つの群を一定期間追跡して、対象の個体ごとの観 測期間の和(人年など)をT T1, 2、一定観測期間の中で罹患した人数を

r r

1

,

2とする。2つ の群の罹患率の推定値は以下で与えられる。

1 1 1 2 2 2

ˆ , ˆ

I = r T I = r T

罹患率の比較の検定

0

:

1 2

H I = I = I

H

1

: I

1

 I

2として、検定には以下の関係が使われる。

1 2

1 2 1 2

ˆ ˆ

~ (0, 1)

( ) ( )

I I

Z N

r r T T

= −

+

(3)

罹患率の差の区間推定

罹患率の差の

100(1 −  )%

信頼区間は、

1 2

ˆ

1 1

ˆ

2 2

( )

SE  SE I − I = I T + I T

の関係を用いて、

1 2 1 2 1 2

ˆ ˆ ( 2) ˆ ˆ ( 2)

I − − I Z  SE  −  − + I I I I Z  SE

罹患率の比の区間推定

罹患率の比の

100(1 −  )%

信頼区間は、

( ˆ ˆ1 2) 1 2

log 1 1

SE  SE   I I   = r + r

の関係を用いて、

( ˆ ˆ1 2) 2 1 ( ˆ ˆ1 2)

exp log   I I − Z (  2) SE    I I  exp log   I I + Z (  2) SE  

2.3 罹患割合に関する推測

2 つの群の罹患割合をそれぞれp p1, 2、2つ群の観測対象者数をn n1, 2、一定観測期間 の中で罹患した人数を

r r

1

,

2とする。2つの群の罹患割合の推定値は以下で与えられる。

1 1 1 2 2 2

ˆ , ˆ

p = r n p = r n

罹患割合の検定

罹患割合の違いの検定には以下の関係を利用する。

1 2 1 2

1 2

ˆ ˆ

| | (1 1 ) 2

~ (0, 1)

(1 )(1 1 )

p p n n

Z N

p p n n

− − +

= − +

ここに、

p = ( r

1

+ r

2

) ( n

1

+ n

2

)

である。

罹患割合の差の信頼区間

罹患割合の差の

100(1 −  )%

信頼区間は、

1 1 2 2

1 2

1 2

ˆ (1 ˆ ) ˆ (1 ˆ )

ˆ ˆ

( ) p p p p

SE SE p p

n n

− −

 − = +

の関係を用いて以下となる。

1 2 1 2 1 2

ˆ ˆ ( 2) ˆ ˆ ( 2)

p − p − Z  SE  p − p  p − p + Z  SE

罹患割合の比の信頼区間

罹患割合の比の

100(1 −  )%

信頼区間は、

1 2

1 2

1 1 2 2

ˆ ˆ

1 1

log( ˆ ˆ )

ˆ ˆ

p p

SE SE p p

n p n p

− −

 = +

の関係を用いて以下となる。

( ˆ ˆ

1 2

)

2 1

( ˆ ˆ

1 2

)

exp log   p p − Z (  2) SE    p p  exp log   p p + Z (  2) SE  

(4)

2.4 プログラムの利用法

メニュー[基本統計-医療関連手法-罹患率の推測]を選択すると図1のような実行画 面が表示される。

図1 罹患率の推測実行画面

このプログラムは、罹患率と罹患割合について推測を行うものである。罹患率は発生数 を対象者の観測期間合計(人年など)で割ったものであり、罹患割合は発生数を対象者数 で割ったものである。ここでは母罹患率に関する検定と推定、罹患率の2群比較に関する 検定と、差と比の推定、罹患率ではないが、罹患割合の2群比較に関する検定と、差と比 の推定が求められる。特に罹患割合の比較は、χ2検定としてすでにプログラムに組み込ま れているが、ここではそこで求めていない差や比の信頼区間も表示される。

母罹患率の推測のデータには図2のような2つの形式がある。

図2 母罹患率推測のデータ形式(罹患率の推測.txt)

左は「データから」の形式で、変数選択では2列ごとに読み込むため、全部選択すると2 種類の罹患率の推測を行うことになる。右は「集計データから」の形式で、1 列ごとに読 み込むため、全部選択すると3種類の推測を行うことになる。母罹患率を指定して行う比 較検定では、「検定用母罹患率」テキストボックスの中に比較する母罹患率を入力しておく。

入力の形式は式で入力することもできる。何も入力されていない場合は、0と解釈される。

図2の右側のデータを用いて「検定と推定」ボタンをクリックした結果を図3に示す。

(5)

図3 母罹患率の推測の実行結果 ここで、罹患率は小さな値になることがあるので%表示にしている。

次に罹患率の比較について説明する。図4にデータ形式を示す。但し、「データから」の 形式は図2と同じである。

図4 罹患率の比較のデータ形式 右のデータを元に「検定と推定」を実行した結果を図5に示す。

図5 罹患率の比較の実行結果

最後に罹患割合について説明する。図6にデータ形式を示すが、左の図の2つの群で一 般にデータ数は異なる。

図6 罹患割合の比較のデータ形式 右のデータを元に「検定と推定」を実行した結果を図7に示す。

(6)

図7 罹患割合の比較の実行結果

3. 標本数の決定

標本数の決定については、データ数が多い場合に限定し、母比率の推定と検定、母比率 の比較検定、母平均の推定と検定、母平均の比較検定のために必要な標本数を求める。具 体的な公式はプログラムの中でも表示されるが、以下にまとめておく。但し、第1種の過 誤(=有意水準)を

、第2種の過誤(=1-検出力)を

とする。また、

Z ( ) 

は標準

正規分布の上側

100   %

の検定統計値である。

標本数の決定では、単に対立仮説が正しいときに差があると判定するだけなら、第2種 の過誤(または検出力)を考える必要はない(

 = 0.5

でよい)。しかし、帰無仮説が正し いとき、ある程度の正確さでそれを支持するためには第2種の過誤を考慮した標本数の決 定が必要である。このプログラムでは利用者がこれを設定できるようにしている。第2種 の過誤はよく利用される値として、有意水準の4~5倍に設定される。また、2群の比較の 場合のデータ数とは、2群のデータ数が同じとした場合の1つの群のデータ数で、2群の合 計ではない。

母比率の推定(比率は標本比率で代用)

予想比率

p

,比率範囲

 d

2 2

( 2) (1 )

n  Z  p − p d

母比率の検定

比率

p

,標本比率p1

2 2

2[ ( 2) ( )]

n  Z  + Z  d

2 |

1

|

d =   −

1

= 2 arcsin p

1

 = 2 arcsin p

母比率の比較検定

比率

p

1,比率

p

2(比率は標本比率で代用)

2 2

2[ ( 2) ( )]

n  Z  + Z  d

1 2

| |

d =   −

1

= 2 arcsin p

1

2

= 2 arcsin p

2

母平均の推定

分散

2,平均差

 w

2 2

( 2) ( )

n  Z   d

(7)

母平均の検定

分散

2,平均差

 w

2 2

2[ ( 2) ( )]

n  Z  + Z  d

d = 2 |w|

母平均の比較検定 分散

2,平均差

 w

2 2

2[ ( 2) ( )]

n  Z  + Z  d

d = | w | 

メニュー[分析-基本統計-標本数の決定]を選択すると、標本数の決定の実行画面が 図1のように表示される。

図1 標本数の決定実行画面

利用法は必要なデータを左のテキストボックスに入力し、右のボタンをクリックするだ けなので、詳しくは説明しない。

母比率の推定で、母比率0.3で比率の幅を0.1に抑えよう(すなわち0.2≦p≦0.4)とす る場合に必要なデータ数を求めた結果を図2に示す。

図2 母比率の推定の場合の標本数

2つの母平均の比較検定で、標準偏差30、母平均の差が10の場合に必要な1群当たりの データ数を求めた結果を図3に示す。

図3 母平均の比較検定の場合の標本数

(8)

結果は両側検定の場合を求めている。ここでは計算法を参考文献から引用しているので、

Excelなどでの計算も可能である。

4. ROC曲線

ROC(Receiver Operatorating Characteristic)曲線は2値の結果(例えば陽性と陰性)に対

するある説明変数による診断の有効性を検討する手段である。説明変数にある閾値(カッ トオフポイント)を考え、その値より上が陽性、下が陰性と診断する(逆も考えられる)。

しかしこの診断には間違いが生じる。例えば、陽性と診断して実は陰性、陰性と診断して 実は陽性となることである。特に陰性に対して陽性と診断する割合を擬陽性率と呼ぶ。ま た、陽性に対して正しく陽性と診断する割合を(真)陽性率と呼ぶ。カットオフポイント として説明変数のデータ値をとり、その値を変えることで、この陽性率と擬陽性率の変化 を表示するグラフを ROC曲線という。例えばあるカットオフポイントで表1の分割表の 結果を得たとする。

表1 診断結果と実測結果

実測陽性 実測陰性 合計

予測陽性 a b a+b

予測陰性 c d c+d

合計 a+c b+d N (=a+b+c+d)

ここで、陽性率は a/(a+c)、擬陽性率は b/(b+d) である。陽性率は1に近い方が良く、擬陽 性率は0に近い方が良い。

以後実際の画面を見ながら ROC 曲線について説明する。メニュー[分析-基本統計-

医療関連手法-ROC曲線]を選択すると以下の分析実行画面が表示される。

図1 ROC曲線実行画面

分析用のデータは、図2aか図2bのような形式である。図2aのデータは、2群間の差の検 定、判別分析、数量化Ⅱ類、2 値ロジスティック回帰分析などで利用される基本的なデー タ形式である。図 2bは2値ロジスティック回帰分析にも使われている形式で、最初の 2 列に2つの群のデータ数が与えられた集計データである。この形式の集計データは他の分 析にも組み込んで行く必要がある。

(9)

図2a 先頭列で群分け 図2b 2列集計形式

「先頭列で群分け」のデータの変数をすべて選択して、「設定」ボタンで陽性の設定を「T」

とし、「陽性・擬陽性率」ボタンをクリックすると図3に示す結果が表示される。

図3 陽性・擬陽性率出力結果

これは入力データ順に、そのデータの値をカットオフ値にした場合の陽性率と擬陽性率を 与えたものである。ここで変数名「陽性率(+)」と「擬陽性率(+)」の後ろに「(+)」が付い ているが、これはデータの大きい方を陽性にしていることを示している。データの小さい 方を陽性にする場合は後ろに「(-)」が付く。陽性率も擬陽性率も陽性の予測は指定データ 以上(小さい方は以下)として計算している。

ROC曲線はこのデータを変数ごとに並び替えて求める。そのままの設定で「ROC曲線」

ボタンをクリックすると図4に示すグラフが表示される。

図4 ROC曲線描画結果

横軸が擬陽性率、縦軸が陽性率である。変数として2つを選択しているので、2本のROC

(10)

曲線が表示されている。ROC曲線は理想的な判別の点 (0,1) にどれだけ近いか、また (0,0) と (1,1) を結ぶ判別不能の線からどれだけ離れているかなどによって評価される。

このROC曲線に対する評価は、「比較分析」ボタンをクリックすることで、図5のよう に示される。

図5 比較分析結果

ここでは「AUC」(Area Under the Curve)、(0,1)からの「最小距離」、「Youden Index」などが 示されている。AUCは折れ線グラフとx軸の間の面積を与えており、0.5≦AUC≦1.0の範 囲をとる。AUCは大きな値ほど有効性が高いと評価される。(0,1)からの最小距離は理想的 な判別の点からの距離で、小さな値ほど有効性が高い。また、Youden Index は図に示した 斜めの線からの y 軸方向の距離を表す。これは大きな値ほど有効性が高い。最小距離と

Youden Indexにはそれぞれデータを分ける値であるカットオフ値が付いている。

ROC曲線を用いた分析は1つの変数が対象であるが、判別分析による判別関数やロジス ティック回帰分析の確率など、スコアを求める分析のデータを用いればそれらの比較が可 能である。ただ、これらは元々多変量による直接分類が目的で作られた手法であるので、

ROC曲線を用いる必要があるのかは疑問であるが、視覚的に比較するのは興味深い。例と して判別分析で求めた判別関数値を加えて分析を行ってみる。

図2aのデータによる判別関数値は、メニュー[分析-多変量解析他-判別手法-判別分 析]による2群の「判別得点」で簡単に求められる。それを図6aに示す。このデータを例 えば[編集-エディタ指定列追加]などでグリッドエディタに追加すると図6bのようなデ ータとなる。

図6a 判別得点結果 図6b 追加されたデータ

これを用いてROC曲線を描いたグラフが図7で、比較分析を行った結果が図8である。

少しであるが、結果の向上が視覚的によく分かる。

(11)

図7 ROC曲線結果

図8 比較分析結果

5. 傾向スコアマッチング

ある2群の分類が、ある対象データに影響を与えるかどうかは、2群の差の検定を用い て調べることができるが、その2群の分類と対象データの両方に影響を与える交絡因子(バ イアス要因)がある場合、検定結果が真に2群の分類による差かどうか明らかではない。

その際には交絡因子の影響を除去するために、2 群の間で交絡因子の影響をそろえる操作 が行われる。その1つの方法が傾向スコアによるデータのマッチングである。

まず2群の分類を、交絡因子を使って説明する分析を考える。これには判別分析やロジ スティック回帰分析などが考えられる。そのときの判別得点や判別確率を傾向スコアと呼 ぶ。2つの群のデータで、この傾向スコアが近いものは同じような交絡因子を持つと考え、

2つの群から最も近いものを1つずつ取り出してペアを作り、データから取り除く。残り のデータを使ってこの操作を繰り返し、すべての傾向スコアの差が指定された値より大き くなったら取り出しを終わる。この操作で取り出された2組のデータは交絡因子が平均的 に等しいと考えられるので、このデータだけを使って差の検定を実施する。これにより交 絡因子の影響は抑えられるものと考える。以後実際のプログラムを使って検討してみよう。

今回作成したプログラムは、傾向スコアを利用してデータのマッチングを行うプログラ ムである。傾向スコアを作成するのは他の分析に譲る。

現在のある動作の可否で、1 年後にあるデータの得点(検査の値など)に差が出るかど うか検定する問題を考える。ただこれらに影響を与える交絡因子があるとして、性別、年 齢、ある要因の有無を考えておく。これらのデータを図1に与える。

(12)

図1 元データ

図1の動作の可否と得点を用いて2群の検定を実行すると、図2のような結果を得る。

図2 2群の差の検定結果

この結果は、動作の可否でみた真の得点の差とはいえない。そこには交絡因子の違いが含 まれている。動作による真の差を見るためにはこの違いを平滑化しなければならない。

そこで、動作の可否を性別、年齢、要因で説明するロジスティック回帰分析を実行し、

結果の予測確率を図1のデータに加えてみる。この予測確率が傾向スコアである。結果を 図3に示す。

図3 傾向スコアを加えたデータ この傾向スコアが、3つの交絡因子を代表する変数である。

メニュー[分析-基本統計-ユーティリティ-傾向スコアマッチング]を選択すると、

分析実行画面が図4のように表示される。

(13)

図4 傾向スコアマッチング実行画面

変数選択として、動作(分類)、得点(比較変数)、予測確率(傾向スコア)の順に選択 し、「マッチング」ボタンをクリックすると図5のような結果が得られる。

図5 傾向スコアマッチング結果

これは、動作の可否の2つの群で傾向スコアの類似したデータのマッチング結果である。

マッチングは、2群の傾向スコアを合わせた標準偏差の「0.2」倍までを取っている。これ はメニューの中で指定する。

この結果を確認したのち、「利用データ」ボタンをクリックすると、図6のような結果が 表示される。

図6 利用データ

このデータを元のグリッドエディタに貼り付けた結果が図7である。

(14)

図7 利用データ結果を貼り付けたデータ

「利用」の分類で得点を分けて2群の差の検定を行った結果が図8である。

図8 傾向スコアでマッチングした2群の差の検定結果

「利用」データを用いて交絡因子の平均を比較してみる(量的データの集計の簡易統計量)。 図9に結果を示す。

図9 傾向スコアでマッチングした交絡因子の基本統計量 これを見るとマッチングにより、うまく平滑化が行われている様子が分かる。

6. κ(カッパ)係数

κ(カッパ)係数は、二人の判定者による質的な診断の同一性を評価する指標である。

判定結果として、図1の集計表が与えられたものとする。これは対応がある質的データ用 の分割表と同じである。

表1 二人(行と列)の判定者による判定結果 判定1 判定2 判定3 計 判定1 x11 x12 x13 r1

判定2 x21 x22 x23 r2

判定3 x31 x32 x33 r3

c1 c2 c3 N

ここで、同一性を表す指標κ係数を行数と列数を

p

として以下のように定義する。
(15)

1 1

( )

p

ii i i

i p j i i

x r c N

N r c N

=

=

= −

 

(1)

これは、判定が一致した数の割合であるが、偶然一致するものを除いた割合である。

これに対して判定の違いの程度をウェイトとして含める方法も考えられている。例えば、

ある個体に対して判定

i

と判定

j

に結果が分かれたとする。その程度によって、ウェイト

w

ij

w

ij

= − | i j |

aのように定義する。ここで

a

には1または2がよく使われる。このウェ イトを用いると上の

係数は以下のように拡張される。

1 1

1 1

1

p p

ij ij

i j

p p

ij i j

i j

w x w r c N

= =

= =

= −  

 

(2)

特に、ウェイトがない場合は

w

ij

= − 1 

ijとすれば、(1) 式と一致する。

メニュー[分析-基本統計-質的データの検定-対応のある比率の検定]で表示される 対応のある比率の検定の実行画面は図1のように変更されている。

図1 対応のある比率の検定(元McNemar検定)実行画面

例えば図2のデータが与えられている場合、実行結果は図3のように与えられる。

図2 2次元分割表からデータ

図3 κ係数実行結果

(16)

7. おわりに

よく利用される統計の手法は分野により様々である。経済の分野ではデータ数が多く取 れることから、ほとんど正規分布を仮定した分析を利用し、データ間の関係の分析には誤 差の不均一性や誤差相関を考慮した重回帰分布がよく用いられる。教育の分野では試験の 評価に関する分析が進んでいる。また、心理学や経営学の分野では様々な多変量解析の手 法を使いこなすことが求められている。医療系の分野ではデータ数があまり集められない 可能性を考慮して、非正規データの検定手法が利用される。また、多変量解析よりもむし ろ検定や推定に重点が置かれている。

今回の医療系の分析手法の追加で参考文献[4]に見られる数値的な方法はほぼ取り入れ ることができたように思う。しかし、分析手法は日々考えられ改良されて行く。学生が気 軽に分析を試して卒業論文などで使用できるように、新しい分析に取り組んで行く必要が ある。

参考文献

[1] 丹後俊郎、古川俊之監修、医学への統計学、朝倉書店(1983)

[2] 丹後俊郎、古川俊之監修、「医学への統計学」【第3版】、朝倉書店(2013)

[3] 永田 靖、「サンプルサイズの決め方」、朝倉書店(2003)

[4] 山田 実、浅井 剛、土井剛彦、「メディカルスタッフのためのひと目で選ぶ統計手 法」、羊土社(2018)

(17)

Multi-purpose Program for Social System Analysis 37

- Expansion into the Medical Field -

Masayasu FUKUI

*1

, Yukie OKUDA

*2

and Junko NAGAI

*3

*1 Department of Business Administration, Faculty of Business Administration, Fukuyama Heisei University

*2 Education Center, Fukuyama Heisei University

*3 Department of Childhood Education, Faculty of Health and Welfare Science, Fukuyama Heisei University

Abstract: We have been constructing a unified program on the social system analysis for purpose of education. This time, we added programs related to incident rate estimation and testing, sample size determination, ROC curves, propensity score matching, and κ coefficient, which are commonly used statistical methods in the medical field.

Key Words: incident rate, odds ratio, sample size, ROC curve, propensity score matching, κ coefficient, College Analysis

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57

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Department of Neurosurgery, Osaka General Medical Center 3-1-56 Bandai-higashi Sumiyoshi-ku Osaka 558-8558 Japan

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