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医療福祉分野への GUI プログラミングソフト導入のための基礎的検討

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Academic year: 2021

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(1)

1.はじめに

 近年の医療福祉機器はコンピュータ技術の発展を 受け、高度で精密な電子機器が増えている。医療や 介護などの現場で働く上で、このような医療福祉用 電子機器との関係は切っても切れないものである。

しかし、第一線で使用されるような医療福祉機器は 多種多様であり、その場所に合うように独自の構造 やプロトコルを持つものが多く、使用や制御などに は個別に知識を必要とする。医療福祉関係者の多く は、機械や電子機器を使い医療行為を行う教育や、

その基礎については学んでいるが、機器を制御する ための工学的専門性の高い教育を受けているわけで はない。そのため、機器をより高いレベルで使用す るためには、まずその機器の根本原理である物理か ら機器の構成部品やそれらを組み合わせた構造まで 学習する必要がある。場合によってはプログラム等 を設計せねばならず1)、非常に非効率的である。

 医療機器メーカーの研究者がパルスオキシメータ

2)や、ニューロフィードバックシステム3)など、独 自にシステムを開発し使用しているケースも散見さ れる。このようなシステムや機械の製作を行ってい るのは、工学専攻の人間と医療専攻の人間が協力を している場合であり、どちらか片方の人間のみで全 てを作るのは困難を極める。

 本学の作業療法学科を例に取れば、物理や生体計 測工学と言った科目も存在する。生体計測工学の授 業の場合、本学ではビデオや教科書などで計測につ いての知識を学ぶ。しかし、実際に機器を見て使用 しなければ、学習したことが実感として把握しにく いし、機器を広げて実験を行うと場所などが問題と なる場合がある。もし、簡単かつ省スペースで実験 を行えるならば、大変便利となる。

 また、プログラムの専門教育を受けていない者が

即座にプログラミングを行う場合には、見にくく確 認のしにくいテキストベースのプログラミング言語 の使用は不適切である。しかし、機器の制御法や機 器に内包されるブラックボックスについて、内部の 構造や処理の流れを理解することは、急速な医療機 器の進化という観点からも重要である。

 本報告では上記の問題を解決する 1 つの方法とし て、数あるプログラミングソフトウェアの中から、

LabVIEW という GUI(Graphical User Interface:

以降 GUI と記す)操作でプログラミングを行える 開発ソフトウェアを用いて、医療従事者を養成する 教育現場及び医療機器開発の現場でどのように応用 できるかの初歩的な検討を行った。

2.使用するソフトウェア「LabVIEW」について  使用するソフトウェアは、米国に本社を持つ National Instruments 社(以下 NI 社)が販売して いる「LabVIEW」である。LabVIEW は、世界中 の科学者によって使用されている、グラフィカルに プログラミングが出来るソフトウェアである。GUI なソフトウェアを医療系に応用している例では、

MATLAB を使用している論文4)も存在する。

 図 1に LabVIEW の動作画面の例を示す。これは、

入力した 2 つの値について加算と乗算を行い、表 示するプログラムである。LabVIEW では、作成し たプログラムのことを、Virtual Instrument(以下 VI)と呼称する。

 LabVIEW は、「フロントパネル」と「ブロック ダイアグラム」の、2 つの画面が存在する。図 1は 左から、(a) ブロックダイアグラム、(b) フロントパ ネル、(c) ツールボックス、(d) 制御器ウィンドウと いう順に並んでいる。フロントパネルには、波形 チャートやスイッチなど、ユーザが操作を行い、情

医療福祉分野への GUI プログラミングソフト導入のための基礎的検討

1 岡田千裕  2 木暮嘉明  3 舩山朋子  1 内田恭敬

Teikyo Univ of Science, 1Media &Inf. sytem, 2Physcal Therapy , 3Occupational Therapy,

Chihiro OKADA

1

 Yoshiaki KOGURE

2

 Tomoko FUNAYAMA

3

 Yasutaka UCHIDA

1

1

帝京科学大学生命環境学部メディア情報システム学科 

2

帝京科学大学医療科学部理学療法学科

3

帝京科学大学医療科学部作業療法学科 (平成 22 年 12 月 2 日受理)

Key words:LabVIEW GUI VI Physic Instrumentation engineering

(2)

報を把握するための操作パーツを配置する。ブロッ クダイアグラムでは、計算や命令などの、内部にて 処理を行う関数パーツを配置する。

 関数のパーツは画像化されたアイコンで表示され ており、その命令がどんなものであるかを外見で判 断しやすくなっている。例えば、図 1(a) のブロッ クダイアグラムには「A」や「B」と記述されたア イコンがあるが、フロントパネルの数値制御用のパ ネルを模した形のアイコンであるため、アイコンの 機能が見た目で判断できる。

 また、関数には入出力の端子が存在しており、そ れらを配線コマンドで配線することにより、値の受 け渡しが簡単に行える。外見で関数の動作を把握で きない場合でも、ヘルプメニューを参照することで その関数がどのような目的の、どのような動作を行 うものであるかを調べることが可能である。

 LabVIEW には、演算の関数以外に、測定用 I/

O 関数や計測器制御 I/O 関数、データ通信用関数、

信号処理関数などがデフォルトで入っている。それ らの用意された命令を配置し、指定された入出力を ブロックダイアグラム上で配線コマンドを使って接 続するだけで簡単にプログラミングが可能である。

また、外部の制御機器を LabVIEW で動かす場合、

制御器メーカーが LabVIEW 対応の関数を用意して いる場合がある。加えて、必要な関数を自分で作成 することも可能であるので、非常に拡張性が高い。

 LabVIEW には信号などをシミュレーションする 関数が用意されている。通常、回路を使用した信号 処理実験を行うには、オペアンプや IC などの素子 が必要となる。加えてオシレータなども必要であり、

波形を観測するためにオシロスコープなども使用し

なければならない。だが、LabVIEW はそれら全て をパソコン上でシミュレーションすることが可能で あるので、大がかりな実験装置を使わずとも PC 上 ですべて実験が出来る。

 シミュレーションのみではなく、外部の信号を取 り込み実際に処理を行うためには、データロガーと 呼ばれる機器を使用する必要がある。データロガー とは、データをログ ( 記録 ) するために用いる装置 であり、アナログ電圧を取得するアナログ入力や、

デジタルで電圧を入出力するデジタル I/O などの ポートが存在している。これを使用し、LabVIEW 上で信号を取得する命令を動かすことにより、外部 からのデータを入力することが可能である。それを 元に、実際の信号を加工することや、物理現象をセ ンサーによって検知して信号処理することも可能で ある。

3.応用例

3 − 1 物理学習への応用例

 本学の作業療法学科では、医療系学生を対象とし た物理学Ⅰ~Ⅲ、そして基礎物理学等の講義が行わ れている。しかし、高校で物理を学んでいない受講 生も多く、講義内容を理解しにくい科目のひとつと なっている。物理現象を正確に理解するためには、

数式を用いた計算を行わなければならず、その結果 をグラフにプロットする必要もある。装置を製作し て実験を行えば、視覚的にはわかりやすいものとな るが動作速度や位置などを正確に把握することは困 難である。しかし、LabVIEW を用いると、計算式 さえ判明していればシミュレーションが可能であ り、動作速度や位置を視覚的に確認できる。図 2は、

図 1 LabVIEW 動作画面

(a)ブロックダイアグラム  (b)フロントパネル  (c)ツールボックス  (d)制御機ウィンドウ

(a) (b) (c) (d)

(3)

バネとダンパーと滑車を用いた、単純な物理系のモ デル図である。

 この系では、

 という運動方程式が成り立つ。はカートの位置、

は速度、は加速度である。

 この車を動かしたとき、バネとダンパーの力の大 小関係により、車は前後に揺れ運動をした後に停止 する。この動きを計算するときには、微分方程式を 解くことが必要であり、条件を複数回変更して試行 を行うときなどは、多くの手間がかかることとなる。

 図 3は、車の動作を計算によって求めるために 作成した VI の動作図である5)

my+ + by ky=0

図 2 バネ、ダンパー、滑車を用いた物理系 m:車の質量 k:バネ定数 b:減衰係数 y:車の位置

(a):バネとダンパーの弾性係数が適切な場合 (b):バネとダンパーの弾性係数が大きすぎる場合 (c):バネとダンパーの弾性係数が小さすぎる場合

 ここで、図上の x1 線は位置の推移であり、x2 線 は速度の推移である。(a)(b)(c) 共に、開始位置は同 じであるが、それぞれバネとダンパーの弾性係数を 変更している。(a) ではバネとダンパーの弾性に適 切な値を適用したため、位置は 0 へとすぐに落ち、

速度もそれと共に 0 へと向かう。だが、(b) や (c) の ように、初期位置が同じでもバネやダンパーの値に よっては振動を繰り返し、距離及び速度が 0 へと落 ち着く時間が長くなってしまうことがわかる。

図 3 バネとダンパーと滑車を用いた物理系のシミュレーション VI 動作図

(a)

(b)

(c)

(4)

 このほか本学では現在教えられていない電気回路 系の計測についても個別の回路部品や測定機器を結 線しなくても容易に実験のシミュレーションができ るので物理の分野の中でも分かりにくいとされる電 気関係の理解が深められると考えられる。

3 − 2 生体計測工学への応用例

 計測を行う上で、必要な信号のみを取得したいと きには、フィルタの使用が必須である。図 4は、信 号シミュレーションとノイズ除去フィルタのシミュ レータ VI の動作図である。

 同図 (a) のブロックダイアグラムでは、まず信号 シミュレーション関数で、正弦波に一様なホワイト ノイズをプラスした波形を作り出している。その次 にフィルタ関数で信号に対してのフィルタリングを 行い、波形チャート図に元信号とフィルタ通過後の 信号を出力している。図 4(b) のフロントパネル上で、

ノイズが乗ってギザギザしている波形が元信号、ス ムースな形をしている波形がフィルタ通過後の信号 である。

 フィルタ関数には様々なパラメータがあり、それ らを変更することによってフィルタの種類や、カッ トオフ周波数などの特性を変えることが出来る。

フィルタの種類には、ローパスフィルタ、ハイパス フィルタ、バンドパスフィルタ、バンドストップ、

平滑化などがある。

 図 5は、信号に対して複数のフィルタを試行し た VI の動作図である。信号は 10Hz で振幅 1 の正 弦波に 0.4 の強さでノイズを重ねたものである。信 号の 4 割の大きさを持つノイズは、通常ではかなり

大きいといえる。加工前の信号は、(a) の波形チャー トにて表示されている。これに、カットオフ周波数 10Hz のローパスフィルタとハイパスフィルタを適 用した。(b) はローパスフィルタを適用後の信号で、

(c) はハイパスフィルタを適用後の信号である。

 例えば、ローパスフィルタは高い周波数の信号を カットするフィルタであり、(b) の窓に示すように ギザギザがほとんど消えている。しかし、信号の大 きさが一律でないため、必要信号より低い周波数の 信号が含まれていることがわかる。これは、加えた ノイズの大きさが信号の 4 割と大きかったことで、

ノイズが乗っている信号が見やすいためでもあると 考えられる。逆に、ハイパスフィルタではギザギザ 図 4 波形&フィルタ、シミュレーション VI 動作図

(b)

(a)

図 5 フィルタ試行 VI 動作図

(a)元波形 (b)ローパスフィルタ適用後

(c)ハイパスフィルタ適用後

(a)

(b) (c)

(5)

が残っているが、必要とする周波数信号より低いも のはカットされている。より高機能なフィルタ処理 もバタワース、チェビシェフ、逆チェビシェフ、楕 円、ベッセルなどの用意された項目から選択可能で ある。これらはオプション画面によって容易に変更 することが可能であり、どのようなフィルタがどの ようなノイズに対して有効であるかを、視覚的に確 認しながら実践的に学習することが可能である。

 本学医療科学部の学生を対象とした講義である生 体計測工学では電子機器を用いて人体に関する様々 なデータを計測するために必要なことが教えられて いる。生体信号の処理で最も重要な点の一つはノイ ズ除去処理である。フィルタ処理により波形にどの ような変化が生じるのか理解が波形に含まれる信号 の本質を見失わないために重要である。本講義では スライドにより代表的なフィルタ処理例を見るにす ぎず、学生に対する負荷を増やさず効率的に理解を 深めるためには本研究ノートで例示しているシミュ レーションソフトの導入が有効と考えられる。

4.結 論

 LabVIEW は本格的な素子を使った実体回路実験 を行わず、気軽に回路動作のシミュレーションを行 うときに有用である。実際に実験を行えない状況 でも、VI を作成し実験をシミュレートすることで、

回路動作を実感し知識を得るのに有用である。また、

応用範囲が広く、データロガーとの組み合わせによ り、本格的な実験や計測などにも応用が可能である。

パソコン操作をはじめとした初期教育に十分な配慮 が必要であるが、工学的知識を持たない医療福祉関 係者にとって容易に利用が出来ると考えられる。

謝 辞

 本研究の一部は科研費 (21500495) の助成を受けた ものである。

参考文献

1)坂爪、高橋、川島:重度身障者における意思 伝達と環境制御 . 情報処理学会研究報告 . HI, ヒューマンインタフェース研究会報告 , 97(24):

P77-P82, 1997-03-06

2)瀬川:積分球反射型パルスオキシメータの研 究 . バイオエンジニアリング講演会講演論文集 , 2005(18): 377-378, 2006-01-12

3)飯塚、可能、宮元、吉信、川島:運動イメージ 時の脳活動における NIRS 信号を用いたニュー ロフィードバックの効果:NIRS による評価 . 電子情報通信学会技術研究報告 . NC, ニューロ コンピューティング , 109(280):65-70, 2009-11- 05

4)佐瀬、栗本、中川:近赤外光トポグラフィの ための対話的時系列脳機能信号解析システム;

Journal of JACT, Vol.13, No.2(2008):61-66, 2008-05-20

5) 高 野:LabVIEW8 プ ロ グ ラ ミ ン グ ガ イ ド;

ASCII, 日本 , 2008-6-20 初版

参照

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