Domestic Violence(DV)問題への対処行動と医療・
福祉支援 : 2被害者の事例分析
著者
今村 利香, 峰 和治
雑誌名
鹿児島大学医学部保健学科紀要=Bulletin of the
School of Health Sciences, Faculty of
Medicine, Kagoshima University
巻
20
ページ
1-7
別言語のタイトル
Coping Behavior against the Domestic Violence
and Medical and Welfare Support : A Case Study
of Two DV Victims
【原 著論 文 】 鹿 児 島 大 学 医学 部 保 健 学 科 紀 要 20:1-7,2010
Domestic
Violence(DV)問
題 へ の 対 処 行 動 と 医 療 ・福 祉 支 援
2被 害者の事例分析
今 村 利 香 1,峰 和 治 2 【要 旨 】 目的:Domestic Violence(DV)被 害者 の エ ンパ ワ ー メ ン トを 図 る支 援 シ ス テ ム の 構 築 に 向 け た 基礎 資 料 を 得 るた め に,被 害 者 自身 が と った 対 処 行 動 と実 際 に受 け た 医療 的 ・福 祉 的支 援 につ い て調 査 した。 方 法:母 子 生 活 支 援 施 設 に入 所 してい る元DV被 害 者2名 に半 構 造 化 面接 を 実施 し,逐 語 録 か らDV被 害 の経 過 お よび 回避 行 動 に つ い て 要 約 を作 成 し,質 的 に分 析 した 。 結 果:2被 害 者 とも,激 しい身 体 的 ・精 神 的 暴力 を 受 け て い た が,加 害 者 の 元 を 離 れ るた め に 自 ら行 動 を 起 こ して い た 。DV被 害 の 長 期 化 お よび 回避 行 動 に は 子 ど もの 存 在 が 大 きな 因 子 とな って い た 。 今 回 の被 害 者 に対 して,医 療 機 関 はDV問 題 へ の対 処 機 能 を果 た し て い な か っ た 。 公 的 機 関 の対 応 に つ い て は,不 統 一 が 見 られ た 。DV被 害 の サ イ ク ル を断 つ に は,被 害 者 の 子 ど もが キ ー パ ー ソ ンに な っ て い た 。 結 論:被 害 者 の 自立 を支 援 す る に は 医療 ・福 祉 機 関 の役 割 が 大 き い。 地域 や 施 設 に よ るDV被 害者 へ の 対応 の 差 を 無 くす た め に は,適 切 な被 害 者 支 援 を 実施 出 来 る全 国 統 一DV被 害者 支援 シ ス テ ム を 導入 す る 事や 医療 ・福 祉 機 関 の職 員 に 向 け たDV教 育 プ ロ グ ラ ム の 開発 が 望 まれ る。 キ ー ワ ー ド: 母 子 生活 支援 施 設,子 ど も,半 構 造化 面接,医 療 機 関 I は じ め に 日本 で は2001年 に 「配 偶者 か らの 暴 力 の 防止 及 び被 害 者 の保 護 に 関 す る法 律 」 い わ ゆ るDomestic Violence(以 下DVと 略 す)防 止 法 が施 行 され,そ の後2回 の 法 改 正 を 経 て,DV対 策 を 社 会 全 般 で実 施 す る体 制 が整 え られ た。 しか し,全 国 の配 偶者 暴 力相 談 支援 セ ン タ ー に 寄せ られ た 相 談 件 数 の推 移 を見 る と,DV問 題 の 増 加 傾 向 に は ー歯止 め が か か っ て い な い 1)。DV被 害 者 に は 身 体 的 ・ 精 神 的 ・社 会 的 ・性 的 暴 力 を 重複 して 受 け,心 身 に深 い 傷 を 負 って い る症 例 が 多 い 。DV被 害者 に対 して身 体 面 と心理 面 との複 合 的 支援 を行 うに は,医 療 と福 祉 の 現 場 で 医師や看 護 師,助 産 師,メ デ ィカル ソー シ ャル ワーカ ー, 配 偶者 暴 力 支援 セ ン タ ー職 員,母 子 生活 支援 施 設 職 員 と い っ た,各 領 域 の 支援 専 門員 が相 互 に連 携 を とる 必 要 が あ る。 DV被 害 者 の 中 に は,一 旦 加 害 者 の 元 か ら逃 げ 出 して も,再 び 加 害 者 の 元 に 戻 っ て しま う人 が多 い。 大塩2)は 「これ はDVの サ イ クル で あ り,様 々 な暴 力 に よ り支 配 され た結 果,コ ン トロール され た 関係 か ら抜 け 出せ な い 構 造 が 出来 上 が っ て い るか らで あ る」 と述 べ,DV問 題 か ら完 全 に脱 却 す る事 の難 し さを指 摘 して い る。 DV被 害 のサ イ クル を断 つ 一 つ の方 策 と して,医 療 ・ 福 祉 分 野 の支 援 者 が被 害者 自身 の エ ンパ ワー メ ン トを 図 る支 援 シ ス テ ム の構 築 が 考 え られ る。 今 回,こ の シ ス テ ム造 りに 向 け た基 礎 資料 を得 るた め に,母 子 生活 支援 施 設 に入 居 して い る元DV被 害 者 を対 象 に した 半構 造 化 面 接 を実 施 し,DV被 害 の 実 態 と被 害者 自身 が とっ た対 処 行 動,被 害者 が 実 際 に 受 け た 医療 的 ・福 祉 的支 援 に つ い て調 査 した。 II 研 究 方 法 調査 対 象者:便 宜 的抽 出 法 で選 択 し,調 査 協 力 の承 諾 が 1 鹿 児 島 大 学 医 学 部 保 健 学 科 臨 床 看 護 学 講 座,890-8506鹿 児 島 市 桜 ヶ 丘8-35-1 2 鹿 児 島 大 学 大 学 院 医 歯 学 総 合 研 究 科 ,890-8544鹿 児 島 市 桜 ヶ 丘8-35-1 連 絡 先:今 村 利 香 〒890-8544鹿 児 島 市 桜 ケ 丘8-35-1 Tel/Fax:099-275-6760 E-mail:[email protected]得 られ た某 母 子 生 活 支 援 施 設 に 入 寮 して い る元DV被 害 者2名(こ れ 以 降,A氏 及 びB氏 とす る)。 両 者 は 心 身 とも に落 ちつ い てお り,調 査 時 は病 院 を受 診 して い な い。 調査 期 間:平 成20年 某 月 調査 方 法:各 被 害者 に 対 して,筆 者(今 村)1名 が母 子 生活 支援 施 設 内 の個 室 で 半構 造化 面接 を 実施 した。 所 要 時 間 は1人 当 た り70分 ∼80分 。ICレ コー ダー に よ り面 接 時 の 全 内容 を録 音 した。 録 音 した 音 声 デ ー タ を 逐語 録 に 起 こ し,そ れ を 熟 読 した あ と,語 られ た 内容 の意 味 を 出 来 る だ け崩 す こ とが 無 い よ う文 章 を簡 潔 に 要約 した。 そ れ を 元 に,研 究 協 力者2名 が 内容 を確 認 し,対 象者 の 発 言 意 図 と筆者 が 読み 取 っ た内容 にズ レが な いか を チ ェ ッ ク した。 分析 過 程 にお い て 客観 性 と妥 当性 を保 つ た め に, 面接 に 同席 して い な い 共 同研 究者 と検 討 を 重 ね,質 的研 究 を 専 門 と して い る他 大 学 教員 の ス ー パ ー バ イ ズ を 受 け た。 元DV被 害 者 の心 の健 康 状 態 は,自 記 式簡 易 ス ケ ー ルIES-R 3)と簡 易 ス トレス度 チ ェ ック リス ト(桂 ・村 上 版)(SCL-KM) 4)を適 用 して確 認 した。 面 接 時 の 質 問 項 目:元DV被 害 者 の属 性,暴 力 の種 類 と DV開 始 時 期,加 害 者 のDV行 動 の 契 機,DVに よ る 身 体損 傷 と病 院 受診 経 験 の 有 無,被 害者 が 受診 時 に希 望 す る 事 項,DV被 害 を 長 年 耐 え た理 由,夫 の 元 か ら逃 げ よ うと思 っ た動 機,施 設 入 所 ま で に 受 け た社 会 的 支援,今 回 の 体 験 か ら得 られ た被 害者 の 学 び と希 望 す る社 会 シ ス テ ムや プ ログ ラ ム。 倫 理 的 配 慮:事 前 に母 子 生活 支援 施 設 に研 究趣 旨 と内容 を付 した調 査依 頼 の 文 書 を 送 り,職 員 検 討 会 を経 て研 究 の 承諾 を 得 た。 次 い で,施 設 長 に研 究 協 力者2名 の 紹介 を 受 け た。 この2名 に は,個 別 に 文 書 と 口頭 で調 査 の趣 旨 と内容 の説 明 を行 っ た。 同 時 に,研 究倫 理 指針 に 基 づ い て プ ラ イ バ シ ー の保 護 に努 め る 事,研 究 協 力 を拒 否 し た り,面 接 を途 中 で 中止 した りして も不利 益 を被 らな い 事,面 接 時 に録 音 す る 事,等 を説 明 して 了解 が得 られ た うえ で調 査 を 実施 した。 な お,本 研 究 は鹿 児 島 大 学 医 学 部 疫 学 ・臨床 研 究 等倫 理 委 員 会 の 承認 を 受 け て い る(承 認 番 号:2008年102)。 用 語 の 定 義: ・母 子 生活 支援 施 設:児 童 福 祉 法 第38条 に 基 づ い て ,配 偶者 の い な い 女 子 又 は これ に 準 じる 事 情 に あ る 女 子 とそ の児 童 を入 所 させ て,保 護 お よび 自立促 進 に 向 け た 生活 を 支 援 す る施 設 で あ る 5・6)。DV法(2004年 度 改 正)に 基 づ くDV被 害 者 一 時保 護 施 設 と して,被 害者 の保 護 か ら 自立 支援 を進 め る た め の 重 要 な施 設 の 一 つ と位 置 づ け られ る。 ・Domestic Violence(DV):男 女 の親 密 な 関係 の 問 で 起 こる 暴 力 の 事 で あ り,一 般 に は 男性 が 女性 に 対 して権 力 や 支配 力 を行 使 す る た め に振 る い,女 性 が被 害者 とな る 場 合 に使 わ れ る。2001年 に制 定 され たDV防 止 法 で は, 「配 偶 者 か らの 暴力 』 とは,配 偶 者 か らの 身 体 に 対す る 暴 力 又 は これ に 準ず る身 体 に 有 害 な影 響 を及 ぼす 言 動 を い い,配 偶者 か らの 身 体 に 対す る暴 力等 を 受 け た 後 に, そ の者 が離 婚 を し,又 は婚 姻 が 取 り消 され た場 合 に あ っ て は,当 該 配 偶者 で あ っ た者 か ら引 き続 き受 け る身 体 に 対 す る暴力 等 を含 む もの とす る」 と定義 され て い る。 ・暴 力 の種 類:身 体 的 暴 力(殴 る,蹴 る,叩 く),性 的 暴 力(避 妊 に 非 協 力,性 行 為 の強 要),精 神 的 暴 力(脅 迫,威 嚇 無 視),社 会 的暴 力(外 出や 人 付 き合 い の制 限,管 理),経 済 的 暴 力(金 銭 を奪 う,渡 さ ない),子 ど もを利 用 した虐 待 な どが あ る 7)。 III 結 果 1.DV被 害 の経 過 と実 態 研 究 対象 と した 元DV被 害 者2名 の基 本 的属 性 と家族 関係 を表1に 示す 。A氏 は40歳 代 で 子 ども3人 と同居 し, 結 婚 した 直 後(約20年 前)か ら暴力 を受 け て い た。 も う 1人 の 元 被 害 者B氏 も40歳 代 で,子 ど も4人 の 内 の3 人 と同居 し,最 初 の子 が生 まれ た22年 前か ら暴 力 が始 まっ て い た。 両被 害者 と も離 婚 を希 望 して い た が 夫側 が拒 否 し,調 査 時 は離 婚 調 停 中 で あ っ た。 被 害者 は いず れ も子 ど もが欲 しか っ た た め,妊 娠 した 時 に は迷 わず に 出 産 し た とい う。 子 ど もが 生 まれ れ ば加 害者 の 態度 に 変化 が 生 じ るか も しれ な い との期 待 が あ っ た と,両 氏 と も述 べ て い た。 しか し,子 ど もが 生 まれ て も加 害者 の態 度 は 変 わ らず,育 児 の 協力 も得 られ な か っ た とい う。 DV被 害 の 実 態 お よび 心 身 の症 状 を表2に 示 す。A氏, B氏 と も に結 婚 後 に暴 力 を振 る われ る よ うに な り,身 体 的 暴 力 か ら精 神 的,経 済 的,性 的,そ して子 ど もを使 っ た 暴力 とい うよ うに,複 合 的DVを 受 け て い た。 加 害者 の 暴力 は 両 家庭 と も,末 子 を 除 く子 ど もた ち に も及 ん で い た。 時 間 的 な経 過 を み る と,結 婚 前や 被 害者 が 夫 に合 わせ た行 動 を とっ て い た 間 は 問題 が な か っ た が,一 旦 そ の 関係 が破 綻 して しま うと,些 細 な 事 が 引 き金 とな っ て 暴 力 を受 け る よ うに な っ た 。DV行 為 の 契 機 は加 害 者 本 人 しか 分 か らな い部 分 が 大 き い。 そ の た め,被 害者 は 暴 力 を振 るわれ る理 由 が納 得 出 来ず,精 神 的 に 追 い詰 め ら れ た とい う。A氏 は,十 数 年 前 に友 人 関係 を 断 たれ た 事 で うつ状 態 に 陥 り,夫 か ら逃 げ られ な い精 神 的 苦痛 か ら 飲 酒 な どの逸 脱 行 動 に 走 っ た 事,現 在 も頭 蓋 の 陥没 骨 折 が残 る事 な どを告 白 した。 現在,両 被 害者 は 夫 の 元 か ら 離 れ,母 子 生活 支 援 施 設 で 生活 す る事 で 心 身 と もに安 定 して い る。 自 らの 体験 を整 然 と語 り,将 来 の夢 に 向 か っ て 前 向 き に 生 き る発 言 も して い た。 しか し,自 記 式簡 易 ス ケ ール に よ る と,心 理 面 に お い て 中 ∼軽 度 の ス トレス 状 態 や トラ ウマ 状態 に あ る事 が示 され た。
表1元DV被 害者 の属 性 と家族 関係 A氏 B氏 ア セ ス メ ン ト 被 害者 の年齢 40歳 代 40歳 代 被 害者 の学歴 専 門学 校 卒。 海外 短 期 留 学経 験 有。 短 大 卒。 夫 との 関係 別 居 。 離 婚 調 停 中,夫 は離 婚 拒 否 別 居 。 離 婚 調 停 中,夫 は 離婚 拒 否 付 き合 っ て 直 ぐの結 婚 で は な く, 結婚 す るま で トラ ブル は な か った。 婚 姻 期 間 も長 い。 結 婚 ま で の期 間 3年 弱 約4年 間 婚姻期 間 約20年 22年 間 子 ど も 子 ど も3人(1男2女)と 同居 子 ど も4人(3男1女)の うち3 人 と同居 両者 と も多産 で あ る.被 害者 は, 子 ども が 生 まれ る こ とで 夫 の 態度 が変 わ るこ とを期待 したが,目 立 っ た 変化 は 見 られ な か っ た。 両加 害 者 と も子 育 て に非 協 力 的 で,育 児 負 担 が被 害者 に重 くの しか っ た。 成 長 した 子 ども が,被 害者 の 支 え に な っ て い る。 妊 娠 ・出産 ・育 児 に つ い て 被 害者 自 らが 望 ん で3人 出産 。 子 ども が 生 まれ る事 で夫 が変 わ る事 を期 待 した が,生 まれ て も何 も変 わ らな か っ た。 育児 は 大変 だ っ た が,大 き くな っ て か らは 自分 を助 けて くれ るの で,産 んで いて よか っ た と考 え て い る。 子 ども好 き で,愛 情 が深 い。 第1 子 の妊 娠 を き っ か け に結 婚 した。 性 に 関 して は,夫 自身 の欲 求 を満 たす だ け の もの。 子 ども が 生 まれ れ ば 父親 と して変 わ る 事 を期 待 し 続 け た が,何 も 変 わ らな か っ た。 現 在 は,成 長 した子 ども に助 け ら れ て い る。 夫 の子 育 て へ の協 力 非協力 的 非協 力的 表2DV被 害 の 実 態 A氏 B氏 ア セ ス メ ン ト DVの 開 始 時期 付 き合 っ て い る 時 は優 し く,暴 力 は無 か ったが,結 婚 した途 端変 わ っ た。 結 婚 当初 は物 に あ た り,物 を 投 げつ け た り して い た。 付 き合 っ て い る 時 に暴 力 は無 か っ た。 結 婚 後,子 ども が 生 まれ た後 に暴 力 が 始 ま っ た。 2名 と も結 婚 後 に 暴 力 が 始 ま っ て お り,結 婚 前 に はDVを 予 想 で き て い な い。 男性 が 女性 を 自分 の 所 有 物 と認 識 した結 婚 後 に 暴 力 が 始 ま っ て い る。 DV被 害 の期 間 結 婚 直後 か らの約20年 間 結 婚 後,間 もな く出産 して か らの 22年 間 DV被 害 に耐 え た 年.月は 婚 姻 期 間 とほ ぼ 同 じで あ る。 暴力の種類 身 体 的暴 力(顔 以外 を 殴 る,髪 を 掴 ん で 引 きず り回す,妊 娠 中腹 部 を 蹴 り上 げ る),精 神 的 暴 力,経 済 的暴 力,社 会 的 暴力(友 人 関係 を 切 る),子 ど も を 使 っ た 暴 力 (小 さ な 子 ど も に わ ざ と 自分 を 殴 らせ る) 身 体 的暴 力,精 神 的暴 力,性 的暴 力(裸 踊 りの 強制 な ど屈辱 的 な こ と,繰 り返 され る 浮 気),社 会 的 暴 力(PTA会 合 等,他 の 母 親 と の食 事会 に全 く参 加 させ て くれ な い) 複 合 的 暴 力 を繰 り返 し受 け る事 で, 被 害者 自身 の気 力 は 損 な われ て い る。 加 害者 は,被 害者 の行 動 を コ ン トロール し,自 分 以外 の人 との 付 き合 い を極 端 に制 限 して い る。 子 ど もへ の虐 待 長 女(現 社 会 人)は 夫 か らの児 童 虐 待 が あ っ た。 次 女 は虐 待 経 験 が 無 く,長 男 は 夫 か ら溺 愛 され る。 長 女(現 社 会 人),長 男(現 社 会 人,仕 事 の 関 係 で 夫 と 同居),次 男 は 夫 か らの虐 待 が あ っ た。 三男 は 夫 か ら溺愛 され る。 子 ども に も加 害者 の 暴力 は及 ん で い た が,暴 力 を振 る われ や す い子 ど も とそ うで な い子 ど もが い る。 両加 害者 は,末 子 の 男児 を溺 愛 し て い る。 DV行 為 の き っ か け 暴 力 の 引 き金 は さま ざま で あ る。 些 細 な事 が き っ か け で激 し く殴 ら れ る。 夫 が 自分 の コ ン プ レ ック ス に触 れ られ た と感 じた 時 に暴 力 を 振 る う。 加 害者 は 常 に被 害者 か ら の ケ ア を 望 み,被 害者 の行 動 が加 害者 の意 に 添 わ な い と,被 害者 が 死 の恐 怖 を感 じる程 の 暴力 を振 る う。 被 害者 が我 慢 して い た 時 に は 問題 は無 か っ た が,あ る 日耐 え切 れ な くな っ て加 害者 の言 動 に反 発 した こ とき っ か け に暴 力 が 始 ま っ た。 夫 の 父 の 死後,気 性 の激 しか っ た 母 が 弱 くな っ た こ とで 家族 関係 が 崩 壊 し,夫 の 暴力 は さ らに激 し く な っ た。 妻 で あ る被 害者 が 夫 に合 わせ て行 動 して い る うち は 問題 が 起 こ りに くい。 しか し,一 旦 そ の 関係 が破 綻 して しま う と,些 細 な 事 で も DVの 引 き 金 に な り得 る。DV行 為 の き っ か け は加 害者 本 人 に しか わ か らな い部 分 が あ り,被 害者 側 は 暴 力 を 受 け る理 由 を理 解 す る こ とが で き な い こ とも 多 い。 DVに よ る心 身 の 症 状 十 数 年 前,友 人 関係 を全 て 断 ち切 られ た 時 に うつ症 状 が 出現 した。 そ の 頃 は,夫 か らの暴 力 の 辛 さを 感 じな い よ うに,ア ル コ ール を暴 飲 して い た。 夫 は顔 以外 の所 を 殴 打 した。 左 手 小指 近 くの神 経 が切 れ た り,頭 蓋骨 の 陥没 も負 っ た。 長 女 が ま だ幼 い 頃,顔 を 殴 られ て 目が腫 れ 上 が っ た。 顔 を か ば お う と して 突 き指 し,あ ま りの痛 み と 腫 れ に指 が折 れ た か と思 い,病 院 を受 診 した事 が あ っ た。 両者 と も,激 しい身 体 的 暴力 を受 け,一 部 に は後 遺症 が 残 っ てい る。 A氏 に は 精 神 面 の 症 状 も出 現 し, 飲 酒 す る な どの逸 脱 行動 に及 ん で い る。 IES-R診 断 辛 い経 験 を乗 り越 え た形 跡 や 軽 度 トラ ウマ 状態 軽 度 トラ ウマ状 態 両者 共 に 見 た 目は快 活 で あ る が, 自記 式簡 易 ス ケ ール で は 心理 面 で は現 在 も トラ ウマや ス トレス は無 くな っ て い な い。 SCL-KM診 断 中 レベ ル ス トレス状 態 軽 度 ス トレス状 態
表3DVに よる 医療機 関の 受診 状況 A氏 B氏 ア セ ス メ ン ト 昔は身 体的暴 力で受けた傷 に対す 10年 以 上 前 に,指 の骨 折 を疑 っ て 身 体 的暴 力 に 対す る 治療 に加 え, る 一般 的 な治 療 を 受 け た。 近 年, 受 診 し,傷 の 治療 を受 け た。 A氏 は 裁 判 を 見 越 し て 証 拠 を残 医療機 関で受けた支援 暴 力 被 害 の証 拠 とす る た め に,あ す行 動 を とっ て い る 。 医療 機 関 の ざの写真撮影や診 断書 を依頼 した 職 員 は,他 の 専 門機 関 に 通報 す る こ と が あ る 。 な どの対 処 を とっ て い な い。 医 師 に は診 断 書 を 書 い て も ら う時 昔 の 事 とい う事 もあ り,医 療 関係 被 害者 は,短 時 間 で 外 来 を受 診 す 受 診 時 にDV被 害 相 談 を にDVに つ い て 相 談 し た が,看 者 の 事 は 覚 え て お らず,特 に相 談 るた め,医 師以外 に相 談 す る とい っ 誰 か に行 っ た か 護 師 とは 特 に話 をす る 事 は な か っ も し て い な い 。 た発 想 を して い な い 。 た 。 酷 い暴 力 を受 け た 時 に は,体 が動 特 に コ メ ン トは な し 身体 的暴 力が酷 い時には受診 さえ け な い た め受 診 も出来 な い。 体 が 出 来 な い。 経 済 的,時 間 的制 約 も 動 き,お 金 が あ っ て,受 診 の 時 間 受診 の 障 害 とな る場 合 が あ る。 受診 の条件 と受診 時の希望 が あ る とい う3条 件 が そ ろ わ な け れ ば病 院 に は行 け な い。 診 断 書 は も う少 し安 く して も らえ る と他 の 被 害者 も助 か る. 2.DVに よ る 医療 機 関 の 受診 状 況 DVに よ る 医療 機 関 の 受 診 状 況 を表3に 示 す 。 両者 と も身 体 的 暴 力 に 対 す る 治療 の た め に個 人病 院 を 受診 して い た 。 そ の 治 療 に加 えてA氏 は,DV被 害 の証 拠 を残 す た め の 写真 撮 影 や 診 断 書 作成 を 医 師 に依 頼 して い た。 そ の 際,医 師 に はDVに つ い て言 及せ ざる を えな か っ た が, 看 護 師 に は何 の相 談 も しな か っ た。 酷 い 暴 力 を 受 け る と 全 身 苦痛 の た め に病 院 に行 く気 力 も沸 い て こな い と回答 して い る。 ま た,か らだ が動 い て も経 済 的,時 間 的制 約 が 受診 を 妨 げ る要 因 に な る とい う。B氏 が受 診 した の は DV防 止 法 の制 定 前 でDVに 対 す る社 会 的認 識 が ま だ低 い 時期 で あ り,身 体 的 治療 は 受 け た もの の,医 療 関係 者 にDV被 害 の相 談 は して い なか った 。 3.DVに 対 す る対 処 行 動 と社 会 支 援 被 害者 の 問題 対 処行 動 と公 的機 関 等 の 対応 を表4に 示 す 。DVを 長 年 耐 えた 理 由 と して,A氏 は 役 所 に相 談 し た 事 が 夫 の 耳 に入 っ て 叱 責 され た経 験 を 挙 げ た。 狭 い コ ミュ ニ テ ィー の 中 で の 人 間 関係 が,被 害者 に は 不利 益 な 因 子 とな っ て い た 。B氏 は,自 分 よ りも子 ども の た め に 婚 姻 関係 を継 続 させ よ うと努 力 した。 ま た,相 談 で き る 友 人 が い な か っ た こ と,家 を 出 て も行 き 場 が な か っ た こ と も,一 因 と して 挙 げ て い る。 夫 の 元 を離 れ よ うと考 え た理 由 と して は,両 者 と も子 ど もの 存 在 を挙 げ た。DVに 耐 え る生 活 が 限 界 に近 づ い た 時期 に,そ の 状 況 を 間 近 で 見 て き た 子 ど もた ち が 声 を あ げた こ とが,被 害 者 が行 動 を起 こす大 きな後 押 し とな っ て い た。 家 を 出 る こ とを決 意 させ た 直接 の き っ か け は, 命 の危 険 を感 じる ほ どの激 しい 暴 力 を 近年 受 け た 事 で あ る。 両者 は 夫 の 元 か ら離 れ るた め の社 会 的 支援 を受 け よ う と,自 ら行 動 を 起 こ して い た 。A氏 は事 前 に知 人 か ら母 子 寮 の情 報 を得 て,さ らに 市役 所 福 祉 課 で ア ドバ イ ス を 受 け,警 察 で逃 げ るた め の方 法 を 聞 い て い た。 す ぐに 夫 の 元 か ら逃 げ るの で は な く,時 間 を か け て少 しず つ 準備 を し,行 動 に移 して い た 。B氏 はDV専 門 担 当 警 察 官 (生活 安 全 企 画 課)か ら市 の婦 人 相 談 所,県 の 婦 人 相 談 所,と 順 次紹 介 され た もの の,そ の支 援 内容 は加 害者 か らの 隔離 に止 ま り,就 職 や 子 ど もの修 学 問題 な ど,次 の 段 階 の 生活 支援 は 実施 され て い な か っ た。 IV 考 察 「女性 の 健 康 と生 活 に つ い て の 国 際 調 査 」8)によ る と, 回 答者 の 約34.9%が 結 婚 前 に夫 ま た や パ ー トナ ー か ら暴 力 を 受 け て お り,必 ず し も結 婚 後 に 暴力 が始 ま る訳 で は な い こ とが 明 らに され て い る。 今 回 の調 査 で は,暴 力 が 始 ま っ た の は2名 と も結 婚 後 で あ り,パ ー トナ ー の 暴 力 性 を結 婚 前 に は 見抜 け な か っ た と回答 して い る。 婚 姻 関 係 が成 立 した後 で 暴力 が始 ま っ た こ とに加 え,子 ど もが 出 来 た こ とで 尚 更,加 害者 で あ る夫 の 元 か ら離 れ に くい 状 況 に陥 っ た と考 え られ る。 子 ども の数 はA氏 が3名, B氏 が4名 と,現 在 の 日本 の 夫 婦 の 完 結 出 生 児 数2.09 (2005)と 比 べ れ ば少 な くな い 。 子 ど も が で きて も加 害 者 の 態度 に 変化 は 起 こ らず,育 児 の 協力 も得 られ な か っ た。 育児 の負 担 を押 しつ け られ る こ と は,複 合 的DVの ひ とつ と も言 え るで あ ろ う。 今 回 の 事 例 で は,子 ど もの 存 在 がDVの 長 期 化 や 避 難 行 動 に大 き く影 響 して お り,DVの 継 続 期 間 を決 定 す る 大 き な 因子,い わ ば キ ー パ ー ソ ンに な っ た と言 え る。 DVを 受 け な が ら夫 の元 に長 期 間 と どま っ て い た の も,
表4被 害者 の 問題 対処 行動 と社 会支 援 A氏 B氏 ア セ ス メ ン ト DVに 長年 耐 え て き た 理 由 周 囲 は 皆顔 見 知 りで,役 所 に も相 談 しづ らか っ た.相 談 した事 が夫 の 耳 に入 る と,逆 に 責 め られ た。 警 察 が 来 た 時 は 良 い が,そ の 後 が 怖 くて20年 間言 え な か っ た。20年 前 は周 囲 の理 解 もな か っ た。 自分 が 父 子 家庭 に 育 っ た の で,両 親 の揃 っ た 家庭 に した い とい う思 い が あ り,夫 の暴 力や 浮 気 に も耐 え て きた.相 談 出来 る友人 もな く, 夫 の 元 を 出 て も行 き場 所 が な か っ た の で,独 りで耐 え る しか な か っ た。 狭 い コ ミュ ニ テ ィー で あ る事 が, 逆 にDV問 題 の 場 合 に は ネ ッ ク とな る場 合 が あ る。 自分 よ りも子 ど もの為 に夫 婦 関係 を継 続 させ よ う と,被 害者 は努 力 して い る。 夫 の元 を離 れ よ う と考 え た 理 由 夫 の 両親 は 見 て み ぬふ りを し,義 父 か らは我 慢 して くれ と言 われ た。 しか し,子 ども達 か ら 「も う限 界 だ。 この ま ま だ っ た らお母 さん が 殺 され る … そ ん な 事耐 え られ な い か ら逃 げ よ う」 と言 われ た。 この言 葉 が無 けれ ば今 で も我 慢 し て い た。 生活 の安 定 よ り,愛 情 が な い こ と が理 由。22年 も夫 に尽 く した が, 自分 の 人 生 は今 や り直 さな い と無 理 だ と思 っ た。 イ ン タ ー ネ ッ トを 調 べ て い た長 女 か ら,夫 の暴 力 は DVで あ り,今 逃 げ な けれ ばず っ と苦 労す る と言 われ た 事 で,逃 げ る気 に な っ た。 DVに 耐 え る生 活 が 限 界 に近 づ い た 時期 に,そ の状 況 を 間 近 で 見 て き た 子 ども た ち が 声 を あ げ た こ と が,被 害者 が行 動 を 起 こす 大 き な 後押 し とな っ て い る 。 逃 げ る き っ か け 約1年 前,被 害者 が外 出 して い る 問 に鏡 台 が 叩 き割 られ,洋 服 は投 げ捨 て られ て い た。 それ を き っ か け に逃 げ る 準備 を 始 め た。4ヶ 月 間 で お金 や 荷 物 等 の 準備 を し,半 年 前 に 子 ども達 を連 れ て 家 を 出た。 約2年 前 か ら,と に か く別 れ た く な っ た。1年3ヶ 月前,夫 に 階段 か ら突 き 落 と され た。 そ の 際 被 害者 が 「殺 してや る」 と叫 び,そ の様 子 を 見 て い た長 女 が警 察 を 呼 ん だ。 約1年 前 に子 ども 達 を連 れ て逃 げ た。 両 者 と も長 年 に わ た るDV被 害 に耐 え て き た が,命 の危 険 を感 じ る ほ どの激 しい暴 力 を近 年 受 け た 事 が,家 を 出 る 直接 の き っ か け と な っ て い る。 被 害者 が支援 を求めた公 的 機 関 とその対応 母 子 寮 を 知 る知 人 に話 を 聞 き 市役 所 福 祉 課 に行 っ た。 ア ドバ イ ス を 受 け警 察 に行 き,逃 げ る た め の方 法 を 聞 い た。4ヶ 月 で逃 げ る 準備 を し,子 ど もに 口止 め して最 小 限 のお 金 で子 ど も達 を連 れ て逃 げた。 被 害 を 受 け た翌 日,DV専 門担 当 警 察 官 に 市 の婦 人 相 談 所 を勧 め ら れ,そ こで 県 の婦 人相 談所 を 紹介 され た。 期 間 内 で職 が決 ま らな い 場 合 の 対応 や 子 供 の 学校 の事 な ど で安 心 で き る言 葉 は無 か っ た。 子 ども課 で母 子 寮 を紹 介 され た。 地域 に よ り,支 援 や 対応 に差 が あ る 。A氏 の 担 当 者 は,具 体 的 且 つ 実 践 的 取 り組 み を 実施 した が, B氏 の担 当者 は,被 害者 の不 安 に 対応 しき れ て い な い 。施 設 自体 に も様 々 な制 約 も あ る た め,子 ど も の修 学や 就 職 活 動 な どの諸 問題 を ス ム ー ズ に対 処 出 来 る ス キル が必 要 で あ る。 今 回の体験 か ら得 られ た被 害者 の学び 被 害者 は,DVの 証 拠 保 全 の た め に診 断 書 が 有効 で あ る 事 を警 察 官 と市役 所 職 員 か ら聞 き,些 細 な外 傷 で も受 診 して証 拠 を残 す 事 を 学 ん だ。 家 族 は協 力す る事 が 大切 で あ る。 子 ど もは 子 ども な りに お金 や 安全 で あ る事 の あ りが た み が わ か っ て い る。 子 ど も同 士 も無 駄 遣 い しな い よ う話 し合 っ て い る。 DV被 害 につ い て 専 門 機 関 に相 談 し,そ の 状況 か ら抜 け 出 す た め に 必 要 な事 を 学 ん で い る。 被 害者 だ け で な く,そ の子 ど も達 も家族 の 協力 が 大切 な 事 を身 を もっ て 学 ん で い る。 希 望す る社 会 シ ス テ ムや プ ロ グ ラ ム 子 ど もの 心 が 柔 らか い 時 に,暴 力 は駄 目だ とい う道 徳 教 育 を して欲 しい。 加 害者 更 生 プ ログ ラ ム を 作 成 して ほ しい。 DV被 害 者 に 関 わ る職 員 全 て の 専 門職 員 を 対象 に教 育 プ ロ グ ラ ム を 作成 して欲 しい。 子 ど も達 へ の 暴力 禁 止 に つ い て の 道 徳 教 育 や デ ー トDV等 の 早 期 教 育,加 害者 更 生 プ ログ ラ ム,専 門職 員 へ の教 育 プ ロ グ ラ ム が 必 要 で あ る。 加 害者 の 元 か ら逃 避 す る こ とを決 意 させ,行 動 の 後 押 し を した の も子 ど もた ち で あ る。 彼 ら 自身 も虐 待 の被 害者 で あ り,母 親 と子 ど も全 員 が 協 力 す る こ とで,加 害者 の 元 か ら逃 げ 出 す こ とが 可 能 とな っ て い た。 面接 時 の 両者 の話 し方 は理 路整 然 と して い て,今 後 は 子 ど もた ち との 生活 を 充 実 させ た い との 前 向 き な発 言 が 聞 か れ た。 しか し,自 記 式簡 易 ス ケ ール か ら見 る と中 ∼ 軽 度 の ス トレス 状 態や トラ ウマ 状 態 に あ り,外 見 と内 面 の ギ ャ ップ が示 され た 。被 害 者 の 心 の 内 は分 か りづ ら く, 被 害者 支援 や 教 育 に 当 た っ て は慎 重 か つ継 続 的 な メ ン タ ル ケ ア の 実施 が 重 要 で あ る。 今 回 の 被 害 者 は,DVに 関 して 医 師 以 外 の 医療 関係 者 と コ ン タ ク トを取 って い な い 。B氏 と医療 関係 者 との 関 わ りは 「(子ど もが ま だ 小 さか っ た 何 年 も 前 に)暴 力 を 振 るわれ て病 院 を 受診 した 」 だ けに 止 ま っ て い た 。A氏 は 暴力 で 受 け た傷 の 治療 や あ ざの 写真 撮 影 は 受 け て い た もの の,医 療 機 関 か ら他 の 専 門機 関 へ連 絡 が 取 られ る事 は 無 か った 。 これ は,受 診 理 由 が あ くま で も 「DV被 害 の証 拠 と して残 す 診 断 書 を と る」 た め だ っ た こ とに よ る と推 測 され る。 両 被 害 者 のDV回 避 過 程 に は警 察 も関 与 して い るが,医 療 機 関 の 通報 に よ るの で は な く,自 ら起 こ した行 動 が結 び つ い た もの で あ る。 外 傷 を負 っ た被 害
者 の 多 くは 医 療 機 関 を受 診 す る 9)。外 傷 の 治 療 だ け で は な く,DV防 止 法 に 記 載 され た通 報 の役 割 を含 め,医 療 者 側 の適 切 な 対応 が被 害者 支援 の初 期 段 階 と して 求 め ら れ て い る。 そ れ が,DVの サ イ クル を 早 期 に断 つ 事 に も っ な が る で あ ろ う。 DV被 害 者 へ の 公 的 対 応 に つ い て はA氏 とB氏 に は 差 が あ っ た 。A氏 の対 応 者 は 具 体 的 且 つ 実 践 的 取 り組 み を 実施 した が,B氏 の対 応 者 は被 害 者 の不 安 に 対応 しき れ て い な か っ た。 受 け入 れ施 設 そ れ ぞ れ の制 約 で,子 ど もの修 学や 就 職 等 の諸 問題 に ス ム ー ズ な 対 処 が 出 来 な い 事 も多 い 。 地域 ・施 設 に よ る対 応 の 差 を無 くす た め に は, 被 害者 が 日本 全 国 どの 医療 機 関や 女性 セ ン タ ー 等 を訪 れ た と して も適 切 な被 害者 支援 に つ な げ られ る全 国 で 統 一 され たDV被 害 者 支 援 シ ステ ム が必 要 で あ る。 しか し, この よ うな シ ス テ ム は 日本 で は ま だ未 整 備 で あ る。 今 回 の2名 の 事 例 で は,医 療 機 関 がDV問 題 を 察 知 す る最 前線 に あ りな が ら,そ の役 割 を 十 分 に は果 た して お らず,子 ど もを含 む 被 害 者 自身 の 回 避 行 動 がDVの サ イ クル を 断 ち切 る原 動 力 とな っ た 事,ま た,公 的 対応 が シ ス テ ム と して 確 立 して い な い 事 が示 され た 。DV防 止 法 の理 念 を 遂行 す る に は,効 果 的 な介 入 の仕 組 み 作 りや 医 療 ・福 祉 機 関 の職 員 に 向 けたDV教 育 プ ログ ラ ム の 早急 な 開 発 が 望 まれ る。WHO国 際 調 査/日 本 調 査 結 果 報 告 書(2007) 10)の中 に 「多 様 な要 求 に 対応 で き る よ うな効 果 的 な介入 の仕組 み や プ ログ ラ ム開発 をす るた め に は,夫 ・ パ ー トナ ー か らの 暴 力 を 受 け た 女性 が,誰 か ら どの よ う な援 助 を 受 け た い と考 え て い る の か に つ い て,意 見 を 求 め る こ とが 必 須 で あ る」 と の提 言 が あ る 。DV被 害 者 が 医療 ・福 祉 機 関職 員 か ら どの よ うな援 助 を 受 け た い か を さ らに調 査 す る 必 要 が あ る と考 え る。 謝 辞:こ の活 動 報 告 を ま とめ る に あ た り,ご 教示 下 さい ま した鹿 児 島 国 際 大 学 大 学 院福 祉 社 会 学研 究 科 の 高 山 忠 雄 先 生 に深 く感 謝 い た しま す。 尚,本 研 究 は 科 研 費(基 盤 研 究(C)20510249)の 助 成 を 受 け た も の で あ る 。 文 献: 1)男 女 共 同 参 画 会 議 女 性 に 対 す る 暴 力 に 関 す る 専 門 調 査 会 編:配 偶 者 暴 力 防 止 法 の 施 行 状 況 等 に つ い て. 東 京,2007,pp.11-13. 2)大 塩 孝 江:母 子 生 活 支 援 施 設 に お け る 家 族 支 援 と ソ ー シ ャ ル ワ ー ク.ソ ー シ ャ ル ワ ー ク 研 究;VOL.32 No.4 2007,p.31.
3)Asukai N, Kato H, Kawamura N, et al: Reliability and Validity of the Japanese-Language Version of the Impact of Event Scale-Revised (IES-R-J): Four Studies of Different Traumatic Events, J Nerv Ment Dis 2002; 190
: 175-183. 4)パ ブ リ ッ ク ヘ ル ス リ サ ー チ セ ン タ ー 編:ス ト レ ス ス ケ ー ル ガ イ ド ブ ッ ク 「簡 易 ス ト レ ス 度 チ ェ ッ ク リ ス ト(桂 ・ 村 上 版)(SCL-KM)」.第1版,実 務 教 育 出 版,2005,p,415. 5)内 閣 府 男 女 共 同 参 画 局 編:配 偶 者 か ら の 暴 力 被 害 者 支 援 情 報 相 談 機 関 一 覧 「母 子 生 活 支 援 施 設 」,http: //www.gender.go.jp/e-vaw/soudankikan/04.html,2008. 6)厚 生 労 働 省 編:実 績 評 価 書(6-6-II)平 成17年8月, http://www.mhlw.go.jp/wp/seisaku/jigyou/05jisseki/6-6-2.html,2008. 7)友 田 尋 子:暴 力 被 害 者 と 出 会 う あ な た へDVと 看 護. 第1版,医 学 書 院,2006.3,pp.13-16. 8)吉 浜 美 恵 子,釜 野 さ お り,秋 山 弘 子 他:女 性 の 健 康 と ド メ ス テ ィ ッ ク ・ バ イ オ レ ン ス-WHO国 際 調 査 /日 本 調 査 結 果 報 告 書-.新 水 社,2007,p.42-43. 9)友 田 尋 子:暴 力 被 害 者 と 出 会 う あ な た へDVと 看 護, 医 学 書 院,2006,3,p.17. 10)吉 浜 美 恵 子,釜 野 さ お り,秋 山 弘 子 他:女 性 の 健 康 と ド メ ス テ ィ ッ ク ・ バ イ オ レ ン ス-WHO国 際 調 査 /日 本 調 査 結 果 報 告 書-.新 水 社,2007,p.85.