「為替の実体経済に与える影響の実証分析
―訪日外国人の消費動向に着目して― 」
上智大学 経済学部経済学科 4 年
嶋中由理子
1
Ⅰ.要旨
本研究では、為替変動の国内総生産(GDP)に与える効果を、訪日外国人消費動向に着目し て分析した。VAR(Vector AutoRegressive)モデルを用いて、為替レートの、訪日外客数、
輸出、国内総生産(GDP)に対する影響を分析し、四半期毎の効果を調べた。
訪日外国人の急激な増加や、強いインバウンド消費は、近年の円安に伴う、新たな傾向 ともいえる。そこで、特にアベノミクス後の円安に伴う訪日外客数の動きが、為替の
GDP
に対する影響度を上昇させているという仮説を立て、検証した。Ⅱ.研究動機
1.問題意識
2012
年12
月の政権交代時に予告され、2013年4
月から行われた日銀による「量的・質 的金融緩和」は、正確な評価は別として、劇的に日本経済を転換させたとの印象を与えた。今回のいわゆる「アベノミクスの金融政策」において最も迅速に動いた金融指標は為替レ ートであった。円ドルレートは
2012
年11
月の1
ドル=70円台後半から大幅に下落し、2016
年1
月現在、117
円近傍での円安水準となっている。こうした中、私は金融政策の波及チャ ネルの中でも、為替変動の影響力に注目するようになった。また、近年の円安に伴う新たな傾向として、訪日外国人の急増に注目した。日本政府観 光局によると、訪日外客数は
2014
年度、過去最高の1467
万人となり、2015
年の推計値も前年比
47%増で過去最高の 1973
万となった。さらに、「爆買」に代表される旺盛な外国人消費は
GDP
や経常収支にも影響を与えてい る。日本政府観光局によると、訪日中国人1
人当たりの旅行消費額は23
万円で、6人の中 国人旅行客が訪れると日本人1
人の年間消費(123万円:総務省家計調査)に匹敵する旺盛さ である。2015
年7-9
月期の訪日外国人の旅行消費額は1
兆9
億円(日本政府観光局)で、前 年同期比で80%増となった(外国人消費は GDP
の輸出項目である)。また、国際収支統計速 報によると、2015年10
月の旅行収支は1107
億円の黒字で、前年の4.1
倍となっている。このような経済状況を観察していく内に、最近の訪日外客数の動きと絡めて、為替変動 が輸出(訪日外国人消費は
GDP
の輸出項目に含まれる)、GDP
にどのように影響を与えてい るのかを研究したいと思うに至った。2.仮説
為替レートの国内総生産(GDP)に与える効果としては、金融資産への投資や純輸出への働 きかけによるものが挙げられる。為替の下落は、外貨建て資産や輸出型企業の多い日本の 株式への投資需要を増加させ、それらの値上がりから資産効果が発生し、資産保有者の消 費需要を刺激する。また、円の過大評価を是正することで、日本製品の対外競争力が強ま り、外貨建て輸出価格の引き下げを通じて輸出数量を押し上げる。
2
これに加え私は、円安の
GDP
に対する新たな波及経路として、インバウンド消費の増加 によるルートが出現したと考えた。円安化によって訪日外客数が増加し、インバウンド消 費が増大することで、輸出が伸び(訪日外国人消費はGDP
の輸出項目)、GDPが成長する、という経路である。これらは、従来の円安の効果からは想定できなかったものである。
この結果、従来以上に為替変動の
GDP
に対する影響度が上がっているという仮説が浮か び、特にアベノミクス以降の変化の可能性を検証することにした(主にⅤ章参照)。Ⅲ.研究の系譜
為替レートに関して
VAR
モデルで分析した先行研究としては、宮尾(2006)、山下(2013)、岩淵(1990)、寺井・飯田・浜田宏一(2003)が挙げられる。また、伝統的なマクロ計量モデル を用いた研究として、浜田浩児・堀・横山・花垣・亀田・岩本(2015)がある。
まず、宮尾(2006)は、名目為替レートショックが輸出入に与える動学的効果(インパルス 反応)を分析している(1975年第
1
四半期~2001年第1
四半期)。結果としては、円安ショ ックによって輸入は有意に減少している一方で、輸出は有意なほどは増加していないこと が示された。またプラザ合意以後、構造変化が起こり、為替の輸出に対する影響が減少し たことも示唆されている。次に山下(2013)は、宮尾(2006)を先行研究とし、実質実効為替レートが輸出入に与える影 響を分析している(1980年第
1
四半期~2011年第3
四半期)。このモデルでは、リーマンシ ョックの影響をコントロールした場合の円高ショックは、輸入を有意に増やす一方で、輸 出を有意なほど減らさないという結果となった。岩淵(1990)は構造
VAR
モデルを用いて、金融変数(金利、マネー、貸出額、為替レート) が実体変数(物価、実質生産)に与える影響を分析している。インパルス反応関数の結果から、円安ショックは短期的には実質生産を増大させ、景気拡大効果を持つが、中長期的には景 気後退効果をもたらすこと、短期的に物価を顕著に押し上げることが示されている。
寺井・飯田・浜田(2003)は、誘導型
VAR
モデルで、インフレ期待やベースマネーが為替 レートに与える影響を分析している。為替レートを金融政策の波及チャネルの1
つとみな す視点は、私の論文の問題意識に強く影響した。最後に、浜田浩児・堀・他(2015)は、内閣府・経済社会総合研究所の「短期日本経済マク ロ計量モデル」を用いて、様々な政策・外的ショックが日本経済に与える影響を試算して いる。シミュレーションの結果から、
10%の円安化は、実質 GDP
を1
年目に0.08%、 2
年目に
0.44%、3
年目に0.41%増加させることが示されている。
また、近年の円安に伴う訪日外国人の増加による国内総生産に対する影響を
VAR
モデル で分析している学術論文は未だなく、この点では新しい研究となる。3
Ⅳ.分析
1.分析概要
VAR
モデルを用いて為替レートが、訪日外客数、輸出、実質GDP
に与える影響を分析 した。推計したモデルは2
変量VAR(為替レート、訪日外客数)、3
変量VAR(為替レート・
訪日外客数・輸出)、4変量
VAR(為替レート・訪日外客数・輸出・実質 GDP)である。(※訪
日外国人消費はGDP
の輸出項目に含まれる。)また、各モデルに対して、アベノミクス前までのデータでも同様の分析も行い、全期間 を用いた分析と結果を比較した(Ⅴ章参照)。
2.分析手法
今回用いたのは
VAR(Vector AutoRegressive)モデルである。VAR
モデルとは、ベクトル 自己回帰モデルとも呼ばれる、現在の値が過去の値の影響を受け、複数の変数間で相互に 依存し合っている多変量モデルのことである。例として
2
変量VAR
ラグ1
モデルを挙げると、以下のように示すことができる。( 𝑥 𝑡
𝑦 𝑡 ) = ( 𝜙 11 𝜙 12 𝜙 21 𝜙 22 ) ( 𝑥 𝑡−1
𝑦 𝑡−1 ) + ( 𝑢 𝑥𝑡
𝑢 𝑦𝑡 )
𝜙:自己回帰係数, 𝑢:誤差項
VAR
モデルの長所は、恣意的な制約を排除できることである。そのため、現実の経済デ ータとのあてはまりや予測に優れ、実証分析で用いられる(※宮尾(2006)、浜田他(2015)よ り)。今回の分析は、訪日外客数という通常用いられないデータを用いて、新たな仮説をデ ータ主体で分析するため、VAR モデルを採用した。なお、VAR
モデルのラグ次数はAIC(Akaike Information Criterion)の情報量基準を用いて決定した。
3.データ
用いたデータは四半期データで、期間 は
1991
年第1
四半期から2015
年第2
四半期までとした。為替レートは、名目 為替レートを採用し、日本銀行時系列統 計データ検索サイトで、東京市場ドル円 スポット17
時時点月中平均を、四半期デー タ(算術平均)にして入手した。また、GDP、GDP
各需要項目に関しては、内閣府国民経 済計算、四半期実質季調系列を用いた(1994 年第1
四半期~2015 年第2
四半期までは2015
年4-6
月期2
次速報、1993
年以前は 平成17
年度基準支出系列簡易遡及を用い為替レートE (円建て)
訪日外客数 F (人)
輸出 X (10万円)
実質GDP Y (10万円) 平均 109.131054 522819.8878 62285.048 486615.705 標準誤差 1.52113901 26062.08498 1912.6517 2958.32066 標準偏差 15.0585079 258001.4783 18934.285 29285.8804 分散 226.75866 66564762798 358507162 857662788 最小 77.3433333 251947.3333 35531.5 434156 最大 139.973333 1669541 94550.2 535030
標本数 98 98 98 98
表1.基本統計量
※為替レート、訪日外客数は月次データを算術平均して四半期データにした。
※データは対数変換に100を掛ける前のもの。
※輸出、実質GDPは四半期データ。
4
た)。訪日外国人消費の大きさを示す変数と しては、入手可能なデータ数の最も多い、訪日外客数で代用することにした。訪日外 客 数 デ ー タ は 、 日 経
NEEDS-Financial
QUEST
から、日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数月次データを入手し、算術平均で 四半期データに変換した。なお、すべての データは対数変換をし、100を掛けた。
表
1
は対数変換をする前のデータの基本 統計量である。また、グラフ1~3
は対数変 換前の為替レート、訪日外客数、輸出、実 質GDP
の時系列グラフである。為替レー トと訪日外客数の関係を見ると(グラフ1)、
2012
年第4
四半期以降の円安化と訪日外客数増加の動きが一致している。この傾向は従来、あまり見られなかったものである。ま た、為替レート、輸出、実質
GDP
の関係を見ると(グラフ2、3)、近年(アベノミクス以後)
の円安化の動きと輸出増加の動きは一致しているようにも見受けられる。一方で為替レー トと実質GDP
の関係は、直接的にあるようには見えなかった。4.各変数の単位根検定
まず、事前分析として、データ(為替レー ト、訪日外客数、輸出、GDP)の定常性を 調 べ る た め 、
ADF
検 定(augmented Dickey-Fuller
検定)を用いて、各変数の単 位根検定を行った。期間は1991
年第1
四 半期から2015
年第2
四半期までである。ADF
検定の帰無仮説は「単位根あり」、 対立仮説は「単位根なし」で、𝑡 ≤ 𝐷𝐹 𝛼
の時、有意水準
100 𝛼
点で帰無仮説が棄却される(※ 𝐷𝐹 𝛼
はDickey-Fuller
分布の下側100 𝛼 %点)。
結果は表
2
のようになった。レベル値で検定を行ったところ、すべての変数が非定常で あった。そこで、各変数1
階の階差を取って、再び検定すると、すべての変数が定常とな った。このため、以下のVAR
分析では各変数、1階の階差をとって行うことにした。表2.単位根検定 変数
レベル 一階階差 レベル 一階階差 レベル 一階階差 レベル 一階階差
※検定統計量は小数第2位までとした。
※回帰式における確定項の定式化はいずれも無しとした。
※*は10%有意、**は5%有意、***は1%有意で棄却を示す。
※()内の数字はAICで採用されたラグ次数を示す。
-7.44 (0) ***
2.02 (0) -8.26 (0) ***
ADF検定 -0.01(3) -4.12 (2) ***
2.19 (5) -2.24 (7) **
為替レート 訪日外客数
輸出 実質GDP
1.50 (1)
5
5.2
変量VAR
モデル(為替レート・訪日外客数)の分析①VARモデルの推定
まず、為替レート・訪日外客数の
2
変量VAR
モデルを分析した。ラグ次数はAIC
の情報 量基準を用いて決定し、次数3
とした(ラグ次数3
の時、AIC=13.693で最小)。VAR
推計結果は以下のようになった(数値は小数第3
位までで四捨五入)。( ∆𝐸 𝑡
∆𝐹 𝑡 )
̂ =
(0.316 −0.007 0.763 −0.191 ) ( ∆𝐸 𝑡−1
∆𝐹 𝑡−1 ) + (−0.270 0.034
−0.085 −0.176 ) ( ∆𝐸 𝑡−2
∆𝐹 𝑡−2 ) + (0.341 0.051
0.333 −0.215 ) ( ∆𝐸 𝑡−3
∆𝐹 𝑡−3 ) , 𝑅̅ 2 =(0.185
0.080 )
𝐸:為替レート, 𝐹:訪日外客数, 𝑅̅ 2
:自由度修正済み決定係数自由度修正済み決定係数の値が非常に低くなっているが、VAR モデルでは決定係数は、低 く出ることが多いため、分析を続けた。
②グレンジャーの因果性の検定
次に、推定した
VAR
モデルを用いて、グレンジャーの因果性の検定を行い、変 数間の因果関係を調べた。
結果は表
3
のようになった。為替レー トから訪日外客数に対しては、5%の有意
水準で因果性があること示された。一方で、訪日外客数の為替レートに対する因果性は有意ではなかった。
③インパルス反応関数(自由度修正済みコレスキー分解による)
次に、推定した
VAR
モデルを用いてインパルス反応関数を推定した。用いたのは自由度 修正済みコレスキー分解によるインパルス反応関数である(以降の分析でも同様)。自由度修 正済みコレスキー分解によるインパルス反応関数とは、ある変数の誤差項の1
標準偏差の ショックを与えた時のもう一方の変数の影響を表すものである。10
期までのインパルス反応関数はグラフ4
のようになった。為替レートショックは為替 レートの円安ショックのことである。図の青い線はインパルス反応関数の推定値、赤い点 線は推定値±2.S.E.を示し、95%の信頼区間を表している。したがって、下の赤い点線が0
より上ならば、2.5%の有意水準でショックに正の効果が、上の赤線が 0
を下回れば、2.5%
の有意水準で負の効果があるということになる。
グラフ
4
から、為替レートの円安ショックが2
期目に訪日外客数に有意にプラスの影響 を与えていることがわかる(ショックは3
期目には落ち着いている)。一方、訪日外客数ショ為替レート 訪日外客数 為替レート 2.308 (3) 訪日外客数 9.146 (3) **
※表内の数値はカイ2乗値、()内の数字は自由度を示す。
表3.2変量VARのグレンジャーの因果性(全データ)
※*は10%有意、**は5%有意、***は1%有意で棄却を示す。
被説明変 数
説明変数
※数値は小数第3位までとした。
6
ックも
4
期目に為替レートを円安方向に、有意なほどではないが、動かしていることがわ かる。④累積的インパルス反応関数
次に、ショックを累積させた累積的インパルス反応関数の動きを分析した。変数が階差 データのため、累積的インパルス反応関数は変数そのものの動きとなっている。作成した のは
10
期までと40
期までのグラフである(グラフ5、6)。
累積の結果を見ると、為替レートの円安ショックが訪日外客数に
10
期までは有意にプラ スの影響を与え続けていることがわかる。グラフ
4.2
変量インパルス反応関数(10期まで) 為替レートショック 訪日外客数ショック為替 レー ト
訪 日外 客数
グラフ
5. 2
変量累積的インパルス反応関数(10期まで) 為替レートショック 訪日外客数ショック為替 レー ト
訪 日 外 客数
為 替レ ート
訪日 外客 数
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DFORE
Response to Cholesky One S.D. Innovations ± 2 S.E.
-4 0 4 8 12
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Accumulated Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-4 0 4 8 12
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Accumulated Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-4 0 4 8 12 16
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Accumulated Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-4 0 4 8 12 16
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Accumulated Response of DFORE to DFORE Accumulated Response to Cholesky One S.D. Innovations ± 2 S.E.
-4 0 4 8 12 16
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-4 0 4 8 12 16
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-4 0 4 8 12 16
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-4 0 4 8 12 16
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DFORE to DFORE Accumulated Response to Cholesky One S.D. Innovations ± 2 S.E.
グラフ
6.2
変量累積的インパルス反応関数(40期まで) 為替レートショック 訪日外客数ショック7
6.3
変量VAR
モデル(為替レート・訪日外客数・輸出)の分析①VARモデルの推定
次に輸出の変数を追加して、為替レート・訪日外客数・輸出の
3
変量でVAR
モデルを分 析した。ラグ次数は3
とした(ラグ次数3
の時、AIC=19.522で最小)。推定された
VAR
モデルは以下のようになった(数値は小数第3
位までで四捨五入)。(
∆𝐸 𝑡
∆𝐹 𝑡
∆𝑋 𝑡
)
̂
= ( 0.327 0.021 −0.161 0.753 −0.351 0.814 0.192 −0.015 0.341 ) (
∆𝐸 𝑡−1
∆𝐹 𝑡−1
∆𝑋 𝑡−1
) + ( −0.274 0.047 0.032
−0.115 −0.272 0.089
−0.295 0.005 −0.024 ) (
∆𝐸 𝑡−2
∆𝐹 𝑡−2
∆𝑋 𝑡−2
)
+ ( 0.312 0.070 −0.072 0.495 −0.296 0.153 0.154 −0.031 −0.096 ) (
∆𝐸 𝑡−3
∆𝐹 𝑡−3
∆𝑋 𝑡−3 ) , 𝑅̅ 2 =( 0.179 0.138 0.061
)
𝐸:為替レート,𝐹:訪日外客数, 𝑋:輸出, 𝑅̅ 2
:自由度修正済み決定係数2
変量VAR
の時と同様に、自由度修正済み決定係数の値が非常に低いが、VARモデルの決 定係数は低く出ることが多いため、分析を続けた。②グレンジャーの因果性の検定 グレンジャーの因果性の検定の結果 は表
4
のようになった。為替レートの 訪日外客数に対する因果性、輸出の訪 日外客数に対する因果性、為替レート の輸出に対する因果性は、5%の有意 性があることがわかった。一方で、その他の関係性には、有意な因果性がなかった。
③インパルス反応関数(自由度修正済みコレスキー分解による)
10
期までのインパルス反応関数のグラフはグラフ7
のようになった。グラフ7
より、為 替レートの円安ショックは訪日外客数と輸出に2
期目に有意にプラスの影響を与えている(3
期目には落ち着く)ことがわかる。また、訪日外客数ショックは為替レートをプラスに動 かし、輸出に1
期目から有意にプラスの影響を与えている。さらに、輸出ショックは2
期 目に訪日外客数に有意にプラスの影響を与えていることがわかる。為替レート 訪日外客数 輸出 為替レート 2.889 (3) 2.338 (3) 訪日外客数 10.410 (3) ** 8.900 (3)**
輸出 9.091 (3) ** 0.639 (3)
※表内の数値はカイ2乗値、()内の数字は自由度を示す。
説明変数 表4.3変量VARのグレンジャーの因果性(全データ)
※数値は小数第3位までとした。
※*は10%有意、**は5%有意、***は1%有意で棄却を示す。
被説明変 数
8
④累積的インパルス反応関数
グラフ
8
に累積的インパルス反応関数の結果を示す(40 期まで)。累積で見ると、為替レ ートの円安ショックは訪日外客数に、20 期程までに、有意にプラスの影響を与え続けてい る。訪日外客数ショックは輸出に3
期まで有意にプラスの影響を与えている。輸出ショッ クは2
期まで、訪日外客数に有意にプラスの影響を与えている。-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DEXPORTS
-10 -5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-10 -5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DFORE
-10 -5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DEXPORTS
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORTS to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORTS to DFORE
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORTS to DEXPORTS Response to Cholesky One S.D. Innovations ± 2 S.E.
-5 0 5 10 15
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumul ated Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-5 0 5 10 15
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-5 0 5 10 15
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumul ated Response of DYEN_DOLLAR to DEXPORTS
-4 0 4 8 12 16
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-4 0 4 8 12 16
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumul ated Response of DFORE to DFORE
-4 0 4 8 12 16
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DFORE to DEXPORT S
-4 -2 0 2 4 6 8
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumul ated Response of DEXPORT S to DYEN_DOLLAR
-4 -2 0 2 4 6 8
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DEXPORTS to DFORE
-4 -2 0 2 4 6 8
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DEXPORTS to DEXPORT S Accumulated Response to Cholesky One S.D. Innov ations ± 2 S.E.
グラフ
7.3
変量インパルス反応関数(10期まで)為替レートショック 訪日外客数ショック 輸出ショック
為替 レー ト
訪日 外客 数
輸出
グラフ
8.3
変量累積的インパルス反応関数(40期まで)為替レートショック 訪日外客数ショック 輸出ショック
為替 レー ト
訪日 外客 数
輸出
9
7.4
変量VAR
モデル(為替レート・訪日外客数・輸出・GDP)の分析①VARモデルの推定
さらに、実質
GDP
の変数を加え、為替レート・訪日外客数・輸出・GDP
の4
変量でVAR
モデルを分析した。ラグ次数は1
とした(ラグ次数1
の時、AIC = 21.756で最小)。VAR
推計結果は以下のようになった(小数第3
位までで四捨五入)。(
∆𝐸 𝑡
∆𝐹 𝑡
∆𝑋 𝑡
∆𝑌 𝑡 )
̂
= (
0.221 −0.019 −0.320 0.923 0.634 −0.222 −0.341 5.484 0.106 −0.022 0.051 1.472 0.009 1.06𝐸 − 05 0.005 0.146
) (
∆𝐸 𝑡−1
∆𝐹 𝑡−1
∆𝑋 𝑡−1
∆𝑌 𝑡−1
)
,𝑅̅ 2 =(
0.069 0.194 0.076
−0.037 )
𝐸:為替レート, 𝐹:訪日外客数, 𝑋:輸出, 𝑌:実質 GDP, 𝑅̅ 2
:自由度修正済み決定係数2・3
変量の時と同様、自由度修正済み決定係数の値が非常に低くなっているが、VARモデ ルでは決定係数は、低く出ることが多いため、よしとした。②グレンジャー因果性の検定 グレンジャーの因果性の 検定を行うと(表
5)、為替レ
ートから訪日外客数に対す る因果性、実質GDP
から訪 日外客数に対する因果性は、1%の有意性があった。また、
輸出から為替レート、実質
GDP
から輸出に対する因果性は5%の有意性があった。
③インパルス反応関数(自由度修正済みコレスキー分解による)
10
期までのインパルス反応関数の動きを見た。グラフ9
を見ると、為替レートショック から訪日外客数、輸出ショックから訪日外客数、実質GDP
ショックから訪日外客数、実質GDP
ショックから輸出に2
期目に有意に正の影響を与えていることがわかる(3期目には落 ち着いている)。また、訪日外客数ショックから輸出、輸出ショックから実質GDP
は1
期 目から有意にプラスの影響を与えている。為替レート 訪日外客数 輸出 実質GDP
為替レート 0.192 (1) 4.416 (1) ** 2.094 (1) 訪日外客数 7.502 (1) *** 0.931 (1) 13.719 (1) ***
輸出 1.210 (1) 0.275 (1) 5.747 (1) **
実質GDP 0.165 (1) 1.14E-06 (1) 0.0238 (1)
※表内の数値はカイ2乗値、()内の数字は自由度を示す。
※*は10%有意、**は5%有意、***は1%有意で棄却を示す。
※数値は小数第3位までとした。
説明変数
被説明変 数
表5.4変量VARのグレンジャーの因果性(全データ)
10
④累積的インパルス反応関数
40
期までの累積反応を見ると、グラフ10
のようになる。為替レートショックから訪日外 客数に2
期目以降、訪日外客数ショックから輸出、輸出ショックから訪日外客数、実質GDP
ショックから訪日外客数、実質GDP
ショックから輸出に常に有意にプラスの影響が続いて いる。-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DEXPORTS
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DGDP
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DFORE
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DEXPORT S
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DGDP
-1 0 1 2 3 4 5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORT S to DYEN_DOLLAR
-1 0 1 2 3 4 5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORT S to DFORE
-1 0 1 2 3 4 5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORT S to DEXPORT S
-1 0 1 2 3 4 5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORT S to DGDP
-0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DGDP to DYEN_DOLLAR
-0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DGDP to DFORE
-0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DGDP to DEXPORT S
-0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DGDP to DGDP Response to Cholesky One S.D. Innov ations ± 2 S.E.
-4 -2 0 2 4 6 8
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-4 -2 0 2 4 6 8
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-4 -2 0 2 4 6 8
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DYEN_DOLLAR to DEXPORTS
-4 -2 0 2 4 6 8
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DYEN_DOLLAR to DGDP
-4 0 4 8 12 16
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-4 0 4 8 12 16
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DFORE to DFORE
-4 0 4 8 12 16
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DFORE to DEXPORTS
-4 0 4 8 12 16
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DFORE to DGDP
-2 0 2 4 6 8
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DEXPORTS to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6 8
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DEXPORTS to DFORE
-2 0 2 4 6 8
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DEXPORTS to DEXPORTS
-2 0 2 4 6 8
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DEXPORTS to DGDP
-0.4 0.0 0.4 0.8 1.2 1.6
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DGDP to DYEN_DOLLAR
-0.4 0.0 0.4 0.8 1.2 1.6
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DGDP to DFORE
-0.4 0.0 0.4 0.8 1.2 1.6
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DGDP to DEXPORTS
-0.4 0.0 0.4 0.8 1.2 1.6
5 10 15 20 25 30 35 40
Accumulated Response of DGDP to DGDP Accumul ated Response to Cholesky One S.D. Innovati ons ± 2 S.E.
グラフ
9.4
変量インパルス反応関数(10期まで)為替レートショック 訪日外客数ショック 輸出ショック 実質
GDP
ショック 為替レー ト
訪日 外客 数
輸出
実質 GD P
グラフ
10.4
変量累積的インパルス反応関数(40期まで)為替レートショック 訪日外客数ショック 輸出ショック 実質
GDP
ショック 為替レー ト
訪日 外客 数
輸 出
実質 GD P
11
Ⅴ.アベノミクス前までのデータとの比較分析
1.分析概要
近年のアベノミクス効果に伴う、急速な円安と訪日外客数の増加の動きを考慮すると、
アベノミクス前後で、為替レート円安ショックの実体経済に与える影響が変化しているこ とが考えられる。そこで、アベノミクス前まで(1991 年第
1
四半期~2012 年第3
四半期) のデータを用いて、同様の分析を行い、これまでの分析(1991年第1
四半期~2015年第2
四半期)結果と比較した。2.2
変量VAR(為替レート・訪日外客数)インパルス反応関数の比較
グラフ
12
はアベノミクス前まで(1991年Ⅰ~2012年Ⅲ)のインパルス反応関数(10期ま で)の結果である。全データ(1991年Ⅰ~2015年Ⅱ)による分析(グラフ11)と、インパルス反
応の関数の数値の最大値を比較した。為替レートショックの訪日外客数に与える効果、訪 日外客数ショックの為替レートに与える効果の最大値を比較すると、アベノミクス後を含 む全体データの方が大きくなっている(グラフ11、12
参照)。3.3
変量VAR(為替レート・訪日外客数・輸出)インパルス反応の比較
グラフ
14
はアベノミクス前までの期間のインパルス反応の結果(10期)である。グラフ13
のアベノミクス後を含んだ(全体データ)の結果と、関数の値の最大値を比較した(グラフ13、
14
参照)。全体データはラグ3、アベノミクス前データはラグ 1
で分析したため、差が大き いが、為替レートショックの訪日外客数、輸出に与える影響、輸出ショックの訪日外客数 に与える影響が、最大値を比べるとアベノミクス後を含んだ全体データの方が大きい。一 方、訪日外客数ショックが輸出に与える影響は、アベノミクス後を含んだ全体データの方-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DFORE Response to Cholesky One S.D. Innovations ± 2 S.E.
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-10 -5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-10 -5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DFORE Response to Cholesky One S.D. Innovations ± 2 S.E.
グラフ
11.2
変量インパルス(10期まで) 全体(1991年Ⅰ~2015年Ⅱ)※比較のため再掲 為替レートショック 訪日外客数ショックグラフ
12.2
変量インパルス(10期まで) アベノミクス前(1991年Ⅰ~2012年Ⅲ) 為替レートショック 訪日外客数ショック為替 レー ト
訪 日外 客数
為 替レ ート
訪日 外客 数
0.657(4
期)2.367(2
期)3.186(2
期)0.451(4
期)※数値は小数第
3
位までで四捨五入(以下同様)12
が低くなっている。-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DEXPORTS
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DFORE
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DEXPORTS
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORTS to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORTS to DFORE
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORTS to DEXPORTS Response to Cholesky One S.D. Innovations ± 2 S.E.
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DEXPORTS
-10 -5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-10 -5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DFORE
-10 -5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DEXPORTS
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORTS to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORTS to DFORE
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORTS to DEXPORTS Response to Cholesky One S.D. Innovations ± 2 S.E.
グラフ
13.3
変量インパルス反応関数(10期まで) 全体(1991年Ⅰ~2015年Ⅱ)※比較のため再掲為替レートショック 訪日外客数ショック 輸出ショック
為 替レ ート
訪日 外客 数
輸出
グラフ
14.3
変量インパルス反応関数(10期まで) アベノミクス前(1991年Ⅰ~2012年Ⅲ)為替レートショック 訪日外客数ショック 輸出ショック
為 替レ ート
訪日 外客 数
輸 出
3.275(2
期)3.396(2
期)0.937(2
期)1.676(1
期)2.555(2
期)2.121(2
期)0.633(2
期)1.892(1
期)13
4.4
変量VAR(為替レート・訪日外客数・輸出・実質 GDP)インパルス反応の比較
グラフ
16
は、アベノミクス前までの期間のインパルス反応の結果(10期)である。アベノ ミクス後を含んだデータ(全体データ)の結果(グラフ15)と比較した(グラフ 15、16
参照)。 為替レートショックの訪日外客数に、輸出ショックが訪日外客数に与える影響は、最大値 の数値を見ると、アベノミクス後を含んだ全体データの方が大きい。一方で、訪日外客数 ショックが輸出に、輸出ショックが実質GDP
に、実質GDP
ショックが為替レート、訪日 外客数、輸出に与える影響は、アベノミクス後を含んだ全体データの方が小さくなってい る。-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DEXPORTS
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DGDP
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DFORE
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DEXPORT S
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DGDP
-1 0 1 2 3 4 5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORT S to DYEN_DOLLAR
-1 0 1 2 3 4 5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORT S to DFORE
-1 0 1 2 3 4 5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORT S to DEXPORT S
-1 0 1 2 3 4 5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORT S to DGDP
-0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DGDP to DYEN_DOLLAR
-0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DGDP to DFORE
-0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DGDP to DEXPORT S
-0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DGDP to DGDP Response to Cholesky One S.D. Innov ations ± 2 S.E.
グラフ
15.4
変量インパルス反応関数(10期まで) 全体(1991年Ⅰ~2015年Ⅱ)※比較のため再掲為替レートショック 訪日外客数ショック 輸出ショック 実質
GDP
ショック為 替レ ート
訪日 外客 数
輸出
実質 GD P
3.275(2
期)2.382(2
期)0.680(2
期)4.040(2
期)1.084(2
期)0.215(1
期)0.694(1
期)14
5.2
変量VAR(為替レート・訪日外客数)グレンジャー因果性の検定の比較
表
6
はアベノミクス前までの期 間(1991年Ⅰ~2012年Ⅲ)のデータ で行ったグレンジャー因果性の検 定の結果である。表3
のアベノミク ス後を含んだ全体データ(1991 年~2015年Ⅱ)の結果と比較した。
表
6
を見ると、アベノミクス前までの期間では、為替レートから訪日外客数への因果性 は有意ではないことがわかる。全体データでは5%有意で因果性が存在したので、アベノミ
クス後に為替レートから訪日外客数への因果性が出現したといえる。6.3
変量VAR(為替レート・訪日外客数・輸出)グレンジャー因果性の検定の比較
表
7
はアベノミクス前までの期間のデータで分析した、グレンジャー因果性の検定の結 果である。表4
のアベノミクス後を含んだ全体データの結果と比較した。-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DYEN_DOLLAR
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DFORE
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DEXPORTS
-2 0 2 4 6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DYEN_DOLLAR to DGDP
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DYEN_DOLLAR
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DFORE
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DEXPORT S
-5 0 5 10 15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DFORE to DGDP
-1 0 1 2 3 4 5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORT S to DYEN_DOLLAR
-1 0 1 2 3 4 5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORT S to DFORE
-1 0 1 2 3 4 5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORT S to DEXPORT S
-1 0 1 2 3 4 5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DEXPORT S to DGDP
-0.4 0.0 0.4 0.8 1.2
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DGDP to DYEN_DOLLAR
-0.4 0.0 0.4 0.8 1.2
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DGDP to DFORE
-0.4 0.0 0.4 0.8 1.2
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DGDP to DEXPORT S
-0.4 0.0 0.4 0.8 1.2
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Response of DGDP to DGDP Response to Cholesky One S.D. Innov ations ± 2 S.E.
為替 レー ト
訪日 外客 数
輸出
実質 GD P
2.555(2
期)2.320(2
期)0.750(2
期)4.427(2
期)1.361(2
期)0.398(1
期)0.717(1
期) グラフ16.4
変量インパルス反応関数(10期まで)アベノミクス前(1991年Ⅰ~2012年Ⅲ)
為替レートショック 訪日外客数ショック 輸出ショック 実質
GDP
ショック為替レート 訪日外客数 為替レート 0.938 (3) 訪日外客数 4.031 (3)
※表内の数値はカイ2乗値、()内の数字は自由度を示す。
表6.2変量VARのグレンジャーの因果性(アベノミクス前)
※数値は小数第3位までとした。
説明変数 被説明変
数
※*は10%有意、**は5%有意、***は1%有意で棄却を示す。
15
表
7
を見ると、アベノミクス後を含んだ全体データの結果と比べて、為替レートから訪 日外客数、輸出から訪日外客数の因果性の有意性が低くなっている(5%
(全体)、 10%(アベノミクス前))。アベ
ノミクス後を含んだ全体データでは 為替レートから輸出の因果性は
5%
有意であったが、アベノミクス前ま でのデータでは、因果性は有意ではない。
したがって、アベノミクス後に、為替レートから訪日外客数、輸出から訪日外客数への 因果性の有意性が上昇し、為替レートから輸出への因果性の有意性が出現したといえる。
7. 4
変量VAR(為替レート・訪日外客数・輸出・実質 GDP)グレンジャー因果性の検定の比
較
表
8
はアベノミクス前ま でのデータで分析した、グ レンジャー因果性の検定の 結果である。表5
のアベノ ミクス後を含んだ全体デー タの結果と比較した。表
8
を見ると、アベノミクス前は、為替レートから訪日外客数への因果性は
5%有意、実質 GDP
から輸出への因果性は
1%有意である。表 5
の全体データでは、為替レートから訪日外客数への因果性は1%
有意、実質
GDP
から輸出への因果性は5%有意であった。
したがって、アベノミクス後に、為替レートから訪日外客数に対する因果性の有意性が 強まっていることがわかる。一方で、実質
GDP
から輸出への因果性はアベノミクス後に弱 まっているといえる。Ⅵ.考察
1.結果の考察
①全体データ(1991Ⅰ~2015年Ⅱ)の分析
まず、グレンジャーの因果性の結果(全体データ)を見ると、2・3・4変量のすべてのモデ ルにおいて、為替レートの訪日外客数に対する強い因果性が示されていた。また、
4
変量モ デルでは、実質GDP
の訪日外客数、輸出に対する因果性も強かった。一方で、その他の有 意な因果性は3
変量・4変量で一貫していなかった。次に、インパルス反応関数(全体データ)を見ると、2・3・4変量のすべてのモデルにおい
為替レート 訪日外客数 輸出 為替レート 0.265 (1) 1.924 (1) 訪日外客数 3.216 (1) * 2.920 (1) * 輸出 0.949 (1) 0.075 (1)
※表内の数値はカイ2乗値、()内の数字は自由度を示す。
被説明変 数
※*は10%有意、**は5%有意、***は1%有意で棄却を示す。
※数値は小数第3位までとした。
表7.3変量VARのグレンジャーの因果性(アベノミクス前)
説明変数
為替レート 訪日外客数 輸出 実質GDP
為替レート 0.280 (1) 4.312 (1) ** 2.378 (1) 訪日外客数 3.868 (1) ** 1.709 (1) 14.637 (1) ***
輸出 1.072 (1) 0.091 (1) 7.825 (1) ***
実質GDP 0.000 (1) 0.027 (1) 0.039 (1)
※表内の数値はカイ2乗値、()内の数字は自由度を示す。
※*は10%有意、**は5%有意、***は1%有意で棄却を示す。
※数値は小数第3位までとした。
被説明変 数
表8.4変量VARのグレンジャーの因果性(アベノミクス前)
説明変数
16
て、為替レート円安ショックの訪日外客数に対する影響が強く出ていた。また、3・4変量 の累積インパルス反応関数に注目すると、為替レートショックから訪日外客数、訪日外客 数ショックから輸出、輸出ショックから実質
GDP
に与える影響がそれぞれ正であることか ら、為替レートから訪日外客数、訪日外客数から輸出、輸出から実質GDP
につながる流れ が確認できた。このことから、円安化によって訪日外客数が増え、輸出が増加し、実質GDP
が伸びるという波及経路の存在が示唆されたといえる。②比較分析
インパルス反応関数をアベノミクス前に期間を制限した分析と比較すると、
2・3
・4変量 モデル共に、為替レートショックが訪日外客数に与える影響は、アベノミクス後を含んだ 全体データの方が大きかった。一方で3・4
変量において、訪日外客数ショックから輸出、輸出ショックから実質
GDP
に与える影響は、アベノミクス後を含んだ全体データの方が小 さかった。グレンジャー因果性をアベノミクス前と比較すると、2・3・4変量共に、為替レートから 訪日外客数への因果性の有意性は、アベノミクス後を含めた全体データで強まっていた。
以上のことから、アベノミクス以降のデータが少ない点も考慮する必要はあるが、アベ ノミクス後に、為替レートから訪日外客数への影響は強まったものの、訪日外客数から輸 出、輸出から実質
GDP
への波及経路が増幅したとはいえない結果となった。2.
政策的含意(円安政策の訪日客による波及経路を強めるためには)円安によって、訪日外客数は増加しているが、実質
GDP
の伸びにうまくつながっていな いという、前節の考察を踏まえて、政府の成長政策に関する示唆を行いたい。訪日外客数増から輸出増、実質
GDP
増加に流れを強めるためには、訪日外国人による安 定的な消費増をねらうことが大切である。日本政府は2020
年東京五輪までに訪日外国人を2000
万人にすることを目標にしているが、2015
年の訪日外客数は1973
万人で、既に突破 する勢いであった。このように激増した訪日外国人を政府としてどのように受け入れるか、すなわち、どのように「おもてなし」をするかが成長戦略の鍵となっていると思う。
私の考える「おもてなし」の例としては、まずは、免税店の拡大、WiFiの拡充、英語標 識や感覚でわかるマーク標識の設置、観光ガイドやコンシェルジュサービスの充実等が挙 げられる。ハラルフード等様々な文化に対応した食を提供することも必要だ。これに加え、
私は日本の伝統文化をわかりやすく発信することも肝要であると思う。訪日外客数の増加 が一過性のものにならず、外国人観光客にリピーターとして安定的に日本に訪れてもらう ためには、魅力的な「文化」の存在と紹介が不可欠であると思うからである。具体的には、
積極的な情報提供(英語やイラストによる説明)や、体験講座(紙すき体験、陶芸体験等)など が挙げられるだろう。陶芸などの製作体験をした場合は、作品を焼き上げるのに時間がか かるため、完成作品を海外に送付するサービス等もあると良いだろう。しかしながら、こ
17
うしたサービスを民間や家内経営の業者が行うにはかなりの費用がかかるため、政府とし て何らかの支援措置(補助金等)を講じる必要がある。
もちろん現在の訪日外国人の増加は円安だけで起きたわけでなく、東南アジア諸国から の旅行客向けビザの発給要件緩和や、消費税の外国人に対する免税措置の拡大等、規制緩 和政策も大いに寄与している。しかしながら、分析結果を見る限り、円安が訪日外国人増 加に非常に強く寄与していることは否定できないだろう。いずれにしても訪日外客数増加 の効果を
GDP
成長につなげるための「おもてなし」の重要性は変わらない。したがって、前述のような「おもてなし」によって、円安のメリットを最大限に活用し た「観光立国」を目指すことが、今後の日本の成長に求められるのではないか。
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