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経済と世界経済に与える影響

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(1)

経済と世界経済に与える影響

著者 岩間 剛一

雑誌名 和光経済

巻 46

号 3

ページ 11‑22

発行年 2014‑03

URL http://id.nii.ac.jp/1073/00003099/

(2)

1. 日本の貿易赤字問題の根本的な要因には 常にエネルギー問題がある

筆者がエネルギーの研究を始めて,2013 年で ちょうど 25 年になる。まさに四半世紀に相当す る。日本はエネルギー自給率が 4%(原子力を除 く)という稀に見る資源エネルギー小国であるに もかかわらず

1)

,恒常的に貿易収支は黒字であっ た。21 世紀の現時点においても日本のモノづく りの国際競争力は依然として健在である。ところ が,日本は 2011 年に 31 年ぶりの 1 兆 6,165 億円 という貿易赤字に転落し,2012 年の貿易赤字は 5 兆 8,141 億円と過去最大を記録した。2012 年の経 常収支も 4 兆 8,237 億円の黒字と 1985 年以降に おける最小の黒字額にとどまった(図表 1)。

2013 年の貿易赤字も史上最高の 10 兆円を超える 見通しである。その 1 つの要因は,福島第一原子 力発電所事故により,日本の原子力発電所は大飯 原子力発電所の 3 号機と 4 号機しか稼働しておら

シェール・ガス革命,シェール・オイル革命が 日本経済と世界経済に与える影響

The Great Impact of Shale Gas and Shale Oil Development Revolution on Japan and the World Economy

岩 間 剛 一

Koichi Iwama  

【Abstract】

 The shale gas revolution caused in the United States is changing the world situation of natural resources. So far it has seemed to be impossible to produce shale gas and shale oil at the reasonable cost from the traditional view of petroleum engineering. However, the middle sized and challenging oil companies in the United State have succeeded in producing shale gas at the low cost by using conventional horizontal well and fracturing. The shale gas revolution has the great possibility of changing the world power balance and the rebirth of the economy of the United States and Japan including the petrochemical.

【キーワード】

シェール(頁岩),水平掘削,水圧破砕,国際資源地図,石油化学

図表 1 日本の貿易収支推移(単位:億円)

(出所)財務省国際収支統計。

84,013 115,503119,768

139,022 103,348

94,643 123,223

40,278 40,381 79,789

−16,165

−58,141 100,000

50,000 0 50,000 100,000 150,000

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012(年)

(3)

2)

,残りの 52 基は停止したままであるために,

LNG(液化天然ガス)火力発電の増強を行い,

LNG 輸入量が増加したうえに,米国の天然ガス 価格がシェール・ガス革命により 2013 年 8 月 1 日時点で再び下落し,百万 Btu(ブリティッシュ 熱量単位)当たり 3.387 ドルであるのに対して,

日本の 2013 年 2 月時点における LNG 購入価格が,

スポット物で百万 Btu 当たり 19.5 ドルと,米国 と比較して 6 倍も高値で購入しているからである。

日本の LNG 輸入量は,2012 年に 8,731 万トンと 過去最高に達し(図表 2),輸入金額が 6 兆円と 膨張して,貿易赤字の大きな要因となっている。

日本において貿易赤字が発生した 31 年前の 1980 年は第 2 次石油ショックによって原油価格が 1 バ レル 36 ドルと,1973 年の第 1 次石油ショック前 と比較して 12 倍も高騰した時であり,日本の貿 易赤字は常にエネルギー問題と密接に結びついて いる。

日本における LNG の輸入額は,東日本大震災 以前の 3 兆円から 6 兆円に増加しており,3 兆円 に達する国富流出につながっている。しかし,利 子・配当を合わせた貿易外収支が 10 兆円程度の 黒字であることから,経常収支は黒字を維持して いる。そのため,日本国債を新規発行しても,日 本国内の個人金融資産は 2013 年 3 月末時点にお いて 1,570 兆円に達し

3)

,海外からファイナンス する必要がなく,海外の投機資金に金融市場が振 り回されることがない。また,米国における シェール・ガス革命,シェール・オイル革命に よって,米国にとって最大の輸入品目である石

油・天然ガスの輸入量が減少し,結果として米国 の経常収支赤字が改善傾向にあり,それがドル 高・円安をもたらし,輸出主導型の経済構造であ る日本の景気回復の要因となっている面もある。

2. 天然ガス生産,原油生産の増加に沸く 米国経済       

米国はシェール・ガス革命,シェール・オイル 革命によって,国内の天然ガス生産量,原油生産 量が急速に増加しており,IEA(国際エネルギー 機関)の見通しによれば,天然ガス生産量は 2015 年にロシアを抜き,原油生産量は 2017 年に サウジアラビアを抜くと予測されている

4)

。実際

図表 2 日本の LNG 輸入量(単位:万トン)

(出所)財務省貿易統計。

5,515 5,3885,913 5,697 5,8016,2076,682 6,926 6,4497,001

7,853 8,731

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012(年)

図表 3 国別天然ガス生産量,2012 年    (単位:10 億立方メートル)

(出所)BP統計 2013 年 6 月。

米国 世界総生産量 3兆3,639億立方メートル

681.4

ロシア592.3

カナダ156.5 イラン160.5 カタール157.0

 107.2中国 ノルウェー

  114.9 その他1,394.1

図表 4 米国の原油生産量(単位:千 b/d)

(出所)BP統計 2013 年 6 月。

6,000 6,500 7,000 7,500 8,000 8,500 9,000 9,500

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012(年)

(4)

には,BP 統計では,2009 年に米国はロシアを抜 いて,世界最大の天然ガス生産国となっている

(図表 3)。加えて,米国国内においては,ノース ダコタ州のバッケン・シェール・オイル油田,テ キサス州のイーグルフォード・シェール・オイル 油田における原油生産量が増加し,「米国国内に おける原油生産量は 1970 年をピークに減退の一 途を辿り,原油価格は天文学的に高騰する」とい うオイル・ピーク論は,事実の前に完全に覆され ている(図表 4)。

米国における豊富な天然ガス生産と原油生産は,

資源エネルギー価格の低下を通じて,米国産業の 再生と貿易赤字の改善をもたらし,さらに米国の 消費者は,エネルギー・コストの低減という大き な恩恵を受ける状況となっている。米国において は,天然ガス生産量の 3 割以上をシェール・ガス が占めており,2013 年には天然ガスの自給をほ ぼ達成している。

3. 今後の自民党によるエネルギー政策

自民党は,民主党政権時代に策定されたエネル ギー基本計画と革新的エネルギー・環境戦略を完 全に見直すとしている。2012 年に民主党政権の もとで策定された革新的エネルギー・環境戦略は,

2030 年代に原子力発電所稼働がゼロとなると明 記されている(図表 5)。しかし,資源エネル ギー小国日本にとって,原子力という重要な選択

肢を完全に廃止することは得策とはいえない。

LNG の購入価格 1 つをとってみても,原子力発 電所が稼働しているかどうかは重要である。日本 では,2012 年夏に関西電力が大飯原子力発電所 の 3 号機と 4 号機を稼働させることによって,

LNG の購入価格は百万 Btu(ブリティッシュ熱 量単位)当たり 13.5 ドルまで低下した

5)

。逆に,

2013 年 1 月に入り,日本,韓国をはじめとした 北半球が厳冬に襲われ,韓国の原子力発電所がト ラブルを起こしたために,韓国の LNG 輸入が増 加し,2013 年 2 月時点の LNG 購入価格は百万 Btu 当たり 19 ドルを超え,カタールが提示する 価格は百万 Btu 当たり 20 ドルと過去最高の水準 に達している。その意味で,LNG を安価に購入 する交渉材料として,日本および韓国における原 子力発電所の稼働は必要である。

その点,自民党のエネルギー政策は,現実的で ある。原子力発電所の再稼働に関しては,安全性 について順次判断し,3 年以内に結論を出すとし て,原子力発電所の再稼働と原子力発電所の新増 設に前向きである(図表 6)。

2014 年 1 月にも,原子力発電所の再稼働に前 向きな自民党政権における新たなエネルギー基本 計画が策定される見込みである。今後の日本のエ ネルギー政策を考えていくうえで,まず一次エネ ルギーにおける原子力発電の位置づけが決まらな いと,石油・天然ガスという重要な化石燃料の位 置づけも決まらない。原子力発電が一定の基幹的 なエネルギーとなって,初めて石油,天然ガス,

図表 5 民主党による革新的エネルギー・環境戦略 エネルギーの安定

供給 火力発電に一定量依存

火力発電の環境評価を 3 年から 1 年に短 縮

原子力発電に依存 しない社会

2030 年代に原発稼働ゼロが可能となる 政策

原子力規制委員会の安全確認を得たもの だけ再稼働

原発の 40 年運転制限を厳守 原子力発電所の新設・増設はしない 核燃サイクルは続ける

地球温暖化対策 2020 年時点で温室効果ガス排出量は 1990 年比 5 ~ 9%削減

(出所)各種新聞報道。

図表 6 自民党のエネルギー政策 原子力発電 原発の再稼働に関しては,順次判断し,

3 年以内に結論を目指す 再生可能エネ

ルギー

当面は,3 年間再生可能エネルギーの最 大限の導入,省エネの推進

中長期エネル ギー政策

遅くとも 10 年以内には,持続可能な電 源構成のベスト・ミックス

資源開発 従来の化石燃料に加えて,メタン・ハイ ドレート,レアアースの開発 環境技術 世界有数の日本の環境技術により炭酸ガ

ス排出削減

(出所)自民党重点政策 2012。

(5)

LP ガスという優れたエネルギーの価値が強まる。

そうした意味で,エネルギー業界に対して現実的 な政策を行える自民党政権の追い風に大きな期待 を持つことができる。

4. 米国におけるシェール・ガス革命,

シェール・オイル革命の拡大   

筆者が,シェール・ガス革命の研究を始めて 5 年が経過する。現在,米国を震源地とするシェー ル・ガス革命,シェール・オイル革命が一段と拡 大している。シェール・ガスとはシェール(頁 岩:けつがん)と呼ばれる泥などが硬く固まった 岩盤の中に含まれているメタン(CH

4

)であり,

その存在は 50 年以上前から知られていたものの,

生産コストが百万 Btu 当たり 200 ドルを超える と考えられ,エクソンモービルのような世界最優 良のメジャー(国際石油資本)でさえ,経済的に 無理であると開発を最初から放棄していた。しか し,チャサピークをはじめとした米国の中堅石油 企業は,天然ガス価格が 21 世紀初頭に,百万 Btu 当たり 10 ~ 15 ドルと高値で推移していたこ とから,通常の油田・ガス田において用いられて い た 水 平 掘 削(Horizontal Well), 水 圧 破 砕

(Fracturing),マイクロ・センシング等の技術を 精緻に組み合わせ,シェール・ガスの生産ノウハ ウの蓄積に努力した。その結果として,シェー ル・ガスの生産コストは劇的に低下し,2010 年 には百万 Btu 当たり 4 ドル,2013 年時点におい て,平均的なシェール・ガスの生産コストは百万 Btu 当たり 3 ~ 4 ドル,一番好条件のスイート・

スポットにおいては,百万 Btu 当たり 1.5 ドル程 度と極めて生産コストの安いシェール・ガスの生 産に成功している。こうした思いがけない米国テ キサス州を中心としたシェール・ガス開発の成功 は,米国の天然ガス生産量の増加につながってお り,前述のように米国は 2009 年にロシアを抜い て世界最大の天然ガス生産国となり,米国国内の エネルギー需給の緩和を促し,米国国内の天然ガ ス価格は,ヘンリー・ハブ渡しが 2012 年 4 月に は百万 Btu 当たり 1.8 ドル(石油換算 1 バレル

10.8 ドル)と 21 世紀に入って最低を記録した。

米国における天然ガス価格が,あまりに下落した ことから,天然ガス火力発電の割合が増加し,米 国における天然ガス消費量が増加している 2013 年 6 月時点においても,米国の天然ガス価格は 百万 Btu 当たり 3.5 ドルと低値で推移している。

米国の天然ガス価格の下落は,冷暖房に天然ガス を利用する米国家庭,産業用ボイラーの燃料価格 低下を通じて,米国企業と消費者にエネルギー・

コスト低下をもたらし,米国経済再生の牽引車と して 2012 年 11 月に行われた米国大統領選挙にお いても,大きな政策論争のテーマとなった

6)

5. 世界最大の天然ガス生産国となった米国

チェサピークをはじめとした米国の中堅石油企 業によるシェール・ガス開発の動きが一段と進ん でいる。もともとは,21 世紀初頭に米国におけ る天然ガス価格が百万 Btu 当たり 15 ドル程度の 高値で推移していたことから,石油換算で 1 バレ ル 90 ドルと高値に相当することから,天然ガス 生産によって利益を挙げられる可能性もあるとい う一種の試行錯誤の中で,シェール・ガス開発を 始めた。ところが,メジャーのみならず,米国エ ネルギー省さえ予想できなかったほど,米国の天 然ガス生産量が増加し,今では米国は世界最大の 天然ガス生産国となっている(図表 7)。

シェール・ガスについては,前述のとおり,も ともと泥岩等が硬く固まった岩盤である頁岩(け つがん)の中に含まれる天然ガスの主成分である

図表 7 米国の天然ガス生産量(単位:10 億 立方メートル)      

(出所)BP統計 2013 年 6 月。

500.0 520.0 540.0 560.0 580.0 600.0 620.0 640.0 660.0 680.0 700.0

1997 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12(年)

(6)

メタンであり,頁岩の水の浸透率が,通常のガス 田の地層における天然ガスの貯留岩での水の浸透 率と比較して 1 万分の 1 程度と極めて硬い岩盤構 造であることから,井戸を掘削しても,天然ガス が自噴することはなく,経済性はないとエクソン モービルをはじめとしたメジャーも考えていた。

しかし,チェサピークをはじめとした中堅石油企 業は,第 1 に 21 世紀初頭に米国における天然ガ ス価格が高値で推移していたこと。第 2 にメ ジャーのような外交交渉力,巨額の資本を持って いないために,海外の巨大な LNG プロジェクト,

メキシコ湾深海部油田のような大型プロジェクト を手掛けることができず,米国国内に豊富に存在 する油田・ガス田の開発に地道に注力せざるを得 なかったこと。等を要因として,21 世紀初頭か らシェール・ガス開発を本格的に開始し,その結 果として米国国内の天然ガス生産量は,2005 年 を底として急速に増加している。米国国内の天然 ガス生産量は 1970 年代をピークに減退の一途を 辿るという悲観的な資源枯渇論は,天然ガス生産 量の急速な増加という事実の前に完全に覆されて いる。

6. 資源量の膨大なシェール・ガスと シェール・オイル       

米国におけるシェール・ガス革命が,広く日本 において知られるようになったのは 2010 年以降 のことであり,新聞等で新型ガスとして大きく扱 われるようになったのは,2012 年に入ってから である。その意味では,もともと国内に天然ガス 資源がほとんどない日本の人々にとって,シェー ル・ガス革命がもたらす大きな意味が理解できな いかもしれない。世界最優良の石油企業であるエ クソンモービルのティラーソン CEO(最高経営 責任者)も,「私たちは,シェール・ガスの可能 性を完全に見誤っていた。」と正直に発言してい る。それほど,米国国内のエネルギー情勢に大き な影響を与えている。シェール・ガスの革新的な ことは,その資源量である。従来の天然ガスは背 斜構造というラクダのこぶのような地質構造に存

在する炭化水素であると考えられていた。その意 味では,限定された地層である。ところが,

シ ェ ー ル・ ガ ス は 頁 岩 と い う 岩 盤 構 造

(Formation)に含まれており,石油・天然ガス 生成の根源岩に存在する構造であることから,在 来型天然ガス資源と比較して資源量が桁外れに大 きい(図表 8)。

シェール・ガスは,在来型天然ガスの埋蔵量と 比べて 5 ~ 6 倍もの資源量を持っている。しかも,

在来型の石油・天然ガスのように,中東諸国をは じめとした一部の国に集中しておらず,世界中に あまねく,大量に存在している。2013 年 6 月に は米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が,

地質構造がある程度把握できる限定された 41 ヵ 国を対象に,最新のシェール・ガス,シェール・

オイルの資源量を発表している(図表 9)(図表 10)

7)

図表 8 非在来型天然ガスの資源量   (単位:兆立方フィート)

コール・ベッ ド・メタン

シ ェ ー ル・

ガス

タイト・サン ド・ガス 小計 北米 3,017 3,840 1,371 8,228 中南米 39 2,116 1,293 3,448 西欧 157 509 353 1,019

東欧 118 39 78 235

ロシア 3,957 627 901 5,485 中東 0 2,547 823 3,370 アフリカ 39 274 784 1,097 中国 1,215 3,526 353 5,094 その他 509 2,625 1,450 4,584 世界合計 9,051 16,103 7,406 32,560

(出所)米国地質調査所(USGS)統計。

(7)

7. 天然ガス価格の下落はシェール・オイル 開発へと拡大       中国,米国をはじめとしたエネルギー消費大国 に大量のシェール・ガスの存在が推定されており,

米国エネルギー省では,「今後 250 ~ 400 年にわ たって米国は天然ガスを安心して利用できる」と いう資源楽観論が台頭してきている。それととも に,米国における天然ガス価格は下落の一途を辿 り( 図 表 11), 現 状 の 天 然 ガ ス 価 格 で は, メ ジャーは,米国国内における天然ガス販売で,十 分な利益を上げられない状況にある。

なぜならば,シェール・ガスのもっとも好条件 のスイート・スポットにおける生産コストは,

百万 Btu 当たり 1.5 ドルであるものの,メジャー は生産コストの高い米国メキシコ湾深海部油田

8)

から生産される天然ガスも販売しており,天然ガ ス価格が百万 Btu 当たり 4 ドル以上でなければ,

利益を上げられない。米国においては,天然ガス 価格があまりに下落したために,2013 年 4 月 1 日には中堅石油企業である GMX リソーシズが経 営破綻した。こうした天然ガス価格の下落という 状況において,天然ガス価格は百万 Btu 当たり 3 ドル(石油換算 1 バレル 18 ドル)に対し,原油 価格は北海ブレント原油価格が 2013 年 8 月上旬

時点において 1 バレル 108 ドル,WTI 原油価格 が 1 バレル 107 ドルと 10 倍もの格差があること から,割安なシェール・ガスから割高なシェー ル・オイル狙いに,米国の石油企業による石油・

天然ガス開発の重点が変わってきている。2013 年においては,米国国内において掘削されている リグの 8 ~ 9 割はシェール・オイル狙いとなって いる。

8. 米国におけるシェール・ガス革命は 玉突き的に日本にも大きな影響  

シェール・オイル開発も,基本的にはシェー ル・ガス開発と同じように水平掘削(Horizontal Well),水圧破砕(Fracturing)

9)

等の技術が活用

図表 9 世界のシェール・ガス資

源量,2013 年(単位:兆 立方フィート)

国名 技術的回収可能資源量 中国 1,115 アルゼンチン 802 アルジェリア 707

米国 665

カナダ 573

メキシコ 545

豪州 437

南アフリカ 390

ロシア 285

ブラジル 245

世界合計 7,299

(出所)米国エネルギー情報局統計。

図表 10 世界のシェール・オイル 資源量,2013 年

(単位:億バレル)

国名 技術的回収可能資源量

ロシア 750

米国 580

中国 320

アルゼンチン 270

リビア 260

豪州 180

ベネズエラ 130

メキシコ 130

パキスタン 90

カナダ 90

世界合計 3,450

(出所)米国エネルギー情報局統計。

図表 11 米国の天然ガス価格推移(単位:ドル/百万 Btu,ヘンリー・ハブ渡し)   

(出所)BP統計 2013 年 6 月。

0.00 (年)

1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00

1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011

(8)

され,シェール・ガス開発で蓄積されたノウハウ が応用されている。掘削された頁岩の中に含まれ ている成分が気体であればシェール・ガス,液体 であればシェール・オイルということとなる。も ちろん,シェール・オイル狙いの掘削であっても,

石油だけが採取できるわけではなく,随伴して,

シェール・ガス,プロパン,ブタン等の気体も生 産されることから,米国における天然ガス生産量 は,結果として減少しない。米国におけるシェー ル・ガス,シェール・オイルの生産増加に伴って,

米国におけるシェール・ガスを起源とする LP ガ スの生産も増加している(図表 12)。

シェール・オイルが持つ,シェール・ガスに対 する優位性は,第 1 に常温・常圧で液体であるた めに輸送,貯蔵,取り扱いが簡単であること。第 2 に液体であることから,輸送が簡単であるため に,世界中どこでも価格の高い地域にタンカーで 運んで,より大きな利益を上げることができる国 際商品であること。そのため,シェール・オイル の生産増加は,シェール・ガスの生産増加よりも 国際価格に与える影響が大きいこと。第 3 に シェール・オイルは,在来型の原油よりもガソリ ンをはじめとした軽い石油製品の得率が高い,軽 質原油あるいはコンデンセート(粗製ガソリン)

であるために,在来型の原油よりも割高な価格で 販売することが可能であること。等が挙げられる。

そのため,米国における原油生産量は急速に増加 しており,2011 年と 2012 年に世界で一番原油生

産量を増加させた産油国は米国である。もちろん,

シェール・オイル狙いの開発を行っても,軽質原 油に随伴して天然ガスとプロパン等の LP ガスが 生産されるため,米国の天然ガス生産量の増加は 止まらず,米国の天然ガス価格は安値で推移し,

米国の指標プロパン・ガス価格(メキシコ湾沿い のモントベルビュー渡し)も 1 トン当たり 400 ド ル程度と安価な水準で推移し,米国におけるエネ ルギー需給緩和が急速に進んでいる。プロパン,

ブタンという LP ガスの価格は,これまでサウジ アラビアの国営石油企業であるサウジアラムコが CP(コントラクト・プライス)というかたちで,

LP ガスのアジア市場における需給関係を反映せ ずに一方的に通告してきた。この価格を日本の石 油精製・元売企業はこれまで受け入れてきたが,

今後は米国のメキシコ湾のモント・ベルビュー渡 しの LP ガス価格が,サウジアラビア,カタール をはじめとした LP ガス輸出国の価格形成に大き な影響を与える可能性がある。日本においても,

アストモスエネルギー,ENEOS グローブをはじ めとした LP ガス元売企業は,米国のエンタープ ライズ社と,安価なシェール・ガス起源の LP ガ スの購入契約を締結している(図表 13)。

米国における天然ガス価格の下落は,米国の発 電の 5 割を占める石炭火力発電から天然ガス火力 発電への転換をもたらし,米国のアパラチア産石 炭価格も下落した。米国に輸出されていたコロン ビア産石炭も行き場を失い,アジア大洋州に流れ

図表 12 米国における LP ガス生産量見通し

(単位:万トン)     

(出所)米国エネルギー情報局統計。

500

800

1,500

0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600

2011 2015 2030

図表 13 日本企業による米国の LP ガス購入契約

企業名 概要 相手企業

アストモスエ ネルギー

2015 年から現状の 3 倍 の年間 53 万トンを輸入

エンター・プライ ズ・プロダクト ENEOS

グローブ

2014 年 か ら 年 間 20 万 トンを輸入

エンター・プライ ズ・プロダクト 岩谷産業 2014 年 か ら 年 間 8 万

8,000 トンを輸入

エンター・プライ ズ・プロダクト 東燃ゼネラル 2010 年代半ばから合計

60 万トンを輸入

エンター・プライ ズ・プロダクト 伊藤忠商事 2014 年末から年間 100

万トン輸入

欧州ヴィートル・

グループと共同事 業

(出所)各種新聞報道。

(9)

込んで,豪州ニューカッスル港渡しの一般炭価格 が,ピーク時の 1 トン当たり 180 ドルから 2013 年秋には 1 トン当たり 80 ドルまで暴落するとい うように,米国外のアジア大洋州地域への影響も 顕在化している。日本の石炭火力発電用の一般炭 購入価格も,2011 年の 1 トン当たり 130 ドルから,

2013 年には東北電力と豪州のエクストラータと の交渉において,1 トン当たり 95 ドルに下落し ており,日本の電力企業も米国のシェール・ガス 革命の恩恵を間接的とはいえ受けているといえよ う

10)

。米国における天然ガス価格の下落は,天然 ガス火力発電のコスト競争力の強化をもたらし,

米国における天然ガス火力発電の比率が急速に増 加し,2012 年には石炭火力発電と並ぶ水準となっ ている(図表 14)。

米国の原油生産量は 2008 年を底に急速に増加 しており,米国は 1970 年に原油生産量がピーク を迎え,以後は米国の原油生産量は減退の一途を 辿って,原油価格は天文学的に高騰するという,

2008 年に米国の名門投資銀行によって喧伝され たオイル・ピーク論

11)

は,原油生産量の増加と いう事実の前に完全に覆されている。ただ,

シェール・ガス価格と比較してシェール・オイル 価格が熱量換算で見た場合に割高であるといって も,シェール・オイル開発を進めていくと,随伴 してシェール・ガスの生産が進み,結果として米 国のシェール・ガス生産量が増加するため,米国 の天然ガス価格は低位で推移することになる。

ノースダコタ州のバッケン・シェール油田の開発

においても,生産される石油・天然ガス成分のう ち 35%程度は気体分であるシェール・ガスが占 めている。もちろん,シェール・オイル油田ごと に,液体分と気体分の構成比率は異なるものの,

シェール・オイルの生産を行うと,かならず シェール・ガスも随伴するため,割高なシェー ル・オイルを狙った開発を行うと,結果として シェール・ガスの生産も増加し,米国のエネル ギー需給緩和に伴って,天然ガス価格が安価で推 移するという状況が米国において続いている。

9. 2020 年には国際資源地図を塗り替える シェール・ガス革命

こうした米国を震源地とするシェール・ガス革 命は,欧州諸国,中国にも拡大している。欧州の ポーランドではシェール・ガスの開発が進み,中 国の四川省でもシェール・ガスの試掘が始まって いる。IEA(国際エネルギー機関)は,2011 年 6 月 と 2012 年 6 月 に 天 然 ガ ス 黄 金 時 代(The Golden Age of Natural Gas)というリポートを 発表しており,世界的なシェール・ガスの開発に より,世界の天然ガス生産量は 2010 年の 3 兆 2,760 億立方メートルから 2020 年には 3 兆 9,820 億立方メートル,2035 年には 5 兆 1,120 億立方 メートルにまで拡大すると予測している(図表 15)。

米国のみならず,欧州諸国,中国における

図表 14 米国における天然ガス火力発電比率(%)

(出所)米国エネルギー情報局統計。

17 18 17 18 19 20 22 21 23 24 25

31

0 5 10 15 20 25 30 35

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012(年)

図表 15 世界の天然ガス生産量見通し

(単位:億立方メートル)

(出所)IEA(国際エネルギー機関)世界エネルギー見通し 2012年。

0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000

2010 2020 2035

その他 中東 中国 ロシア 豪州 欧州 北米

(10)

シェール・ガスの生産増は,天然ガス価格の低位 安定をもたらすとともに,在来型の天然ガスが特 定の国に集中していることに起因する地政学リス クを低減する効果をもたらす。天然ガスは,単位 熱量当たりの炭酸ガス排出量が石炭の半分程度で あり,環境の世紀と呼ばれる 21 世紀における有 力なエネルギーである。特に,福島第一原子力発 電所事故以降の原子力発電所推進政策の見直しに おいて,もっとも現実的なエネルギーは天然ガス である。しかし,在来型天然ガスは,将来の生産 ポテンシャルを示す埋蔵量の半分がロシア,イラ ン,カタールの 3 ヵ国に集中している(図表 16)。

それに対して,シェール・ガスは,世界の多く の国に存在し,今後のシェール・ガス開発の進展 に伴って,天然ガス価格が世界的に低下する可能 性が極めて大きい。現状では,天然ガスは常温・

常圧において気体であるために,北米市場と欧州 市場とアジア大洋州市場が物理的に分断されてお り,百万 Btu 当たりの価格は,北米市場が 3 ドル,

欧州市場が 10 ドル,アジア大洋州市場は 19 ドル と 大 き な 価 格 差 が 発 生 し て い る。 し か し,

2015 年にパナマ運河の拡張工事が完成し,14 万 5,000 立方メートルという標準的な LNG 船が通航 できるようになると,米国メキシコ湾から LNG

(液化天然ガス)の輸出が可能となり,2020 年以

降には世界の LNG 価格が一つに収斂する可能性 が大きい。米国においては,2013 年に天然ガス の自給率 100%がほぼ達成できる状況にあり,天 然ガス価格は,当面は百万 Btu 当たり 3 ~ 4 ド ルの安値で推移すると考えられる。それに対して,

国内にわずかな天然ガス資源しかもたず,海外か らの幹線パイプラインによる生ガス輸入という交 渉材料も持っていない日本の場合には,今後 2 ~ 3 年程度は,百万 Btu 当たり 16 ~ 20 ドル程度と いう原油価格リンク

12)

で LNG を購入せざるを得 ないと考えられる。しかし,今後の世界的な シェール・ガスの開発進展,LNG の国際貿易の 拡大と LNG 輸出国に米国,カナダが登場するイ ンパクトを考慮に入れると,日本も安価な LNG を調達することが可能であり,電力不足に直面す る日本経済の持続的な発展にとって好ましい影響 をもたらすことが予想される。日本は,もともと 原油価格が低迷している 1990 年代には LNG を 百万 Btu 当たり 3.2 ドル(CIF 価格)と安価に購 入していた。また,東日本大震災前の原油価格高 騰時にも百万 Btu 当たり 9 ドル程度に過ぎなかっ た(図表 17)。

また,安価な米国,カナダの天然ガスを LNG として輸出する計画も進んでおり,米国では合計 すると 2013 年夏時点において年間 2 億 8,000 万 トンを超える LNG 輸出計画が構想されている

(図表 18)。

さらに,カナダにおいても,最大の天然ガス輸 出先である米国への天然ガス輸出量が減少してい ることから,シェール・ガスを原料とした LNG

図表 16 国別天然ガス埋蔵量 2012 年末

(単位:兆立方フィート)

(出所)BP統計 2013 年 6 月。

世界合計 6,614.1兆立方フィート ロシア1,162.5

1,184.3イラン

カタール885.1 サウジアラビア

290.8 UAE215.1

300.0米国 ベネズエラ

196.4 ナイジェリア

182.0 アルジェリア

159.1 イラク

126.7 インドネシア

103.3 カナダ70.0

その他1,738.7

図表 17 日本の LNG 輸入価格(単位:ドル/百万 Btu)

(出所)BP統計 2013 年 6 月。

0.00 2.00 4.00 6.00 8.00 10.00 12.00 14.00 16.00 18.00

1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012

(11)

輸出計画が進められている(図表 19)。

米国からの LNG 輸出が本格化すると,米国の 6 倍近くもの高値で推移する日本の LNG 購入価 格も低下する可能性が強い。2013 年 5 月 17 日に は,日本の大阪ガス,中部電力が参画するフリー ポート LNG の輸出許可

13)

が,米国エネルギー省 によって出された。さらに,2013 年 9 月 11 日に は住友商事,東京ガスが参画するコーブ・ポイン ト LNG の輸出許可が出されている。日本は,

2017 年以降に米国のヘンリー・ハブ渡しに連動 した LNG を輸入することが可能である(図表 20)。

米国のヘンリー・ハブ渡しを指標とした LNG の場合には,(米国天然ガス価格= 3 ドル)+

(液化コスト= 2.5 ドル)+(輸送費= 3 ドル)

= 8.5 ドルで LNG を購入することが可能となり,

現状の LNG 購入価格よりも,百万 Btu 当たり 10 ドルも安価である。また,2013 年の米国におけ る原油生産量のうち 100 万~ 120 万 b/d はシェー ル・オイルが占めており,世界最大の原油輸入国

である米国における原油生産の増加に伴う原油輸 入量の減少は,玉突き的にアジア大洋州地域にお ける原油需給を緩和させる効果を持つ。日本の電 力企業をはじめとした公益事業も米国の天然ガス 価格を指標とした割安な LNG 購入計画を進めて いる(図表 21)。

2013 年後半にかけて,米国エネルギー省は,

次々と LNG の輸出許可を進めていくことが見込 まれ,米国におけるシェール・ガス,シェール・

オイルの生産増加に伴うエネルギー需給の緩和,

エネルギー価格の低下は,国際石油市場における 中東のステータスの低下,米国経済の復活という グローバル・パワー・バランスの変化をもたらす。

さらに,米国においては,安価なシェール・ガス を原料としたエチレン・プラントの建設が相次い で発表されている(図表 22)。

安価なシェール・ガスを原料としたエチレン・

プラントの生産コストは,日本の石油化学企業が 原料とするナフサ(粗製ガソリン)と比較して 10 分の 1 ~ 20 分の 1 程度である

14)

。日本の石油 化学企業も汎用品の分野においては,米国の製造 業の復権に脅威を感じており,日本の石油化学企 業各社は,相次いで日本国内のエチレン・プラン トの能力削減を打ち出している(図表 23)。

21 世紀に入り,名門投資銀行を中心として資

図表 18 北米における LNG 輸出計画

地域 プロジェクト名 事業主体

液 化 能 力

(単位:百 万トン)

アラスカ ケナイ LNG コノコフィリップ ス,マラソン 20.0 カナダ キ テ ィ マ ッ ト

LNG

三菱商事,シェブ

ロン 10.0

カナダ ダグラス・アイ ランド LNG

BCLNG 輸出事業

体 1.9

カナダ プ リ ン ス・ ル パート LNG

シェル・カナダ 7.5

テキサス サ ビ ー ン パ ス LNG

シェニエール・エ

ナジー 19.5

テキサス フ リ ー ポ ー ト LNG

フリーポート,豪 州マッコーリー 13.5 テキサス コルパス・クリ

スティー LNG

シェニエール・エ

ナジー 13.5

ジョージ ア

エルバ・アイラ ンド LNG

シェル 2.5

カリフォ ルニア

レイク・チャー ルズ LNG

サザン・ユニオン,

BG 15.0

カリフォ ルニア

キ ャ メ ロ ン LNG

セ ン プ ラ・ エ ナ

ジー 12.8

(出所)各種新聞報道。

図表 19 カナダにおける LNG 輸出計画 LNG プロ

ジェクト名

参画企業 事業概要

キティーマッ ト LNG

ア パ ッ チ 50 %,

シェブロン 50%

投 資 額 45 億 C $,

2016 年 か ら 年 間 500 万トン

LNG カナダ シ ェ ル 40 %, 三 菱 商事 20%等

投 資 額 120 億 C $,

2010 年代末年間 1,200 万トン

パシフィック LNG

ペ ト ロ ナ ス 90 %,

石油資源開発 10%

投 資 額 100 億 C $,

2018 年から年間 1,200 万トン

BG 関連 LNG ブ リ テ ィ ッ シ ュ・

ガス

プリンス・ルパートか ら年間 1,300 万トン インペックス

関連 LNG

ネ ク セ ン, 国 際 石 油開発帝石,日揮

未定

出光興産関連 LNG

ア ル タ・ ガ ス, 出 光興産

未定

(出所)各種新聞報道。

(12)

源 枯 渇 論 が 喧 伝 さ れ,2008 年 7 月 11 日 に は WTI 原油価格は 1 バレル当たり 147.27 ドルと史 上最高値を記録している。そうした状況にあって,

米国におけるシェール・ガス,シェール・オイル の革命的な出現は,21 世紀最大のエネルギー・

ショックといえる。世界の資源地図を大きく塗り 替えるのみならず,世界の産業構造,日本と米国 の景気動向を大きく変革する可能性を持っている。

ほんの 1 年前には想像できなかったことであるが,

人件費が割高である米国における,安価なシェー ル・ガスを原料とした石油化学産業,鉄鋼業をは じめとした製造業の復活,日本においては,割高 なエネルギー購入を余儀なくされてきた LNG,

LP ガスをはじめとしたエネルギー輸入コストの 削減という,新たなエネルギーの新世紀に突入し ているのである。

【注】

1) 経済産業省資源エネルギー庁エネルギー白書 2013 年。

2) 関西電力大飯原子力発電所も 2013 年秋に稼働を停止し,

2014 年 1 月時点における日本の原子力発電所の稼働はゼロ である。

3) 日本銀行資金循環統計 2013 年 6 月 19 日。

4) IEA(国際エネルギー機関)世界エネルギー見通し 2013 年 11 月 12 日によれば,2015 年に米国はサウジアラビアを抜 いて世界最大の原油生産国となると予測されている。

5) 2012 年夏には豪州のプルート LNG プロジェクトが稼働を 開始し,スポット(随時取引)ベースの LNG 余剰感がもた らされたことも LNG 輸入価格低下の要因となった。

6) オバマ政権は,発足当時のグリーン・ニューディール政策 による太陽電池メーカーの相次ぐ経営破綻により,2014 年 時点ではシェール・ガスの積極的な利用に軸足を変えている。

7) 非在来型石油であるシェール・オイルの資源量がエネルギー 専門機関によって推定されたのは,2013 年 6 月が歴史上初 めてである。

8) 米国メキシコ湾の深海部油田の水深は,2013 年時点では 3,000 メートルを超えるものも多く,人間が潜水して作業す 図表 20 フリーポート LNG の事業概要

プロジェ クト名称

フリーポート LNG プロジェクト

液化設備 能力

年間 440 万トン 3 トレイン

L N G 事 業主体

フリーポート LNG20%,ザクリー 55%,大阪ガス 15%等

L N G 液 化権益

大阪ガス年間 220 万トン,中部電 力年間 220 万トン

稼動開始 2017 年

場所 テキサス州ヒューストン

(出所)各種新聞報道。

図表 21 米国ヘンリー・ハブ連動 LNG 輸入計画 日本企業 相手企業 LNG 輸 入

輸入開始

大阪ガス,

中部電力

フリーポー ト

年 間 220 万 トン× 2

2017 年

東京ガス,

住友商事

ドミニオン 年 間 230 万 トン

2017 年

三菱商事,

三井物産

センプラ・

エナジー

年 間 400 万 トン× 2

2016 年

東京電力 三井物産等 年 間 200 万 トン

2017 年

関西電力 BP 年 間 50 万 トン

2017 年

(出所)各種新聞報道。

図表 22 米国におけるエチレン・プラント建設計画 企業名 エチレン年間

生産能力

場所 稼働年

ダウ・ケミカ ル

150 万トン テキサス州 2017 年

エクソンモー ビル

150 万トン テキサス州 2016 年

シェブロン 150 万トン テキサス州 2017 年 Formosa(台

湾)

80 万トン テキサス州 2010年代

信越化学 100 万トン 未定(塩化 ビニール)

未定

ロイヤル・ダ ッチ・シェル

150 万トン ペンシルバ ニア州

2017 年

(出所)各種新聞報道。

図表 23 日本におけるエチレン・

  プラント能力削減計画 企業名 概要

三菱化学 2014 年に鹿島コンビナートの エチレン設備 1 基停止,3 割削 減

住友化学 2015 年に千葉工場のエチレン 設備停止 38 万トン

三井化学 京葉エチレン(69 万トン)か ら出資引き上げ

(出所)各種新聞報道。

(13)

ることができず,ロボットによる掘削作業を行うことから,

生産コストは 1 バレル当たり 60 ドルを超える。

9) 水圧破砕は,環境保護団体から,飲料水汚染,地震発生の リスクが主張されているものの,技術的には 50 年の歴史を 持つ油田掘削技術の一つである。

10) 発電用の一般炭価格は,原油のように国際市場が存在せず,

生産者と需要家との間における相対交渉によって決定され る。

11) ロイヤル・ダッチ・シェルの地質学者キング・ハバートが 1956 年の唱えた学説であり,1970 年をピークに米国国内の 原油生産量は減退の一途を辿るという理論であり,実際に 米国の原油生産量はシェール・オイル革命までは,減退を 続けた。

12) LNG は,もともと石油火力発電に代替する電源として利用 が始まったことから,LNG 価格を原油価格と連動させると いう価格フォーミュラである。

13) 米国においては,石油と天然ガスは戦略物資として,輸出 には米国エネルギー省による許可が必要とされている。

14) シェール・ガスの成分の一つであるエタンを原料とした石 油化学においては,基礎化学品であるエチレンは生産でき るものの,化学式の構造から,プロピレン,芳香族のベン ゼンの生産が難しい。そのため,エンジニアリング・プラ スチックの生産では,ナフサ(粗製ガソリン)を原料とし た日本の石油化学企業に優位性がある。

2014 年 1 月 14 日 受稿  2014 年 1 月 22 日 受理 

( (

参照

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