2019年度・線形代数学・同演義II 2020年2月6日
期末試験の結果,および成績について
期末試験の答案に赤字で書かれているのが期末試験の得点,青字で書かれているのが3回の 試験の合計得点です.なお,合格のための最低得点を56点としました.60点という事前の取 り決めを変更することになりますが,みなさんにとって有利な変更なので了解してください.
期末試験の結果について
満点は90点です.配点は,第1問から第 7問まで順に,10点,10点,20点,16点,12 点,16点,6点としました(第7問は特殊な加点の仕方をしています.後の説明を参照).最 高点は73点でした.得点分布は以下のとおりです.
得点 0–19 20–29 30–39 40–49 50–59 60–69 70–90
人数 3 4 7 12 13 9 4
採点基準・講評
1. 𝒗1,𝒗2,…,𝒗𝑛 の線形独立性をどこかで用います.その指摘がなければ4点減点.
なお,𝒗1,𝒗2,…,𝒗𝑛 が線形独立であることとは別に「𝒗1,𝒗2,…,𝒗𝑛 はいずれも0 でない」ということに触れる人がいましたが,意図がわかりませんでした.証明の論理 展開の中でその事実に特別に着目することで切り抜けられる箇所があるという主張なん でしょうか.でも,そういう箇所はありません.
2. 各𝑖について𝜆𝑖∥𝒖𝑖∥2 ≠0であることを示して6点.
Õ𝑘 𝑖=1
|𝜆𝑖|2∥𝒖𝑖∥2≠ 0を示してもよ いです.前者の場合,2乗が抜けていれば2点減点.後者の場合,|𝜆𝑖|2が𝜆2𝑖 になって いれば2点減点(𝜆𝑖 は複素数であることに注意してください).
残りの議論に4点.背理法を用いる場合,背理法の仮定がおかしいものはこの4点が なくなります.その他の重大な瑕疵も同様.ただし,∥𝒖𝑖∥ ≠ 0を使う場面では「𝒖𝑖 ≠ 0 だから」という指摘がほしいところですが,これはうるさく見ないことにしました.
(𝒖𝑖,𝒖𝑖) =1だと書く人がいるが,それは間違い.「正規直交系」とは言っていません.
3. (1)は4点,(2)は6点,(3)は10点.
(1) 完答のみ4点.
(2) 行の順番が違うなどの軽微な誤りは2点減点.
(3) 核に5点,像に5点.基底ではなく核,像そのものを書いても許容しました(が,
問題をよく読んでください).
惜しい誤りは(各々)2点減点.これに準じて,表現行列の定める写像の核・像 を求めるに留まっているものも,各々2点減点としています.
さらに,説明が著しく欠けていれば各1点減点.
4. (1),(2)各8点.
(1) 𝐷 が正しくて4点,𝑃が正しくて2点.さらに,固有値が重複するsin𝜃 =0す なわち𝜃=𝑛𝜋のケースを別扱いすべきことを見落とさずに正しく処理して2点.
(2) 固有値を正しく求めていて2点,その後の方針が合っていてさらに2点.
5. どちらを解いても12点.
(1) 線形空間および線形写像を適切に設定して4点.表現行列,固有多項式を正しく 導いて4点.最後の結論に4点.変数が抜けている人がときどきいました.
(2) こちらを解答した人はいませんでした.
6. (1)は6点,(2)は10点.
(1) 𝑋2−𝑌2+𝑍2(など)の形への変形ができていれば4点.軽微な係数違いなどは ここから2点減点するにとどめています.符号を正しく答えてさらに2点.
(2) 1階導関数の計算に2点,さらに3個ある臨界点を正しく求めて2点.3個の臨 界点について,ヘッシアンを求めて,正しく結論を導出して各2点.
7. (1),(2),(3)のどれを解いても6点.小問2個以上が加点対象になった人はいないの で,最大6点です.
(1) (𝐴𝒙,𝒚) =−(𝒙, 𝐴𝒚)であることに4点.これを固有ベクトルに適用して2点.
(2) 解答した人はいませんでした.
(3) 各々の固有値𝑏𝑖に対し,その複素共役−𝑏𝑖 も固有値となることに気づいて4点.
成績について
各成績の基準となる得点の範囲と,該当人数は以下のとおりです.最高点は118点でした.
成績 F C B A S
得点 0–55 56–65 66–79 80–96 97–150 人数 10 10 10 13 9
合格のボーダーラインは実質的に,おおむね「期末試験で40点弱をとっていること.ただ しそれより得点が低くても,中間試験のでき次第では救済される」といった格好になりまし た.期末試験で40点弱ということは,たとえば,第1問,第3問(1),(2),第5問を確実に とって,さらにどれかもう1問正答するといったところです.
2019年度・線形代数学・同演義II 2020年2月6日
期末試験解答例
1. 𝒖が𝒗1,𝒗2,…,𝒗𝑛 の線形結合として
𝒖 =𝜆1𝒗1+𝜆2𝒗2+ · · · +𝜆𝑛𝒗𝑛 =𝜆1′𝒗1+𝜆′2𝒗2+ · · · +𝜆′𝑛𝒗𝑛
と見かけ上二通りの方法で表されたとする.そのとき
(𝜆1−𝜆′1)𝒗1+ (𝜆2−𝜆′2)𝒗2+ · · · + (𝜆𝑛 −𝜆′𝑛)𝒗𝑛 =0
である.ここで𝒗1,𝒗2,…,𝒗𝑛 は線形独立だから,線形独立性の定義によって𝜆1−𝜆′1= 𝜆2−𝜆′2=· · ·=𝜆𝑛−𝜆′𝑛 =0すなわち𝜆𝑖 =𝜆𝑖′(𝑖 =1,2,…,𝑛)がなりたつ.つまり,初 めに与えた𝒖 の二通りの表示は同じものにすぎない.したがって𝒖を𝒗1,𝒗2,…,𝒗𝑛
の線形結合として表す仕方は一通りしかない.
2. 𝜆1𝒖1+𝜆2𝒖2+ · · · +𝜆𝑘𝒖𝑘 =0であると仮定する.そのとき𝜆1 =𝜆2 =· · · =𝜆𝑘 =0で あることを証明すればよい.
1 以上 𝑘 以下の 𝑖 を 一つ 任 意に 決 め て ,仮 定 の 式 の左 辺 と 𝒖𝑖 の内積をとると (𝜆1𝒖1+𝜆2𝒖2+ · · · +𝜆𝑘𝒖𝑘,𝒖𝑖) =0,すなわち
𝜆1(𝒖1,𝒖𝑖) +𝜆2(𝒖2,𝒖𝑖) + · · · +𝜆𝑘(𝒖𝑘,𝒖𝑖) =0.
ここ で仮 定から ,(𝒖𝑗,𝒖𝑖) は 𝑗 = 𝑖 の場合 を 除 い て 0 に等 しい.𝑗 = 𝑖 の場 合は (𝒖𝑗,𝒖𝑖) = ∥𝒖𝑖∥2だから
𝜆𝑖∥𝒖𝑖∥2 =0.
ところで𝒖𝑖 ≠ 0なので ∥𝒖𝑖∥ ≠ 0.ゆえに𝜆𝑖 = 0である.𝑖 は任意だったから,これで 𝜆1=𝜆2=· · ·=𝜆𝑘 =0であることが示された.
[別証]𝜆1𝒖1+𝜆2𝒖2+ · · · +𝜆𝑘𝒖𝑘 =0と仮定する.左辺を𝒗と書けば,𝒗 =0なのでも ちろん(𝒗,𝒗) =0だが,一方で
(𝒗,𝒗) =©
« Õ𝑘
𝑖=1
𝜆𝑖𝒖𝑖,Õ𝑘
𝑗=1
𝜆𝑗𝒖𝑗ª®
¬
= Õ𝑘
𝑖=1
Õ𝑘 𝑗=1
𝜆𝑖𝜆𝑗(𝒖𝑖,𝒖𝑗)
でもある.したがって
Õ𝑘 𝑖=1
Õ𝑘 𝑗=1
𝜆𝑖𝜆𝑗(𝒖𝑖,𝒖𝑗) =0.
ところで (𝒖𝑖,𝒖𝑗) は𝑖 = 𝑗 の場合を除いて0だから,上の等式から Õ𝑘
𝑖=1
𝜆𝑖𝜆𝑖(𝒖𝑖,𝒖𝑖)=0, すなわち Õ𝑘
𝑖=1
|𝜆𝑖|2∥𝒖𝑖∥2=0.
左辺の各項は0以上だから,すべての𝑖について |𝜆𝑖|2∥𝒖𝑖∥2=0.ここで𝒖𝑖 ≠0だから
∥𝒖𝑖∥ ≠ 0であり,ゆえに |𝜆𝑖|2 =0,すなわち𝜆𝑖 =0が従う.
3.
(1) Φ(𝑓(𝑥) +𝑔(𝑥)) = Φ(𝑓(𝑥)) +Φ(𝑔(𝑥)) および Φ(𝜆 𝑓(𝑥)) = 𝜆Φ(𝑓(𝑥)) を示せば よい.
Φ(𝑓(𝑥) +𝑔(𝑥)) =𝑥(𝑓(𝑥) +𝑔(𝑥))′−2(𝑓(𝑥+𝑎) +𝑔(𝑥+𝑎))
=𝑥 𝑓′(𝑥) −2𝑓(𝑥+𝑎) +𝑥𝑔′(𝑥) −2𝑔(𝑥+𝑎) = Φ(𝑓(𝑥)) +Φ(𝑔(𝑥)), Φ(𝜆 𝑓(𝑥)) =𝑥(𝜆 𝑓(𝑥))′−2(𝜆 𝑓(𝑥+𝑎)) =𝜆(𝑥 𝑓′(𝑥) −2𝑓(𝑥+𝑎))=𝜆Φ(𝑓(𝑥)).
(2) Φ(1) =−2,Φ(𝑥) =−𝑥−2𝑎,Φ(𝑥2) =−4𝑎𝑥−2𝑎2,Φ(𝑥3) =𝑥3−6𝑎𝑥2−6𝑎2𝑥−2𝑎3 だから,表現行列を 𝐴とすれば
𝐴=©
«
−2 −2𝑎 −2𝑎2 −2𝑎3 0 −1 −4𝑎 −6𝑎2
0 0 0 −6𝑎
0 0 0 1
ª®®®
¬ .
(3) (2)の基底 [1, 𝑥, 𝑥2, 𝑥3] を Σ とよぶことにする.線形写像 Φ の核および像は,
Σ の定める線形同型写像𝜓Σ: R[𝑥]3 → R4を介して,行列 𝐴を左から掛ける写像 Φ𝐴: R4 → R4 の核および像と対応する.そこでKerΦ𝐴,ImageΦ𝐴を求めて,そ れからKerΦ,ImageΦを得る.
𝐴に行基本変形を施して
𝐴′=©
«
1 0 −3𝑎2 0 0 1 4𝑎 0
0 0 0 1
0 0 0 0
ª®®®
¬
とできる[注:𝑎が0であるか否かにかかわらず,このように変形できる.場合分 けは不要].ここから
KerΦ𝐴=
𝑡©
« 3𝑎2
−4𝑎 1 0
ª®®®
¬
𝑡 ∈R
.
ゆえにKerΦ = {𝑡(3𝑎2−4𝑎𝑥+𝑥2) |𝑡 ∈R} である.基底として,ただ一つのベク トルからなる組 [3𝑎2−4𝑎𝑥+𝑥2] をとることができる.
ImageΦ𝐴は,𝐴 = (𝒂1 𝒂2 𝒂3 𝒂4) としたとき,𝒂1,𝒂2,𝒂3,𝒂4によって張られ る.しかしこれらは線形独立ではない.なぜなら,行基本変形によって得た 𝐴′を (𝒂1′ 𝒂′2 𝒂3′ 𝒂′4) と書くことにすると,𝒂′1,𝒂2′,𝒂′3,𝒂4′ が線形独立でないからであ る.4個のベクトル𝒂1,𝒂2,𝒂3,𝒂4を順番に見ていきながら,ImageΦ𝐴を張るた めに必要なベクトルだけを取り出していくと 𝒂1,𝒂2,𝒂4が得られる.[𝒂1,𝒂2,𝒂4] がImageΦ𝐴の基底の一例である.これに対応して,[−2,−2𝑎−𝑥,−2𝑎3−6𝑎2𝑥− 6𝑎𝑥2+𝑥3]というImageΦの基底をとることができる.
[注:KerΦ𝐴とKerΦ𝐴′ は一致するが,ImageΦ𝐴 とImageΦ𝐴′ は一致しないこ とに注意.行基本変形は連立一次方程式を同値なまま保つ変形だからKerは保た
れるが,Imageはべつに保たれない.なお授業ではやりませんでしたが,列基本変
形はImageを保ちます.] 4.
(1) 固有多項式は𝑥2−2 cos𝜃 ·𝑥+1で,固有値はcos𝜃±𝑖sin𝜃 すなわち 𝑒±𝑖 𝜃 であ る.sin𝜃 ≠ 0のときはこれらは相異なる2個の固有値.sin𝜃 = 0のときは一致し て,重複度2をもつ固有値となる(𝜃の値に応じて1または−1).
sin𝜃 =0のときは 𝐴は初めから対角行列になっているから,𝑃=𝐸(単位行列), 𝐷 = 𝐴でかまわない.
以下sin𝜃 ≠0のときを考える.固有値𝑒±𝑖 𝜃に対応する固有空間を各々𝑊𝐴(𝑒±𝑖 𝜃) と書くと
𝑊𝐴(𝑒𝑖 𝜃)=
𝑡 𝑖
1 𝑡 ∈C
, 𝑊𝐴(𝑒−𝑖 𝜃) =
𝑡 1
𝑖 𝑡 ∈C
だから,
𝑃= 𝑖 1
1 𝑖
とおけば 𝐷 = 𝑃−1𝐴𝑃は対角行列になる.𝐷 の対角成分には𝑃 の各列に対応する 固有値が現れる.すなわち
𝐷 =
𝑒𝑖 𝜃 0 0 𝑒−𝑖 𝜃
.
[注:sin𝜃 =0の場合にも,sin𝜃 ≠0の場合と同じ式で𝑃,𝐷を定めてもよい.]
(2) 固有多項式は(𝑥+1)3(𝑥−2) で,固有値は−1(3重),2(1重).これらのうち
−1に対応する固有空間𝑊𝐴(−1)は
𝑊𝐴(−1) =
𝑠©
« 1 0 0 1 ª®®®
¬ +𝑡©
« 0 0 1 0 ª®®®
¬
𝑠, 𝑡 ∈C
となる.𝑊𝐴(−1) は2次元であって,この次元は固有値−1の重複度より小さい.
したがって 𝐴は対角化できない.
5.
(1) 一般解は
𝑓(𝑡) =𝑐1𝑒3𝑡 +𝑐2𝑒(1+√3𝑖)𝑡 +𝑐3𝑒(1−√3𝑖)𝑡 (𝑐1, 𝑐2, 𝑐3 ∈C),
あるいは同じことですが
𝑓(𝑡) =𝑐1𝑒3𝑡 +𝑐2𝑒𝑡cos√
3𝑡+𝑐3𝑒𝑡sin√
3𝑡 (𝑐1, 𝑐2, 𝑐3∈C).
詳細は省略します.第2回中間試験第4問の解答例などを参照のこと.
(2) 省略します.以前の演習問題の解答を参考にしてください.
6.
(1)
4𝑥2−3𝑦2+5𝑧2+4𝑥𝑦+8𝑥𝑧 =(2𝑥+𝑦+2𝑧)2−4𝑦2+𝑧2−4𝑦𝑧
=(2𝑥+𝑦+2𝑧)2− (2𝑦+𝑧)2+ (√ 2𝑧)2. したがって符号は(2,1).
(2) 1階導関数は
𝜕 𝑓
𝜕𝑥 =(𝑦−2𝑥𝑦(𝑥+𝑦))𝑒−(𝑥+𝑦)2, 𝜕 𝑓
𝜕𝑦 =(𝑥−2𝑥𝑦(𝑥+𝑦))𝑒−(𝑥+𝑦)2
である.臨界点とは,これらがどちらも値0をとるような点のことだった.𝑒−(𝑥+𝑦)2 は常に0でないから,臨界点の座標の方程式は
(𝑦−2𝑥𝑦(𝑥+𝑦) =0, 𝑥−2𝑥𝑦(𝑥+𝑦) =0.
辺々加えることにより,必要条件として(1−4𝑥𝑦)(𝑥+𝑦)=0すなわち「𝑥+𝑦=0ま たは𝑥𝑦=1/4」が得られる.𝑥+𝑦=0の場合,上記の連立方程式から𝑥 =𝑦 =0が 得られる(かつ,これは確かに𝑥+𝑦=0を満たす).𝑥𝑦=1/4の場合,上記の連立方 程式から𝑥 =𝑦が得られるが,それと𝑥𝑦=1/4が両立するのは(𝑥, 𝑦)が(1/2,1/2) または(−1/2,−1/2)のときである.以上の3個の点が 𝑓 の臨界点である.
2階導関数は
𝜕2𝑓
𝜕𝑥2 = (−6𝑥𝑦−4𝑦2+4𝑥𝑦(𝑥+𝑦)2)𝑒−(𝑥+𝑦)2,
𝜕2𝑓
𝜕𝑥𝜕𝑦 = (1−2𝑥2−6𝑥𝑦−2𝑦2+4𝑥𝑦(𝑥+𝑦)2)𝑒−(𝑥+𝑦)2,
𝜕2𝑓
𝜕𝑦2 = (−6𝑥𝑦−4𝑥2+4𝑥𝑦(𝑥+𝑦)2)𝑒−(𝑥+𝑦)2.
したがって,点(0,0)におけるヘッシアンは,(ℎ1, ℎ2)を変数に用いることにす れば
𝜕2𝑓
𝜕𝑥2(0,0)ℎ21+2 𝜕2𝑓
𝜕𝑥𝜕𝑦(0,0)ℎ1ℎ2+𝜕2𝑓
𝜕𝑦2(0,0)ℎ22=2ℎ1ℎ2= 1
2(ℎ1+ℎ2)2−1
2(ℎ1−ℎ2)2. これは不定符号だから,𝑓 は点 (0,0) において極値をとらない.
点(1/2,1/2),点(−1/2,−1/2) におけるヘッシアンは共通の式で表すことができ るのでまとめて扱う.再び (ℎ1, ℎ2)を変数に用いることにすれば
𝜕2𝑓
𝜕𝑥2(0,0)ℎ21+2 𝜕2𝑓
𝜕𝑥𝜕𝑦(0,0)ℎ1ℎ2+ 𝜕2𝑓
𝜕𝑦2(0,0)ℎ22 =− 3
2𝑒ℎ21− 1
𝑒ℎ1ℎ2− 3 2𝑒ℎ22
=− 3 2𝑒
ℎ21+ 2
3ℎ1ℎ2+ℎ22
=− 3
2𝑒 ℎ21+ 1 3ℎ2
2
+ 8 9ℎ22
!
であり,これは負定値である.ゆえに 𝑓 は点 (1/2,1/2),点 (−1/2,−1/2) におい て極大値をとる.
[注:2変数なので,ヘッシアンの符号の判定は,演習問題12.2の方法を使って もできます.]
7.
(1) 𝑛次実交代行列について一般に,𝒙,𝒚 ∈C𝑛 に対し,
(𝐴𝒙,𝒚) =𝑡(𝐴𝒙)𝒚 =𝑡𝒙𝑡𝐴𝒚=𝑡𝒙(−𝐴)𝒚 =−(𝑡𝒙(𝐴𝒚)) =−(𝑡𝒙(𝐴𝒚)) =−(𝒙, 𝐴𝒚)
がなりたつ(5番目の等号の箇所で,𝐴が実行列であることを用いた).
さて,𝜆を実交代行列𝐴の固有値として,𝒙 ∈Cを対応する固有ベクトルの一つと する.前段落で述べたことから (𝐴𝒙,𝒙) =−(𝒙, 𝐴𝒙),すなわち(𝜆𝒙,𝒙) =−(𝒙, 𝜆𝒙). つまり 𝜆∥𝒙∥2 = −𝜆∥𝒙∥2 である.ところで𝒙 は固有ベクトルなので0ではないか ら,∥𝒙∥ ≠ 0で,ゆえに𝜆=−𝜆.これは𝜆が純虚数であることを示している.
[別証]𝐴が実交代行列のとき,𝑖𝐴はHermite行列である.したがって𝑖𝐴の固 有値はすべて実数.𝐴の固有値は(実数の1/𝑖倍なので)純虚数である.
(2) 𝑖𝐴はHermite行列だから,ある正則行列 𝑃が存在して 𝐷 = 𝑃−1(𝑖𝐴)𝑃は対角行 列となる[注:𝑃をユニタリ行列とすることもできるが,ここでは不要].このとき 𝑃−1𝐴𝑃 = −𝑖𝐷 であり,これも対角行列である.つまり,もとの実交代行列 𝐴 も,
𝑃によって対角化できている.
(3) 𝐴 の行列式はすべての固有値の積に等しい.これはどんな正方行列 𝐴 につい ても成り立つ事実だが,授業では扱わなかった.ただし,いま考えている実交代 行列の場合,(2)から 𝐴 が対角化できることがわかっているから,det(𝑃−1𝐴𝑃) =
(det𝑃)−1(det𝐴)(det𝑃)=det𝐴から上記の事実がわかる(最左辺が明らかにすべて の固有値の積に一致するから).
ところで,𝑏𝑖(𝑏 ∈R)が 𝐴の固有値だとすれば,これは𝑏𝑖が固有多項式𝜑𝐴(𝑥) の根だということでもある.𝜑𝐴(𝑥)は実係数多項式なので,複素共役−𝑏𝑖も𝜑𝐴(𝑥) の根となる.ここでもし 𝑏 ≠ 0ならば,𝑏𝑖 と−𝑏𝑖 は相異なる根となり,𝜑𝐴(𝑥) は (𝑥−𝑏𝑖)(𝑥+𝑏𝑖) =(𝑥2+𝑏2)で割り切れる.すなわち
𝜑𝐴(𝑥) = (𝑥2+𝑏2)𝑞(𝑥) のように表すことができる.
この作業は繰り返すことができる.すなわち,𝑞(𝑥) は再び実係数多項式であっ て,その根はやはりすべて純虚数である(なぜなら,𝜑𝐴(𝑥)の根でもあるから).も し0でない根𝑏1𝑖があれば,𝑞(𝑥)は𝑥2+𝑏21で割り切れることがわかる.
同様の作業を,商が𝑥の羃乗の形になってしまうまで続ける.最終的に固有多項 式𝜑𝐴(𝑥) を,記号を付け直して
𝜑𝐴(𝑥) = (𝑥2+𝑏21)(𝑥2+𝑏22) · · · (𝑥2+𝑏2𝑘)𝑥𝑛−2𝑘, 𝑏1, 𝑏2, . . . , 𝑏𝑘 ∈R\ {0} の形に表すことができる(ただし 𝐴は𝑛次実交代行列であるとした.R\ {0} は0 でない実数全部の集合).固有値は
±𝑏1𝑖, ±𝑏2𝑖, . . . , ±𝑏𝑘𝑖, 0, 0, . . . , 0
| {z }
𝑛−2𝑘個
となり,𝑛−2𝑘 >0ならdet𝐴=0,𝑛−2𝑘 =0ならdet𝐴=𝑏21𝑏22. . . 𝑏2𝑘 > 0である.
[注:上記の証明から直ちにわかるように,𝑛 が奇数ならば必ず det𝐴 = 0 で す.このことは以下のようにもっと簡単に示せます.𝑡𝐴 = −𝐴 から det(𝑡𝐴) = (−1)𝑛det𝐴 = −det𝐴 で,左辺が det𝐴 に等しいことから 2 det𝐴 = 0,すなわち det𝐴 =0.
𝑛が偶数ならば det𝐴 > 0となる可能性があるわけですが,𝑛 = 2,4 の場合に det𝐴を計算してみましょう.
𝐴=
0 𝑎
−𝑎 0
に対し det𝐴=𝑎2,
𝐴=©
«
0 𝑎 𝑏 𝑐
−𝑎 0 𝑑 𝑒
−𝑏 −𝑑 0 𝑓
−𝑐 −𝑒 −𝑓 0
ª®®®
¬
に対し det𝐴= (𝑎 𝑓 −𝑏𝑒+𝑐𝑑)2.
実はこのパターンは続くことが知られています.つまり,𝑛 が偶数のときは常に det𝐴 =(𝐴の成分の多項式)2と表せるのです.右辺に現れる 𝐴の成分の多項式は,
𝐴のパフィアンとよばれます.]