31 Ⅱ 教 育 活 動 │ 食物栄養学科卒業生への支援活動の一つとして、また栄養クリニックの活動実態を一般市民に周知し、より望ましい食生 活の実施につなげるために生涯学習として栄養講座を年2回実施している。 ◆栄養講座・前期(統一テーマ:薬膳について学ぶ) ◉ ◉日時:令和元年7月27日(土)13:30~16:30 ◉ ◉場所:栄養クリニック3F 多目的室1・2 ◉ ◉対象:一般市民52名、卒業生10名、学生1名 ◉ ◉司会:栄養クリニック指導員 中村 智子 ◉ ◉挨拶:講師紹介:副栄養クリニック長 木戸 詔子 ◉ ◉参加者の状況:参加申し込み115名から抽選による当 選者70名に参加証を送付し、当日の参加者62名にアン ケートを実施し、60名(97%)から回答をいただい た。講座の周知については、栄養クリニックからの案 内65%、大学HP・掲示物18%、大学の公開講座8%、 その他9% であった。参加者の85%が女性で、60歳 代、70歳代が多く、京都市(50%)、京都府(23%)、 大阪府(15%)、奈良県、滋賀県、兵庫県(27%)か らの参加であった。
◉演題1:薬膳とは何か
―渡邊 武氏の効能効果解析法から考える— ◉ ◉講師:本学家政学部食物栄養学科教授、 栄養クリニック研究員(薬学博士、薬剤師) 川添 禎浩 本講座では、(1)薬膳の定義、歴史、理論など、(2) 渡邊 武氏の効能効果解析法を用いた薬膳の効能効果な どを講義した。 (1)薬膳は中国独特の料理で、その役割は病気にならな いようにする「食養」と病気の治療「食療」がある。 食事としては、中国医薬学理論に基づき、中薬(日本 の漢方で用いる生薬に相当)と食物を配合して調理し た、色、香、味、形の完成されたおいしい料理である。 歴史的に、薬膳は古くは秦漢時代の「黄帝内経」など に記録がみられ、清朝の頃は宮廷料理であった。一方 で、日本でいう薬膳は、「食養」に重きを置き、生薬や 食効価値のある食材を中医学・中薬学の理論に基づい て配合した料理のようである。生薬には薬能、薬性、 薬味といった効能、性質、味があり、食物にも食能、 食性、食味があるといえる。薬膳は、秦漢時代の「黄 帝内経素問」に記された「陰陽五行説」に基づき、特 に生薬・食物の性質と味をバランスよく組み合せる。 自然現象は相反する陰陽のバランスから成り立ってお り、これらに歪みがあるときは、それを是正する反対 の薬性、食性のある生薬または食物をもって中和し正 常化するという考え方が薬膳理論の基本である。教育活動
生涯学習・栄養講座
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栄養クリニック活動報告書_第12号 cc2017 0219.indd 31 2020/02/19 17:11Ⅱ 教 育 活 動 │ (2)漢方医学は古代中国医学を起源とするが、日本で独 自に発展した伝統医学であり、使用する薬を漢方薬と いう。漢方薬は漢方医学理論に基づいて複数の生薬を 組み合わせたもの(処方)である。薬膳も生薬や食効 価値のある食材を使うことから、漢方薬と同じような 効能効果が期待される。渡邊 武氏は薬膳効能の解析 をするために、漢方医学における気血水論を取り入れ、 薬膳の材料を気剤・血剤・水剤・脾胃剤・寒剤・温剤 に分け、それぞれの割合をプロットしたレーダーグラ フ法を考案している。薬膳のレーダーグラフに近似し ている漢方薬のレーダーグラフがある。その場合、薬 膳と漢方薬の効能効果も類似している。しかし、薬膳 の効能効果は、漢方薬ほど医薬品的要素が強くない。 また、成分分析の研究結果から、生薬の有効成分量は ほぼ薬膳に移行しているが、成分によっては薬膳に移 行しにくいものもある。以上のことから、薬膳の役割 は、病気の治療というより、日常の摂取で病気を予防 し、健康を維持し、病後の体力回復を助けることにあ ると考えられる。
◉演題2:夏の薬膳
—高温多湿を乗り切る食— ◉ ◉講師:薬膳料理家(管理栄養士、国際中医薬膳師) 中 倫子 薬膳とは食べ物で体を元気にし、本来その人が持って いる免疫力を高める食事のことである。薬膳は、料理だ けにとどまらず、私たちの体や心の健康、ヒトの生き方 や人間関係のヒントになるようなことまでも教えてくれ る。そして、人間は動物の一種で、人は自然と共に生き てきたため、自然から離れると病気に近づくことなどを 解説した。 次に、薬膳の基本的な考え方について述べた。ヒトは 病気になる前に養生を始めておくことが大切である。病 気になれば最善の治療方法を見つけ、健康体を取り戻さ なければならないが、健康な時、未病の段階で予防的に33 Ⅱ 教 育 活 動 │ 養生することが大切であり、そこに薬膳の考え方を取り 入れる方法を具体的に説明した。 薬膳には、食材の持つ性質を示す「五性」=寒、涼、 平(温めもしないし、冷やしもしない食材)、温、熱があ る。五性に対応する食品は下図の通りである。 次に薬膳による夏の養生のポイントを解説した。夏は 高温多湿の気候のため、臓器でいう心臓を含む「心(シ ン)」が弱りやすい。「心」には精神活動まで含まれる。 特に、夏場は水分を摂り過ぎる傾向があり、体内に余分 な水分が溜まり、むくみや消化不良、食欲不振、下痢、 だるさなど、湿邪による胃腸障害を招きやすい。そして、 解答) マンゴー → 涼 すいか → 寒 桃 → 温 胡椒 → 熱 りんご → 平 曇りや雨が続くと症状が悪化する。さらに「心血虚(心 陰虚)という症状に陥ると、不安感、物忘れ、不眠、多 夢などの睡眠障害が出やすい。そこで、夏場の日常生活 での食行動での可否について、具体的例を示して説明し た。 例) 冷たい食べ物で身体を冷やす(冷蔵庫から出してす ぐのもの、かき氷、アイスクリームなど)⇒ × 例) 清熱・解暑の作用があると言われている食材で身体 の余分な熱を冷ます(トマト・瓜類など)⇒ 〇 また、心の経絡に作用する、「心」に良いと言われる食 材(小豆・トマト・瓜類・アロエ・つるむらさき・ふき・ 緑豆もやし・百合根・グレープフルーツ・桑の実・龍眼・ 牡蠣・なまこ・すずき・鶏卵など、旬の食材に該当しな いものも含まれる)を積極的に使用することを推奨し、 特に夏場に留意して欲しいことを補足した。 ・甘いものや油っこいものは湿気をよび、さらに胃腸を 弱らせるので避ける。 ・芳香性のある食物やあっさりした味付けで食欲を増進 させる。また、だし汁を多用する(熱中症の予防にも 効果がある)。 ・苦味のある食物を料理に取り入れる。代表的な食材は 苦瓜。苦瓜は体を冷やすので、塩もみ・糠漬け・佃煮 などにする。また、炒め物など加熱調理すると比較的 多く摂取でき、夏場の冷え過ぎを緩和できる。 ・酸味食品(梅干し・レモン等の柑橘類)には、疲れの 予防や改善に効果がある。また、収斂(シュウレン) 作用があるので、汗を止める効果がある。夏場の献立 の一品として酢の物を取り入れる。 最後に、「益々、気候の温暖化が危惧される今日、夏バ テなどしないよう、薬膳を取り入れ元気にお過ごしいた だきたい」と、メッセージを残した。 ◉ ◉満足度:5段階で評価をいただいた結果、満足37名 (62%)、やや満足15名(25%)、どちらでもない2名 (3%)、やや不満1名(2%)、不満0名、無記入5名 (8%)であった。 ◉ ◉参加者の感想: ・薬膳の講義が初めて受講でき、よかった。レーダーグ ラフの近似という点で薬膳効果を推測でき、感情と臓 器が繋がっているという新しい視点が興味深かった。 ・具体的な薬膳料理と近似な漢方薬効能の関係が興味深 かった。 ・知らなかった中医学や漢方薬と薬膳料理の違いが少し わかり、食について考える機会になった。 ・自然の食事が一番、楽しみにしていた講演に参加でき、 専門の両先生共よい講義でありがとうございました。 栄養クリニック活動報告書_第12号 cc2017 0219.indd 33 2020/02/19 17:11
Ⅱ 教 育 活 動 │ 日頃から気をつけたいと思った。 ・薬膳に興味があり初めて参加しました。とても分かり やすく勉強になり、日常に取り入れたいです。質問に 丁寧に答えてくださり、とても楽しかった。 ・食事は栄養素と味ばかりを意識していましたが、薬効 ということにも目を向けて食材を考え、献立を組み立 てていきたいと思った。 ・薬膳の材料、トウキ、ゴッシ、キンシンサイ等を実際 に見せて頂き、トウキは試食でき、貴重な体験でした。 生姜を積極的に取り入れるなど実生活に少しでも役立 てたい。 ・薬膳という意識をしてなかったが、毎日、理にかなっ た食事ができていることがわかり、よかった。 ・貧血や体調不良には漢方薬、食事には薬膳を取り入れ たいと思った。また、薬膳が体だけでなく「心」にも 関係していること、夏の養生に「心」が重要であるこ とがわかり、日々の食生活に取り入れたいと思います。 ・今まで体を冷やす・温める食材を意識して食事を摂取 していなかったが、胃腸への負担がかかることを知っ て驚いた。勉強したいと思う内容でした。 ◆栄養講座・後期(統一テーマ:お茶の健康機能性とお茶の入れ方) ◉ ◉日時:令和元年11月16日(土)13:30~16:30 ◉ ◉場所:栄養クリニック3F多目的室1・2、2F調理室 ◉ ◉対象:一般市民 25名、卒業生6名 ◉ ◉司会:副栄養クリニック長 木戸 詔子 ◉ ◉参加者の状況:参加申し込み34名、当日参加者は講演 の部31名(男性1名、女性30名)、実演の部30名であ り、27名(87%)の方からアンケートに回答していた だいた。60~70歳代の方が63%、卒業生が22%であ った。講座の周知は、栄養クリニックからの案内81%、 大学HP・掲示物18%、栄養クリニック公開講座7%、 友人紹介7%、無記入4%であり、京都市67%、京都 府19%、大阪府4%、滋賀県4%、三重県4%からの 参加であった(無記入4%)。 ◉ ◉講師:株式会社伊藤園販売促進部第6課専任部長・ 伊藤園ティーテイスター1級 中村 泰山
◉Ⅰ部講演の部 お茶基礎知識と健康性について
お茶は、緑茶、烏龍茶、紅茶もルーツは同じツバキ科 の多年生植物で、これら3種類の違いは発酵度合いによ るものである(図1)。 日本には805年頃遣唐使によりお茶が伝来し、茶の歴 史は1200年に及ぶ。1211年、栄西禅師により日本初の お茶専門誌『喫茶養生記』が書かれ、1500年代に千利休 らによって「茶の湯」が確立され、1587年10月1日に 豊臣秀吉が北野天満宮で「北野大茶会」を催したことに ちなんで「日本茶の日」が制定された。庶民への普及は、 1738年に永谷宗円による煎茶の開発からである(図2)。 お茶の生産量は、1位静岡、2位鹿児島、3位三重、 4位宮崎、5位京都であり、代表的な品種として、やぶ きた、ゆたかみどり、おくみどり、かなやみどりがあり、 やぶきた品種は栽培面積比の73.7%を占める。 お茶は荒茶工程と仕上げ工程を経て出来上がる。荒茶 工程は、原料として保管・流通に耐えられる加工であり、 水分含有量は5%で形状も不ぞろいのままである。仕上 げ工程は、形状を整え、粉、茎、棒を除き仕上げの水分 含有量を3%以下に調整し、各消費地の嗜好に合わせて、 火入れで香気のバランスをとる加工である。また、お茶 の摘採時期により呼び方が一番茶から四番茶と変わるこ と、新茶は一番茶の商品名であること、お茶の種類、水 の選び方などが紹介された。お茶の保存上の大敵は酸 図1 図235 Ⅱ 教 育 活 動 │ 素、湿気、光、温度、移り香である。冷凍庫・冷蔵庫で 保存した茶葉は、急激な温度変化で茶の表面に結露をま ねくため、室温に戻してから開封することが大切である。 緑茶の主要成分はアミノ酸(テアニン・旨み)、カフェ イン(苦み)、カテキン(渋み)であり、お茶のおいしさ は、お湯の温度で大きく変わる(図3)。ぬるめのお湯で 入れるとアミノ酸は溶け出すがカフェイン、カテキンは あまり溶け出さない。80℃のお湯で入れると、アミノ酸 に加えてカテキン、カフェインが適度に溶け出し旨み・ 渋み・苦みのバランスのとれた味になる。緑茶には様々 な健康機能成分が含まれている(図4)