数理経済学第10回(9910)* 慶應義塾大学経済学部:矢野 誠
10.厚生経済学の第二定理と分離定理
10.1.パレート最適点の基礎的性質
どのパレート最適な配分も所得再分配を適当に行えば,競争均衡として達成さ れる.
Y: { : , , 1,..., }
1 1
F f
Y y y y
y
Y f f
F
f f F
f
f = = ∈ =
=
∑ ∑
=
=
. :
) ,..., (x1 xH
P { : , ( ) , ( ) }.
1
h x P x h x R x x x C
x h h h h h
H
h
h ∈ ∀ ∈ ∃
=
∈
=
∑
=
事実10.2.1:配分 (x1,...,xH,y1,...,yF)∈C1×...×CH ×Y1×...×YF が以下 の条件をみたすならば,パレート最適である.
P(x1,...,xH)∩Y=φ.
∑ ∑
=
= ≤ F
f f H
h
h y
x
1 1
.
) ,..., (x1 xH
P と Y が分離されている.⇒ 分離定理の利用
10.2.分離定理再論
分離定理10.2.1:二つの閉凸集合 A⊂Rn と B⊂Rn の片方が内点を もち,内点の集合ともう片方の共通部分が空ならば,ある p∈Rn, p≠0, と k∈R が存在し以下が成立する.
∀x∈A, ∀y∈B, px≤k≤ py.
とくに x∈int A,y∈int B ならば,厳密な不等号が成り立つ.
* Copy Right © 1999 矢野 誠.
10.3.パレート最適配分と純粋所得移転を伴う疑似均衡
所得移転を伴う均衡とは次の条件を満たす配分と所得移転方式と価格 )
, ,..., , ,..., , ,...,
(x1 xH y1 yF m1 mH p
のことである.
1.∀h∈{1,...,H}, xh∈Ch, pxh ≤mh, zPhxh ⇒ z >mh . 2.∀f ∈{1,...,F}, yf ∈Y f , y∈Yf ⇒ pyf ≥ py .
3.
∑ ∑
=
= = F
f f H
h
h y
x
1 1
.
純粋所得移転: m1,...,mH,
∑
= H
m
mh
1
∑
=
= F
f
pyf 1
.
所得移転を伴う疑似均衡:
) , ,..., , ,..., , ,...,
(x1 xH y1 yF m1 mH p
1.∀h∈{1,...,H}, xh∈Ch, pxh ≤mh, zPhxh ⇒ pz≥mh . 2.∀f ∈{1,...,F}, yf ∈Y f , y∈Y f ⇒ pyf ≥ py.
3.
∑ ∑
=
=
= F
f f H
h
h y
x
1 1
.
仮定: Ch,閉凸集合,下から有界,
∑
≠φ= H
h
Ch 1
int .
仮定 C:Ph(x) 凸,Ch において相対開集合
仮定 Y:Y f,凸閉集合,Y,凸閉集合,
∑
≠φ= F
f
Y f 1
int
仮定M:単調性(monotonicity) x∈Ch かつ z>x ならば zPhx である.
ここで (z1,...,zN)>(x1,...,xN) は zn ≥xn, n=1,...,N,かつ z≠ x を意味する.
また,集合 X ⊂RN の相対開集合 UX とは,集合 RN の開集合 U が存在 して, UX =U∩X となる集合のことである.
宿題:集合 X ⊂ RN の相対開集合ではあるが,もとの集合 RN の開集合では ないような集合の例を図示せよ.
定理10.3.1: 以上の四つのもとでは,どのパレート最適配分も所得移 転を伴う疑似均衡である.
10.4.定理10.3.1の証明と分離定理
配 分 (x1,...,xH,y1,...,yF) を パ レ ー ト 最 適 で あ る と せ よ . 定 義 か ら ,
∑
∑
= ≤ F= ff H
h
h y
x
1 1
なので,ある n について
∑ ∑
=
= < F
f f n H
h h
n y
x
1 1
が成立すると,単調性 の仮定から, (x1,...,xH,y1,...,yF) よりも,パレートの意味で,望ましい実行可 能な配分を作り出すことができる.したがって,
∑ ∑
=
=
= F
f f H
h
h y
x
1 1
(1)
で な く て は な ら な い . つ ま り , 均 衡 条 件 の iii が 成 立 す る . ま た , φ
=
∩Y x x
P( 1,..., H) だから p∈Rn, p≠0,と k∈R が存在して,
∀x∈P(x1,...,xH),∀y∈Y, px ≥k ≥ py. (2)
ここで mh = pxh, h=1,...,H, とせよ.そうすると, (1) から,
p x m p y k
F
f f H
h h H
h
h =
∑
=∑
≤∑
=1 =1 =1である.もし
∑
= <
H
h
h k
x p
1
ならば,仮定 LNS によって, ∆xh ≠0 が存在し,
) ( h
h h
h x P x
x +∆ ∈ ,かつ
∑
≠ + ∆ <
H
h
h
h p x k
x p
1
.
これは x+∆xh ∈P(x1,...,xH) に矛盾する.したがって,
p x m p y k
F
f f H
h h H
h
h =
∑
=∑
=∑
=1 =1 =1である.したがって, ∀z∈Y についても,
∑
= F ≥
f
f pz
y p
1
である.ここで, z∈Y なので,
∑
=
= F
f
zf
z
1
,zf ∈Yf なる zf, f =1,...,F が 存在するので, f 以外の f' について zf' = yf' を選ぶと,どんな zf ∈Y に ついても,
p yf ≥ pzf
が成立する.したがって,均衡の条件 ii が成立することがわかる.さらに,
どんな xPhxh についても,(x1,...,xh−1,x,xh+1,...,xH)∈P(x1,...,xH) が成立する ので,
px≥ pxh
である.したがって,疑似均衡の条件 i が成立する.証明終わり.
10.5.第二定理の証明と安価点の仮定
仮定CP: あたえられた価格 p と配分 (x1,...,xH,y1,...,yF) において,
∃x∈Ch : px< pxh
がすべての h について,成り立つ.
定理10.5.1(厚生経済学の第二定理):パレート最適配分をサポートす る疑似均衡における価格と配分が仮定 CP を満足すれば,競争均衡である.
証明:もしパレート最適配分をサポートする疑似均衡を
e=(x1,...,xH,y1,...,yF,m1,...,mH,p)
とせよ.この疑似均衡が均衡でなければ,ある h と xPxh が存在して,
px= pxh
が成立する.仮定 CP より,どの h についても, z∈Ch が存在して,
pz< pxh
が成立するので, z と x を結ぶ線分上の点 w はどれも w∈Ch であり,
pw<pxh .
さて, P(xh) は相対開集合で x∈P(xh) なので,w を十分 x に近くとると,
w∈P(xh) かつ pw<pxh.
これは e が疑似均衡であることに矛盾する.証明終わり.