論 文
教科教育におけるカリキュラム変遷と教育方法論
―
埼玉県における算数教育の観点から
―福島大学総合教育研究センター
板 橋 孝 幸
は じ め に
2002(平成14)年度から施行されている現行学習指 導要領が改訂され,2011(平成23)年度から小学校,
2012(平成24)年度から中学校において,新学習指導 要領が実施される。これに伴って,今年度(平成21年 度)から移行措置が実施されている。移行措置とは,
就学途中で学習指導要領が変更される児童生徒に対し て,新学習指導要領に移行したとき,未学習項目があっ たり,学習する必要のない学習項目や重複して履修す る学習項目があったりすることを防ぐために行うもの である。
前回の改訂は,学習内容の削除が主であり,余剰時 間数は「総合的な学習時間」への振り替えが容易で あった。しかし,今回の改訂では,前回のいわゆる「3 割削減」による学力低下問題を踏まえて,授業時間数 の増加と内容の見直しが主となった。その帳尻合わせ は,「総合的な学習の時間」と「選択教科等」の時間 数削減によっているようである。主要5教科の授業時 間数が増加しているが,とりわけ算数・数学,理科,
英語の時間数増加が顕著であり,小学校算数16%(142 時間),理科16%(55時間),英語(70時間,5・6年 で新設),中学校数学22%(70時間),理科33%(95時 間),英語33%(105時間)増となっている。一方,「総 合的な学習時間」は小学校35%(150時間),中学校で は最大43%(145時間)減,「選択教科等」の時間は3 年間の移行期間を経て廃止となっている1。2008(平 成20)年1月17日に中央教育審議会は「幼稚園,小学 校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要 領の改善について」を答申した。その中には「5.学 習指導要領改訂の基本的な考え方」として,7項目が
掲げられている2。そのうち,新学習指導要領の授業 時間数増加は「⑤確かな学力を確立するために必要な 授業時数の確保」を取り入れたものである。
現行学習指導要領は,「完全学校週5日制」の下,「ゆ とり」の中で「特色ある教育」を展開し,「生きる力」
を育成することを目指しているが,新学習指導要領で は大幅に変更される。その理由は,児童生徒の学力低 下があげられる。しかも,その傾向は理数科に著しい。
「学力低下問題」というのは,「学習指導要領下におけ る到達度」問題だと思われる。今回の改訂は,「高等 教育を履修するための学力」や「国際的な学力」問題 に焦点を当てているが,「ゆとり教育」を推進してい る現行学習指導要領下でも,このように「落ちこぼれ」
と言われる児童生徒が多数存在することを考えると,
本来この対策をこそ重視すべき必要がある。公教育に おいて,いわゆる「吹きこぼし」問題を「落ちこぼれ 問題」と同列に扱ってよいのだろうか。
歴史的には,この学力格差問題に対しては「習熟度 別指導」や「個別指導」など様々な取り組みが行われ てきた。しかも,それは実態的には高校入学試験や大 学入学試験と直結していた。そのため,新指導要領に 移行する期間は常に複雑な移行措置が実施される。今 回の学習指導要領改訂に際しては,小学校学習指導要 領には,「平成21年4月1日から移行措置として算数,
理科等を中心に内容を前倒しして実施する」と明記 された3。平成20年3月28日付けの通知(19文科初第
1357号)の「2.留意事項」の「⑵ 入学選抜におけ
る学力検査」には,「平成23年度以降に実施する中学 校の入学者選抜における学力検査については,新小学 校学習指導要領に定める各教科の内容が出題範囲とな るよう配慮すること」ともされている。
本稿では,上記のような新学習指導要領も視野に入
れて,その変遷に関する学校現場の対応と乖離を検討 することにより,その中で教師たちが取り組んだ主要 な対象を明らかにすることを目的とする。算数・数学 教育の歴史については,小倉金之助の『数学教育史』,
松原元一の『日本数学教育史』,奥田真丈監修の『教 科教育百年史』における「算数,数学」などの代表的 な研究がある4。これらの研究においては,戦前の算 術・数学教育を対象としたもの,学習指導要領の変遷 に伴い,改訂に関わる社会的背景,目標・学習内容の 改訂,授業時間数の変更等が主要な検討対象となって きた。沖津由紀や橋本吉彦など,近年の研究において も同様である5。各時期の学習指導要領の改訂に伴い,
学校現場の教師たちがどのような課題を抱え,それに 対応しようとしてきたのか,また学習指導要領という 国のスタンダードと現場の乖離をどのように解消しよ うと取り組んできたのか,そこで一貫して現場教師た ちが課題としてきたことは何であったのか。現場の教 師たちが指導してきた方法を検討し,今後のカリキュ ラム改善の一考としたい。
本稿では,埼玉県における算数教育の変遷(適宜中 学数学を含める)について分析検討する。その際,分 析対象は教育月刊誌『埼玉教育』所収論文とする。同 誌は,埼玉県立総合教育研究センターに戦後初期のも のも含め所蔵されており,本稿の目的に合致した論考 が多数掲載されている。分析時期は三期に分けて,① 1947(昭和22)年学習指導要領(試案)〜1958(昭和 33)年学習指導要領まで,②1968(昭和43)年学習指 導要領〜1977(昭和52)年学習指導要領まで,③1989(平 成元)年学習指導要領〜2008(平成20)年学習指導要 領までとする6。
1.「埼玉教育」論文の概要
埼玉県は首都圏に位置するが,東京と比較して近年 まで「駄埼玉」など蔑称が一人歩きする県であった。
県南部は東京都に接し教育意識が高いが,他地域は農 山村が多く比較的温和な風土であったからであろう。
『埼玉教育』は1949(昭和24)年2月,「ニュースクー ル」として創刊され,1953(昭和28)年4月から「埼 玉教育」に改名されて現在に至っている7。「埼玉教育」
は「埼玉県教育の一層の充実・発展を目指し,先生方 の貴重な実践報告を中心に」紙面づくりを企図し続け たという。2008(平成20)年12月号まで,全720冊は,
「教育原理・教育思想」,「学校経営・管理」,「研修」,「教 科・領域」など18<大項目>に分類され,さらに総計
165の「小項目」に細分されている。
大項目<教科・領域>は,「国語―小」,「国語
―中」,「国語―高」など45の「小項目」に分類さ れ,大項目<教科・領域>には,総計2998本,その 内小中高の普通教科に関するものは2391本であった。
また,高校の専門教科・道徳・特別活動などが607本で あった。
表1 『埼玉教育』に掲載された教科別論文数 小学校 中学校 高校 学 校
未区分 教科別 総 数 国 語 182 119 50 115 466 社 会 108 106 67 65 346 算数・数学 116 103 50 27 296 理 科 142 111 54 85 392 音 楽 56 62 12 30 160 図工・美術 78 70 20 3 171 保健・体育 104 77 46 16 243 英 語 2 81 55 1 139 家庭・技術 37 105 36 0 178 校種別総数 825 834 390 342 2391
表1のように,最多の掲載論文は国語で466本(19.5%)
書かれているが,算数・数学は総数296本(12.4%)
であった。小学校・中学校に比べて高校の数が少ない のは,学校数が少ないことにもよるのであろう。なお,
学校未区分論文は,各校種にわたって書かれたもので ある。表2は,各学習指導要領改訂・実施時期とその 各時期に書かれた論文の特徴をまとめたものである。
各時期に書かれた論文名は,年代順に後掲の表3・4・ 5の通りである(高校は略)。
2. 1947 (昭和 22 )年学習指導要領(試案)
〜 1958 (昭和 33 )年学習指導要領まで
⑴ 当該時期における学習指導要領の特徴
周知のように,1947(昭和22)年3月20日「学習 指導要領一般編(試案)」「同 各教科編(試案)」
が発行され,同年4月1日6・3・3・4制度スター トにともない,小学校・中学校は同年から実施され た。教師の手引きとしての性格が付与され,社会科 や自由研究が創設された。当時の新教育の理念から すると,生活経験中心のカリキュラムが望ましいと
表2 学習指導要領と『埼玉教育』の内容変遷
1947(昭和22)年版学習指導要領の特徴 左記の時期における『埼玉教育』の特徴 生活経験中心のカリキュラム
目標「日常の色々な現象に即して,数・量・形の概念を明ら かにし,現象を考察処理する能力と,科学的な生活態度を養 うことである」
時間数「1年:105(3),2年:140(4),3年:140(4),4年:
140‑175(4‑5),5年:140‑175(4‑5),6年:140‑175(4‑5)」
( )は週当たりの授業時間数
論文数:8本
「教育の場は子供の環境であり,教育のいとなみは,子ども の生活を指導するものである」とする,戦後の新しい教育の ねらいに沿った教育の模索
子どもの生活経験を生かした指導法
1951(昭和26)年版学習指導要領の特徴 左記の時期における『埼玉教育』の特徴 1947年版の内容を引き継ぎ,子どもの生活経験を重視する生
活単元学習
教科が4つの大きな経験領域によって編成,時間配当は4つ の経験領域ごとに時間数の占める比率で示す
時間数(国語・算数)「1・2年:45〜40%,3・4年:45
〜40%,5・6年:40〜35%」
論文数:51本
学力差や能力差,基礎学力向上の方法に目が向けられる 生活経験に直結した題材を「単元学習」の教材として使用 大人が使用する尺貫法の廃止が近づき,メートル法を使用し た長さ・面積・体積・重さなどへの単位変換指導
1958(昭和33)年版学習指導要領の特徴 左記の時期における『埼玉教育』の特徴 系統的な学習を重視,指導時間数の増加
「試案」の表示が消え,「文部省告示」という形で公示し,国 家基準性の明確化,法的拘束力が強化
指導目標は,小学校算数科では基礎学力の向上と系統学習に よる指導能率の向上をねらいとして5項目が示された 時間数:「1年102(3),2年140(4),3年175(5),4〜6 年210(各6)」
論文数:64本
「単元学習」から「系統的学習」への転換
科学技術教育と算数の関係をテーマとする論文の登場
「経験主義」 重視の立場も存続
算数・数学授業時間の増加と学業不振児の指導についての問 題を提起
1968(昭和43)年版学習指導要領の特徴 左記の時期における『埼玉教育』の特徴 教育の現代化
時代の進展に対応した教育内容の導入(集合・関数・確率等)
中学校との系統的発展性を重視して水準向上 時間数:1958(昭和33)年版学習指導要領と同じ
論文数:34本
「算数・数学教育の現代化」を反映した論文
「集合」「確率」「科学的な態度」「現代化」などをテーマとし た論文が多い
1977(昭和52年)年版学習指導要領の特徴 左記の時期における『埼玉教育』の特徴 中核的事項にしぼった目標・内容,「現代化」で高度化した
教育内容を精選し削減,「ゆとり教育」へ転換
基礎的な知識・技術の習得,用語・記号の意義と適切な利用 と数学的な考え方を伸ばすことにねらいを置く
時間数「1年:136(4),2〜6年:175(各5)」
1〜3年は週1時間増,4年は同時間,5・6年は週2時 間減
論文数:54本
「算数嫌い」「新幹線授業」と言われた1968(昭和43)年版学 習指導要領の問題を解決するため,「遅れがちな子」や「ゆ とり」を重視
コンピューターを利用した情報処理や教育機器に関する論文 が多く見られる
1989(平成元)年版学習指導要領の特徴 左記の時期における『埼玉教育』の特徴 変化の激しい社会において,生涯を通じて学習し,たくまし
く生き抜いていくための基礎となる能力を獲得するための自 己教育の育成
「情報の理解,選択,処理,創造などに必要な能力」「論理的 な思考力や直観力」の育成を重視
時間数:1977(昭和52)年版学習指導要領と同じ
論文数:8本
「算数科における個人差に応じた指導と評価」,「生き生きと 学ぶ子の育成」,「数学的な見方や考え方の能力を引き出す学 習指導法」など,「ゆとり」を継承しつつ「新学力観」に対 応した論文がみられる
1998(平成10)年版学習指導要領の特徴 左記の時期における『埼玉教育』の特徴 教育内容の厳選
完全学校週5日制,総合的な学習の時間の導入等,「ゆとり」
の中で「生きる力」を育成
「算数的活動」「活動の楽しさ」を強調
時間数「1年:114,2年:155,3〜6年:各150」
全学年において授業時間数の削減(合計869時間)
論文数:25本
「生きる力」につながる「学び」,「考える力」を重視した論文,
算数・数学的活動の楽しさを味あわせる指導の工夫や評価に ついてまとめた論文がみられる
2008(平成20)年版学習指導要領の特徴 左記の時期における『埼玉教育』の特徴 算数的活動の一層の充実
基礎的・基本的な知識・技能を確実に身に付け,数学的な思 考力・表現力を育成
学ぶ意欲を高め,学ぶことの意義や有用性の実感を強調 時間数「1年:136(4),2〜6年:175(各5)」
授業時間数は1989年版に戻り,全学年で増加
論文数:2本
「学ぶ楽しさを味わう算数教育指導法の研究」
「自ら問題解決する生徒の育成を目指して」
いうことになり,算数・数学科は必ずしも適切に位 置づけられず,周辺教科あるいは道具教科の一つと も考えられた8。算数科の目標としては,「日常の 色々な現象に即して,数・量・形の概念を明らかに し,現象を考察処理する能力と,科学的な生活態度 を養うことである」と明示されている。
第2回目の改訂は,1951(昭和26)年7月10日に なされた。「試案」はそのままであり,内容も引き 続き子どもの生活経験を重視する生活単元学習の学 習指導要領であった。小中高ともその年から実施さ れた。小学校の教科と時間配当については,教科が 4つの大きな経験領域によって編成されることにな り,時間配当については4つの経験領域ごとに時間 数の占める比率で示すことになった。算数は国語と 同じ領域に入り,目標も「社会的な目標」と「数学 的な目標」の2つの観点から示されていた。1950年 代後半に入り,高度経済成長政策と連動しながら,
学校教育はその科学技術を担う人材育成を進めるた めに,能力適性に応じた教育が重視されるように なっていった。
第3回目の改訂は,1958(昭和33)年10月1日に なされた。「試案」の表示が消え,「文部省告示」と いう形で公示し,国家基準性の明確化,法的拘束力 が強化された。小学校は1961(昭和36)年,中学校 は1962(昭和37)年から実施。基礎学力充実,科学 技術教育,能力・適性に応ずる教育が重視された。
特に,①国語・算数に関する基礎学力の向上を主眼 とし,それらの内容を充実し,指導時数を増加した。
②科学技術教育の向上を図り,算数・理科の内容の 充実を図った9。指導目標は,小学校算数科では基 礎学力の向上と系統学習による指導能率の向上をね らいとして5項目が示された。とりわけ,算数・数 学関係者は,第5項目に明示された「数学的な考え 方や処理のしかたを,進んで日常の生活に生かす態 度を伸ばす」における「数学的な考え方」の用語に 注目し意義を高く評価している10。算数科の位置づ けが高められ4年生以上が週6時間となり,国語に 次ぐ時数が確保された。学習指導要領改訂に関して は,「基礎学力と系統的知識の不足をもたらした経 験主義をやめて,系統性重視の教育課程に改善した ことは当然である」と,基礎学力の低下と経験主義 を結びつけ,方針の転換を肯定的に捉える論調も多 かった11。
⑵ 当該時期における「埼玉教育」の特徴
1947(昭和22)年, 1951(昭和26)年,
1958(昭和33)年の小学校学習指導要領下における 論文数(便宜上中学数学関係論文も含む)は,それ
ぞれ 8本, 51本, 64本,総計123本であった。
その特徴は,次のようであった。
期の学習指導要領下では,戦後の「新教育にお ける算数」「算数教育の諸問題」「算数の単元学習」
など,「教育の場は子供の環境であり,教育のいと なみは,子どもの生活を指導するものである」とす る,戦後の新しい教育のねらいに沿った教育を模索 している。そのため,子どもの生活経験を生かした 指導法などが取り上げられている。 期に入ると,
「遅進児の指導」「算数の基礎学力指導」「基礎学力 の強化」「能力差に応じた学習指導」「個人差の指導 と実態」など学力差や能力差,基礎学力向上の方法 に目が向けられている。また,「分数教材の難点と 指導のコツ」「計量測定教材の難点と指導のコツ」「教 材 租税 のねらい」「生活の美化」など生活経験 に直結した題材を「単元学習」の教材として使用し ている。大人が使用する尺貫法の廃止が近づき,メー トル法を使用した長さ・面積・体積・重さなどへの 単位変換指導に苦慮している。 期には「指導内容 の系統性と近代性」「経験にたつ算数指導」「科学技 術と算数」「数学教育の現代化」「知識習得のさい生 活経験がもつ役割」「数学と技術教育の関連」「生徒 の実態からみた中学校数学教科書の問題点」などが 取り上げられ,「単元学習」から「系統的学習」へ と転換が図られている。科学技術教育と算数に目を 向けた論文が現れたのも特徴である。一方,「経験 主義」 重視の立場も存続し,算数・数学授業時間の 増加と学業不振児の指導についての問題も提起され ている。
この3つの小学校学習指導要領期における論文で は,具体的にはどのようなことが問題とされ,解明 されようとしていたのであろうか。まず,「算数の 基礎学力指導」の論文を見てみよう12。この論文の 大意は,次のようなものであった。
我々が算数指導を考えるとき,第一に思い浮か ぶのは計算ということである。ここ4・5年計算 力=算数学力とみての学力低下の論議が相当あっ た。次に,日常生活において計算を使用するとき,
量的知識も計算力と並行して,基礎学力といわね ばならない。また,日常の問題に直ちに取り組む
表3 1947〜1958年学習指導要領期の『埼玉教育』に掲載された算数・数学教育論文
〔算 数〕
1.新教育における算数(昭和25.2)
2.算数教育の諸問題(昭和25.2)
3.算数の単元学習(昭和25.2)
4.学習指導案 四年算数単元学習の指導案(昭和25.2)
5.小学五年算数科指導案(昭和25.2)
6.実力をつける算数指導の根底(昭和25.9)
〔算数・数学教育〕
7.小中学校における珠算教育(昭和26.4)
〔中学 ― 数学〕
8.中学数学科指導案―3年2月教材―(昭和25.2)
表3−1 1947(昭和22)年版学習指導要領期の論文
〔算 数〕
9.四則計算における遅進児の指導(昭和28.2)
10.二年生のひき算 問題解決指導について(昭和28.4)
11.算数の基礎学力指導(昭和28.7)
12.算数教育課程の諸問題と改造(昭和29.1)
13.算数・数学の教材研究 夏休みの日課―新しい単
元の指導に当たって―(昭和29.7)
14.夏休みの計画(昭和29.7)
15.算数における個人差の実態と指導(小学校)
(昭和29.12)
16.分数教材の難点と指導のコツ(昭和30.1)
17.計量測定教材の難点と指導のコツ(昭和30.1)
18.具体から数化への減法指導試案(昭和30.3)
19.指導のための調査はどのようにしたらよいか (昭和30.6)
20.基礎学力の強化 特に計算指導(暗算指導の系統)
の実際について(昭和30.7)
21.学習指導要領(算数編)改定についての注文 (昭和30.7)
22.情報九九指導の史的考察と国際的検討(昭和31.2)
23.情報九九の体系と指導(昭和31.11)
24.算数教科書と学習―小学校一年を中心として―
(昭和32.8)
25.算数指導と教科書(昭和32.8)
26.文章題と作問指導(昭和33.7)
〔算数・数学教育〕
27.数学を研究する人のために(昭和26.8)
28.個人差に応じた数学科学習指導(昭和27.9)
29.算数・数学科学習指導の新生面(昭和28.4)
30.まだ解決されていない(昭和28.4)
31.小学校と中学校の算数(数学)科の学習には,どん な不連続点が考えられるか(昭和31.2)
32.算数・数学教育の立場から(昭和32.4)
〔中学 ― 数学〕
33.中学校数学科能力差に応じた学習指導(昭和27.9)
34.中学校数学科能力差に応じた学習指導㈡―整数四
則計算の基礎能力調査―(昭和28.1)
35.中学校数学科能力差に応じた学習指導㈢―分数計
算の基礎能力調査―(昭和28.2)
36.中学校数学科能力差に応じた学習指導㈣―小学校
計算基礎能力の実態と之が対策―(昭和28.3)
37.教材 租税 のねらい―中学校の数学指導―
(昭和28.4)
38.中学校数学科能力差に応じた指導㈤―問題解決能
力の一研究―(昭和28.4)
39.中学校数学科能力差に応じた学習指導㈥―数学的
態度及び習慣の一研究―(昭和28.6)
40.数学科教育課程の諸問題と改善(中学校)
(昭和29.1)
41.能力別指導の問題点(昭和29.4)
42.基礎学力(数学)から見た中学校における学習遅滞 児(昭和29.5)
43.算数・数学科 学習の抵抗点とその指導(昭和29.5)
44.数学教科書使用上の問題点(昭和29.6)
45.中学校数学科 教育課程の改造―数学教育の反省
と将来(昭和29.6)
46.生活の美化―形の観察とその表し方―
(昭和29.7)
47.数学における問題の解決と学習(昭和29.11)
48.数学における個人差の実態と指導(中学校)
(昭和29.12)
49.事実問題の難点と指導のコツ(昭和30.1)
50.図形教材の難点と指導のコツ(昭和30.1)
51.教育における実験研究のあり方(昭和30.6)
52.数学科(算数科)に望まれる当面の研究課題 (昭和30.6)
53.書かれた問題の指導はどうしたらよいか(昭和30.7)
54.旭中学校における数学教育研究会(昭和30.10)
55.生活に浸透する数学教育(昭和31.8)
56.目的達成のための単元学習展開と数学のねらい (昭和31.11)
57.数学科学習の反省調査の考察(昭和32.3)
58.米国中等学校の数学教育における診断と治療 (昭和32.7)
59.三角定規の再認識とその効用(昭和32.10)
表3−2 1951(昭和26)年版学習指導要領期の論文
〔算 数〕
60.作問指導の反省(昭和33.10)
61.文章指導の研究(昭和33.10)
62.作図の指導について(昭和33.10)
63.どのように文章題は指導したらよいか(昭和34.3)
64.小学校における求積教材の指導と改訂学習指導要領 (昭和34.6)
65.関数観念について(昭和34.6)
66.経験にたつ算数指導―図形指導の実際を通して―
(昭和34.7)
67.文章題における図解指導について(昭和35.5)
68.算数の系統化について(昭和35.12)
69.教具の工夫―立体図形指導におけるつまづきを正
す教具の工夫とその実践(昭和36.12)
70.小学校図形指導について―図形指導の一試案―
(昭和37.10)
71.ことばの式の指導について(昭和37.10)
72.数と計算についての問題点(昭和37.10)
73.フランスの算数教育(昭和38.10)
74.比の素地指導(昭和38.10)
75.知識習得のさい生活経験がもつ役割(昭和39.4)
76.4年生の平面図形の指導(昭和39.4)
77.数と量の理解と指導(昭和40.1)
78.四角形における特殊・一般の指導(昭和40.1)
79.小学校における図形概念の指導(昭和40.1)
80.低学年における図形概念の素地指導(昭和40.1)
81.代数的構造をもった文章題の指導(昭和41.1)
82.予想―実証の過程を重視して(昭和41.2)
83.文章題指導について(昭和41.3)
84.わが校の算数指導の実践を省みて(昭和41.3)
85.割合概念の育て方(昭和41.5)
86.授業研究一年の歩み(昭和41.10)
87.文章題解決のために(昭和41.10)
88.算数科における思考力の評価(昭和42.7)
〔算数・数学教育〕
89.算数・数学教育の問題点(昭和33.10)
90.算数・数学の問題点とその対策(昭和33.10)
91.指導内容の系統性と近代性―これからの教育を推
進するために―(昭和34.6)
92.アメリカの算数教科書から―自国の認識と国際理
解への芽生え―(昭和34.11)
93.科学技術と算数(昭和35.5)
94.図形教材の指導はどのようにしたらよいか (昭和36.8)
95.数学科における学業不振児の指導について (昭和37.2)
96.質疑応答〔算数・数学について〕(昭和38.10)
97.算数・数学科における一般化の指導(昭和39.6)
98.図形概念の形成上の問題とその対策(巻頭論文)
(昭和40.1)
99.問題はなぜ解けたか(昭和40.4)
100.珠算教育の比較研究(昭和40.10)
〔中学 ― 数学〕
101.論理的指導と文章問題指導(昭和33.10)
102.統計とグラフ(昭和33.10)
103.論証指導上の問題(昭和33.10)
104.算数・数学教育随想 指導要領改訂に想う (昭和34.6)
105.中学校一次関数の教材について(昭和34.6)
106.メートル法実施と数学教育(昭和34.6)
107.数学基礎学力テスト結果報告(昭和34.2実施)
(昭和34.6)
108.中学生の数学学習能力をのばすために(昭和35.5)
109.中学校数学科基礎学力テスト結果報告(昭和35.10)
110.生徒の実態から見た中学校数学教科書の問題点 (昭和35.12)
111.数学と技術教育の関連(昭和36.3)
112.放課後の研究会(昭和36.8)
113.埼玉県中学校数学科基礎学力テスト結果報告 (昭和36.9)
114.数学教科書を使っての問題点(昭和36.12)
115.直観から論証へ―中学校図形教材とその指導―
(昭和37.10)
116.教材研究・中学校関数教材の重点(昭和38.10)
117.中学校導入テストの考察(昭和39.11)
118.累積評価をねらいとした数学カードの作成と活用 (昭和40.1)
119.中学校第2学年の図形の論証(昭和40.1)
120.図形の定義と性質(昭和40.1)
121.論証指導における実践上の問題点(昭和40.5)
122.集合の考えをとりいれた学習指導(昭和42.1)
123.正多面体の指導(昭和42.10)
表3−3 1958(昭和33)年版学習指導要領期の論文
ためには,考えのすじ道をたてる仕事がなければ,
解決は望めない。この3つのものが容易に,正確 につかえるとき,生活場面に起こる断片的で偶発 的な問題がはかれるとの認識で,子どもの実態を 調べたものである。6年生が対象であった。計算 力・量的知識・数概念についてテストした。「計 算力」については,二位数で三位数をわる割り算 の誤答者について検討した。そのつまずきは,い いあわせたように,乗法九九が不完全で,減法(繰 下り)のわからない者だった。発音の類似してい るものを混同した。具体的な経験を通して関係を 指導し,成功感を味合わせたところ誤答者は激減 した。計算の指導は練習一辺倒ではなく,算法の 意味の理解と数の理解を確実にさせることを心が けたい。「測定」は㎏と貫,gと匁の換算で行った。
単位関係の分かりにくさは,形としてつかめれば 相当弱められるのではないかとの推定で,弁当な ど具体的なもので作業をさせた後ペーパーペンス ルだけの練習としたが,効果が上がった。「数概念」
では,数の概念把握を問題とした。数の概念把握 は,一つの例での指導ではなくあらゆる面から実 例を挙げ指導し,概念を教えるより覚えるよう心 がけるべきである。最後に「問題解決」について は,読みが分からないという困難のためにつまず く子どもよりも,問意,条件分析に困難を感じて 後,すべてつまずく者が,圧倒的に多い。指導方 法を創意工夫し,診断と治療の反復が必要である。
又学習したくなる環境に入れて,学習を遊びとし て自発的に展開するように努力したい。
「文部省指導要領の学習内容の6年の教材をなる べく全部盛るように問題を作成して,時間を限らず にテストした」とも書かれており,まさに生活単元 学習の成果を測れるものであろう。その分析結果に よれば,最も力を注がなければならないのは計算力 であり,低学年で学ぶ数の理解を確実にすることで ある。低学年でつまずくと,高学年になればなるほ ど算数の学力は伸びないというのである。このこと は,生活単元学習が主流の時代であっても,多くの 教師は系統学習的方法の必要性を理解していたと いってよいだろう。
次に,「算数・数学の問題点とその対策」の論文 を見てみたい13。1958(昭和33)年4月26日,入間 地方で小中学校(127校)の学力調査を実施した。
その概要および小学校各学年の問題点と対策は,次
のようであった。概要は,①高学年にいく程成績が 悪くなる,②低学年では,測定,図形の成績が悪い,
③全般的に文章題の結果が悪い,④計量指導が不徹 底である,⑤立式が困難である,⑥大きな数の概念 が不確実である,⑦中学校では,歩合,論証の成績 が悪い,であった。各学年における問題点と対策は,
次のようなものであった。
1年→問題「コップ(二つの絵)の2倍はどれで しょうか。(コップの6,5,4,絵)より 選ぶ(正答率57.4%)」,(考察と対策)倍 の意味が分からないと思われる。倍の意味 をはっきりさせるには,基準数に対しての 2倍・3倍であることを理解させたい。
2年→問題「8じ5ふんまえのじこくにしましょ う。短針をかき入れた時計の絵(正答率 38.0%)」,(考察と対策)5分前を5分過 ぎと解した誤りが多かった。時刻の前後は なかなかわかりにくい。基準をはっきりさ せ,その基準に対して前後を明確にすべき である。教室においても指導した用語は機 会あるごとに使ったり,使わせるよう工夫 したい。
3年→問題「つぎの文の正しい方に○をつけま しょう。ちょっけいははんけいの1/2で す。ちょっけいははんけいの2ばいです。
(中心,半径,直径を書いた絵)(正答率 42.0%)」,(考察と対策)半径と直径を混 同している。1/2と2倍の意味がはっきり 理解していない。半径や直径が中心や円周 に対してどんな関係にあるかをつかませな ければならない。「半径の半は半分の半で ある」というように記憶させたい。
4年→なし
5年→問題「次ぎの□にあてはまる数を入れま しょう。⑤1㎡=□㎠,⑧1㎥=□kl(正 答率⑤21.7%,⑧23.3%)」,(考察と対策)
一般に単位の換算は成績が悪い。特に面積,
体積の単位の換算は甚だしい。これは複雑 であることも一つの理由であるが,面積体 積が長さをもとにしているため,長さと混 同し易いためと思われる。⑤は図で1㎡の 正方形と大きさで考え,その中に1㎠の大 きさの正方形を描く,⑧は計量教材のリッ トルを導入するとき,枡を作製することを
提唱したい。その体験は強く残るもので ある。
6年→問題「千分の一の地図で1辺が2㎝の正方 形の面積は実際には何㎡でしょう。(正答 率12.5%)」,(考察と対策)極めて結果の 悪い問題である。2×2=4 4×1000=
4000 4000㎠=40㎡ こうした誤りが非常 に多い。縮尺は長さに関したもので,面積 に関したものではないという基本的な理解 が不足している事を示している。面積の単 位関係と長さの単位関係の混同を避けるた めには教室の縮図や地図の拡大等を指導す るとき,強く印象付けておく必要がある。
この論文は,新しい小学校学習指導要領告示をす る半年前に県南西部地域で実施した算数数学の学力 調査の概要報告書である。当時「生活単元学習」へ の批判が高まっていたが,学力調査の結果は批判の 論拠の一つとなったであろう。概要の1番目に「高 学年にいく程成績が悪くなる」とあり,教師に改め て「生活単元学習の学習指導要領」から「系統学習 の学習指導要領」への正当性を刻み付けたのではな かろうか。小3の問題に「はがき6枚と8円切手7 まいを買って100円さつではらえばおつりはいくら でしょうか」という問題があり,式と答の正答率は それぞれ21%,26%であった。葉書1枚が5円であっ たが,気が付かない子が多かったという。式も複雑 すぎるが「生活経験重視学習」の欠陥とは言えない だろうか。
さらに,「予想―実証の過程を重視して」の論 文を考察する。同論文の大意は,次のようなもので ある14。
授業にのぞむにあたって,事前に立案するわけ であるが,教師の一方的なおしつけになりがちで ある。表面的には児童に理解されたかに見えて も,結果のみの学習の学び取りであり,記憶した にすぎず,新しい事態に当面したときには,今ま での学習が生きて働く力となっていないことに気 づく。大切なことは,その結果を導くまでの過程 であると思う。数学的な概念や原理を本当に自己 のものとするためには,自主的・創造的に学習す ることが必要であるとの問題意識を持って,立体 の体積を求める学習を行った。学習過程を6つに 分解し,①問題の分析(どんな問題か),②問題
点の把握(解決の方策),③解決の予想(手がか りをつかむ),④解決をはかる(用語や記号やこ とば等でまとめる),⑤適用をはかる(同じ考え を用いて解ける問題を作る),⑥まとめる(問題 類型の関係を明らかにして一般的にまとめる)授 業を展開した。考察とまとめでは,問題を予想の もとに検証していくと意欲的に取り組めた。直観 も働かせやすい問題では能力の低い児童も授業に 参加できた。既習の概念や原理との共通性を探さ せるとよい。予想―検証―一般化の過程を重 視することが大切である。
これは,主として「昭和33年10月告示小学校学習 指導要領」の「算数科の目標4,数量的なことがら や関係について,適切な見通しを立てたり筋道を立 てて考えたりする能力を伸ばし,ものごとをいっそ う自主的,合理的に処理することができるようにす る」を適用しているといってよい。算数の系統的学 習を通して培われた学力を使っての「問題解決学習」
実践例であるが,「能力の低い」児童も授業に参加 させる方法論として工夫が見られるといえる。
3. 1968 (昭和 43 )年学習指導要領 〜 1977 (昭和 52 )年学習指導要領まで
⑴ 当該時期における学習指導要領の特徴
1968(昭和43)年7月11日に第4回目の小学校学 習指導要領が改訂され,1971(昭和46)年から実施 された。より高度で科学的な教育を展開するため「教 育の現代化」が謳われた。とりわけ,算数数学と理 科が「教育の現代化」を最も反映し,「算数数学教 育の現代化」という形で現れた。すなわち「基本的 な事項に内容を精選し,児童の負担を軽減すること と,数学教育の進歩に応じ,集合,関数,確率など の小学校としては新しい概念を導入し,算数教育の 現代化にふさわしい改善を行うこと」が目指された のである15。こうして中学校との系統的発展性を重 視した水準向上策がとられ,詰め込み教育強化がい われた。そのため,授業を理解できない児童・生徒 が増加し,「学業不振児に対する配慮」もせざるを 得なかった。
第5回目の改訂は,1977(昭和52)年7月23日に なされた。知・徳・体の調和の取れた人間性の育成,
基礎的・基本的事項と教育内容の精選,ゆとりのあ る充実した学校生活,教師の自発的な創意工夫の4
点が基本方針とされた。算数科の目標は,「数量や 図形について基礎的な知識と技能を身につけ,日常 の事象を数理的にとらえ,筋道を立てて考え,処理 する能力と態度を育てる」であった。基礎的な知識・
技術の習得,用語・記号の意義と適切な利用,数学 的な考え方を伸ばすことにねらいが置かれていた
16。この学習指導要領は前回までの学習指導要領か ら大きな転換が図られ,いわゆる「ゆとり教育」へ と舵が切られた。算数では1〜3年までは週1時間 の増加があったが,4年は同時間,5・6年は週2 時間減となっている。「現代化」で高度化した教育 内容を精選し削減したのである。
⑵ 当該時期における「埼玉教育」の特徴
1968(昭和43)年, 1977(昭和52年)年の小
学校学習指導要領下における論文数(便宜上中学数 学関係論文も含む)は,それぞれ 34本, 54本,
総計88本であった。その特徴は次のようであった。
期の指導要領下では,「能力差に応じた算数指 導」「科学的な態度を育てる算数科の指導」「事象を 数理的に捉える能力を育てる授業」「教育機器の利 用」「確率の歴史」「位相的見方の指導」など,「算数・
数学教育の現代化」を反映した論文が目立つ。論文 名に「集合」「確率」「科学的な態度」「現代化」な どの文言が現れる。 期の指導要領下では,「ゆと りと充実をめざした算数指導」「算数・数学の評価」
〔算 数〕
124.子どもの主体的学習活動を目ざして―算数指
導―(昭和43.10)
125.算数教育の現代化にともなう評価の改善について (昭和43.11)
126.数学的な考え方をのばすために―算数―
(昭和43.12)
127.能力差に応じた算数指導(昭和45.10)
128.算数科における児童の学習不満(昭和47.6)
129.自己評価を生かした学習指導―算数科―
(昭和48.6)
130.算数科における教育機器の利用―有効な位置づけ
を求める視点―(昭和49.6)
131.科学的な態度を育てる算数科の指導 低学年の事例 (昭和50.2)
132.転移力を育てる算数科の指導(昭和50.5)
133.わかる喜びを与える授業―小学校算数科―
(昭和50.9)
134.事象を数理的にとらえる能力を育てる指導―二次
元表の活用(小6)―(昭和50.9)
135.つまずきを生かすには―小学校・算数―
(昭和51.5)
136.問題の発見・解決の意欲をどう育てるか―算数の
学習を通して―(昭和51.12)
137.学習方法を身につけさせる指導―小学校算数科に
おいて―(昭和52.7)
〔算数・数学教育〕
138.数学教育の現代化(座談会)(昭和43.9)
139.図形の見方を豊かに(昭和46.5)
140.確率の歴史(昭和49.11)
〔中学 ― 数学〕
141.学習過程の再検討―中学校数学科の導入・展開・
整理―(昭和43.9)
142.確率の実験(昭和45.2)
143.学習プログラムの作成―集合―(昭和45.10)
144.思考を深める学習―数学科―(昭和45.12)
145.K式ドリル―四則練習―(昭和46.10)
146.数学における学習の個別化―教育機器を中心とし
て―(昭和47.6)
147.授業展開と生徒の反応―数学の授業を通して―
(昭和47.6)
148.ゴムとはりがね(昭和47.6)
149.今日は勉強したぞ!―図形領域を題材にして―
(昭和48.6)
150.位相的見方の指導(昭和49.5)
151.数学科における学習指導検討の視点―生徒の実態
を見つめて―(昭和49.6)
152.科学的な指導過程をとおして 中学校数学科 (昭和50.2)
153.「考える」授業の工夫―中学校・数学―
(昭和50.9)
154.一般化する能力の実態とその指導―中学校数学科
において―(昭和51.5)
155.数学指導における OHP の活用―図形の指導事
例―(昭和51.7)
156.はつらつと学習活動をさせるために―中学校数学
の学習―(昭和51.12)
157.課題設定による学習意欲を育てる指導―中学校数
学の指導を通して―(昭和52.7)
表4−1 1968(昭和43)年版学習指導要領期の論文
表4 1968〜1977年学習指導要領期の『埼玉教育』に掲載された算数・数学教育論文
〔算 数〕
158.ゆとりと充実をめざした算数指導(昭和53.1)
159.学習と評価の一体化を目ざして―小学校算数の授
業―(昭和53.2)
160.算数科における授業の診断と改善(昭和53.2)
161.算数指導の充実を求めて(昭和53.4)
162.算数の学習に意欲的に取り組ませるには (昭和53.5)
163.生きて働く知識・技能の定着を図る指導―小学校
算数科において―(昭和53.6)
164.数理的にとらえる能力や態度を育てる指導―小学
校算数科において―(昭和53.6)
165.数量や図形の概念の理解を図るには(算数)
(昭和54.5)
166.遅れがちな子どもの算数指導(昭和54.6)
167.小学校算数における学習を生かす発問の工夫 (昭和55.8)
168.日常の事象を数理化させる試み―表とグラフの指
導を通して―(昭和56.1)
169.児童の変容と到達度評価―分数×整数の計算の確
かな理解を目指して―(昭和56.5)
170.観点別評価を生かした算数指導(昭和57.5)
171.ちえ遅れの子の「数と計算」指導(昭和57.12)
172.考える自由度のある問題づくりを目指して (昭和58.5)
173.算数の遅れる子どもの指導(昭和58.6)
174.一人一人を生かした授業を目指して(昭和58.10)
175.基礎・基本を踏まえた学習指導のあり方 (昭和59.1)
176.算数科における教材と発問の工夫(昭和59.7)
177.考える力を育てる算数学習(昭和59.9)
178.学力差を考えた授業の工夫(昭和60.12)
179.問題解決能力の向上をめざした算数指導 (昭和61.12)
180.情報処理能力を育てる算数指導(昭和62.1)
181.算数科におけるコンピュータ利用学習の一事例 (昭和62.1)
182.自らの力で学ぶ子どもを育てる(昭和62.12)
183.算数科における情報処理能力の育成と問題解決学習 (昭和63.1)
184.自ら考え,学びとる力を育てる算数指導 (昭和63.12)
185.教育機器としてのコンピュータ利用(昭和64.1)
〔算数・数学教育〕
186.算数・数学の評価について(昭和55.5)
187.遅れがちな子の指導(数学)(昭和56.5)
188.「学習の遅れがちな子」の指導法(巻頭論文)
(昭和59.7)
〔中学 ― 数学〕
189.学習指導の改善と充実を(昭和53.4)
190.わかる喜びに満ちた教室をめざして―中学校数学
科の学習指導―(昭和53.6)
191.自ら学ぶ態度を育てるために―数学の授業を通し
て―(昭和54.6)
192.中学校数学におけるグループ指導の試み (昭和55.8)
193.数学科における一斉授業の改善(昭和56.9)
194.「基礎・基本」をおさえ考える力を養う授業 (昭和57.1)
195.自力解決の場を重視した指導過程の工夫 (昭和57.5)
196.基礎学力の定着を図る指導法の工夫(昭和58.1)
197.つまづきの発見と指導(昭和58.1)
198.充実感を味わわせる学習指導とその評価 (昭和58.6)
199.わかる喜びを味わわせるための評価活動 (昭和58.6)
200.意欲を高める発問と助言(昭和58.10)
201.コンピュータを利用しての補習授業(昭和60.3)
202.パソコンを利用しての図形指導(昭和60.3)
203.教育相談の立場から見た授業展開(昭和60.5)
204.充実した数学科学習を成立させるための研究 (昭和60.10)
205.魅力ある授業づくり(昭和60.12)
206.情報処理能力の育成を目指した授業の工夫 (昭和62.1)
207.学習意欲を高める授業(昭和62.12)
208.数学科におけるCAIの実践(昭和63.1)
209.学ぶ意欲を持たせる授業(昭和63.5)
210.方略を重視した学習指導(昭和63.5)
211.コンピュータの教育利用(昭和64.1)
表4−2 1977(昭和52年)年版学習指導要領期の論文
「遅れがちな子供の算数指導」「自ら学ぶ態度を育て るために」「情報処理能力を育てる算数指導」「教育 機器としてのコンピュータ利用」「パソコンを利用 しての図形指導」など,「遅れがちな子」や「ゆとり」
を重視した論文,情報処理や教育機器に関する論文 が登場する。では,この時期における論文では,具 体的にどのようなことが問題とされ,解明されよう としていたのであろうか。
まず,「能力差に応じた算数指導」の論文を見て みよう17。「算数においては他教科と比較して一般 的に能力差が大きい傾向が見られる」ので「毎日の 授業のなかで,能力差に合致した的確な方向づけを 児童ひとりひとりに与えることは困難である」が,
「だれもが能力に応じ,せいいっぱい実力をだし算 数の学習に取り組む過程は大切であり,考えてやり たい」との問題意識を持っている。児童の能力差に 応じて指導に当たるには,あらかじめ学級における 能力差の実態を確実に把握しておくことが重要であ り,子どもたちが自主的に学習にとりくみ,発見的 に学習を進められるような指導方法が必要である。
例えば,実際の授業では効果的な方向づけを与える 机間巡視の活用と援助,個別指導・一斉指導・グルー プ指導の組み合わせが考えられる。教師は,子ども たちの理解の仕方,まちがい方は多様であることを 知るとともに,子どもたちがおのおのの能力に応じ て創造的に工夫し,発見の喜びを味わいながら,意 欲的に問題に取り組む態度を育てることが大切であ るとまとめられている。鳴り物入りで打ち出された
「算数数学教育の現代化」は,学習指導要領告示後 程なくして現場に混乱をもたらしたようである。「能 力差の大きい算数科の実態を効果的に指導する方 法」が,常に職員室で討議されていたということか らも窺える。その格差の大きい算数・数学科にこそ 集合・関数・確率などの新しい概念が導入され,「教 育の現代化」が進められたのであるから,教師は「分 からない場合は,あの手この手で攻めることも」必 要だったのであろう。
次に,「遅れがちな子供の算数指導」の論文を見 てみたい18。同論文執筆者の勤務校は,「落ちこぼ れ」に焦点をあてて一人一人の能力を高める算数の 学習指導法について研究を続けている。筆者は,「能 力の低い子どもがその子なりに学力をつけていると き,遅れがちな子どもと決めつけるには問題がある。
私は,遅れがちな子どもを,子どものもつ能力,適 性からみて学習目標に対する到達度の低い子ども」
と捉え,遅れがちな子どもの様子を,①知識,理解 が低い子ども,②計算が確実でない子ども,③思考 が遅い子ども,④算数がきらいな子ども,⑤学習以 前に問題がある子ども,と分類している。学習の遅 れがちな子どもを出さないために,次の4点を実施 している。①「個々の子どもの理解」では,算数の 好き嫌いの意向調査・観察・知能検査・計算力テスト・
家庭での生活調査。②「学習指導における評価活動」
では,授業を計画する段階・実施する段階・終了し た段階での評価。③「遅れがちな子供の特別指導」
では,全職員あげての放課後計算力の指導。④「父 母の理解と協力」では,連絡カードを通しての家庭 における補習のお願い。実践例として,4年の「大 きさの比べ方」が掲げられており,上記4点の実施 により,ほぼ全員が学習目標に到達することができ たと記されている。「遅れがちな子供の学力をつけ ることは,個別指導や事後指導に負うところが大き いが,一人一人のよさを認め合う学級の雰囲気づく りこそが,遅れがちな子供を出さない教育のスター トである」と,まとめている。この論文においても,
落ちこぼれ児童生徒の問題が取り上げられている。
この学校は,一学級あたり30名前後の少人数学習が でき,6年間組替えのない小規模な学校である。児 童の理解も指導もしやすい状態にある小学校といっ てよい。しかし,このような特徴を生かして授業を しても学習に遅れる子どもが出がちであるというの は,「詰め込み主義」といわれるほどの,現実を無 視した学習指導要領の方針そのものに問題があった と考えられる。「ゆとり教育」へ大転換した,1977(昭 和52)年版小学校学習指導要領の告示後であったか ら書かれた論文だったのだろう。
さらに,「問題解決能力の向上をめざした算数指 導」の論文では,次のように述べられている19。筆 者は問題解決学習の良さを,「体験を積み重ねるこ とにより問題解決能力が質的量的にも豊富になり,
その能力が新しい問題を解決できるという相互作用 の働きを持つ点」と捉えている。また,これからま すます発達していくコンピュータシステム等をとり 入れた教育機器の活用ともあわせ,よりよい教育方 法であると考えているが,問題点として次の3点を あげている。①時間不足になりがちである。②ねら いとする知識・技能の徹底,習熟が甘くなりがちで ある。③教師側に力量不足が多い。そこで,問題解 決能力を高める工夫として5点あげている。①問題 の工夫においては,低学年では日常生活に関連した
問題,高学年に進むにつれて児童の好奇心を高める 問題。②問題把握の工夫では,要素相互の関係理解 を具体的操作・映像化・記号化して把握させる。③ 自力解決段階の指導の工夫としては,自力解決の時 間を確保することが大切。④練り上げ段階の指導の 工夫としては,発表の仕方や順番を考慮し低い水準 の児童にも満足感を与える。⑤習熟・発展段階の工 夫では,確実に身に付くよう時間を十分とることが まとめられている。授業実践例として「比例」の問 題が掲げられている。高度化した「教育内容」のた め,大量の学力不振児を出した「教育の現代化」の 手直しで生れた,1977(昭和52)年版学習指導要領 の基本方針の一つである「教師の自発的な創意工夫」
と「問題解決学習」の再認識とが合致してこの授業 方法が取り入れられたようである。しかし,問題解 決学習の指導方法といっても,実際はどのような指 導方法なのか十分理解できておらず,その工夫の一 助として書かれた実践例である。筆者は,畢竟算数 の指導には,基礎・基本的内容の理解の徹底をこそ 重要と言いたかったようである。
4. 1989 (平成元)年学習指導要領 〜 2008 (平成 20 )年学習指導要領まで
⑴ 当該時期における学習指導要領の特徴
第6回目の改訂は,1989(平成元)年3月15日に なされた。打ち出された方針は,「心豊かな人間の 育成」「自己教育力の育成」「基礎・基本の重視と個 性教育の推進」「文化と伝統の尊重と国際理解の推 進」の4つであった。小学1・2年の理科社会を廃 止して,生活科が設置された。とりわけ,変化の激 しい社会において,生涯を通じて学習し,たくまし く生き抜いていくための基礎となる能力を獲得する ための自己教育の育成が改善のねらいとされた。算 数・数学の改善の基本方針は,「情報化などの社会 の変化に対応し,論理的な思考力や直観力を育成す る観点」からまとめられた。算数科の目標は,「数 量や図形についての基礎的な知識と技能を身につ け,日常の事象について見通しをもち筋道を立てて 考える能力を育てるとともに,数理的な処理のよさ が分かり,進んで生活に生かそうとする態度を育て る」とされ,算数科において育成する能力や態度に ついて大綱的に示したものであった20。
第7回目の改訂は,1998(平成10)年12月14日に なされた。受験競争の過熱化,いじめや不登校の問
題,学校外の社会体験の不足などに対処するためで あった。打ち出された方針は「豊かな人間性や社会 性,国際社会に生きる日本人としての自覚の育成」
「自ら学び,自ら考える力の育成」「ゆとりのある教 育活動を展開する中で,基礎・基本の確実な定着を 図り,個性を生かす教育の充実」「各学校が創意工 夫を生かし特色ある教育,特色ある学校づくりを進 める」の4点であった。算数科改善の基本的な考え 方は,①ゆとりの中での基礎・基本の確実な定着,
②楽しさと充実感のある学習,③児童の主体的な活 動の重視,とされ,算数科の目標は大綱的に次のよ うに示された。「数量や図形についての算数的活動 を通して,基礎的な知識と技能を身に付け,日常の 事象について見通しをもち筋道を立てて考える能力 を育てるとともに,活動の楽しさや数理的な処理の よさに気付き,進んで生活に生かそうとする態度を 育てる」であった21。
第8回目の改訂は,2008(平成20)年3月28日に なされた。この指導要領は2009(平成21)年4月1 日から移行措置として算数,理科等を中心に内容を 前倒しして実施するとともに,2011(平成23)年4 月1日から全面実施することになっている。2006
(平成18)年12月22日教育基本法が,2007(平成19)
年6月27日学校教育法が改正され,続いて2008(平 成20)年1月17日学習指導要領の改善の方向性とし て中央教育審議会は次のような7項目の答申を行っ た。①改正教育基本法等を踏まえた学習指導要領改 訂,②「生きる力」という理念の共有,③基礎的・
基本的な知識・技能の習得,④思考力・判断力・表 現力等の育成,⑤確かな学力を確立するために必要 な授業時数の確保,⑥学習意欲の向上や学習習慣の 確立,⑦豊かな心や健やかな体の育成のための指導 の充実,である。これらを受けて算数科の目標は,
「算数的活動を通して,数量や図形についての基礎 的・基本的な知識及び技能を身に付け,日常の事象 について見通しをもち筋道を立てて考え,表現する 能力を育てるとともに,算数的活動の楽しさや数理 的な処理のよさに気付き,進んで生活や学習に活用 しようとする態度を育てる」であった。1998年の学 習指導要領に比べると,「算数的活動を通して」と いう文言が,目標の冒頭に置かれたこと,「表現する」
の文言が加えられたことが異なっている。内容に関 しての改訂は,今回低学年においても「D数量関係」
が加わり,全学年とも「A数と計算」「B量と測定」
「C図形」「D数量関係」の4領域構成となった。「A
数と計算」領域では,基礎的・基本的な内容の確実 な定着を図るために,学年間でのスパイラルによる 教育課程が重視された。「C図形」では,各学年で 平面図形と立体図形をバランスよく指導できるよう にしている22。
⑵ 当該時期における「埼玉教育」の特徴
1989(平成元)年, 1998(平成10)年の小学
校学習指導要領下における論文数(便宜上中学数学 関係論文も含む)は,それぞれ 8本, 25本,そ して2008(平成20)年の小学校学習指導要領下で2 本あり,総計35本であった。その特徴は,次のよう であった。
期の小学校指導要領下では,「算数科における 個人差に応じた指導と評価」「生き生きと学ぶ子の 育成」「数学的な見方や考え方の能力を引き出す学 習指導法」「基礎・基本を定着させるための一考」
など,「ゆとり」を継承しつつ「新学力観」的論文 が登場する。
期の小学校学習指導要領下では,「算数科にお けるコース別指導」「児童の思いを生かしながら,
スキルアップする算数学習」「算数って楽しいよ」
「一人一人の学びを大切にする算数科指導」「児童一 人一人の『確かな学力』を育成する習熟度別コース 選択」など,「生きる力」につながる「学び」「考え る力」を重視した論文が見られる。この期の学習指 導要領には学力低下問題など厳しい批判があるが,
〔算 数〕
212.算数科における個人差に応じた指導と評価(平成2.6)
213.生き生きと学ぶ子の育成―国語科・算数科・体育
科の授業実践をとおして(平成10.6)
〔中学 ― 数学〕
214.数学的な見方や考え方の能力を引き出す学習指導法 (平成元.12)
215.授業カードを使って(平成元.12)
216.教育相談的手法を生かした学習指導(平成2.7)
217.基礎・基本を定着させるための一考(平成2.9)
218.学ぶ意欲を高める「数学」の指導と評価(平成5.1)
219.数学科における問題設定の指導(平成5.1)
〔算 数〕
220.数や演算に対する子どもの感覚を育成する教材の開 発―分数電卓で数感覚をみがく―(平成11.4)
221.子どもの発想を生かすティームティーチング―体
験を重視した算数科グループ学習―(平成12.4)
222.体験的な算数的活動を通して楽しく量感を養う授業 (平成13.6)
223.既習内容を生かした算数科の工夫(平成14.2)
224.算数科におけるコース別学習(平成14.6)
225.児童の思いを生かしながら,スキルアップする算数 学習(平成14.7)
226.どの子も「分かった」「できた」喜びが味わえる算 数学習(平成15.5)
227.基礎・基本をよりよく身につけ,学ぶ楽しさが味わ える指導(平成15.5)
228.和算を授業に生かす(平成15.11)
229.「指導・評価・支援の一体化」を目指した算数科の 授業(平成15.11)
230.考える楽しさを味わう授業を目指して(平成16.10)
231.一人一人の学びを大切にする算数科指導 (平成16.10)
232.算数って楽しいよ(平成17.5)
233.児童一人一人の「確かな学力」を育成する習熟度別 コース選択学習の実践(平成17.9)
234.補充的な学習・発展的な学習への取組(平成17.11)
235.児童一人一人の「確かな学力」を育成する算数科の 授業(平成18.3)
236.学ぶ楽しさが分かる.算数的活動を取り入れた授業 の工夫(平成18.10)
237.考える楽しさを味わえる算数の指導(平成19.8)
表5−1 1989(平成元)年版学習指導要領期の論文
表5−2 1998(平成10)年版学習指導要領期の論文
表5 1989〜2008年学習指導要領期の『埼玉教育』に掲載された算数・数学教育論文