口頭発表は主に上記の発表領域及び近接した部屋で行わ れていたボツリヌス神経毒素のケミカルバイロジー,変異 と化学修飾によるタンパク質の改変,生物学における金属 タンパク質の新展開を聞いた.特に自分が発表した領域で は表題にもあるとおり,健康と病理に関する応用的な研究 成果が多く発表されているように感じた.例えば,アミロ
イドβペプチドに関するもの,毒素や病原となるものに 対する糖質との関連に関するものである.特に糖認識で も,発表で多く見られたようなアプリケーションとしての 研究が進展していることを深く知ることができ,有益で あった.一般的かつ基礎的なタンパク質科学に関する発表 も見受けられ,そのような研究内容は他の部屋での発表で も見られ,頻繁に部屋を移動しながらの聴講に努めた.私 自身はポスターセッションで発表を行い,10 名程度の方 からの質問を受けた (写真 3).
学会の全体的な印象としては,あまりにも巨大な学会で 全体としての統一性は見られなかったが,各個別のセッ ションのみでも十分なサイズとなっていて,ポスター会場 などでは分野をまたいだディスカッションには至らないよ うな感じであった.それと,会場が景勝地であるホノルル とはいえ,各会場の椅子が十分でなく,つねに多くの参加 者が会場の後ろの方で起立して聴講していた.その点は,
改善して欲しいと思った.
最後になりましたが,本学会に参加の機会を与えてくだ さり,ご援助いただきました(財)農芸化学研究奨励会に厚 く御礼申し上げます.
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(IMPI第44回マイクロ波電力シンポジウム) に参加して 京都大学大学院農学研究科 椿 俊太郎
アメリカコロラド州のデンバーにて,2010 年 7 月 14 日 から 16 日まで開催された IMPI (International Microwave Power Institute) の主催する第 44 回マイクロ波電力シン ポジウムに参加し,口頭発表およびポスター発表を行っ た.IMPI は 1966 年にマイクロ波加熱や高周波加熱の技 術に関わる研究者の情報交換のためにカナダで設立された 協会である.本シンポジウムは第 44 回を数える伝統ある 会議で,近年は食品加工が主な議題となっているが,昨今 の環境への意識の高まりから今年から新たにバイオエネル ギーのセッションが追加された.会場はデンバーのダウン タウンにある The Curtis というホテルで行われた.デン バーはアメリカ中西部のコロラド州の州都で,標高が 1600 m あることからマイルハイシティーとも呼ばれる.
ロッキー山脈のすぐ東側に位置し,近郊には陸上の長距離 選手の高地トレーニングのメッカであるボウルダーや国立 標準技術研究所 (NIST),国立再生可能エネルギー研究所 (NREL) などがある.本シンポジウムの主な参加者は大 学の研究者だけでなく,米国農務省 (USDA) や食品メー
カーなど産官学の関係者が一堂に会しており,基礎から応 用までの内容を幅広くカバーした議論が活発に行われた.
私 は 本 シ ン ポ ジ ウ ム で “Microwave-assisted Autohy- drolysis for Refinery of Local Food Processing Biomass in Japan” と題して口頭発表とポスター発表の両方を行った.
マイクロ波は 300 MHz から 300 GHz の電磁波の総称で,
通信やレーダーのほか家庭用の加熱調理器として広く用い られている.近年,特に有機合成の分野では反応時間の劇 的な短縮や生成物の選択性を高める効果が注目されてい る.バイオマス分野では 1980 年代から木質材料からバイ オエタノールを製造する酵素糖化・エタノール発酵工程の 前処理としての利用可能性が示されてきた.効率的な酵素 糖化を行うには,セルロースと酵素の接触面積を大きくす る前処理が必要とされる.これまでに熱化学処理である高 温高圧水処理や爆砕,酸・アルカリ加水分解などの方法が 取られてきた.マイクロ波加熱は被照射体を内部から直接 加熱する方法であり,こうした処理は通常の外部からの熱 伝導による加熱と比較して反応時間の短縮や,それに伴う 二次分解物の減少が達成される.
私はこうしたマイクロ波の利点を応用して,食品加工で 排出される植物系のバイオマスをマイクロ波加熱により処
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理し,化成品やバイオ燃料の原料になる植物の構成成分を 分離する研究を行っている.試料には日本国内で排出され るオカラ,お茶粕,練り梅製造時の副産物である梅干しの 核を用いた.マイクロ波加熱によりこうしたバイオマスか らヘミセルロースやペクチンといった多糖類,イソフラボ ンやカテキンといったフラボノイド,さらにフラボノイド やリグニンが分解して生成した低分子のフェノール性化合 物が抽出される.一方,残渣中にはセルロース等が得られ る.抽出された多糖類は分散剤や安定剤など食品添加物等 に,フラボノイドなどのフェノール性化合物は天然由来の 抗酸化物質として,不溶性の残渣はエタノールや乳酸に変 換可能なグルコース原料として利用することができる.
私の口頭発表は 2 日目午後のバイオエネルギーのセッ ションで行われた.発表後の質疑応答では,座長のルイジ アナ州立大の Dorin Boldor 先生から反応系のスケール アップについて指摘を受け,今後の課題をクリアにするこ とができた.Boldor 先生は若手ながら非常にリーダー シップのある方で,学会の Business Meeting でも積極的 に働きかけをされるほか,その明るい人柄から多くの参加 者の間でも人気者であった.私はさらに続けてポスター発 表を行った.当初,学会事務局より口頭およびポスターの 両方で発表するように連絡を受けていたが,初日にポス ターを貼りに行ったところ自分のポスタースペースが設け られておらず連絡ミスであったことが判明した.しかし,
ポスターも準備していたので慌てて場所を用意していただ くことになった.用意してもらった場所のすぐ隣が会場の バーカウンターであったこともあり,ドリンクを取りに来 る多くの方々に注目していたいただくことができた.ポス ター発表は夕方の 5 時から開始されたこともあり,コロラ ド名産のビールの Coors Light を片手に議論する姿がよく 見られた.発表時には USDA や食品メーカーの方々に声 をかけていただく機会などもあり,口頭発表とポスター発 表の両方で発表を行ったことにより多くの参加者と接する ことができた.その後の懇親会では,席を共にした先生方 から物理的視点から見たバイオマスのマイクロ波加熱につ いて貴重なご意見をいただいたほか,研究者のハードワー クの経験談に大いに刺激を受け,今後の研究へのモチベー ションをさらに高めることができた.
今回,第 44 回マイクロ波電力シンポジウムに参加する ことで非常に有意義な経験をすることができた.今後,こ の経験を自らの研究の発展の糧とすべく努力していきた い.最後になりますが,本シンポジウムに参加するにあた
り出席費をご援助いただきました農芸化学研究奨励会に厚 く御礼申し上げます.
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写真1 デンバー市内の様子.
写真2 口頭発表を行う筆者.
写真3 ポスター発表を行う筆者.