不燃破砕残渣有効利用のための組成調査および環境安全評価
資源・廃棄物研究室
13T7-065 山口
翔平 指導教員 宮脇 健太郎1. 背景と目的
日本は 1960 年代頃の「大量生産・大量消費・大量廃棄」型社会から脱却するために、平成 12 年 6 月 2 日に循環型社会 形成推進法が公布され、循環型社会へと移行しつつある。循環型社会とは、生産から流通、消費、廃棄に至るまで物質の 効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費が抑制され、環境への負荷が少ない¹⁾社会のことである。廃 棄物は平成 26 年度現在、年間 4.432 万トン排出されており、そのうち総資源化量は 913 万トン、リサイクル率は 20.6%
で 430 万トンが最終処分されている。最終処分場は平成 26 年度末現在、残余容量約 1 億 582 万㎥、残余年数 20.1 年とさ れている²⁾。最終処分量は年々減少している傾向にあるが、依然として最終処分場不足が解消されていないため、不燃破 砕残渣のリサイクル技術の向上が望まれている。本研究では、最終処分されている不燃破砕残渣に着目し、資源化を目的 として組成調査と溶出試験、含有量試験等を行い、検討した。その結果を報告する。
2. 実験方法
(1)試料 平成 28 年 6 月 30 日昭島市環境コミュニケーションセンターより採取した不燃破砕残渣を用いた。十分に乾燥 していることを確認の上実験を行った。
(2)環境庁告示 46 号溶出試験及び付随分析 試料中にどのような物質が存在するのか、また有害金属の有無を確認するた めに行った。溶出試験(3 連)で得られた溶液を用いて、ICP-MS 測定や原子吸光分析、TOC,TN の測定、イオンクロマトグラ フィ分析を行った。
(3)含有量試験 試料中に含まれる物質の量を知るために含有量試験を行った。試料 1g を量り取り、100mL のビーカーへ 量り取った試料を入れ、硝酸(1.38)5mL と塩酸 10mL を入れた(3 連)。試料を入れたビーカーに時計皿で蓋をし、ホットプ レート上で 150℃で 24 時間程度加熱。(温度、時間は様子を見て調整。)液量が減少次第、様子を見ながら硝酸を 5mL ずつ 追加した。24 時間後、塩酸を飛ばすために時計皿を取り、純水を 30mL 加え、100℃でさらに 3 時間程度加熱した。その後 放冷し、50mL 容のメスフラスコで定容し、ろ過を行い ICP-MS 及び原子吸光で元素の濃度を測定した。
3. 結果と考察
環境庁告示
46
号溶出試験のICP-MS
測定結果を図1~3に示す。環境基準を超えた値が検出されたのは、B、Cr、Pb でいずれも 2~4.75mm の粒径のみであった。この結果から考えられることは、たまたま有害物質が付着したものが 2~4.75mm に混在していたと仮定して 2~4.75mm の結果を除くと、平均値が 0.5 ㎜以下の粒径が他粒径よりも僅かながら高い 値が検出されていることが確認できたため、粒径による傾向があると考えられる。
図1
ICP B 図2 ICP Cr 図3 ICP Pb
原子吸光分析の結果を図4~7に示す。
(図中において無色のガラスは文字数の都合上、無ガと省略して記載している。 )
図4と図5、図6と図7はそれぞれ溶出試験と含有量試験の原子吸光分析の結果である。含有量試験では、試料に含まれ ている元素の全量を知ることができ、溶出試験では、全量の中からどれだけの量が溶出してくるのかを知ることができる。図4と図5から
Na
は、全量に対して最大で約12%、最小で約 1%しか溶出していないことがわかった。また、図6と図
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
元 0.5以下 0.5~1 1~2 2~4.75 4.75~9.5
濃度(mg/L)
粒径(mm)
1 2 3
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08
0.5
以下0.5
~1 1~22
~4.7 5 4.7 5
~9.5
濃度(
m g /L
)粒径(mm)
1 2 3
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45
元
0.5
以下0.5
~1 1~22
~4.7 5 4.75
~9.5
濃度
(m g/L )
粒径(mm)
1 2 3
7から
Ca
は、全量は多いが0~1%程度しか溶出しないことがわかった。この結果のみで考えた際、この試料を再資源化
し自然環境中においても環境負荷となることは考えにくいため、再資源化が可能であると言える。図4 原子吸光(溶出試験)
Na 図5 原子吸光(含有量試験) Na 図6 原子吸光(溶出試験) Ca
図7 原子吸光(含有量試験)
Ca 図8 TOC 図9 TN
TOC,TN
の測定結果を図8、9に示す。TOC
とは、全有機炭素のことであり、試料中に含まれる有機物を構成する炭素の量を測定し、有機物の量に関連付けることで、水質汚濁の監視や上水道、製薬用水の水質を管理する指標として広く採 用されている。また、TOCは
BOD(生物化学的酸素要求量)と相関関係にあるため³⁾、 TOC
の値を知ることで同時にBOD
の値も推測できる。TNは全窒素のことであり、水の富栄養化の程度を表す指標の一つである。富栄養化のおそれのある 湖沼および海域について、環境基準および排水基準が定められている。図8、9より、TOCとTN
は似たような結果とな り、0.5㎜以下の粒径から高い値が検出された。粒径が大きくなるにつれて、値は小さくなるという傾向も見られた。4. まとめ
・溶出試験から、粒径に関係なく微量の有害物質が含まれている。
・不燃破砕残渣は粒径が小さいほど有害金属が多く溶出する傾向があるが、全量から見るとごく少量しか溶出していない。
・様々な試験結果から、再資源化は可能と考えられる。
5. 課題
今回試料として使用した昭島市環境コミュニケーションセンターさんの不燃破砕残渣は、資源化に向け事業を開始した ため次年度からは内容物が大きく変わることが予想される。そのため、本試料と比較することが望まれる。また、他市資 源化施設の試料でも同実験を行うことが望ましい。
参考文献
1)循環型社会形成推進基本法の趣旨
https://www.env.go.jp/recycle/circul/kihonho/shushi.html
2)一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成 26 年度)について
http://www.env.go.jp/press/102117.html
3)大学排水(長崎大学)の BOD 管理における TOC 測定の有用性 - J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/daikankyo/3/2/3_2_121/_pdf
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
元➀ 元② 元③ 0.5以下➀ 0.5以下② 0.5以下③ 0.5~1➀ 0.5~1② 0.5~1③ 1~2➀ 1~2② 1~2③ 2~4.75➀ 2~4.75② 2~4.75③ 4.75~9.5➀ 4.75~9.5② 4.75~9.5③ 無ガ2~4.75➀ 無ガ2~4.75② 無ガ2~4.75③ 無ガ4.75~9.5➀ 無ガ4.75~9.5② 無ガ4.75~9.5③
濃度(mg/kg)
粒径(mm)
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000
元➀ 元② 元③ 0.5以下➀ 0.5以下② 0.5以下③ 0.5~1➀ 0.5~1② 0.5~1③ 1~2➀ 1~2② 1~2③ 2~4.75➀ 2~4.75② 2~4.75③ 4.75~9.5➀ 4.75~9.5② 4.75~9.5③ 無ガ2~4.75➀ 無ガ2~4.75② 無ガ2~4.75③ 無ガ4.75~9.5➀ 無ガ4.75~9.5② 無ガ4.75~9.5③
濃度(mg/kg)
粒径(mm)
0 5 10 15 20 25 30
元➀ 元② 元③ 0.5以下➀ 0.5以下② 0.5以下③ 0.5~1➀ 0.5~1② 0.5~1③ 1~2➀ 1~2② 1~2③ 2~4.75➀ 2~4.75② 2~4.75③ 4.75~9.5➀ 4.75~9.5② 4.75~9.5③ 無ガ2~4.75➀ 無ガ2~4.75② 無ガ2~4.75③ 無ガ4.75~9.5➀ 無ガ4.75~9.5② 無ガ4.75~9.5③
濃度(mg/kg)
粒径(mm)
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
元➀ 元② 元③ 0.5以下➀ 0.5以下② 0.5以下③ 0.5~1➀ 0.5~1② 0.5~1③ 1~2➀ 1~2② 1~2③ 2~4.75➀ 2~4.75② 2~4.75③ 4.75~9.5➀ 4.75~9.5② 4.75~9.5③
濃度(mg/kg)
粒径(mm)
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
元① 元② 元③ 0.5以下① 0.5以下② 0.5以下③ 0.5~1① 0.5~1② 0.5~1③ 1~2① 1~2② 1~2③ 2~4.75① 2~4.75② 2~4.75③ 4.75~9.5① 4.75~9.5② 4.75~9.5③ 無ガ2~4.75① 無ガ2~4.75② 無ガ2~4.75③ 無ガ4.75~9.5① 無ガ4.75~9.5② 無ガ4.75~9.5③
濃度(mg/L)
粒径(mm)
0 2 4 6 8 10 12
元① 元② 元③ 0.5以下① 0.5以下② 0.5以下③ 0.5~1① 0.5~1② 0.5~1③ 1~2① 1~2② 1~2③ 2~4.75① 2~4.75② 2~4.75③ 4.75~9.5① 4.75~9.5② 4.75~9.5③ 無ガ2~4.75① 無ガ2~4.75② 無ガ2~4.75③ 無ガ4.75~9.5① 無ガ4.75~9.5② 無ガ4.75~9.5③
濃度(mg/L)
粒径(mm)